「親がなんか変」と思ったら…年末年始の帰省で必ずチェックすべき"家の中の2つの場所"
プレジデントオンライン / 2021年12月30日 11時15分
■「親がなんか変」……年末年始の帰省でココをチェック
この年末年始に帰省を計画している人は多いだろう。だが、久しぶりの家族と再会した際に、老親の変化に驚くことがあるかもしれない。「親の話し方や顔つき、体の動きがちょっとおかしい」「もしや介護が必要か」と思った時に、子供世代はどうしたらいいのか。
多くの人は何の根拠もなく「ウチの親はまだ大丈夫だろう」と思い込んでいるが、やってくるものはやってくる。筆者もかつて両親の介護を体験した。当初は、「介護保険」という仕組みをきちんと知らなかった(もっと言えば、全く興味がなかった)から、かなり大変だった。
「親がなんか変」と子が思う違和感は大きく分けて2種類。頭か、足腰だろう。
頭は、認知症の疑いだ。例えば……。
・同じことを何度も言ったり、聞いたりする。
・財布・通帳・貴金属などを盗まれたと人を疑う。
・約束の日時や場所を間違える、あるいは記憶していない。
・ささいなことで怒りっぽくなった。
・きれい好きだったのに、整理整頓が苦手になっている(冷蔵庫の中がごちゃごちゃ、トイレが汚い、など)
・お風呂に入らないなど、身だしなみを構わなくなった。
・何をするのも面倒くさがる(ゴミ出しができていない、など)
自身の経験を踏まえ、介護に関する著書を出した際、体験者に取材した。その中では認知症の初期に、お年寄り本人が「この頃、頭が変になったような気がする」と心配そうに言ってくるケースもあれば、「最近、様子が変だよ」と近所の住民の忠告で判明するケースもあった。
もう一方の違和感は、足腰である。「転倒による骨折」ということで、いきなり介護が始まることも多いが、その前にちょっとした段差でつまずく、足取りがおぼつかない、よく転ぶなどが見られるものだ。
この最初の小さな「?」は見過ごされやすいが、できれば、この時を「心積もり」の始めとして捉えておきたい。介護サービスは「自己申告制」、サンタのように向こうからは来ないシステムだ。知識だけでも、きたるべく「ある日、突然」に備えておくと介護者の心の余裕もずいぶん違ってくる。
■「親がなんか変」で真っ先にやることは介護保険の申請
介護はひとりで孤軍奮闘するものではない。というより奮闘してはいけない。賢くチームを作ろう。わが国には現状、介護保険制度が用意されているので、まずは、これに頼ることが先決だ。
「親がなんか変」と思った瞬間に行動だ。親の住まいがある役場に電話しよう。難しい用語は必要ない。ただ「介護についての相談」と言えば、一発OK。「介護認定」というものを取るべく、申請の仕方を教えてもらうのだ。
主な段取りは、こうだ。申請→聞き取り調査(認定調査)→主治医が意見書作成→コンピューターによる一次判定→介護認定審査会による二次判定で要介護度が決定される→役所から結果が送付される。通常、申請から決定の通知までは原則30日以内。
介護チームは、無料で実施される「介護認定」というもので、「要介護」(含む要支援)という認定が下りた時から結成される。
ケアマネジャー(以下、ケアマネ)をはじめとする介護のプロたちが、あなたの親のために、あなたという介護のキーパーソンを中心にチームを組んでくれるシステムの出来上がりだ(要介護認定は要支援と要介護を合わせて7段階に分かれる。介護サービスが区分支給限度基準額内で、所得に応じて1割から3割の自己負担額で利用できるしくみ)。
ここで「バカを見ないための裏ワザ」を3つ伝授しよう。
■バカを見ないための裏ワザその1:介護認定の上手な取り方
1 認定調査には必ず本人の様子をよく知る家族が付き添うべし!
認定調査を受ける際は、介護を受ける老親本人だけでも制度上は問題ないが、そういう場になると、本人はつい頑張ってしまいがち。それゆえ、判定が軽く出て、実態とはそぐわなくなることは「あるある」なので、それを防ごう。
2 ケアマネが確定している(=すでに介護サービスを受けている)家庭では認定調査に担当ケアマネの同席を懇願するべし!
ケアマネに出席義務はないが、調査員は一見さん。その高齢者を見るのは初めてになる。日頃の様子を嫌というほど知っている専門家がバックアップしてくれたならば、鬼に金棒。
3 調査員の“特記事項”に載るように困っていることを具体的に訴えよ!
