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メモが「ただのゴミ」になる人と「アイデアの宝庫」になる人の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2021年12月17日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/seb_ra

日頃のメモをアウトプットに結びつけるには、どうすればいいのか。作家のズンク・アーレンスさんは「ただメモをするだけでは役に立たない。ドイツの天才社会学者ニクラス・ルーマンが発明した『ツェッテルカステン』というメモのとり方が参考になる」という――。

※本稿は、ズンク・アーレンス著、二木夢子訳『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■すべての事柄をメモしても意味がない

ドイツの天才社会学者ニクラス・ルーマンが発明したメモ術「ツェッテルカステン」。この方法でメモを取っていると、おのずとオリジナルなアウトプットができるようになります。しかし、正しく実践しないとうまくいきません。

アウトプットにつながらないおもな理由のひとつが、「走り書きのメモ」と「永久保存版」のメモを混同することです。

ありがちな失敗を犯しているのが、多くのまじめな人々です。ある友人は、出会ったあらゆるアイデア、興味ある知見、言葉を、ひとつ残らず書き留めています。常にノートを持ち歩き、会話中にもしょっちゅうメモをとっています。

メリットはもちろん、失われるアイデアがひとつもないということです。

しかし、デメリットもまた深刻です。すべてのメモを「永久保存版」カテゴリーのように扱っているため、メモが蓄積されて文章という結果を出すことは永遠にありません。

せっかくすぐれたアイデアを集めても、さして重要ではないメモに埋もれてしまうと見つけにくくなります。そのうえ、情報が完全な時系列順に並んでいては、生産的な意味でアイデアを発見したり、結びつけたり、並べ替えたりすることにはまったく役に立ちません。

その友人が、すばらしいアイデアの詰まったノートで本棚が埋まっているにもかかわらず、本の1冊も出版できていないのは驚きでもなんでもありません。

■テーマごとにメモを集めるのも無意味

2番目のありがちな失敗は、特定のプロジェクトに関連するメモだけを集めるというものです。こちらの方法は、一見して理にかなっていそうです。

しかし、プロジェクトが終わると毎回最初からやり直しになり、見込みのありそうな他の思考の流れが断ち切られてしまうというデメリットがあります。つまり、プロジェクトの進行中に見つけたこと、考えたこと、出会ったことがすべて失われてしまいます。

だからといって、新しいプロジェクトになる見込みのあるおもしろそうな事案に出会うごとに新しいフォルダーを開いていたら、まもなく圧倒的な量の未完成プロジェクトが残ってしまうでしょう。それをすべて管理しなければいけないとなると、話は違ってきます。

最も重要なのは、アイデアを永久に保存するための貯蔵庫がなければ、大きなアイデアを長い時間をかけて発展させることができなくなることです。卓越したアイデアには、フォルダーごとにしまうという方法は小さすぎるのです。

■メモは整理しないと混乱するだけ

3番目のありがちな失敗は、すべてのメモを走り書きの臨時メモとして扱ってしまうことです。

これをしているかどうかはすぐにわかります。

乱雑な机
写真=iStock.com/SilviaJansen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SilviaJansen

常に机のまわりが散らかりますし、資料がゆっくりと積もっていき、本格的に整理整頓しなければいけないという思いばかりになります。

走り書きのメモを処理しないで収集すると、必ず大混乱に至ります。不明瞭で互いに無関係なメモが机の前に少々散らばっているだけで、最初からやり直したい気持ちになるでしょう。

■「走り書きのメモ」は1日以内に書き直す

これら3つに共通するのは、ツェッテルカステンの「走り書き」「文献メモ」「永久保存版のメモ」の3つのメモのカテゴリーを混同すること。メモの数が増えるに従ってメリットが減少してしまいます。

学習を深め、知識を収集すればするほど、メモはもっと有用になり、より多くのアイデアが組み合わさって新しいアイデアが生まれるはずです。そして、知的な文章を少ない労力で生産するのも簡単になります。

各種のメモの目的をじっくり考えてみましょう。

走り書きのメモは、他のことで忙しいときにアイデアをすばやくとらえるためのものです。会話をしているとき、講義を聴いているとき、実験の結果が出たとき、取材をしたとき、注目すべきことを小耳に挟んだとき、用事の消化中にアイデアが浮かんできたときなどは、作業を中断しないでできるのは走り書きのメモをとることぐらいです。

読書中でさえ、読む流れを遮らずに文に集中したいときにはこれが当てはまります。それなら、文に下線を引いたり、余白に短いコメントを書き込んだりするぐらいで済ませたいと思うかもしれません。

しかしここで重要なのは、下線を引いたり、余白にコメントを書き込んだりする行為も、一種の走り書きのメモであり、テキストを自分の言葉で説明するには一切役に立っていないことです。

