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「理想は、ビジネスマン大谷翔平」"みじめ体験"を買って出る人にこそ稼ぐ力はついてくる

プレジデントオンライン / 2021年12月29日 11時15分

コミッショナー特別表彰を受けたエンゼルスの大谷翔平=2021年10月26日、アメリカ・ヒューストン - 写真=時事通信フォト

2021年、大谷翔平選手は米大リーグで投打の二刀流で活躍しMVPを獲得した。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「学問やビジネスの世界でも、日本のトップ数%の若い人材はすでに欧米に行っている、あるいは行こうとしているでしょうか。トップ・オブ・トップの人たちの中に身を置き、あえてみじめな思いをすることがその人の真の強さを生み出し、成長させる」という――。

※本稿は、小宮一慶『新時代の堅実なお金の増やし方』(ぱる出版)の一部を再編集したものです。

■優秀な日本人は海外へ

私がアメリカに留学したころは、アメリカに留学する日本人が多くいました。ところが、卒業した学校の先生と話しても、近年は日本から留学生が来なくなって、アジアからの応募者の多くは中国人だと聞いています。

これはちょっと残念な傾向ですが、だからと言って、日本人の若者たちが全員内向きになっているわけではありません。

私は、塾などを全国展開するワオ・コーポレーションの社外取締役を20年ほどやっています。ワオでは、塾などの生徒に限らず、本当に優秀な学生に奨学金を出しているのですが、この奨学金をもらっている子どもたちが、もらった奨学金で何をどのように勉強しているのかをプレゼンテーションしている映像を見ました。

驚いたのが、京都の名門高校に通う3年生の女子学生のプレゼンテーションでした。

彼女は、数学オリンピックで銅メダルをとった経歴の持ち主で、アメリカの理系の大学に進学するために、アメリカの大学の物理や数学の教科書を買って勉強していると言います。

アメリカに行って何を勉強したいかも明白で、物理学と数学の境目のところ、物理学の現象を数学で解析するといったことについて学びたいのだそうです。

私が京都大学の卒業生だから言うわけではありませんが、京都大学の物理学や数学と言えば、ノーベル賞受賞者の湯川秀樹博士をはじめ、何人ものノーベル物理学賞受賞者を出しています。また、数学では、数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した広中平祐博士がいます。

京都の高校に通っているのなら、京都大学に進学すればやりたい勉強ができるのではないかと思ったのですが、彼女は、マサチューセッツ工科大学(MIT)に進学したいと希望を述べていました。京都大学など眼中にないのです。

■みじめな気持ちが真の強さを生み出す

彼女のプレゼン内容にも驚かされたのですが、さらに衝撃を受けたのが、審査員の20代の男性のアドバイスです。

彼は東大入学後、半年で退学してMITに行った経歴の持ち主で、彼女に対して2つのアドバイスを行っていました。

1つがプログラミングを勉強すること。これからは、プログラミングができないと何もできないからというのが理由でした。

もう1つが、自分が本当にみじめになる場に身を置くこと。彼はMITに留学して、トップ10%の成績をとったけれども、さらに上を目指すために、トップ1%の人と付き合うようにしたそうです。そうしたら、あまりの実力差に、本当に自分がみじめな気持ちになったと言います。

日本にいると、日本全体のレベルが下がっていることもあり、優秀な人ならめったにみじめな思いをすることはありません。だからこそ、あえて自分がみじめになる経験をするためにアメリカに行き、トップ・オブ・トップの人たちの中に身を置くことをアドバイスしていました。

こうした優秀な日本人がアメリカのMITなどの名門校に行くようになると、みじめな日本は今以上にみじめになるでしょうが、それは仕方がありません。そういう時代なのです。

コミッショナー特別表彰を受けたエンゼルスの大谷翔平=2021年10月26日、アメリカ・ヒューストン
コミッショナー特別表彰を受けたエンゼルスの大谷翔平=2021年10月26日、アメリカ・ヒューストン(写真=時事通信フォト)

これから起きることは、すでに見え始めていて、スポーツの世界を見れば、野球なら大谷翔平選手が大リーグに行き、大リーグのトップ・オブ・トップになろうと挑んでいます。サッカーなら、久保建英選手が10歳でスペインに渡り、現在もスペインリーグで挑戦を続けています。それ以外のスポーツでも、若い選手たちが次々に挑戦の場を求めてアメリカやヨーロッパ各国に行っています。

