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もし強毒の変異体が出てきたら…みんなが同じワクチンを打つことの「巨大リスク」

プレジデントオンライン / 2021年12月23日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

海外では新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、日本でも3回目のブースター接種が計画されている。この動きを専門家はどのようにとらえているのか。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授に、ジャーナリストの鳥集徹さんが聞いた――。

※本稿は、鳥集徹『新型コロナワクチン 誰も言えなかった「真実」』(宝島新書)の一部を再編集したものです。

■接種した人が感染を広げてしまう可能性がある

【鳥集】イスラエルやシンガポール、日本もそうかもしれませんが、ワクチンの接種率が高いのに、感染が拡大する現象が起きました。もっと言えば、ワクチン接種とともに陽性者数が増えていった、つまりワクチンが逆に感染拡大をブーストしているのではないかとさえ見える現象がありました。これについては、どのように思われますか。

【宮沢】最初はADE(抗体依存性感染増強)も疑いましたが、CDC(米国疾病予防管理センター)がワクチンを接種しても感染するし、同じ量のウイルスが出ると公表しました。このことから、スプレッダー(ウイルスを感染させる人)が増えてしまった可能性がないとは言えないと思います。接種した人が安心して飲み会に行って感染し、自分は発症しないから気付きにくく、感染を広げてしまうこともあるのではないでしょうか。

※ADE:抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement)の略。ウイルス感染やワクチン接種によってつくられた抗体によって、かえって感染しやすくなったり重症化しやすくなったりする現象。デング熱(熱帯・亜熱帯地域で発生する、蚊が媒介する感染症)のワクチンでは、重症化する子どもが相次ぎ、2017年にフィリピン政府は接種プログラムを中止した。同じコロナウイルスに属するSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)のワクチンも動物実験でADEの発生がネックとなり、実用化に至らなかった。

【鳥集】メディアでは非接種者が感染を広げていると、逆のことが言われてきましたが、それならば接種証明に意味があるのかわからなくなってしまいます。

■「日本での最も危機的な時期はすでに過ぎた」

【宮沢】米国のハワイでレストランやジムへの入店時に接種証明の提示を義務づけたにもかかわらず、7月、8月と感染の拡大が起こりました。この事例からは接種証明も逆効果になり得ることがわかると思います。

【鳥集】接種証明の導入に私は反対です。先生は、日本は今後どのようにすべきとお考えですか。

【宮沢】私は、日本での最も危機的な時期はすでに過ぎたと思っています。もともと英国と比べたら、日本は陽性者数も死者数も約20分の1でした。その状況下においてワクチンの感染予防効果がファイザー社の治験結果で当初示された95%だったとしても、英国人の接種率が100%になったところで、日本に追いつくか追いつかないかくらいの話になります。多くの諸外国と日本は初めから状況が大きく異なるのです。

■ブースター接種は「個人個人が判断すべき」

【鳥集】これから日本でも3回目のブースター接種が進められると思いますが、そもそも要らないということはないでしょうか。

ワクチン
写真=iStock.com/peterschreiber.media
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peterschreiber.media

【宮沢】私はワクチンを打ちたい人は、打ってもいいと思います。リスクとベネフィットをきちんと比較したうえで、個人個人がその判断をすべきだと思います。高齢者や肥満、糖尿病などの基礎疾患のある人ですね。それから病院関係者は、いろんな人に対応しなくてはいけないから、仕方がないのかもしれない。でも、それとても逆のリスクも考えられてしまう。

【鳥集】医学生や看護学生は、打たないと実習させてくれないと聞きます。

【宮沢】新型コロナウイルスのワクチンに関しては、職域接種についても強制されるものではありません。最初はいいかもしれないけれど、その効果や副反応についてわかっているのは現時点でのことだけであり、今後どうなるかは誰にもわかりませんから、そのことも考えて、自らの判断が尊重されるべきです。

とにかく、ウイルスと宿主の関係はとても複雑です。コロナウイルスといっても、ヒト(人間)に流行っているのは1種類だけではありません。風邪症候群を引き起こすコロナウイルスが4種類、他に中国では「腸コロナ」も見つかっていて、腸炎(下痢)を起こしています。

■研究対象にはならないウイルスの存在

【鳥集】おなかの「腸」ですか?

【宮沢】そうです。日本でも、コロナウイルスによる腸炎(下痢)は発生していると思いますよ。コロナは主に肺か腸が増殖部位になりますが、腸でコロナウイルスが増殖して病気を起こしたとしても、軽い下痢程度なら誰も研究しない。下痢便を電子顕微鏡で観察すると、コロナウイルスが見えることがあります。コロナウイルスは特徴的な形をしているのでわかるのです。それでも軽い下痢なんてほとんど研究の対象にはならないでしょう。

【鳥集】研究対象にならないのは、ヒト(人間)が死なないからですか?

