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「最近どう?」この問いにどう返すか…頭の悪い人がやりがちな雑談トークの失敗例

プレジデントオンライン / 2021年12月24日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockstudioX

職場で「最近どう?」と聞かれたとき、どう返せばいいのか。多摩大学名誉教授の樋口裕一さんは「雑談にリアルは必要ない。事実をすこしデフォルメし、4コマ漫画のように最後にちょっとしたオチがつくようにできごとを伝える。そういう人は『頭のいい人だな』と思われやすい」という――。

※本稿は、樋口裕一『頭のいい人は「答え方」で得をする』(だいわ文庫)の一部を再編集したものです。

■「最近どう?」にモゴモゴしてしまう人の共通点

「口下手だから雑談が苦手」と思い込んでいる人がいる。そのため、なんとか克服しようとして雑談のテクニック本を読んだり、スマホの雑談ネタアプリでせっせと話題を仕込んだりしている。

しかし、雑談というものは、こちらの意思とは別に向こうからやってくることがある。そのため、真面目な人ほどいちいちきちんと対応しようとして右往左往するのだろう。

確かに、知人から「最近どう?」などといきなり声を掛けられ、モゴモゴしてしまうことは誰にもある。

「週末はどこか出掛けるの?」「連休は何してた?」などと挨拶代わりに聞かれて、ちょっと面倒に感じたりもする。だが、それほど真剣に悩まなくても、軽やかに対応することはできる。

私の場合、「あいつはクラシック音楽好きなちょっと変なヤツ」だと周囲に思われているので、相手もその手の話を振ってくることが多い。

仮に音楽に関係ない話を振られても、こちらは自分が好きな音楽の分野から発想して答えることを続けていると、周囲は「あいつに聞けばそういう答えが返ってくるだろう」と予想して話し掛けてくれるようになる。

■ネタの仕込みよりもキャラ作り

私自身は、雑談したくなければしなくてもよかろう、無理して会話で場の空気を生み出そうとしなくてもよかろうと考えているタイプの人間だが、実はそれほど雑談が苦ではない。むしろ、気楽に構えていられる。

要するに、「私はこういう人」と自分のキャラを決めておくと、雑談の返しが非常にラクになるのだ。とくにそのキャラが際立ったものであれば、何を言っても大丈夫ということになる。

その好例がマツコ・デラックスだろう。

たとえば、「笑いの絶えない家庭を作りたい」というありがちな決まり文句に対し、「毎日笑いが起きてる家庭なんて、この世に一軒もないよ!」などと毒づく。しかし、それは現実に対する鋭い指摘だ。

マツコさんはただ毒舌キャラというだけではなくて、誰もが言いたくても言えなかったことを言える代弁者キャラでもある。

あのキャラだからこそ「あの人が言うからおもしろい」「納得できる」というふうに支持を得るのだろう。

つまり、雑談で気まずくならない答え方の基本は、ネタの仕込みよりもキャラ作り。得なキャラを見つけてそれを演じることがコミュニケーションには大切で、その準備があれば、雑談で悩むこともなくなる。

インスタグラムやフェイスブックにアップする情報も、こういう自分を演じたいと思ってやっているわけで、いってみればキャラだ。

雑談もまさにそういうものであって、自分でこうありたいというキャラを作って演じればいい。いちいち真剣勝負のように真面目に対応したり、本当の自分をさらけ出す必要はないのだ。

オフィスで談笑しているビジネスマン
写真=iStock.com/imtmphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imtmphoto

■声を掛けたほうも受け入れやすい

「最近どう?」と聞かれて、「離婚協議中なんだよ」「子どもが引きこもりでね」などと答えたら、気楽に声を掛けたつもりの相手はびっくりしてしまうに違いない。

それよりも、「いやあ、今朝もゴミ出し係ですよ」と恐妻家を演じたり、「今日は最高傑作のキャラ弁ができました」とイクメンぶりを披露するなど、キャラとして返されたほうが、声を掛けたほうも受け入れやすいうえに話にも乗っかりやすくなる。ひいては、互いにちょっとした雑談の時間を楽しむことができる。

最初はこうした一般受けしやすいキャラから入るのがベストだろう。食いしん坊キャラ、運動大好きキャラなどいろいろある。

そこから徐々にオリジナル感を極めていく。趣味の分野を前面に押し出してもいいし、○○王子、○○女王など得意なことを強調してもいい。「あの人は○○な人」という印象を浸透させていけば、やがて「得する自分のキャラ」を築いていけるだろう。

何者でもない自分として会話に参加していると、ぼやっとしているうちに何を答えたらいいかわからず沈黙してしまったり、聞かれてもいない個人的なことばかり話し続けることになる。その場にふさわしくない本音をもらしてしまうことにもなる。そうなると、雑談に水を差すことにもなりかねない。

