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「コロナ禍で2桁成長」日本コカ・コーラが"甘くない紅茶花伝"を発売したワケ

プレジデントオンライン / 2022年1月18日 10時15分

日本コカ・コーラ マーケティング本部 止渇系無糖茶・機能性茶・紅茶事業部マネジャーの田中惇也さん - 筆者撮影

コカ・コーラ「紅茶花伝」は2021年3月、新たなラインナップとして無糖紅茶「紅茶花伝 無糖ストレートティー」を発売した。なぜこのタイミングで無糖紅茶市場へ参入したのか。日本コカ・コーラ マーケティング本部で紅茶花伝のブランド担当を務める田中惇也さんに聞いた——。

■発売以来の主力商品は「ロイヤルミルクティー」

コカ・コーラ「紅茶花伝」は1992年に誕生した商品だ。以来、「紅茶花伝 ロイヤルミルクティー(以下、ロイヤルミルクティー)」を主力に、ロングセラーブランドへと成長した。

紅茶花伝の王道商品といえばロイヤルミルクティーだろう。

1995年に発売以来、紅茶とミルクのバランスが織りなすぜいたくな味わいが好評を博し、老若男女問わず親しまれてきた。発売25年目を迎える2019年にはパッケージ、味とともにフルリニューアルを敢行し、より上品な、すっきりとした後味を楽しめる商品へと改良した。

その結果、主力ターゲットの10〜20代のみならず、全世代における購入率が上昇し、飲用者数の増加につながったという。

また、2018年には“紅茶に果汁をたっぷり注ぐ”をコンセプトにした「紅茶花伝 クラフティー」を発売したことで、国内フルーツティー市場の活性化に大きく貢献する結果となった。

クラフティーシリーズの累計出荷本数は3億9000万本を突破し(2021年12月末時点)、2021年10月には新たなフレーバーとなる「紅茶花伝 クラフティー 贅沢しぼりレモンティー」を市場へ投入したことで、紅茶ブランド全体の伸長に寄与したのである。

そんな紅茶花伝は、次なるステージへとブランドを成長させるべく、2021年3月には新たにブランド戦略を強化。「手軽に楽しめる、上質で多彩な紅茶の味わいを通じて、お客様の生活に彩りを与え、日常にちょっとした豊かさを感じてほしい」との想いから紅茶花伝ブランドとしての統一感を強め、新たなラインナップとして無糖紅茶「紅茶花伝 無糖ストレートティー(以下、無糖ストレートティー)」を発売した。

コカ・コーラ「紅茶花伝」の商品ラインナップ
画像提供=日本コカ・コーラ
コカ・コーラ「紅茶花伝」の商品ラインナップ - 画像提供=日本コカ・コーラ

■家庭内の紅茶消費量は増加傾向

無糖ストレートティーの発売は、紅茶花伝を「本格的で上質な紅茶ブランド」へと進化させ、今まで以上に愛されるブランドとして昇華させるのに必要不可欠なものになっているという。

田中さんは、「紅茶の価値が再発見されている」とし、新戦略を展開した理由についてこう語った。

「紅茶はリフレッシュニーズに適した飲料として、近年注目されているカテゴリーです。2019年は、RTD(ふたを開けてすぐにそのまま飲める飲料)の紅茶飲料市場が拡大し、購入者数はもちろん、紅茶飲料を購入する頻度なども増えており、既存のリーフティーやティーバッグとともに家庭内の紅茶消費量が増加傾向にあります。それはコロナ禍でも堅調に推移していて、紅茶花伝は2020年と比べて2桁近い成長を遂げているのです。

興味深いのは、紅茶飲料の中でブランドスイッチが起こっているのではなく、他の飲料カテゴリーからも流入してきていること。ライフスタイルが一変し、飲用オケージョンも多様化するなか、紅茶飲料としてもさまざまなシーンに応え、日常のちょっとした気分転換に紅茶を手にとっていただけるよう、新たなブランド戦略を打ち出しました」

■ブランドに統一感を持たせ、一貫したアプローチを強化

新ブランド戦略は主に3つの軸がある。

1つ目はブランドロゴやパッケージデザインの刷新により、紅茶花伝全体の統一感を強化したことだ。

「紅茶花伝」の新しいブランドロゴの特徴
画像提供=日本コカ・コーラ

これまで行ってきた商品ごとに最適化したアプローチをするのではなく、ブランド全体の価値や魅力を集約化して消費者とコミュニケーションを図ることで、紅茶花伝のブランドロイヤルティーを高める意図があるという。