本人のプライドを傷つけてしまうため老親の耳には入れたくないことは、家族が調査員に別の場所で困っている介護の手間を回数も含めて具体的に訴えること。
4 主治医の意見書(特別な理由)は神の声と心得よ!
介護認定審査会では相当数の審議をしている。審査会の人の目に留めてもらわないと、そんなに困っていないだろうとスルーされる可能性が高い。ゆえに、かかりつけ医に困っていることを強力にアピールし「主治医意見書」の特記事項に強調して書いてもらうのも一手だ(なお、認定結果に不服がある場合は都道府県に不服申し立てをする前に市区町村の担当者と相談して区分変更を申請しよう)。
■バカを見ないための裏ワザその2:良いケアマネの見分け方
介護の司令塔役を務めてくれるケアマネ、介護はこの人にかかっている。良いケアマネは以下のポイントで見分けられる。
2 家族を含めた利用者の声を辛抱強く聞いてくれる
3 フットワークが良い(いついかなる時でも嫌な顔をせず、駆け付けてくれる)
4 顔が広い(そのケアマネを中心としたネットワークが存在しており、人脈がある)
5 地元に明るい(地元の地理、情報に精通しており、ツーと言えば、カーと答えてくれる)
6 とにかく世話好き(困っている人をほっておけない性格。福祉が天職の人)
7 プロとしての具体的アドバイス、提案をしてくれる
8 仕事が早い
9 案件をほったらかしにしない
特に2と7のスキルに秀でている人をケアマネとしてチームに迎え入れることができたならば、心強い。
「良いケアマネ」の逆になるが、参考までに「悪いケアマネ」も挙げておこう。
2 とにかく仕事が遅い
3 電話をしても折り返しがないなど、連絡が付きにくい
4 自分のプランを押し付ける
5 専門知識に欠ける&知識のアップデートができていない
6 丁寧な説明をしてくれない
7 人の痛みが分からない
8 見た目がだらしない
9 自分のことばかり話す
こういう人は絶対に避けなければならない。
遠距離介護なども含めた個別事情も汲んだ上で、現時点で一番ベターな介護方法をプロの視点で提案してくれるかどうかによって、介護は天国と地獄ほど変わってくるのだ。
介護を受けるお年寄りや介護をする人間の両方が、できるだけ快適な介護生活を送るにあたって、良いケアマネの存在は不可欠。これには担当ケアマネとの相性が重要になる。
「めんどくさいから、誰でもいいや!」と投げやりになってはいけないものである。
■バカを見ないための裏ワザ3:良いケアマネの探し方
2 かかりつけ医に相談してみる
3 ご近所ネットワーク(いわゆる口コミ)を使う
4 認定調査員が来た時に、調査員から介護事業所などの情報を得る
繰り返すが、介護はケアマネ次第だ。
期待する介護サービスが受けられないなどで、ケアマネとの信頼関係が築き上げられない場合には、ケアマネを変えよう。ケアマネは変更できることを覚えておいてほしい(ケアマネを変更しても、現在利用しているサービスの継続は可能である)。
介護では、いろいろな専門家(例えば、役所の人、ケアマネ、包括職員、ソーシャルワーカー、ドクター、ナース、レンタル業者)からケンモホロロにされたり、嫌な思いをさせられたりは日常茶飯事で、心が折れることのほうが現実的には多い。しかし、そこで「諦めない!」ことが本当に大事になる。
「めげない、くさらない、あきらめない」
この「3ない精神」が必要なのだが、実際はめげて、くさって、あきらめることのほうが多いかもしれない。
もし、そうなっても、「この人がダメなら、この人!」という感じで、会う人、会う人に自分の家庭のピンチを訴える。そうこうしているうちに、徐々に情報が集まり、わが家の問題点とその解決策がクリアになってくるものなのだ。
「介護で一番重要なことは?」と問われたら、私は「ひとりぼっちで戦わない!」ということを申し上げたい。
筆者が上梓した『親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ(増補改訂版)』(双葉社)で「こういう方法があるのか」という裏ワザを知り、少しでも楽な気持ちになっていただけるとありがたい。
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作家
執筆、講演活動を軸に悩める女性たちを応援している。「偏差値30からの中学受験シリーズ」(学研)の著者。近著に『親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(ダイヤモンド社)、近刊に『神社で出逢う私だけの守り神』(企画・構成 祥伝社)、『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ』『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(取材・文 いずれも双葉社)など。
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(作家 鳥居 りんこ)
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