だから、自分自身に色をつける。自分はこの色と決めて通してもいいし、この集団では青、こちらでは白というふうに、その場に応じて変えるのもよい。

その色がすぐに定着するわけではないので、雑談のなかで楽しみながら実践を重ねていくのだ。

▼自分が設定したキャラから返答し続ける。
▼最初は一般受けしやすいキャラ→オリジナリティあふれるキャラへ。

■重い話を重いまま話す人は損をする……

私くらいの年齢になると、友人との話題のほとんどが健康と年金と親の介護だ。健康診断や人間ドックの結果がどうした、年金だけで将来暮らせるのか、親がボケはじめた、介護施設が見つからないなど、どうしてもその手の話になる。

実際にはどれもシビアなテーマだが、たいていおもしろおかしくエピソードを披露し合い、笑い合っている。それなのに、ときどきそこがどんな場面かをあまり考えず、話を振られたとたんに重いテーマを重いままにぶちまける人がいる。

何か聞かれると暗い表情を浮かべ、しかしながら待ってましたとばかりに深刻な話を深刻なトーンで語りはじめる。境遇をぼやいたかと思えば、日本の社会保障制度はおかしいなどと社会への不満をぶちまけたりもする。皆で楽しむべき雑談を一気に自分ワールドに持っていってしまうのだ。

さらに、この種の人は周囲にあれこれ質問してくる。いい情報を持ってないかと探ったり、「こういう場合、君ならどうする?」などと聞いてくる。

これでは雑談ではなく相談だ。会話はどんどん重苦しいものになってしまうわけだが、このように話の展開や誰かのひと言がきっかけになって、他愛ない話が急に現実的な話にすり替わるということは雑談につきものだろう。

もちろん、真剣な相談ごとには真剣に答えたほうがよい。人としてそれは当然の行為だ。とはいえ、誰かが周囲にはどうにもできないような重い話をはじめてしまい、止められなくなっているようなら、その深刻なトーンを軽減させてあげるといい。そこでポイントになるのが戯画化だ。

女性の話を聞いているビジネスマン
写真=iStock.com/Kavuto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kavuto

■4コマ漫画のようなちょっとしたオチ

私の友人たちも、話を振られて自分の番になったら、今までで最もひどいできごとやちょっとした事件を、ささやかな笑える話に脚色して披露している。

「最近どう?」と聞かれたある友人は、たとえば、ボケはじめた母親がちょっとした騒動を起こしたことをこんなふうに話してくれた。

「まだらボケのおふくろが散歩するのを探偵気分でこっそりつけてみたんだよ。そうしたら、知らない家の庭に干してある洗濯物を取り込んでたたみはじめちゃった。働き者だからね? うちのおふくろ! その家の人もいい人でさ、おばあちゃんまた来てねなんて言ってんの」

介護をはじめたばかりだと、身内は親の言動の変化にショックを受けるものだ。問われるままに深刻に返してしまえば、周囲は心配し、同情しつつも何と言葉を掛けたらよいかわからなくなってしまうだろう。

だからこそ彼は、深刻に話そうと思えばいくらでも深刻になるところを、軽い笑い話とさえ思えるトーンにして語ったのであろう。その場がふっとなごんだのは言うまでもない。

このように、事実をすこしデフォルメし、4コマ漫画のように最後にちょっとしたオチがつくようにできごとを伝える。雑談をしていてありがたいと感謝されるのは、こういう返しができる人ではないだろうか。

漫画を描いている風景
写真=iStock.com/mediaphotos
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mediaphotos

■雑談にリアルはいらない

つまり、雑談にリアルは必要ない。できるだけリアルから距離を置くことで、自分のキャラを作れるし、その場で軽やかに演じることができる。そうすれば事実を事実として伝える答え方だけでなく、深刻な話を軽くおもしろくまとめて返せるようになる。

話している相手がどんどん深刻になってしまうときは、「史上最悪ナンバーワンだね、一杯おごるよ」「それだけ悪運が続いたら、もう幸運しか残ってないんじゃない?」などと、あえてユーモアを交えて返してあげるのもいいだろう。

もしも自分自身が深刻ぶってしまうタイプだと気づいたら、ものごとのおもしろい面を捉えるクセをつけるとよい。自分の失敗や失態を軽い笑い話にまとめてみる、自分が思わず笑ってしまった話に似たことを自分の体験から探してみる、またそういう話がうまい人を真似てみるのもいいだろう。

▼事実をデフォルメし、4コマ漫画のようにできごとを語る。
▼リアルから距離を置いて、その場を演じるつもりで会話に参加する。

■会話を続かせたいのに途切らせてしまう人の共通点

雑談を続けるのがうまい人と、そうでない人がいる。続かせたい、もしくは間を持たせなければならないのにそれができず気まずい空気が流れてしまうとき、どんなことに注意して答えればいいのか。

