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「年内だと3万8000円の得」結婚するなら今年中に駆け込んだほうがいい税務的理由

プレジデントオンライン / 2021年12月16日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/yuruphoto

「配偶者控除」は配偶者の所得が一定以下の場合に税金の控除が受けられる制度だ。税理士の出口秀樹さんは「適用されるかどうかは12月31日時点で判定される。そのため結婚するなら年内、離婚するなら年明けが得だ」という――。

※本稿は、出口秀樹『知れば知るほど得する税金の本』(知的生きかた文庫)の一部を再編集したものです。

■離婚や死別をしたら使える税制

個人の時代といわれる現代。いわゆる“おひとり様”は特別なものではなくなっています。人生において最大のイベントである結婚も従来のステレオタイプなものではなく、様々な形が認められています。

このような社会情勢の中、税制も対応していかなければならないという趣旨からか“おひとり様”に対する取り扱いも変わってきています。

不幸にしておひとり様になってしまったというケースには、寡婦控除というものがあります。寡婦とは、原則としてその年の12月31日で、次に解説する「ひとり親」に該当せず、次のいずれかに当てはまる人です。また、納税者と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいる場合は対象となりません。

(1)夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下の人
(2)夫と死別した後婚姻をしていない人又は夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

離婚した場合は扶養親族がいなければ対象になりませんが、死別の場合は扶養親族の有無は問われません。寡婦控除は所得から27万円控除されることになります。

■過去に結婚していなくても使える「ひとり親控除」

寡婦控除に似た控除としては、次のひとり親控除があります。寡婦控除は女性にしか適用されませんが、こちらのひとり親控除は男女とも適用される制度です。

ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていない又は配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件のすべてに当てはまる人です。

①その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと
②生計を一にする子がいること
この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
③合計所得金額が500万円以下であること

ひとり親控除は所得から35万円控除できますので、前述の寡婦控除よりも控除額が大きく節税効果があります。

ひとり親控除の最大の特徴は、寡婦控除と違って過去に結婚していたという条件がないことです。未婚であっても生計を一にする子どもがいれば対象となるのです。

ひとり親控除ができる前は、特別の寡婦として控除がありましたが、こちらは過去の婚姻関係があることを前提としていたため未婚の場合は控除を受けることができませんでした。

ひとりで子どもを育てている方には使い勝手の良い控除制度となっています。

■仕事をしていない配偶者がいれば38万円が控除される

私たちがもらっている給与の中で税金を少なくする控除には、どのようなものがあるのでしょうか。一般的に知られているのは、社会保険料控除、配偶者控除や生命保険料控除などですが、その他にもいろいろな控除があります。それらの控除の中でも、もっとも基本的なものに「人的控除」といわれるものがあります。

お金を計算する日本人女性
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

この人的控除とは、“その人がどのような人であるか?” によって、その控除金額が定められているのです(図表1参照)。

人的控除の一覧表
『知れば知るほど得する税金の本』より

令和元年まで全員が適用対象となる「基礎控除」は、すべての人が38万円の控除を受けられましたが、令和2年分からは図表1のように48万円と控除額が増額されると同時に所得によって控除額が逓減されるようになりました。

仕事をしていない配偶者がいる場合であれば配偶者控除38万円を受けることができます。そして、その配偶者に収入がある場合でも、その収入に比例した所得金額に応じて配偶者特別控除を受けることができることになっています(図表2参照)。

配偶者特別控除額
『知れば知るほど得する税金の本』より

■障害者なら扶養控除の控除額が増える

さらに、その配偶者が70歳以上であれば、控除額が増加するなど様々な配慮が盛り込まれた内容となっているのです。

これらの人的控除を漏れなく受け、税金を少なくするためには、その人的控除の種類と内容をきちんと理解しておく必要があります。

たとえば、「扶養控除」。扶養控除を受けることができるかどうかは、その“扶養される人の所得金額”によって違ってくるのです。扶養控除の対象となるには、扶養されている人の所得は年間48万円以下である必要があります。

しかし、この48万円という数字は、あくまで所得金額です。たとえば、その扶養される人が給与をもらっている人であれば、給与所得控除を差し引いた後の金額で判断することになります。

給与所得控除の金額は給与収入に比例しますが、最低額は55万円。仮に年間100万円のアルバイトをしている人であれば、給与収入100万円-給与所得控除55万円=所得金額45万円となり、48万円以下であることから扶養になることができるのです。

さらにその扶養する人がどのような人であるかによっても、控除額が異なります。もしも、その人が障害者であれば、通常の扶養控除よりも大きな金額の控除を受けることができます。ただし、ここで述べた控除は自分できちんと申告をしなければいけません。会社で行ってくれるものには限界がありますので、ご自身でさらに控除となるものがないか、一度チェックしてみましょう。

■結婚するなら年末までに、離婚するなら年明けに

その人の“状況”によって異なる人的控除ですが、その時期によっても違ってくることがあります。たとえば、昨年は独身だった人が、今年結婚すると控除の対象となることがあります。ここで問題となるのは、どの時点でその人の状況を判定するのかということです。税金の世界では、その時期をその年の12月31日と定めています。

出口秀樹『知れば知るほど得する税金の本』(知的生きかた文庫)
出口秀樹『知れば知るほど得する税金の本』(知的生きかた文庫)

つまり、結婚するなら年内が有利になりますし、不幸にして離婚するような場合でも年内は我慢して、年明け早々に離婚すると少なくとも前年分は控除が使えるのです。

配偶者控除の金額は38万円。税率10%の人なら、38000円も税額が違います。

年末調整で年間の税金を計算する場合、扶養などの情報について正確に申告をしているかどうかで控除額も違ってくるのです。もしあなたが間違った人的控除の申告をしてしまっていても、会社も税務署も修正して税金を還元してはくれません。

自ら正確な内容を「給与所得者の扶養控除等申告書」等に記載して提出することが、自分の節税につながるのです。

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出口 秀樹(でぐち・ひでき)
税理士
米国税理士(EA)。BDO税理士法人札幌事務所代表社員、ドルフィンマネジメント代表。1967年北海道札幌市生まれ。1991年北海道大学文学部卒。小樽商科大学大学院商学研究科修了。1998年5月、出口秀樹税理士事務所を開所。著書に『知って得する領収書の本』『知れば知るほど役立つ会計の本』(知的生きかた文庫)、『改訂版 はじめての会社経営100問100答』(明日香出版社)など。

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(税理士 出口 秀樹)

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