【宮沢】ええ、よほどの下痢でない限り死ぬことはありません。しかし、交差免疫のことを考えると重要かもしれない。感染すれば免疫はつくわけですから。それで新型コロナウイルスに対して交差反応性があるCTLが誘導される可能性はあります。私は人に感染するコロナウイルスが複数あるなかで、今回、新型コロナだけの単一の免疫をワクチンで国民全員につけてしまうのはどうなのかと、疑問に思っています。

【鳥集】免疫に1対1で対応させるより、幅広く対応させたほうが、生体にとって有利ということでしょうか。

■国民全員に新型コロナだけの免疫をつけるリスク

【宮沢】コロナウイルスに感染して免疫が誘導されるわけですが、さまざまなコロナウイルスが人に感染していること自体が、リスクヘッジになる可能性はあると思います。ちょっと意外に思われるかもしれません。

たとえば、Aというコロナウイルスに抗体をもっている人や、B、Cというコロナウイルスに抗体をもっている人が混在していると、たとえAがADEを起こすような強毒ウイルスに変異したとしても、集団全体が被害に遭うことはなく、カタストロフィ(破滅的な状況)を避けることができます。ところが、1種類のウイルスに対してのみ、みんなに同一の抗体をつくってしまうと、ADEを起こす強毒の変異体が出たときに、それに対応できなくなって、人為的な大災害になりかねません。

さまざまなコロナウイルスが人の世界で共存していることは、頭に入れて置いたほうがいいと思います。

■ウイルスに感染しても、発症しなければ病気ではない

【鳥集】その集団として、大きな損害が出てしまうリスクがあり得るわけですね。

【宮沢】それを回避するために、集団としてはいろいろな免疫をもっているほうが、このコロナウイルスに対しては得策ではないかと思うのです。一つのコロナウイルスに特化したワクチンでバランスを崩すようなことはしないほうがよいのではないかと。根拠が薄弱で申し訳ないのですが、私はそういうことも考えています。

【鳥集】なるほど。そもそも生物というのは、人智の及ばない複雑系であって、だからこそ、医薬品だって必ずしも理論的に考えたとおりにはならないものなのに、ワクチン推進派の話を聞いていると、1対1対応で、非常に単線的な思考に感じます。

【宮沢】私にはその対応がとても西洋的なものに見えていました。私は学生の頃から「病気とは?」と問われたときに、いつもまずネットワークみたいなものをイメージしていました。病気が何かって、明確に答えられない。ウイルスに感染しても、発症しなければ病気ではないのです。腫瘍が体にあっても、悪さをしないタイプであれば病気とは言わない。

【鳥集】そうですね。前立腺がん等で見られるものに、「潜在がん」といって、死ぬまで悪さをしないがんもあります。前立腺がん以外での要因で亡くなった男性を調べると、およそ3割に見つかるともいわれています。

■コロナ政策全体が「直線的思考」に基づいている

【宮沢】私は軟式テニスのボールみたいに、ラケットに打たれた部分がへこんで、元に戻らないのが病気だとイメージしているんです。へこんでたのがパッと戻るんだったら、健康ということでいいじゃないですか。それは日本人の感覚にも合うと思うんですよ。

鳥集徹『新型コロナワクチン 誰も言えなかった「真実」』(宝島新書)
鳥集徹『新型コロナワクチン 誰も言えなかった「真実」』(宝島新書)

【鳥集】東洋的な感じもしますね。

【宮沢】東洋的です。ところが欧米的思考って、ああなってこうなって、こうなってああなってみたいな、全部リニア(直線的)なんです。

【鳥集】ワクチンに限らず、今回のコロナ政策全体が直線的思考だと思います。人流を抑制して、遅くまで飲むのをやめさせれば感染拡大が抑えられるはずだというような。過剰な自粛で経済的に追い詰められる人が増え、自殺者を増やすかもしれないといった、他に与える影響をまるで考えないで、とにかく感染だけを抑え込もうとする。

【宮沢】私たち生物学者はもっと全体を考えます。そのイメージの違いなのかな。単純化して考えてはいけないのではないかと常々思っています。何かを一つ動かせば、他にも影響が及ぶように、コロナ対策においても同じことだと私は思うのです。

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鳥集 徹(とりだまり・とおる)
ジャーナリスト
1966年、兵庫県生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒。同大学院文学研究科修士課程修了。会社員・出版社勤務等を経て、2004年から医療問題を中心にジャーナリストとして活動。タミフル寄附金問題やインプラント使い回し疑惑等でスクープを発表してきた。『週刊文春』『文藝春秋』等に記事を寄稿している。15年に著書『新薬の罠 子宮頸がん、認知症…10兆円の闇』(文藝春秋)で、第4回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞。他の著書に『がん検診を信じるな~「早期発見・早期治療」のウソ』(宝島社新書)、『医学部』(文春新書)、『東大医学部』(和田秀樹氏と共著、ブックマン社)などがある。

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宮沢 孝幸(みやざわ・たかゆき)
京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授
1964年生まれ。東京大学農学部畜産獣医学科にて獣医師免許を取得後、同大学院で動物由来ウイルスを研究。東大初の飛び級で博士号を取得。大阪大学微生物病研究所エマージング感染症研究センター助手、帯広畜産大学畜産学部獣医学科助教授などを経て現職。

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(ジャーナリスト 鳥集 徹、京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授 宮沢 孝幸)

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