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マッキンゼーが「報告・連絡・相談」よりも「ソラ・アメ・カサ」を重視している理由

プレジデントオンライン / 2021年12月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

ビジネスの現場で意思疎通を図るにはどうすればいいのか。人事コンサルタントの松本利明さんは「報告・連絡・相談というホウレンソウには致命的な欠陥がある。それよりも、『ソラ・アメ・カサ』のほうが役に立つ」という――。

※本稿は、松本利明『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■マッキンゼーの開発した「ソラ・アメ・カサ」

「ソラ・アメ・カサ」という言葉をご存じでしょうか。これは、マッキンゼー日本支社で開発された問題解決の型の一つで、小学生でもすぐ理解して使えるくらいシンプルなフレームです。

ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
カサ「傘を持っていこう(打ち手)」

この3つをセットにして伝えれば認識のズレもなく、正しく相手に判断してもらえるというものです。

ソフトバンクグループの孫正義社長が経営判断で重視しているのもこの「事実」「解釈・判断」「打ち手」の3セットだそうです。

逆に、このうち一つでも欠けていると、説得力は一気に落ちてしまいます。

たとえば、「ソラ」が抜けてしまうと、

アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
カサ「傘をもっていこう(打ち手)」 

となり、根拠がなくなってしまい、信頼度が格段に落ちてしまいます。

ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
カサ「傘を持っていこう(打ち手)」 

これだと「アメ」という解釈が入っていないために、「私は持っていかない」「傘だけでなく長靴と雨合羽も用意すべきでは」などと、解釈に幅が出てしまい、打ち手の足並みが揃わなくなるリスクがあります。

ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」

これだと「カサ」がないため、「だからどうした」という話になってしまいます。

ただでさえ、日本語は省略が多い言語です。頭の中ではきちんと描いていても、伝える時についはしょってしまい、結果、言った/言わないの水掛け論になるのです。

この「ソラ・アメ・カサ」は、自分の思考のチェックにも使えます。ソラが抜けていれば「根拠となる事実は何か?」、アメが抜けていれば「何が論点なのか?」。カサが抜けていれば「どんな打ち手がいいか?」を確認すれば、正しい結論を導き出すことができます。

■相手の重視している項目を先に持ってくる

ちなみにこの「ソラ・アメ・カサ」は順番ではなくセットで伝えればいいので、順番は問いません。むしろ、前項でお伝えしたように、コミュニケーションにおいては「相手の重視している話を先にする」のが基本です。「ソラ・アメ・カサ」のうち相手が一番気になるものを最初に持ってくればいいのです。

ソラ「お客様が来ない(事実)」
アメ「来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」
カサ「銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」

少し暗い話題で恐縮ですが、この例をもとに考えてみましょう。もし、相手がいち早く経営状況を知りたいのならば、

アメ「来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」
ソラ「(なぜなら)お客様が来ない(事実)」
カサ「(なので)銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」

と伝えればいいのです。

部下からの報告を受ける上司
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

あるいは、「結局、どうするのか」に関心があるのなら、

カサ「銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」
ソラ「(なぜなら)お客様が来ない(事実)」
アメ「(なので)来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」

と伝えるのです。

この「ソラ・アメ・カサ」を口癖にしておけば、格段に「話が通じやすくなる」のでぜひ使ってみてください。

■“報連相”の致命的な欠陥

30代は部下や後輩から報告を受けるとともに、上司に対して報告をしなくてはならない立場でもあります。その際のコミュニケーションのコツとして、「報連相」という言葉がよく使われますが、報連相には致命的な欠陥があります。

前項で紹介した「ソラ・アメ・カサ」と報連相を照らし合わせてみると、その理由が見えてきます。

報連相「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきました。どうしたらいいでしょうか?」

ソラ「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきました」
アメ「⁇」
カサ「今すぐ打ち手を検討したいと思います」

「報告」も「連絡」も、結局は「ソラ(事実)」を伝えるということです。そして、「相談」で打ち手(カサ)の話し合いをするわけですが、アメ(解釈・判断)が抜けてしまっているのです。

すると、上司は部下からの報告を踏まえ、状況を自分なりに解釈・判断し、どうするかという打ち手を部下に伝えることになります。しかし、上司の解釈・判断(アメ)はあくまで上司の頭の中にだけ存在するため、部下としてはなぜその打ち手になったのかは想像するしかありません。結果、意図のズレが発生しやすくなるのです。

■「アメ」を共有しないことで解釈が異なる

例を出してみましょう。

部下が「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきた」という報告をしてきたとします。それを聞いた上司は、「ライバル会社より高くない印象を持たせるように、再度見積もりを取るように」という指示を出しました。それを受けて、部下が安い見積もりを作って持っていったところ、「じゃあ、今までは高く売りつけていたのか」と相手企業に激怒され、信頼を失ってしまった……。

なぜ、このような問題が起きたのでしょうか。「ライバル企業が我が社より安い見積もりを提案してきた」ことに対する解釈がなされていなかったからです。

上司としては、「うちのほうが付加価値が高いことを提示し、決して高くないという印象を与えることが必要」と解釈したのに対し、部下は単純に「安さで勝負することが必要」と解釈したということです。

この事例の場合は「高くない印象」というあいまいな言葉を使ってしまったという問題もありますが、やはり根本的な問題は、「アメ」が共有されていなかったことでしょう。アメさえ共有しておけば、「品質が高く壊れにくいので、ランニングコスト的にライバルよりお得」と説得するか、「導入費用を安くするが、メンテナンスコストで回収を図る」かを、部下も判断することができたはずです。

松本利明『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)
松本利明『できる30代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

だからこそ部下はなるべく「アメ」を伝えるべきですし、上司は部下の報告にそれが抜けていると感じたら、積極的に聞き出すようにすべきです。こうすることで、認識のずれはかなり解消されるはずです。

一方で、上司の指示に「アメ」が抜けているようなら、部下のほうからそれを確認する必要もあります。これは、「上司がどのように判断するのか」を知るチャンスにもなります。

ポイントは、「今後どうなりそうか?」という未来予測です。それを元に打ち手を考えていくわけですから、ここにズレが生じると解釈や打ち手にズレが生じてしまいます。

ただ、これは難しいことではありません。「どうなりそうか?」を上司と部下で確認すればいいのです。たったこれだけのことで、認識のずれは解消されるのです。

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松本 利明(まつもと・としあき)
人事・戦略コンサルタント
PwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手コンサルティング会社のプリンシパル(部長級)を経て現職。5万人のリストラと7,000名を超えるリーダーの選抜と育成を行った「人の『目利き』」。主な著作に『稼げる人稼げない人の習慣』(日経ビジネス人文庫)、『「ラクして速い」が一番すごい』(ダイヤモンド社)、『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)などがある。

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(人事・戦略コンサルタント 松本 利明)

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