「元気?」「お久しぶり!」などと、誰かが声を掛けてきたとする。その相手が同僚や友人などとくに気を遣わない間柄で、気楽に流しても大丈夫なときは「まずまずだね」「ぼちぼちだね」と返せばいい。

気の利いたことを言おうなどと構えることはない。これは何も改めて言うまでもない、コミュニケーションの基本であろう。

ただ、このようなごくありふれた返事にもちょっとしたコツがある。ビジネスの場面であれば、どんなことにも早めに返すほうがよい。その間があまりにもあると、仕事のスイッチが入っていないと思われるからだ。

だが、仕事から離れたシチュエーションでの雑談の場合、即座に答えることだけが大切とは限らない。無理やりオンの状態にしなくても、むしろ間を持たせたほうが相手とじっくり対応できる。

たとえば、「最近どう?」と声を掛けられたら、「うーん」といったん考えるような態度で受けてみる。「そうだなぁ……」「えーっと」でもよい。そういう姿勢を見せることで、その間を共有できる。間が空いて、「愚鈍だな」などと思う人はいないだろう。雑談において間は、場を作る効果があるのだ。

そして、そんなふうに間を取っているうちに、「そういえば……」と何かいい話題を思い出すこともある。なければ「そういえば……とくに何もなかったな~」と笑いを取れる。

このように、一度会話を受けた後で「で、そっちはどう?」と質問で返せば、雑談がスムーズに進む。途切らせてはダメだと慌てて返事をするよりも、よほどいい時間を生み出すことができる。

立ちながら会話をしているビジネスマン
写真=iStock.com/franckreporter
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/franckreporter

■相手をハッとさせるのがコツ

では、声を掛けてきた相手が、気楽に流すのは気が引ける人だったらどうか。

相手が「仕事どう?」「がんばってる?」といった仕事モードで問いかけてきた場合、うまく行っているときこそ、最初のひと言で「最悪です! 今朝犬の糞を踏みました」などと返す。

そして、その後に「昨日の○○社の交渉、一発オッケーいただけたのでひと安心です」と、うまく行っている具体的なことがらをコンパクトに伝える。

反対に、うまくいっていないときは「絶好調です! 朝から肉食いました!」などとまず答えて、「例のトラブル、まだ収束してないんで、今夜も徹夜の可能性大なんですよ?」という具合に続ける。

つまり、答えの最初のひと言で相手をハッとさせておいて、その内容とは反対のことがらを続ける。このような答え方をすると、相手が雑談に乗ってきやすくなるだけでなく、「仕事どう?」「がんばってる?」という問いかけにもスマートに対応できるのだ。

また、「○○さんのせいでこっちは朝から大変ですよ~、今度おごってくださいね」「もう本当に生きていてよかったです、これも○○さんのおかげです」などと、相手にからめた大げさなひと言で気を引いて、相手が「何があった⁉」となったところで、ネタばらしをしたり、他愛ない話題を続けたりしてもいい。

このようなちょっとした答え方の工夫で、何気ない雑談を途切れることなく続けさせることができる。

■「落として上げる」作戦も◎

さらに、高等技術も紹介しておこう。たとえば、「見てましたよ~」などと、相手の興味を引くようなひと言で返す。いきなりこう言われると、相手はギクッとするだろう。何かやましいことを隠しているような人は焦りまくるはずだ。

樋口裕一『頭のいい人は「答え方」で得をする』(だいわ文庫)
樋口裕一『頭のいい人は「答え方」で得をする』(だいわ文庫)

そう言って関心を引きつけたうえで、「昨日、○○さんとランチしてたでしょう」と相手が「なんだそんなことか」と笑い出すようなことを言ったり、「非常階段でタバコ吸ってたでしょう」と、本当は見ていないウソ話をするのもいい。

実はそうかもしれないし、違えば違ったで「じゃあ、あれはきっと□□さんだったんだ」「多分そう。僕はもう加熱式タバコに変えましたから」と、他愛ない会話を気楽に続けることができる。

要は、相手を落として上げるようなフレーズで意表を突く。「ひどいですね?」「向いてませんね?」なども使える。

▼流してもいい気楽な相手の場合は、「うーん」と間を持たせてゆったり答える。
▼ぜひとも会話を続けたい相手の場合は、「答えの最初のひと言」で意表を突く。
▼さらに高等技術として、相手がギクッとするようなひと言で気を引いて「落として上げる」作戦もアリ。

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樋口 裕一(ひぐち・ゆういち)
多摩大学 名誉教授
1951年、大分県に生まれる。早稲田大学第一文学部卒業後、立教大学大学院博士課程満期退学。仏文学、アフリカ文学の翻訳家として活動するかたわら、小学生から社会人までを対象にした小論文指導に従事。通信添削による作文、小論文専門塾「白藍塾」塾長。著書は『頭のいい人は「短く」伝える』(だいわ文庫)、『頭がいい人、悪い人の話し方』(PHP新書)など多数。

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(多摩大学 名誉教授 樋口 裕一)

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