ワースト3位は二階堂ふみ、2位は菅野美穂、1位は…国内ドラマ「2021年俳優ランキング」ワースト編
プレジデントオンライン / 2021年12月27日 12時15分
■なんでこの役をこの俳優が…そんな疑問が出たドラマばかり
2021年の国内ドラマ(地上波、BS、WOWOW、Netflix、Amazonプライム)を視聴した中で、俳優の演技を勝手にランキングにしてみた。
数字や数値の根拠は一切ナシ。すべては観たときの興奮と感動の度合いで、偏向はなはだしく超主観的であるため、あしからず。
これまで男性部門ベスト10、女性部門ベスト10をお届けしてきた。ベスト10を書くならば、腹をくくってワースト10も挙げておこう。
多くは「もったいない……」と嘆息したケース。棒演技とかミスキャストとかふざけすぎという前に、「なぜこの役を引き受けた?」という疑問符も。悪口は短く潔く端的に! 男女混合でお届けします。
■配役は逆の方がシックリくる9位と10位の俳優
10位 ユースケ・サンタマリア『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)
ユースケが演じたのはヒロイン・上白石萌音が働く出版社の副社長役。
女性社員から「オジ萌え」されて、鬼編集長の菜々緒から好意を寄せられる役どころ。ユースケがイイ男風味な役を演じると、なんか尻のあたりがもぞもぞする。
好みの問題だが、ユースケには未来永劫「なんだかうろんな人」でいてほしい。持ち味である「うさんくささと情けなさ」を発揮できる役のほうがしっくり。
9位 玉木宏『桜の塔』(テレビ朝日系)
玉木は警察の組織内部抗争でうまいこと立ち回りつつ、警官だった父(岡部たかし)の死の真相を密かに追う役。
男の嫉妬はえげつない。男社会では美形に異様な嫉妬をするし、色眼鏡でみるのが定石。そこがすっぽり抜けちゃった感も。やや酒依存という弱みも、こぎたない中華屋で佇む姿も見目麗しすぎてねぇ。
薩長派だの東大派だのと、警察内部の派閥争いが興味をひかなかったのも事実。
ふと思う。暴論だが、配役が逆だったらなぁと。おっさんだらけの派閥争いで揉まれるのがユースケ、女性に「萌え」を寄せられるのが玉木。当たり前すぎて面白くないが、説得力とリアリティは出る。
■完璧すぎて余白がない8位、中途半端だった7位
8位 広瀬すず『ネメシス』(日本テレビ系)
今回は探偵事務所の助手役。特殊能力をもち、ポンコツ探偵(櫻井翔)をサポート。事件の謎解きも解説もカンペとインカムで櫻井に指示。
あ、これ、コナン君ですね。アクションもラップもこなし、とにかく器用で完璧なだけに、(特に女性の)共感を得難くなっているような気がする。
そういえば、今年は『あんのリリック―桜木杏、俳句はじめてみました―』(WOWOW)でもラップやっていたっけ。
『学校のカイダン』(日本テレビ系、2015年1月放送)で、いきなり主人公を演じたときは心底感動した。「なんてうまいんだ!」と。耳目を集めるという言葉どおり、一気にスターダムを駆け上った。
でも、完璧すぎて余白がない。うまいけど、心惹かれない、かわいいけど、どうでもいい。今は。
10年後を楽しみにしておく。怪物になるよ。
7位 香取慎吾「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」(テレビ東京系)
SNSの誹謗中傷や炎上による、いわゆる“指殺人”を捜査する専門部署が舞台。
香取は元捜査一課の刑事で切れ者だが、やりきれない過去を抱えているようで。無愛想と低体温の違いに踏み込めなかったせいか、説得力と深みが足りず、棒読み感が悪目立ち。期待しすぎたか。
喪失感とやさぐれ感を体現した映画『凪待ち』の熱演がとてもよかっただけに、この役は実に中途半端に見えた。
![稲垣吾郎さん、草なぎ剛さん、香取慎吾さん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/e/670/img_5ee839f40e8dba2a29962505163ed8a3365540.jpg)
