駅徒歩100分、床には鳥3羽の死骸…そんな物件を月7万8000円で借りる人がいる納得の理由
プレジデントオンライン / 2021年12月19日 9時15分
■家賃3万円を下回る一戸建ては滅多にない
ぼくが手掛ける不動産投資は、きわめてシンプルです。特別な才能は要りません。安く売りに出されているボロ戸建てを買って、安く修繕して、安く貸し出すだけです。他の投資に比べて圧倒的に損をするリスクが小さく、やり方さえ理解すれば誰もが成功をつかめるイージーゲームと言えます。
ここで言う「ボロ戸建て」というのは、おおむね築年数30年以上の一軒家のことを指します。もっとも、ここまで古くなってくると、築年数は情報としてほとんど意味がないので、ぼくが買い付ける際は、まったく気にしません。床が腐っていたり、外壁が剥がれ落ちている物件もザラ。天井に穴が開き、雨漏りし放題のシロモノもあります。
ここで皆さん疑問に思うでしょう。ゴミ同然の戸建て物件なんて、そもそも商品として成立しないのではないかと。安心してください。大丈夫です。貸せます。しかも、どんなボロ戸建てでもだいたい3万円以上の価格で貸し出せます。なぜなら家賃相場には底値があり、どんなに状態の悪い物件であっても、底値に近い価格で募集をかければ、必ずと言っていいほどお客さまは付きます。
家賃に底値がある理由を説明します。
ほとんどの大家さんは、物件を所有することにともない発生する固定資産税や、物件を購入する際に利用した融資の月々の返済額、建物の修繕コストなどを踏まえて家賃を設定します。エリアにもよりますが、地方であればこれらの物件を維持・管理するためにかかる費用は、マンションの一室であればおよそ月に2万円、戸建てであれば3万円ほどです。つまり、家賃がこのラインを下回ると、貸主側はほとんど利益が得られません。
このような事情から、いま出回っている一戸建ての家賃が3万円を下回るケースは滅多にないのです。では、こうした事実をベースに、ボロ戸建て投資の利回りを考えてみましょう。
■ボロ戸建ては圧倒的に割がいい
不動産投資においては、よく「表面利回り」という言葉が使われますが、これは年間の家賃収入を物件の購入価格で単純に割っただけ。ボロ戸建て投資においては、物件価格に対してリフォーム代などの諸経費の比率が高いので、「実質利回り」を考える必要があります。複雑そうに書いてしまいましたが、次の計算式を見ればわかりやすいです。
※年間経費には、固定資産税などの諸税、リフォーム費用を含みます。
通常の不動産投資の場合、たとえば2000万円の戸建て物件を購入し、10万円の家賃で貸し出し、年間経費が12万円ほどと想定すると、実質利回りは5.4%となります。
一方、50万円で購入したボロ戸建てを、底値に近い3万5000円で貸し出すケースをシミュレーションしてみましょう。この場合、1年目のリフォーム費用と物件の維持にかかるコストを合わせて年間30万円と仮定すると、実質利回りは24%です。そしてリフォーム代が大きくかかるのは1年目だけですから、翌年以降は負担は減ります。
どうでしょうか。ボロ戸建て投資は、通常の不動産投資に比べて、圧倒的に割がいいのがわかると思います。
しかもここで挙げた例はかなり悲観的に見積もった数字です。少し工夫をすれば、より安い価格で物件を購入し、底値よりも高い価格で客付けができるようになり、リフォーム費用はDIYを覚えることによっていくらでも低く抑えられるため、当然のことながら、その分の利回りはアップします。
■万一失敗しても「中古車一台を事故で失う」程度のコスト
一般的な不動産投資の場合、そもそも物件の購入費用が割高であるため、投資コストを回収するには、家賃をできるだけ高く設定しつつ、客付けも抜かりなく行う必要があり、綿密な戦略が必要です。
ボロ戸建て投資の場合は、物件の購入費用が圧倒的に安く、投資コストを回収するのに時間がかかりません。また、客付けに苦戦しても、最悪、家賃を底値(3万円)近くに落とせば、ほぼ確実に決まります。また、とりあえず年間経費を減らすことに専念すれば、利回りはぐんぐん上がっていくので、込み入った投資戦略を考える必要もありません。
万が一失敗しても、コスト的には「中古車一台を事故で失った」のと変わりませんから、心理的なダメージも少なくて済みます。
これらの点を踏まえて、もう一度言います。ボロ戸建て投資は、誰でもすぐに始められて、高い確率で成功を手にできる、イージーゲームなのです。
■あなたが住みたい家の基準で買う必要はない
ボロ戸建て投資に向き合うにあたり、必ず意識してほしいマインドについて説明します。ぼくは不動産業界で3年ほどサラリーマンとして働いた経験がありますが、そこで体感したのは「日本人は本当に新築が大好きだな」ということでした。
たとえば、アメリカやイギリスの住宅市場では、流通している物件のおよそ8割が中古住宅です。日本ではこの正反対で、新築住宅のほうがだんぜん需要があります。2018年に行われた総務省の調査によると、全住宅流通量における中古住宅の割合は、たったの14.5%。欧米諸国に比べて日本では圧倒的に、中古よりも新築のほうが好まれていることがわかると思います。
この数字だけを見ると、これからボロ戸建て投資にチャレンジしようとする皆さんにとって不利に感じるかもしれませんが、そうではありません。新築好きな日本人にとっては、築年数が10年以上経ってしまうと、すべてまとめて「築古」のカテゴリーに入ります。
ということは、何が起きるでしょうか。極端な例ですが、ちょっと新しい500万円の物件と、古い100万円の物件があるとします。そこに住もうとする日本人にとって両者の印象は、ほぼ変わらないということです。そして得られる家賃もそんなに大差はありません。だったら100万円の物件を買って貸し出すほうが賢いでしょう。
