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「ひろゆきの質問に大物政治家がキレる」そんな激しい議論を制するシンプルな"あるフレーズ"

プレジデントオンライン / 2021年12月24日 17時15分

テレビ朝日の平石直之アナウンサー(右) - 写真=筆者提供

会議の場を乱す人をうまく鎮めるにはどうすればいいのか。テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「どんなに白熱しても、発言者のメンツを潰してはいけない。議論を収拾させるには、ある有効なフレーズがある」という——。

※本稿は、平石直之『超ファシリテーション力』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■会議の成否は進行役が握っている

みなさま、こんにちは。『ABEMA Prime』(通称アベプラ)の進行を担当している、テレビ朝日アナウンサー・平石直之です。「アベプラ」は午後9時から毎日2時間の生放送。番組を進行し、議論をファシリテートしていくのが私の役目です。

分厚い台本はありますが、そのとおりに番組が進んでいくことのほうがまれです。それもそのはずで、出演者のひろゆきさんをはじめとした、各界や各世代を代表する方たちが、テーマに則したゲストを交えて、喧々諤々の意見を繰り広げるからです。

これまで岸田総理や、分科会の尾身会長などにもご出演頂きましたが、議論が脱線したり、リモート出演のゲストが突然つながらなくなったり、出演者同士でケンカが始まったりと、予想外の展開が次々に巻き起こってきました。

いまでこそ、日々の番組での仕事ぶりを見ている方々から「猛獣使い」などと言っていただけるようになりましたが、もともと私は自分から場を仕切っていくタイプの人間ではありません。

平石直之アナウンサー
写真=筆者提供
平石直之アナウンサー - 写真=筆者提供

■仕切りが悪ければチームに悪影響を及ぼす

ですが、アナウンサーとしてテレビ朝日に入社してからは、会議に参加したり、記者会見を取材する機会も多く、司会者がダラダラと話すのを聞かされて退屈な思いをしたり、時間が大幅にオーバーしたり、結論が出ないどころか罵り合いになって、後味の悪い終わり方をする場面を何度も経験してきました。

仕切りの悪さが組織やチームにもたらす影響を、さまざまな場面で目の当たりにしてきたのです。

そうした経験から、「円滑なコミュニケーションを促す人=ファシリテーター」の存在がいかに重要であるかに気づきました。

私がたどり着いたファシリテーションのノウハウは、議論を有意義なものにするだけでなく、会議やミーティングでの困りごとの解決から、メンバー間のコミュニケーションを深めたり、やる気を引き出したり、チームの一体感を醸成することにも役に立つと考えています。

今回は拙著『超ファシリテーション力』の中から、「場を乱す困った人を気持ちよくフェードアウトさせる方法」をテーマに解説いたします。

■言葉遣いが荒い人、場を乱す人をどう収めるか

ハラスメントに敏感な昨今においても、誰かと意見を戦わせていてテンションが上がってくると、普段は使わない乱暴な言葉を発する人もいます。

番組でも、ひろゆきさんの鋭い意見がたびたび飛び出し、ゲストが答えに窮したり、暴言を吐いたり、怒ってしまいそうになることがあります。こういった場合、フェアな議論を維持するために、ファシリテーターは調整役を担わなければなりません。

テレビ朝日の平石直之アナウンサー
写真=筆者提供
テレビ朝日の平石直之アナウンサー - 写真=筆者提供

何より、つい熱くなって暴言を吐いてしまった本人にとっても、終わったあとに後味の悪いものになってしまいます。

みなさんも、たとえば部署の代表として会議に出席したとき、違う意見を持つ部署の代表と真っ向から対立して、ついつい熱くなったり、またはそのような場面に遭遇した経験をもつ方もいらっしゃるかと思います。