そういえば、新しい地図のメンバー・草彅剛は大河『青天を衝け』でキーパーソンを演じ、稲垣吾郎は『きれいのくに』でトリッキーな役どころで目を奪った。いずれもNHK。
香取もNHK特集ドラマ『倫敦(ロンドン)ノ山本五十六』(12月30日放送)で山本五十六役を演じるという。一抹の不安はあるが、最終的には新しい香取をそこで判断しようと思う。
■こんなキャスティングしていれば、みんな配信系に流れる…
ちょっと脱線。視聴者のテレビ離れが加速中だが、本当に深刻なのは俳優や脚本家のテレビ離れだ。徐々に、でも着実に、NetflixやAmazonプライムなどの配信系に流れている気がする。
配信の日本オリジナルドラマの数も増えてきた。実際に、私も山田孝之の枠をとっぱらった演技が観たくて、Netflixに加入した。
地上波は設定や描写に制限があり、医者と刑事と弁護士の勧善懲悪モノばっかり。手術と捜査と裁判が多すぎる。もちろん大手事務所主導の偏向キャスティングにも問題がある。そりゃあ役者も離れますって。そんなことを踏まえて6位から。
6位 東山紀之『刑事7人』(テレビ朝日系)
![『刑事7人』公式サイトより](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/670/img_ab4dcb9e3cabcd56e3e9391ffe1e2b03556086.jpg)
テレ朝シリーズものにしては部署名やレギュラーメンバーが変わりすぎで、最も疑問がある作品。
その中で主役・ヒガシの凄腕設定だけは永久保証。当初は遺失物センターっつう閑職に追いやられた変人とか、妻子を失った喪失感などの特徴があったけれど、もうすっかり払拭。
特筆すべきものが何もなく、平坦さしか出せていない。それどころか新規設定で「元SAT」、アクションも始めちゃってね。
そもそも「刑事7人いる? 6人じゃね? 北大路欣也は医者だよね?」とタイトルから疑問だったし。テレ朝が魂を売り飛ばしてきた経緯が、この作品に凝縮。
■演技もさることながら作品の内容に問題がある
5位 泉里香『高嶺のハナさん』(BSテレビ東京)
普段はクールで有能だが、恋愛偏差値が低すぎる女性の役。そのギャップを愛でる趣向だが、心の声があまりに稚拙というかアホすぎて腹立たしかった。
泉のもつコメディ筋肉は割と好きだが(『海月姫』のやり手営業役では、画面に顔をしれっと残す芸風が最高だった)、この役はどうにもこうにも。初主演作がこれで大損。
4位 斎藤工『漂着者』(テレビ朝日系)
突如、海辺に全裸で漂着した男の役。適役だが、生まれながらの魅力(色気と浮世離れとうさん臭さ)を120%活かしただけ。
予知能力がある謎の男なので、感情が平坦というのも必然だが、もうちょっとなんか爪痕残してくれたらよかったのに。
宇宙人や救世主は適役だが、そろそろこっち(地面)に降りてきてほしい。本人がやりたい役と視聴者がやらせたい役に乖離がある、そんな印象も。
つうか、秋元康ドラマは始まりが奇抜で魅力的な割に、終わり方がいつも雑で尻すぼみ!
短くするつもりがついつい長広舌に……そろそろワースト3を。
■なんでこんな役をやらせた3位、激イタだった2位
3位 二階堂ふみ『プロミス・シンデレラ』(TBS系)
![『プロミス・シンデレラ』公式サイト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/670/img_551819c738bbf0c74b1373fd3de78d06708710.jpg)
夫(井之脇海)に浮気され、離婚を切り出される女の役。
家を飛び出て、持ち金掏られて公園暮らしのホームレスに。金持ちの腐れガキ(眞栄田郷敦)に説教垂れて、逆にゲームをけしかけられて。
ん? バカなの? ヤンキーなの? 喧嘩っぱやいだけ? 説教グセがあるならなぜ浮気夫にしない?
