「過去の"あるシーン"を思い出すだけでいい」どうしてもやる気が出ないときの科学的対処法
プレジデントオンライン / 2021年12月20日 12時15分
■意外と知らない事実「やる気には3種類あった」
やる気(モチベーション)には、3種類あるのをご存じでしょうか。1つ目がハイモチベーション、2つ目がアクションモチベーション、そして、3つ目がギャップモチベーションです。
①ハイモチベーション
急に「よし、気合いだ‼」と無理に出そうとするやる気を、「ハイモチベーション」といいます。これはとても危険です。なぜなら、急に高めたモチベーションは、すぐに下がってしまうからです。体温が急激に上がったら、体が一気に下げようとするのと同じです。すぐに下がるということは当然、長続きもしません。
②アクションモチベーション
文字通り、「行動」することによって生まれるやる気です。「動くからやる気が出る」というのは、科学的には正しいのですが、「その動くやる気が起きないんだよ」と言いたい方も多いはず。無理に行動を起こし、「アクションモチベーション」を使って「やる気が出ない」状態から抜け出すのは、よほど強靭(きょうじん)な意志の持ち主ではなければ至難の業。
③ギャップモチベーション
結論から言うと、私たちが「最も簡単に」やる気になることができて、かつ長続きするのが、3番目のやる気である、「ギャップモチベーション」です。これは「理想」と「現実」を埋めようとする心の働きがもたらす、パワフルな「やる気」の源です。
しかしながら、コロナ禍(か)の影響で、本来最も強力なモチベーションである「ギャップモチベーション」を多くの人が感じられなくなっている──このことが大きな問題を起こしているのです。
■人間はギャップを埋めたくなる生き物
「ギャップモチベーション」とは、理想と現実の差(報酬予測誤差)を埋めようとする脳の働きに起因しています。
![星渉『神モチベーション 「やる気」しだいで人生は思い通り』(SBクリエイティブ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/2/200/img_f20039bb744e2aaa80b87517e33aa5a7346726.jpg)
「ギャップモチベーション」のわかりやすい例を挙げましょう。
たとえば、電車に乗り遅れそうになった状況を想像してみてください。改札を通って、ホームに向かっていたら、絶対に乗らないといけない電車が出発しようとしている。このとき、あなたはおそらく、「ヤバイ、遅れる!」と駆け出しますよね。
ここで、あなたに質問です。あなたは「やる気を出して」急いだのでしょうか?
そんなことはありませんよね。「やる気を出そう」と「走り始めた」のではなく、「急がないと!」と、勝手にやる気が出て、気がつくと「走る」という「行動」をしていたはずです。これが、あなたの中で勝手に生まれてしまう、“第3のやる気”ともいわれる「ギャップモチベーション」のメカニズムです。
もともとのやる気のある/なしは関係ありません。極論を言えば、やる気がなくても、理想と現実のギャップを埋めるために動けてしまうのが、私たち人間という生き物なのです。
■コロナ禍が人々のやる気を奪った「本当の理由」
では、なぜ、新型コロナウイルスの影響で、多くの人がこの最も強力な「ギャップモチベーション」を感じられなくなっているのでしょうか。
それは、コロナ禍により、多くの人が行動の制限を求められるようになったからです。行動が制限され、今まで以上に同じことばかりを繰り返す毎日になりました。当然、変化も刺激も少ない日々を過ごすことになります。
その結果、自身の理想とするビジョンを思い描き、「いい未来」のイメージを持つ機会が激減してしまいました。人によっては、「将来への希望を持つことができなくなった」という人もいるかもしれません。
ポジティブな将来の姿(理想)を思い描けなくなったことで、私たちの中では、理想と現実にギャップを感じることがなくなり、そのため、「ギャップモチベーション」が発動しにくくなってしまったのです。
こうして多くの人が、「身体は元気なのに、イマイチやる気が出ない」と、自分でも理解できないおかしな状態に陥る現象が、どんどん広がっていきました。
■東京オリンピックの延期をアスリートはどう乗り越えたか
でも、そんな世の中でも、「超一流」といわれる人はやはり「ギャップモチベーション」を味方にすることができています。そして、抜きんでた成果を残し続けています。
最もわかりやすい例は、東京オリンピックで活躍したアスリートの方々でしょう。
なぜ、超一流のアスリートは、オリンピック出場の保証もない4年間もの長い時間をかけ、生活のすべてをなげうって「努力」を継続することができるのでしょうか。人間ですから、「今日は練習をしたくないな」と思う日ももちろんあるはずです。
ところが、彼らには「オリンピックに出場する」「金メダルを獲得する」という理想が、みずからの頭に、そして、ハートに強く強く刻まれています。
だからこそ、練習に対しやる気が起きない日であっても、「今の練習量じゃ、今の技術じゃ、金メダルなんて獲れない!」と、理想の自分と現実の自分のギャップを感じます。そして、そのギャップを感じるからこそ、みずからを奮い立たせ、いついかなるときでも「練習」という行動を起こすことができるのです。
■心理学、脳科学から見た「やる気」を出す正しい方法
新型コロナウイルスの感染拡大により、東京オリンピックは1年延期されました。アスリートにとって、モチベーションを保つことは容易ではなかったはずです。4年間かけて必死に準備をしてきたのに、無情にもその苦しい時間が1年延びてしまったのですから。
