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「オミクロン株にはどう対応すべきか」忽那賢志教授が考える"変異株対策"の重要ポイント

プレジデントオンライン / 2021年12月22日 11時15分

新型コロナウイルスの変異株オミクロン - 写真=AFP/時事通信フォト

新型コロナの新たな変異ウイルス「オミクロン株」に、私たちはどう対応すべきなのか。大阪大学大学院医学系研究科(前・国立国際医療研究センター)の忽那賢志教授は「私たち一人ひとりがやるべきことは、どのような変異株に対しても同じ。外出を控え、外出先の屋内ではマスクを着用する。三密を避け、こまめに手洗いをする。こうした対策が『変異株対策』にもなる」という――。(第1回)

※本稿は、国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

■後遺症が完治するのかもまだ分かっていない

新型コロナの流行が始まってから一年半が過ぎた今、標準的な治療によって一定の成果が出ています。新たな治療法・治療薬の開発は世界中で進められていて、さらにワクチンもどんどん普及しています。しかし、収束の目途はまだ立っていません。

日本では現在も、80代・90代の感染者の約10%が亡くなっています。世界全体の致死率は約1~2%で、この数字だけを見ても、感染症の死亡率としてはかなりの高さです。それだけ病原性の強い感染症が世界中に広がっているわけですから、今回の感染拡大はスペイン風邪以来の100年に一度の危機です。そして、その危機はまだ去っていません。

もう一つ、後遺症の問題もあります。「体がだるい」「息苦しい」「胸が痛い」といった症状の他、脱毛、嗅覚や味覚の障害、咳、頭痛などの症状が回復後に出た人は、感染者全体の約20%もいます。これまでの報告から、後遺症は時間の経過とともに消えていく傾向が示されています。

感染から2カ月の時点で症状が残っている人、4カ月の時点で症状が残っている人、という形で見ていくと、後遺症がある人は減っていくのです。しかし、全員が完全によくなるかというと、それはまだわかりません。

■「若者にとってコロナはただの風邪」は本当か

たとえば、嗅覚障害がずっと続いている人も中にはいます。後遺症についてはもう少し長期的に見ていかないと実態を掴(つか)めませんが、確かなのは、若い人たちにも後遺症のリスクがあるということです。

「若者にとってはコロナはただの風邪だ」などと言う人もいますが、新型コロナは誰にとっても「かかってはいけない病気」です。その意味でも、やはり従来どおりの感染対策をおろそかにできません。

外出をなるべく控える。外出先の屋内ではマスクをつける。三密(密閉空間・密接・密着)を避ける。人との距離をとる。こまめに手洗いや手指消毒をする。こうした話にはもうウンザリしている人も多いでしょうが、日々油断せずに対策を続けていけば、確実にリスクを減らせます。

■感染比率は飛沫感染が9割で接触感染が1割

私たち医療従事者の感染対策も、実は流行初期から大きく変わっていません。当初、新型コロナウイルスはまったく未知の存在でした。しかし、それが呼吸器感染症を起こす病原体であることは間違いないわけで、そうである以上、やるべき対策はおのずと決まってきます。

2020年1月、NCGMと国立感染症研究所は共同で感染対策の指針を出していますが、この指針は今もほとんど変わっていません。新型コロナの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。比率で見ると飛沫感染が全体の約90%。接触感染が約10%です。いわゆる狭義の空気感染は起こりません。

ただし、換気の悪い密閉された空間では、飛沫が本来飛ぶ距離(最大2メートル程度)を超えて「空気感染のように広がる」ケースがあります。これは日本では「マイクロ飛沫」と呼ばれていて、マイクロ飛沫による感染も起こり得ると考えられていますが、それも含めて飛沫感染は全体の約90%です。

接触感染が全体の10%というのは、あくまでも頻度の問題です。リスクが低いわけではないし、「飛沫だけ気をつければいい」とか「手洗いはあまり気にしなくていい」ということではありません。接触感染は今も起きていますから、今後も引き続きこまめな手洗いや手指消毒を心がけることが必要です。

エアロゾルにおける空中ウイルス感染
写真=iStock.com/fpm
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fpm

■「うつす人」と「うつさない人」はなにが違うのか

感染症には「20/80ルール」というものがあります。

感染者全体を調べると、人にうつしているのは約2割で、残りの約8割は誰にもうつしていないケースが多く、この現象が「20/80ルール」と呼ばれているのです。新型コロナにもこのルールはあてはまります。

これについてはいくつか報告があって、たとえば2020年3月に発表された厚生労働省対策本部クラスター対策班の調査報告も、「20/80ルール」を裏づけるものでした。全体の2割しか人にうつしていないのに感染が世界中に広がったのは、一人でたくさんの人にうつす人がいるからです。

厚労省クラスター対策班の調査報告では、最大で1人が12人にうつしていた事例がありました。1人でたくさんの人に感染を広げる人を「スーパー・スプレッダー」と言います。ASESやMERSでもスーパー・スプレッダーによる感染拡大は起きていて、韓国でMERSが流行したときは1人で86人に感染を広げた事例があります。

まわりにうつす人、うつさない人がいるのはなぜなのか。これはおそらく、個人の特性ではなく、環境に左右される問題だと思います。「たくさんうつす」という個人的特性を持っている人がいるわけではなく、換気の悪い三密の環境にいた人が多くの人たちに感染を広げた、ということだと私は考えています。