これと同じことがスポーツ以外の世界でも実は起き始めており、おそらく日本のトップ数%の若い人材はすでに欧米に行っている、あるいは行こうとしているのではないでしょうか。

MITに行くような人は英語が話せるでしょうが、大谷選手やダルビッシュ有選手などは、専属の通訳をつけています。それは専属の通訳を雇えるほどお金があるからです。

スマートフォンの通訳機能が飛躍的に向上し、通訳がいらなくなれば、通訳を雇えないクラスの人たちも欧米諸国に向かうでしょう。なぜなら、言葉の問題がなくなれば、ビジネスにおいても欧米のほうが活躍できる可能性が高いからです。生産性が低く、経済が成長しない日本にいるよりも、はるかに大きな可能性があります。

日本も企業はずいぶん前から欧米に進出しています。企業に続いて個人も欧米に行くようになれば、日本はさらに空洞化が進みます。

日本人が欧米を目指すように、アジア諸国の若い優秀な人材が日本を目指してくれれば、日本の空洞化をある程度食い止められるのですが、残念ながら目指してもらえていません。理由は、日本に魅力がないからなのでしょう。

■日本の強みは何か?

日本人は、勤勉で頭がいいのですから、エリート教育を本格的に行えばいいのではないか、と私は考えています。

小宮一慶「新時代の堅実なお金の増やし方」(ぱる出版)
小宮一慶「新時代の堅実なお金の増やし方」(ぱる出版)

戦後、お金がない時代でも、ノーベル賞がとれる頭脳を育てることができました。資源のない日本の「唯一の資源」は人だと言われますが、やはり人の頭脳を鍛えることでしか国力を上げることはできないのではないでしょうか。

日本からGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)クラスの世界的巨大企業が生まれない、GAFAを創業した経営者のような人材が生まれないことが問題なのです。

フェイスブックの基本ソフトは、ハーバード大学の寮でつくられたわけで、資本金ゼロでつくられました。マーク・ザッカーバーグのような独創的な人をどれだけ生み出せるかで、日本のこれからの命運が決まってきます。

国がもっと大学などの研究機関にお金を出し、優秀な人をどんどん育てるべきだと思います。とにかく能力の高い人をつくる必要があります。

■1人ひとりが日本の悪循環を断ち切れ

製造業、特に精密機器をつくる技術は、今でも日本は非常に高いので、そこに国が資金を入れてさらに強化することもできます。もちろん精密機器だけではありません。他の製造分野でもケミカル分野でも高い技術を持っています。アニメもそうです。強いところをさらに強化するという発想が大切です。

農業も斜陽産業などではなく、世界に輸出できる成長産業に十分なり得ます。その証拠に、日本の農作物の評価は世界的に高いものがあります。農業には、輸出産業に育成できるだけのポテンシャルがあるのですが、そのためには規制緩和が必要で、農家に補助金や助成金をチマチマ出していても輸出産業に育成することは難しいでしょう。稼げる大規模農家を育てるのです。

日本では、痛みをともなわない改革をしようとします。コンサルタントして経営改革を数々見てきた経験から言えば、痛みをともなわない改革なんてあり得ません。

お金を稼げるようになれば、子どもも増えるでしょう。子どもが増えれば日本にも未来があります。今は逆で、お金がないから子どもをつくらず、子どもが減るから日本の未来もない。共同体意識も低く、自分が良ければいいという狭い了見の人が増えている印象もあります。こうした悪循環を断ち切らないと日本には未来がありません。

この本の趣旨から言えば、投資で正当にお金を増やして、それを使っていくことも日本の未来につながると思います。なぜなら、お金を使えば経済が循環するからです。今は、使うお金がない人が多いのです。そして、将来に不安があるから余計に使わない。

こうした悪循環を断ち切るためにも、まずは稼ぐ力を養い、貯める力をつけ、そして、お金を増やすための投資にも挑戦してみてください。

国は政治家に任せていても変わりません。日本を変えられるのは、私たち国民1人ひとりの行動なのです。

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小宮 一慶(こみや・かずよし)
小宮コンサルタンツ会長CEO
京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学、東京銀行などを経て独立。『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座2020年版』など著書多数。

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(小宮コンサルタンツ会長CEO 小宮 一慶)

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