しかし、多くのアスリートが、今年ようやく開催された東京オリンピックで、目いっぱいのパフォーマンスを発揮していました。
世界的な感染症の拡大で開催延期となるというオリンピックの歴史上初めての事態に直面し、気持ちが切れかけたアスリートも多くいました。でも、彼らがギリギリでそのモチベーションを保つことができた理由はやはり、最終的に「オリンピックで金メダルを獲りたい」という情熱が勝ったから。「表彰台の真ん中に立っている自分の未来の姿」を脳裏に描き、その理想がブレることが片時もなかったからでしょう。
コロナ禍であっても、その理想とする自分の姿から目を離さないでいた。だからこそ、理想と現実のギャップを埋めるべく、淡々とそのギャップを埋める行動をすることができていたのです。
これは、特別なアスリートだけの心の働きではありません。あなたにもそのメカニズムが埋め込まれています。
どんなに困難で、悲観的な状況であったとしても、未来に希望を描き、自分の理想とする姿、キャリアを考えるというのは、心理学、脳科学の視点から見ても正しく、やる気を起こすうえで重要なことなのです。
![金メダルを掲げる手](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/670/img_63753c49111b7bdcbe7b26cc4dfbf49b367497.jpg)
■ヒントは「過去」にあり
とはいえ、中には「自分の理想的な未来やキャリアなど想像できない」という人もいるかもしれません。将来になかなか希望が持てない、理想とする自分の姿、キャリアなんて考えられない、今で精いっぱいなんだ、という人々です。
そういう人たちにも、ちゃんと科学的な対処法が用意されています。
おススメしたいのが、過去に自分が充実していたとき、楽しかったとき、成長を感じていたとき、仕事で成果を上げたときなどの「五感の情報」をすべて思い出す、という方法です。
五感の情報をすべて思い出すとは、単純にその事実を思い出すだけではなく、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、体感覚を使って、「あのときどうだったかな?」とリアルに思い出すことです。
■「五感」というタイムマシンを活用せよ
具体的にはどういうことか。たとえば、過去に仕事で大きな成果を上げた場面を思い出すとしましょう。
何が見えるか、どこにいるか、周りの人はどんな表情をしているか(視覚)。周りの人は自分にどんな声をかけてくれているか、自分はどんな話をしているか(聴覚)。また、体の感覚はどんな感じか? たとえば心臓はドキドキしているか、感情は高揚しているか、などなど。
このように、五感を使ってその当時を鮮明に思い出すことで、充実していた「あのとき」を脳内で再体験することができるようになるのです。
すると、再体験した過去の出来事と現実とのギャップを感じ、「このままではいけない!」「あのときのように、また頑張ってみよう!」と理想と現実のギャップを埋めようと「ギャップモチベーション」が働き出すことになるのです。
■「神モチベーション」が人生を変える
今、紹介したのは「ギャップモチベーション」に関するほんの一部です。
ほかにも、「結果が出たら絶対に喜んではいけない」「やる気を継続するために周囲から存在を消す」など、あなたが活用できる科学的方法がまだまだたくさんあります。
モチベーションの仕組みと、そのすごいパワーを使う方法について、新著『神モチベーション』に詳しくまとめましたので、ぜひこちらもご参照ください。
「ギャップモチベーション」のメカニズムを自分のものにできれば、身体は元気なのにやる気が出ないという現象から脱することができます。その結果、行動が起こり、人生が変わります。
「やる気」しだいで人生は思い通り。私自身、サラリーマンから独立を果たし、「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする」というモットーを現実のものとすることができた理由は、この「ギャップモチベーション」を活用したことにあります。
ぜひ、あなたもそのすごいパワーを体感してみてください。
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作家、ビジネスコンサルタント
Rising Star 代表取締役。1983年仙台市生まれ。大手企業で働いていたが岩手県で東日本大震災に被災。生死を問われる経験を経て「自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学び始める。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」ことを中心に置いた独自のビジネス手法を構築。国内外で「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ために活動している。『神メンタル』『神トーーク』(KADOKAWA)はシリーズ累計20万部突破のベストセラー。最新刊は慶應義塾大学の前野隆司教授との共著『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)。
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(作家、ビジネスコンサルタント 星 渉)
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