ファシリテーターとしては、意見やその思いは大切にしながら、できるだけ自然に言葉遣いを軌道修正していくのが理想的な振る舞いと言えます。

ポイントは、鉄は熱いうちに打て、です。言葉遣いが少しでも荒れてきたと感じたら、極力早めに、やんわりと引き戻していくことが重要です。

そのためには、当人同士のあいだで使われている乱暴な言葉を、優しい言葉に言い換えていく必要があります。

■「ささやかな言い換え」が摩擦を減らす

たとえば、ネガティブな言葉はその反対語を否定する形で和らげるのが、私の常套手段です。

「それは政策としては最悪だ!」と言う論客に対しては、「◯◯さんのご意見としては、その政策はあまりよろしくないということですが、それはどうしてでしょうか?」とカットインします。

「そんな卑怯なやり口はいつまでも通じないぞ!」と言う論客に対しては、「◯◯さん、その手法はあまりフェアではないということですが、ではどうすればいいのでしょうか?」と割って入ります。

あるいは、「いつまでも頭の悪いことをやってちゃダメだろ!」と言う論客に対しては、「◯◯さん、たしかにそれはあまり賢明なやり方ではないかもしれませんね」と言い換えをします。

このように、ささやかに言い換えることで摩擦を減らし、カットインを繰り返すことで、徐々にトーンダウンさせていくことが大切です。

鋭い表現はどうしても角が立ち、また正論はときに受け手に刺さり過ぎるので、それに対する聞き手の不快感をいかに和らげるかがファシリテーターの役割のひとつです。

そして、あくまで質問の形を取りながら、ヒートアップしている当人たちに言いたいことをしっかり言わせることも、議論を前に進めていくためには大切です。

■激しい議論を制するシンプルなフレーズ

会議やミーティングの場では、ときに参加者同士の主張が激しくぶつかり合うことがあります。

理想は、参加するすべての人が自分の意見を言うことができ、最終的に気づきと学びを得て円満に終わりを迎えること。そこでファシリテーターとしては、活発な議論を促しながらも、参加者のみなさんに、いかに嫌な思いをさせることなく進行できるかが大切です。

アベプラでも、ひろゆきさんVS.亀井静香さん、田原総一朗さんVS.宮台真司さんなど、出演者同士が激しく議論するシーンが頻繁にあります。こういった感情もあらわに激しく言い合う人々のあいだに割って入るのは、容易なことではありません。

中途半端に「まあまあ」とか、「そのあたりで……」などと口を挟むと、かえって火に油を注ぐことにもなりかねません。

そこで使えるのが、「わかりました○○さん。この話、いったんこちらで引き取らせていただきます」というフレーズ。

ここで大切なのは、意見を強制終了させるのではなく、あくまで「引き取る」スタンスを守ることです。

■ポイントは「メンツを潰さない」こと

たとえば、こんな言葉を続けてみましょう。

「◯◯さんが言いたいのは、つまりこういうことですよね、わかります。それに対して××さんはこう主張されている。たしかにどちらの立場もありそうですね」
「いずれの意見も大変参考になります。一方で、◯◯さん(第三者)は、この件についてはどうお考えでしょうか」
「どちらの意見もよく理解できますから、この点をテーマにして、またあらためて議論しましょう」

ポイントは、激しく主張をぶつけ合った人たちの顔をつぶさないこと。

会社や組織間の会議の場合、その会社や組織、部署、立場を背負っているため、引くに引けない事情をもって出席されていることが多々あります。

だからこそ、自分の意見を否定されたと思わせず、これが有意義な議論のきっかけであるというムードを作れれば、適度な熱量を保ったまま、スムーズに次の議論に移行することができるはずです。

■意図せぬ方向に議論が向かったときの対処法

その場にいる参加者たちが活発に意見を出し合う熱量の高い場では、議論の内容がファシリテーターのコントロールを離れ、意図せぬ方向に進んでしまうことがあります。

平石直之アナウンサー
写真=筆者提供
平石直之アナウンサー - 写真=筆者提供

余談から生まれるアイデアもありますから、脱線は必ずしも悪いことではありません。しかし、残り時間が迫っていたり、明らかに本題とはかけ離れた方向に話が進んでしまった場合には、やはり、軌道修正をするのもファシリテーターの大切な役割です。

