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皮膚が乾燥し、爪はもろくなる…「女性と若者の食事」に不足している"ある栄養素"

プレジデントオンライン / 2021年12月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuuji

日照時間の少ない冬に、不足しやすい栄養素がある。ビタミンDだ。産業医の池井佑丞さんは「日本のすべての年代において、ビタミンDが不足しているという調査結果がある。日光浴と食事の両方から摂取する必要がある」という――。

■日照時間が短い冬は「ビタミンD」が不足する

12月に入り、寒さが厳しくなってきました。日も短くなり、仕事を終えて退社した時には外が真っ暗になっているという方も多いのではないかと思います。

日照時間が短い冬は、ビタミンD不足に注意する必要があることをご存じでしょうか。

これはビタミンDが食事によって摂取されるだけでなく、日光の紫外線によっても生成されることによります。

日本におけるある調査では、対象者中ビタミンDが不足・欠乏している人(血中濃度が30ng/ml未満)の数は約8割に達し、すべての年代において不足の状態にあることが分かっています。(※1)また、日照時間の短い時季にはそうでない時季に比べて血中ビタミンD濃度が低下することも分かっています(※2)。これから先の冬場は日光を浴びることのできる時間がどうしても減ってしまいますので、食事で補うなど、他の季節に比べてさらなる配慮が必要となるのです。

(※1)N Yoshimura et al.: Profiles of vitamin D insufficiency and deficiency in Japanese men and women: association with biological, environmental, and nutritional factors and coexisting disorders: the ROAD study. Osteoporos Int. 2013 Nov;24(11):2775-87.
(※2)Hiroaki Okabe et al.:Determination of Serum 25-Hydroxyvitamin 03 by LC/MS/MS and Its Monthly Variation in Sapporo Indoor Workers. Anal Sci. 2018 Sep 10;34(9):1043-1047.

■カルシウム吸収、免疫力、筋肉や神経の働きにも影響

「ビタミン」が体に必要なことは分かっていても、不足した場合にどんな影響があるかをご存じの方は少ないかと思います。

ヒトの体に必要なビタミンは13種類あり、大きくは油に溶けやすい脂溶性ビタミンと水に溶けやすい水溶性ビタミンに分けられます。ビタミンDとは脂溶性ビタミンのひとつで、D2~D7の6種類があります。そのうち人体に特に必要とされるのが、きのこなどの植物由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール)と魚類の肝臓や魚肉、卵黄など動物性由来のビタミンD3(コレカルシフェロール)です。

ビタミンDは、骨の形成や成長に重要なカルシウムとリンの吸収のために必須の存在です。また、免疫力を高める働きもあることが分かっています。さらには、骨の形成に関わるだけでなく血液や筋肉中のカルシウム濃度を調整する役割も持っており、筋肉や神経の働きにも重要であることが分かっています。

このような働きを担うビタミンDが不足すると、何が起きるでしょうか。

ひとつには、カルシウムを十分に吸収できなくなることにより、皮膚の乾燥や爪がもろくなるほか、低カルシウム血症といって、症状としては背中や足に強い痛みを伴うけいれんが起こりやすくなります。記憶障害や抑うつ症状などの精神的な症状が出ることもありますし、重度の場合には全身のけいれんを起こして意識を失ったり、呼吸困難に陥ったりするケースもあります。

■骨粗しょう症のリスクが高まる

また、ビタミンDの不足が骨の形成に影響を及ぼすことは想像に難くないでしょう。骨はコラーゲンでできた土台にリン酸カルシウムが沈着(石灰化)して形成されるため、ビタミンDが欠乏すると石灰化がうまく進まず、小児ではくる病、成人では骨軟化症となる可能性があります。また、欠乏まではいかなくとも不足することで、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まります。それぞれ説明しましょう。

女性の骨格
写真=iStock.com/angelhell
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/angelhell
くる病

子供の時にカルシウム・リンが骨に沈着(石灰化)する量が少ないために、骨が弱くなる病気です。骨が弱く軟らかくなることで正常に成長しなくなります。そのため、足が曲がってO脚やX脚になる、身長が伸びにくい、などの症状が出ることがあります。

骨軟化症

骨が成長した後の成人に起こる病気です。くる病と同じく骨や軟骨の石灰化がうまくできていない骨の割合が増えることで起こります。

骨が軟らかいままになり、骨の痛み・骨折、筋力低下などの症状が出ることがあります。

■摂りすぎると「高カルシウム血症」や「腎障害」の危険

ここまででビタミンD不足の怖さはよくお分かりいただけたと思います。もともと不足しがちな栄養素であるため積極的に確保することをお考えいただきたいですが、実はビタミンDは摂りすぎた場合にも悪影響があることが分かっています。

ビタミンCなど水溶性のビタミンが過剰摂取された場合には尿で排出されるのに対し、ビタミンDは脂溶性=水に溶けにくいビタミンであるため摂りすぎた分も体内に留まり、過剰な場合には高カルシウム血症や腎障害を引き起こしてしまうことがあります。通常の食生活でこのようなことはなかなか起こりませんが、ビタミン剤を利用して摂取をする際などには注意が必要です。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンDの耐用上限量(過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量)を成人・高齢者では100μg/日としています(※3)