強気なのか気弱なのか情弱なのか、賢いのかそうでないのかよくわからんキャラに。
こんな中途半端な役はそのへんの娘っ子にでもやらせとけ!(映画『翔んで埼玉』壇ノ浦百美の口調で)。
2位 菅野美穂『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)
![『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』公式サイト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/3/670/img_5311cf3e7db76272583f5b6add13ce22792619.jpg)
シングルマザーの恋愛小説家役。楽観主義で浪費癖アリ、能天気な母親だ。大学生の娘(浜辺美波)は無類の漫画オタクで、頼りない母を憂いて超現実主義者に。
頼りない母としっかりした娘のコントラストを見せるにしても、あまりに菅野が幼すぎて。若い頃は実に多彩な役を演じてきた。それこそドジッ娘から正義と矜持の女、復讐に燃える女……。
嗚呼、それなのにそれなのに。恋多き女でも金銭的にだらしない女でもまったく問題ないのだが(むしろ大歓迎)、甘ったれた口調でキャピキャピ(死語)しとる44歳作家が今の世にウケるとは到底思えず。
実は、シングルマザーになった背景には並々ならぬ覚悟があった、という展開はとてもよかった。その葛藤を重苦しく見せないために、あえて「ゆるふわ」を貫いたのかもしれないが、激痛だけが前面に出てしまった印象に。
そして、栄えある1位は……
■主演、脚本、演出の一人三役だったのに大失敗…
1位 オダギリジョー『オリバーな犬、(Gosh!)このヤロウ』(NHK)
![『オリバーな犬、(Gosh!)このヤロウ』公式サイト](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/6/670/img_563b2f14a8f0aae1a04a5b6978c87ef2380625.jpg)
鑑識課で警察犬の「ハンドラー」(池松壮亮)には憂いがある。相棒の犬・オリバーが自分にだけ「しゃべるおっさんに見える」からだ。このオリバー役を演じたのが着ぐるみのオダジョー。
実は脚本と演出も彼が手掛けた「オダジョーワールド」。ノワール&ギャグ&シモネタ、いきなりオンステージのショータイムなど、やりたいことを全部乗せした割に、締まりのない全3話。お祭り騒ぎの責任は重い。
もちろん、すごいメンツを一堂に集めたオダジョーの人望には拍手する。麻生久美子に坂井真紀、永瀬正敏、佐藤浩市、松重豊、國村隼に火野正平、柄本明に橋爪功まで。
よくもまあこれだけのメジャーな名優をチョイ役やふざけた役として呼べたなと感心するし、個人的に好みである渋川清彦や宇野祥平、芹澤興人や我修院達也といった味濃いめのバイプレイヤーも勢ぞろい。
さらには細野晴臣や箭内道彦、鈴木慶一とクリエイターやアーティストまで。あ、妻の香椎由宇も久々に観たわ。
しかしだな、役者をじっくり見せる余裕のあるNHKにおいて、出番短し・見せ場なし・ヤマ場迷子……。いや、主役が犬でおっさんという発想は面白いが、もうとっちらかりすぎて。着ぐるみでスケベ犬やっとる場合じゃなかろうに!
ここ数年、数多くはないけれど、『おかしの家』『重版出来!』(TBS系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ系)と脇でも記憶に残る好演が続いたし、監督作の映画『ある船頭の話』も素晴らしかった。
それだけに、顎が地面につくほど呆れて、肩甲骨が地面につくほど落胆した。期待しすぎた私も悪い。
今後、NHK朝ドラ『カムカムエヴリバディ』で暗躍するようなので、役者としてのリベンジを待つ。脚本は本職の人に少なくとも監修とテコ入れをお願いしておくれ。
もちろん、他にもモヤモヤした人や棒演技に呆然とした人は多々いるが、原稿に書くほど思い入れがないもので。
そんなこんなで、来年も手ぐすね引いてミスキャスト&期待外れをお待ちしております。
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ライター
1972年生まれ。千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。2010年4月より『週刊新潮』にて「TVふうーん録」の連載開始。2016年9月より東京新聞の放送芸能欄のコラム「風向計」の連載開始。テレビ「週刊フジテレビ批評」「Live News イット!」(ともにフジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。
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(ライター 吉田 潮)
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