■自分の物件ならではの価値を見出そう
ここでマジメな皆さんは疑問に思うでしょう。「100万円の物件なんてダメ物件じゃないの? 本当に人に貸し出していいの?」と。大丈夫です。不動産業界で働くなかで、「ここに? ほんとに? 住むの? マジかよ……」という案件を、ぼくはこれまでたくさん見てきました。
つまり、ボロ物件を選定するときに勘違いしないでほしいのですが、その物件に住むのは皆さんではありません。ボロ物件に住む人には、別の価値観があります。ですから、選定の際には「どんな人ならここに住みたがるか」を考える必要があります。そうすれば、自分の物件ならではの価値を見出して、周辺相場を気にせずに値付けができるようになります。さらに、しっかり客付けもできます。具体例をお話ししましょう。
ぼくが所有している物件の中でも、一、二を争う稼ぎ頭になってくれているのは、茨城県にある1LDKの戸建てです。最寄りの駅からだと徒歩1時間40分という、へんぴなエリアにあります。そんなスペックにもかかわらず、ここを7万8000円で貸しています。おそらく競合物件の家賃相場の倍くらいです。
■内覧に行くと、室内に虫と鳥の死骸が…
もちろん、この物件もボロ物件です。内覧のとき、とにかく床が汚かったことを覚えています。室内には虫の死骸が散乱し、なぜか鳥の死骸も3体ほどありました。もはや靴下で歩きまわるのは不可能と感じるレベルで、土足で入るくらいの有り様でした。部屋に一歩入ったときの感想は「気持ち悪い! 汚い!」でした。普通の不動産投資家なら敬遠するような物件です。
ですが、ぼくはこの物件に大きなアドバンテージを見つけました。それは1階部分がすべてシャッター付きのガレージになっていたことです。田舎では駐車場付きの物件は珍しくないですが、シャッター付きのガレージがある物件は、そう多くありません。雨ざらしにならないので車体をきれいに保てますし、愛車とひとつ屋根の下で暮らせますから、きっと車好きにとっては大きな魅力だろうと考えたのです。
ぼくはこの物件を100万円で購入し、クリーニング、壁紙の張り替え、スイッチパネルの交換などのリフォームを4万円ほどですませ、客付けをしました。そして思惑どおり、この物件は個人で車の修理や板金をするほどの“車マニア”の方に貸し出すことができたのです。
100万円で買った物件を月に7万8000円で貸し出しているので、1年1カ月たてば物件の購入費用が戻ってきます。リフォーム代等の諸経費込みでも1年3カ月です。そうすれば、あとはお金を生み出すキャッシュマシーンのようなものです。一般の投資家は目もくれないようなボロ戸建てでも、着眼点一つでしっかりと家賃収入を生み出すことができるのです。
あなたにとっては値打ちがなくても、それに価値を見出す人がいるかもしれないのが、不動産投資の醍醐味(だいごみ)。どういった人になら需要があるかを想像することが大切です。
■大切なのは「自分の常識でお客さまを測らない」こと
ぼくは不動産業界で働いていた当時、家賃20万円の高級住宅から3万円のオンボロ屋敷まで、さまざまな価格帯の不動産を客付けしてきました。その経験から、価格帯によって客層が違うことを思い知りました。
高価格帯の物件を探している人はかっちりしている人が多く、応対に神経を使います。不動産会社で働いていた当時、駅近の家賃20万円の戸建て物件を中小企業の社長に貸し出したことがあるのですが、その社長さんへの応対には気を遣いました。
「賃貸契約までのスケジュールを全部出してくれ」と言われたり、内覧の際には室内にあるコンセントの数を逐一チェックしたり、とにかく要求が細かくて確認事項が多い。
物件を借りる側からすれば高いお金を払って契約するのだから、不動産業者や貸主にベストな対応を求めるのは当然です。また、貸し出す側も大口契約をモノにするために、借り手の希望を叶えようとできる限り尽力するでしょう。
しかし、ボロ戸建て投資においては、話が異なります。底値に近い家賃で物件を探している人たちにとっては、貸主側のサービスがいいかわるいかは重要でなく、物件の細かい欠陥にすら無頓着であることがほとんど。もちろん大切なお客さまであることに変わりはないので、応対に際し最低限のホスピタリティは大事ですが、過度に丁寧な対応は必要ないということです。この点でもボロ戸建て投資は、不動産についての知識の浅い初心者でも、気軽にトライしやすい分野だと言えるでしょう。
ボロ戸建て投資を始めるのに大切なマインドの一つが、自分の常識でお客さまを測らないことです。「物件やサービスの価値を決めるのは自分ではなく、いつだってお客さま」。この言葉を常に心にとどめておいてください。
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1988年生まれ。中古車販売業を経て、不動産仲介の仕事を経験、不動産業界の仕組みを学ぶ。融資を受けて不動産を買う可能性を考慮して一部上場の運送会社に入社。2016年、不動産投資をスタート。現金で安い戸建てを買い、DIYで安く直す手法で資産を増やす。19年の大家業開始から2年半で家賃収入が給料を上回り、会社員を卒業(29歳でFIRE達成)。20年2月、所有物件20戸を超える。無借金で家賃月商100万円以上。
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(不動産投資家 ふかぽん)
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