「目が良くなる本」を見ても、ブルーベリーを食べても、目は良くならないという残念な真実
プレジデントオンライン / 2021年12月21日 10時15分
※本稿は、相原一、根岸一乃、梶田雅義、平松類『名医が教える新知見 老眼・緑内障・白内障の克服法100』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
■「緑は目によい」は本当か
一般的に、山や森などの緑を見ることは目によいとされています。果たして本当に緑は目に効果的な色なのでしょうか。
残念ながら、そのことを示す医学的なデータはほとんどありません。山や森といったものは、たいてい遠くにあります。近くを見るより、遠くを見たほうが目によいため、それが転じて「緑は目によい」といわれるようになったのでしょう。
ハイキングや登山などで遠くの山や森を見ると、目がスッキリしたような気分になります。ですが、それは色の効果ではありません。心身がリラックスしたため、と考えたほうがよさそうです。
■寝る前の30分間はスマホを見ない
次に、スマートフォンが目に悪いかどうかについて考えてみましょう。
スマートフォンの利用で問題視されているのは、ブルーライトの目への悪影響です。何かと悪者にされることが多いブルーライトですが、それ自体は必要な光で悪いものではありません。あくまで「大量のブルーライトを長時間浴びる」または「夜間にブルーライトを浴びる」ことが問題なのです。
ブルーライトというと、特殊な光という印象を与えますが、太陽光や蛍光灯など一般的な光はすべてブルーライトを含んでいます。
では、なぜスマホだけがとりざたされるのかというと、目との距離が近いことと長時間使用する人がいるからです。
ブルーライトには私たちの生活に必要な役割があります。ブルーライトを浴びることで、人間は一日の生活のリズムを作っているのです。
逆に夜間に浴びてしまうと、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。睡眠の質を高めるためにも、寝る30分前にはスマホの使用を控えたほうがいいでしょう。
■ドライアイには「目を温める」
どちらがいいかは、目の症状や状態によって異なります。まず、冷やすほうがよい場合から先に説明しましょう。冷やすほうがよい場合は、目が腫れているとき、目にかゆみがあるとき、そしてぶつけたときなどです。腫れやかゆみは、患部を冷やすことで症状を抑えることができます。そうした不調を感じたら、温めるのではなく冷やすといいでしょう。ただし、氷や保冷剤を直接当てるなどすると、凍傷になる危険性もあるのでタオルなどで巻いて当てることが大切です。
一方、温めたほうがよい場合は、疲れ目やドライアイなどの慢性の症状が出ている場合です。温めることで疲れ目が改善するというデータもあります。
ドライアイは、目が乾くというイメージがあるため、涙の量が不足して起きると思われがちです。しかし、多くの場合、問題になっているのは量ではなく、実は涙の質なのです。まぶたにはマイボーム腺という脂を分泌する場所があります。そこが詰まると脂が分泌されず、涙が水分だけとなり乾燥しやすくなります。それを防ぐ意味で温めるのです。脂は冷たいと固まって温かいと溶けます。その特性を考慮すると、温めたほうがよいというわけです。
具体的に家庭でできる簡単な方法をご紹介しましょう。市販の道具を使用する方法もありますが、蒸しタオルを使えば手軽に行えます。
お風呂に入ったときに、タオルを浴槽の湯に浸し、軽く絞ります。目を閉じてタオルをまぶたの上に置いて、タオルが冷えたらまた湯につけるということを、5分程度繰り返し行います。
長くお風呂にいたくない場合は、水で濡らして絞ったタオルを電子レンジで40秒ほど(機種による)温めて、40度程度にして使用するという方法もあります。
■「絵を見るだけで視力がよくなる本」に根拠なし
一般的に、視力は「裸眼視力」をさします。つまり、眼鏡をかけていない状態の視力のことをいいます。
裸眼視力は、眼鏡やコンタクトレンズで“矯正”することはできます。しかし、裸眼視力そのものを“改善”する方法は大規模に研究されたものはなく、小規模な研究のものにとどまります。
絵を見るだけで視力がよくなるという本も出ていますが、その効果には、はっきりとした根拠はありません。頭のつぼを押すと視力がよくなるという説も科学的な根拠に乏しく、危険を伴います。
「遠近トレーニング」といって、遠くや近くを交互に見る運動は、一時的に目のピント調節機能が麻痺したときなどには効果が出る可能性があります。唯一、「ガボール・アイ」という縞模様を見る方法にはある程度のデータがあるといえます。
とはいえ、まずは医学的な方法を検討して、それでも困難な場合などにあくまでサポートとして行うくらいにとどめておくほうがよいでしょう。
■ホウレン草には「加齢黄斑変性症」の予防効果が
ブルーベリーは目によいとよくいわれますが、医学的な根拠は強くなく、効果はそこまで期待が持てるとはいえません。
一方、ルテインを含んだマルチサプリメントには「加齢黄斑変性症」という病気に対して予防効果があるとされています。ルテインは、目の奥の、物を見る中心黄斑に多く存在する物質です。年齢とともに減少するので積極的に摂取しましょう。ホウレン草やケール、ゴーヤなどに多く含まれます。
鮭やエビなど赤色の海産物に含まれるアスタキサンチンは老眼や白内障への効果が期待されていますが、今後の研究が待たれます。
バランスのよい食事をして、意識的にこれらのものも取り入れるとよいでしょう。
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二本松眼科病院 副院長
眼科専門医として、延べ10万人以上の高齢者の診察を行い、現在、全国から患者が訪れる。数多くのメディアへ出演。著書に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』(時事通信社)など。
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(二本松眼科病院 副院長 平松 類)
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