人にうつす人、うつさない人がいる理由はまだ完全には解明されていません。たとえば「女性と男性と比べると、女性のほうが人にうつしやすいのではないか」という報告もあるのですが、私は環境要因のほうが大きいと考えます。

■感染した子どもの75%が親からうつされている

いずれにしても、自分が「うつさない8割」なのか「うつす2割」なのかということは、感染前にはまったくわかりません。自分自身がスーパー・スプレッダーにならないためにも、やはり従来どおりの感染対策は大切です。

ちなみに、新型コロナに感染した子どもの約75%は、親からうつされています(日本小児科学会の小児レジストリ)。この逆に、子どもが親にうつすケースはあまりありません。家庭内感染を防ぐためには「大人が感染しないこと」が肝要であるわけで、その意味からも感染対策には十分に気を配っていただきたいと思います。

■変異株とはなにか

2021年1月頃から、日本でも変異株という新たな問題が表面化しました。あらゆるウイルスは、環境に適応して生き残っていくために、増殖を続けながら遺伝子情報を変化させていきます。これが変異です。

COVID-19新しいラムダバリアント
写真=iStock.com/koto_feja
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koto_feja

新型コロナウイルスもまた常に変異を起こしていて、だいたい1カ月に2回のペースで大きな変異が起こると考えられています。ですから、流行初期の新型コロナウイルス(いわゆる武漢株)は、もう世界中のどこにもいないと思われます。

今いるウイルスはすべて変異株であるわけですが、その中で特に懸念すべき特徴を持っているものを、私たち専門家は「VOC(Variant of Concern)=懸念すべき変異株」と呼んでいます。メディアでよく言われる「変異ウイルス」はこのVOCを指すことが多いです。

2021年6月現在、日本でVOCに指定されているのはイギリス由来、インド由来、ブラジル由来、南アフリカ由来の変異株です。いずれもすでに日本に上陸していて、「従来株よりも感染性が高いのではないか」とか「ワクチンの有効性が低下するのではないか」といったことが懸念されています。

これら4つの変異株は、まったく突然日本に現われたわけではなく、どれも海外から入ってきたものです。たとえばインドとまったく接点のない人がインド株(デルタ株)に感染したケースがありましたが、これは「誰かが日本に持ち込んだインド株が市中に広がっている」ということです。

もちろん検疫所ではPCR検査をしています。しかし、100%正確な検査方法というのは、実はこの世に存在しません。

■変異株の感染力が増すのは「スパイク蛋白」の変容が原因

新型コロナのPCR検査の場合、感染者が陽性と判定される確率はおおむね70%とされています。つまり、100人の感染者がいたときは30人が陰性と判定されてしまうのです。

国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)
国立国際医療研究センター『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』(集英社インターナショナル)

こうした見逃しの他に、入国したときにはまだ発症していない人がPCR検査を受けたケースで、ウイルスが検出されないことがあります。結果として海外から変異株が持ち込まれてしまい、さらに市中感染が広がっているわけです。

変異株の感染力が増すのは、ウイルスの「スパイク蛋白」が変容するためです。スパイク蛋白というのはウイルスの周囲にある突起のことで、この突起がヒトの細胞とくっつくと、ウイルスは細胞内に侵入します。問題となっている4種の変異株は、その「くっつきやすさ」が強化されているため、感染力が増していると考えられているのです。

■いままで通りの感染症予防が変異株対策にもなる

もう一つ懸念されているのは、「ワクチンの効果が低下するのではないか」ということです。ワクチンを接種すると、体内に抗体が作られます。抗体は新型コロナウイルスを攻撃し、無力化します。その具体的なプロセスはミクロの世界の出来事なので、説明がいささか難しいのですが、ざっくり言うとこういうことです。

ウイルスの表面にあるスパイク蛋白と抗体が結合すると、ウイルスは細胞内に侵入できず、感染は起こりません。しかし、変異によってスパイク蛋白の形が変わると、抗体と結合しにくくなります(図表1)。

新型コロナウイルス SARS-CoV-2
出所=『それでも闘いは続く コロナ医療最前線の700日』

つまり、感染のリスクが高くなります。すでにワクチンを打った人、あるいはすでに新型コロナに感染した人は、体内に抗体を持っていますが、その抗体が変異株を抑えてくれるかどうか、今はまだ十分なデータがありません。そのためにワクチンの有効性の低下、再感染のリスクが懸念されているわけです。

とはいえ、私たち一人ひとりがやるべきことは、どのような変異株に対しても同じです。外出を控え、外出先の屋内ではマスクを着用する。三密を避け、こまめに手洗いをする。こうした対策を続けていくことは「変異株対策」でもあるのです。

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忽那 賢志(くつな・さとし)
大阪大学大学院 医学系研究科 教授
感染症専門医。2004年、山口大学医学部卒業。同大学医学部附属病院、市立奈良病院等を経て、12年より国立国際医療研究センター国際感染症センターに勤務。18年より同センター国際感染症対策室医長。2021年より現職。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている。著書に『症例から学ぶ輸入感染症AtoZ』(中外医学社)、『みるトレ感染症』(共著、医学書院)などがある。「Yahoo! ニュース 個人」のオーサーとして、新型コロナウイルス感染症ほか感染症についての記事を多数執筆し、「オーサーアワード2020」を受賞。

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(大阪大学大学院 医学系研究科 教授 忽那 賢志)

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