そんなときは、別の機会を設けることを提案するのが、議論をスムーズに前へ進めるコツです。

たとえば以前、番組内で国のデジタル化をどう進めるかについて議論しているときに、ある出演者の「そもそもスマホを持っていない高齢者やWi-Fi環境のない家庭はどうすればいいのか」という発言をきっかけに議論が始まってしまったことがありました。

それはそれで有意義なテーマであることは間違いありませんから、むやみに話を止めるのも憚られます。きっと視聴者にとっては、そちらもまた関心の高い話題でしょう。

しかし、番組の残り時間を踏まえれば、そろそろ本題に戻さなければならない。

こういったときに私は、次のようなフレーズを用いて議論をコントロールしています。

「これはぜひ、あらためて時間を設けて話し合いたいテーマですね」
「たしかにこれもきちんと議論の機会を用意すべきテーマかもしれませんね」
「それについてはぜひ次回以降にメインテーマとして取り上げましょう」

単なる余談として片づけるのではなく、“余談で済ませるには惜しい”議論であることを強調するのがポイントです。

こうした言葉のあとに、「ひとまずここでは本題の◯◯について、そろそろまとめていきたいと思いますが……」とつなげれば、当事者もそれほど気分を害することはないでしょう。

平石直之アナウンサー
写真=筆者提供
平石直之アナウンサー - 写真=筆者提供

いささか無責任に聞こえるかもしれませんが、実際に次の機会が設けられるかどうかは、ここでは重要ではありません。

ファシリテーターがその論点の重要性に気づいている姿勢を見せることで、論客は安心していったん矛をおさめることができるもの。案外、それで気が済んでしまう人も少なくはないでしょう。

結果的に必要な議論に時間を割くことができ、設定されていたアジェンダを消化することができるなら、その会議は成功と言えるはずです。

■「ファシリ力」があれば場が乱れても冷静に収められる

ここまで、会議で場が乱れたときの対処法についてご紹介しましたが、拙著『超ファシリテーション力』では、話し合いを円滑に進めるコツや、すぐに使えるキラーフレーズ集など、会議やミーティング、3人以上が集まる場でのコミュニケーションを円滑にする方法を数多く解説しています。

平石直之『超ファシリテーション力』(アスコム)
平石直之『超ファシリテーション力』(アスコム)

ファシリテーションのスキルは、会社などの会議はもちろんのこと、家族間の会話やマンションの管理組合、学校のPTAなどの会合、商品の販促会、部活やサークルのミーティングなど、たいへん汎用性の高いものです。

これまで、ことごとくつまらなくて眠くなったり、終わってみたら何も決まっていなかったり、終了時間になってもダラダラと続けていたりと、振り返ってみると会議に対してそんな記憶しかない人が多いのではないでしょうか。

それはすべて、ファシリテーター不在の影響が出ていたと言っても、言い過ぎではないと私は思います。

ファシリテーターがいれば、議論は円滑に進み、活性化し、その上で時間管理も明確になるので、ダラダラ続いていた会議が定時できっかり終わる、なんてことも夢ではなくなります。

会議に嫌気がさしていたなら。それを一変させるテクニックをあますことなく公開した『超ファシリテーション力』を参考に、あなたの手で「つまらない」「決まらない」「終わらない」会議・ミーティングを一変させてください。

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平石 直之(ひらいし・なおゆき)
テレビ朝日アナウンサー。「ABEMA Prime」進行担当。
1974年、大阪府松原市生まれ。佐賀県鹿島市育ち。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に、「地球まるごとTV」「やじうまテレビ!」などでMCを務め、「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」「サンデー・フロントライン」「報道ステーション」などで、キャスターおよびフィールドリポーターとして各地を取材した。2004年6月から1年間、ニューヨーク支局に勤務。2019年から新しい未来のテレビABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当。個性が強い出演者たちを巧みにまとめ上げ、“アベプラの猛獣使い”と呼ばれている。

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(テレビ朝日アナウンサー。「ABEMA Prime」進行担当。 平石 直之)

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