辞書に書き込む人
写真=iStock.com/valiantsin suprunovich
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/valiantsin suprunovich

処理しないかぎり、すぐに無用の長物になります。

あとで見直さないことがわかっているなら、そのようなメモをとるのは最初からやめましょう。代わりに、適切なメモをとりましょう。走り書きのメモは、およそ1日以内に見直して、あとで使える適切なメモに書き直す場合に限って有用なのです。

■走り書きは時間が経つと内容を忘れてしまう

走り書きのメモは、アイデアの理解や把握には使えますが、文章を書くプロセスの後半では役に立ちません。本に書き込んだ下線が、主張を発展させるために必要なときに出てくることがないのと一緒です。

こうしたメモは、まだ自分の言葉で説明する時間がとれていない思考を思い出すためのものにすぎません。いっぽう、永久保存版のメモは、メモをとった文脈をすっかり忘れてしまっても理解できるように書かれています。

ほとんどのアイデアは時間の試練に勝てませんが、一部は大きなプロジェクトの種になることがあります。

残念ながら、プロジェクトが化けるかどうかをすぐに見分けるのは困難です。だからこそ、アイデアを書き留めるかどうかのしきい値はできるだけ低くする必要がありますが、それを1日か2日のうちに自分の言葉で説明するのも同じぐらい重要です。

メモの内容が理解できなくなっていたり、やけに平凡に思えたりしたら、メモを長く放置しすぎたサインです。前者は、メモが思い出させてくれるはずの中身を忘れてしまった状態です。後者は、メモに意味を与えていた文脈を忘れてしまった状態です。

■書き直したメモと文献管理のメモを残す

永久に保存するメモは2種類だけ。

文献管理システムに格納する文献メモと、ツェッテルカステンに格納するメインのメモです。前者はごく簡単で構いません。メモが指し示している文献の本文こそが重要なのが明らかだからです。

後者はもっと注意深く、詳しく書く必要があります。単独で読んでもわかるようになっていなければならないからです。

ルーマンは、本で読んだ文章に下線を引いたり、余白にコメントを書き込んだりすることはありませんでした。ただ、注意を引いたアイデアについて、別の紙に短いメモをとっただけです。「文献の内容を詳しく書いたメモをとる。その裏面に、この内容はこの本の○ページ、これはこの本の△ページ、と書いて、読んだ内容を集める文献管理用のツェッテルカステンに入れるんだ」(Hagen,1997)

そして、文献管理用のメモをしまう前に、ルーマンはメモした内容を読み返し、自分の思考の流れとの関連性について検討し、それを元にメインのメモを執筆しました。それを永久保存版のメモとして、メインのツェッテルカステンに格納しました。

この箱に入ったものは、捨てられることはありませんでした。目立たないところに落ち着き、二度と注目されないメモもありましたが、さまざまな推論の結節点となり、あちこちの文脈で何度も登場するメモもありました。

■メモは「自分の言葉で書く」からこそ価値が出る

ツェッテルカステンがどのように発展するかを予知するのは不可能です。だから、メモの運命については心配する必要はありません。

走り書きのメモとは対照的に、ツェッテルカステン用の永久保存版のメモではすべて、最終的な論文や著書の一部になるか、そのヒントになるぐらい、自分の言葉で説明する必要があります。

ズンク・アーレンス著、二木夢子訳『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(日経BP)
ズンク・アーレンス著、二木夢子訳『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』(日経BP)

ただし、後々役に立つかどうかは、その場では判断できません。

メモが関連性を帯びるかどうかは、今後の思考とアイデアの展開によるからです。メモはもはや思考やアイデアを思い出すきっかけではありません。文章のかたちで表された、思考やアイデアそのものです。これは、他の方法との決定的な違いです。

さまざまな形式でメモをとり、あちこちに保存することで、不必要に使い方がわかりにくくなったり、余計な判断を伴ったりすることがなくなるので、思考や著述のプロセスを促進する鍵にもなります。

すべてのメモを同じ形式で同じ場所に保存してこそ、あとで組み合わせて並べ替え、新しいものをつくりだせるようになり、また、どこにしまう、どんなラベルを付けるといった問いに思考をむだづかいしなくなります。

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ズンク・アーレンス(ずんく・あーれんす)
作家、研究者
教育・社会科学分野の作家・研究者であり、現在はドイツのデュースブルク・エッセン大学暫定教授。また、執筆やコーチング、講演も行う。バンコクに住み、2年ほどアジアを旅する。メモをとることで、読書や思考をより楽しんでおり、その結果をさまざまな出版物にしている。著作に『Experiment and Exploration:Forms of World-Disclosure』(Springer)がある。

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(作家、研究者 ズンク・アーレンス)

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