(※3)厚生労働省「「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書」

では、適切にビタミンDを確保するにはどうしたらよいのでしょうか。

方法は先述の通り2つあります。1つは日光紫外線の刺激を受けて皮膚で合成する方法。もう1つは食物から摂取する方法です。

■必要な日光浴の時間は地域によって異なる

(1)日光紫外線の刺激を受けて皮膚で合成する方法

ビタミンD生成のために日光浴が有効なことは各種機関で言われていますが、推奨されている日光浴の回数や時間はそれぞれ異なっています。季節、地域、天候、時刻、服装、皮膚の色など、さまざまな要因で左右されるため、一律に示すことは難しいのです。

ある研究では、日本人にとって1日に必要とされているビタミンD(調査時点の2010年当時は5.5μg)を顔と手の日光浴のみによって体内で生産するのに必要な日照時間を求めた結果、12月の12時の札幌では約76分、つくばでは約22分、沖縄では7分かかることが分かりました(※4)

(※4)Miyauchi, M, C. Hirai, and H. Nakajima,: The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan. Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 59, 257-263, 2013.

しかし、冬の札幌で76分もの間外でじっとしているのは現実的な手段ではありません。北陸など冬場は曇り空が多くなる地域もあり、そのような場合にはさらに日光浴の時間を増やす必要ができてしまいます。日光浴を兼ねてウォーキングをする、顔や手だけではなく足や腕など日光に当たる部位を増やして日光浴の時間を短くする、等無理のない範囲での工夫が必要となるでしょう(※5)

(※5)国立環境研究所「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要」)

冬の公園を歩く笑顔のカップル
写真=iStock.com/HRAUN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/HRAUN

■適度な日光浴でビタミンDを補給する

読者の中には「紫外線を浴びる」ことに抵抗を感じる方も少なくないと思います。日常的には紫外線の効能よりも悪影響が取り上げられることが多いですし、テレビに出演している女優さんやモデルさんが、美容のために冬でも紫外線対策を徹底しているという話は当たり前のように耳にします。

確かに紫外線は過度に浴びることで皮膚の細胞のDNAを傷つけ、紅斑、シミを作る原因となりますし、場合によっては皮膚がんを引き起こす可能性もあります。WHO等では皮膚に紅斑を起こす最少の紫外線量を、「1MED」として定義しており、この量以上の紫外線を多く浴びることにより上記の疾病の危険性が高まるとされています。

ただしある研究では、紫外線量が1MEDに達するには、必要なビタミンDを生成する紫外線照射時間の約4~6倍の時間が必要だという結果となりました。紫外線を過度に避けることはむしろ不健康にもつながるということをご認識いただき、適度な日光浴で十分な量のビタミンDを補給することが理想的だと考えます(※4)。なお、日光浴によるビタミンDの生成では、必要以上に作られることがないため、摂りすぎによる被害の心配もありません。

■食品からの摂取量は「女性と若者」が少ない

(2)食品から摂取する方法

そうはいっても、冬場に日光浴のみでビタミンDを確保するのは難しい方も多いでしょう。コロナ禍によって外出控えをしている方、リモートワークで家から出ることが少ない方もまだまだいらっしゃると思います。できるだけ意識的に外出をしていただきたいのはもちろんですが、不足しがちな冬場には積極的に食事によって補うのがよいと思います。

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」ではビタミンDの1日の摂取の目安量が、18歳以上の男女ともに8.5μgと設定されています。しかし、「令和元年国民健康・栄養調査報告」によると、1人1日あたりのビタミンD摂取平均量は6.9μgとの結果が報告されており、摂取量が不足していることが分かります。

同調査の過去10年間のビタミンD摂取平均量をみると、若干の年変動はあるものの男女ともに減少傾向にあることや女性の摂取量の方が男性よりも少ないこと、年代別では60歳以上の男女に比べ、20歳以上の摂取量が少なくなっていることが分かります。

女性や若者は特に意識して食事からもビタミンDを摂る必要があると考えられます。

■鮭、しらす、きくらげ、しいたけ、卵黄…

以下は、代表的な食品の可食部100gあたりのビタミンD含有量(μg)の例です。

・しろ鮭(焼き)39.0
・まいわし(生)32.0
・しらす干し(半乾燥品)61.0
・アンコウ(肝・生)110.0
・きくらげ(乾)85.0
・しいたけ(乾)17.0
・卵黄(生)12.0
「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より

乾物や卵など日常よく使う、また常備しやすい食品もありますので、毎日の食生活に上手に取り入れていただきたいと思います。

ビタミンDは、日光の紫外線から生成するだけでは地域や天候に左右される場合が多いですが、逆に食品から取り入れるだけでも不足しがちになってしまいます。

国立環境研究所のホームページでは、全国10カ所の測定地点において、1日に必要なビタミンDが生成されるのに必要な時間と、日焼けで赤くなり始める時間の2つがグラフと表にまとめられています。情報は30分ごとに更新されていますので、日々こちらを参考にしていただきつつ、足りない分は食品で補うなど、工夫していただけるとよいと思います。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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