「基幹商品のロイヤルミルクティーや多彩なフレーバーを持つクラフティーなど、ブランドとしては好調を維持していますが、あらためてブランド全体の成長を考えたとき、単一の商品ではなく『総合的な紅茶ブランド』として発展させていく必要があります。一貫性を持たせたブランドコミュニケーションをしていくことで、紅茶花伝の持つ多彩な味わいを飲用シーンに応じて選んでもらえやすくなり、さらなる成長が見込めると考えています」

■無糖ストレートティー市場にはポテンシャルがある

2つ目は、多様な飲用ニーズに応えるためのラインナップの拡充だ。

紅茶花伝は上質な味わいを楽しめるロイヤルミルクティー、ピーチやオレンジなどのフルーツと紅茶を掛け合わせ、新しい飲み方を提案するクラフティーなど、時代に合わせてフレーバーを広げてきた。

2021年3月に無糖ストレートティーを発売した経緯について、「無糖ストレートティー市場の将来的なポテンシャルと、紅茶本来の味わいや香りをダイレクトに実感いただけることが決め手になった」と田中さんは話す。

「紅茶飲料市場が拡大するなか、特に活性化しているのが無糖ストレートティーです。多くの消費者に支持される理由のひとつは、茶葉本来の香りや味わい、すっきりとした後味を楽しめることが挙げられます。また、コロナ禍で紅茶を飲む機会が増えたのも追い風になっていて、無糖紅茶市場も2018年からの3年間で年平均18%増(インテージSRI調べ)と、無糖ストレートティーの需要が確実に増えているのです。こうした状況を踏まえ、紅茶花伝としても無糖紅茶市場へ参入し、新たな需要喚起をしていきたいと考え、無糖ストレートティーをラインナップに加えました」

■「別のフレーバーも試す」買い回りが起きている

無糖ストレートティーは紅茶本来の香りや味わいの高さが求められるゆえ、無糖ストレートティーに最適な茶葉の追求が鍵になったそうだ。

世界各地にある茶葉を徹底的にリサーチし、最終的に行き着いたのが、華やかな香り立ちが特徴のダージリンと茶葉の味わいに奥行きを持たせるアッサムだった。

これら2つを絶妙なバランスでブレンドし、茶葉本来のうまみや素材のおいしさを引き出すために独自のエスプレッソ製法で抽出しているという。

無糖ストレートティーの開発では「150を超える試作品をつくるほど、試行錯誤を重ねながら商品化を進めた」と田中さんは話す
筆者撮影
無糖ストレートティーの開発では「150を超える試作品をつくるほど、試行錯誤を重ねながら商品化を進めた」と田中さんは話す - 筆者撮影

「無糖ストレートティーを発売したことで、紅茶花伝のラインナップがさらに増え、スーパーやコンビニなどの売り場で“面”を取れるようになったのが大きいと考えています。これまで紅茶花伝を手に取らなかった新規のユーザーにも訴求できているのはもちろん、無糖ストレートティーをきっかけに別のフレーバーを試してみるなどの買い回りも起きています。紅茶花伝自体のブランド認知は高いので、こうしたブランド内での回遊性が生まれたのは大きな成果だと思っています。また、紅茶花伝全体で見ても、無糖ストレートティー発売後、約半年で前年と比較して飲用者数が2割伸長してきており、無糖ストレートティーの将来性を実感しています」

■「ティーハウス」を舞台にしたコミュニケーション戦略

そして、新ブランド戦略の3つ目が“ティーハウス”を舞台に展開するコミュニケーション施策だ。

ティーハウスとは作り手のこだわりがつまった、さながらサードウェーブ系コーヒーのような架空の舞台を設定し、紅茶花伝ブランドの持つ「厳選素材とおいしいひと手間」の価値を伝えるコンセプトだという。

紅茶花伝ブランドの持つ「厳選素材とおいしいひと手間」の価値を伝えるティーハウスの世界観
画像提供=日本コカ・コーラ
紅茶花伝ブランドの持つ「厳選素材とおいしいひと手間」の価値を伝えるティーハウスの世界観 - 画像提供=日本コカ・コーラ

「紅茶花伝は順調に成長しているものの、もっと飲用シーンを広げ、消費者のさまざまなライフスタイルへ入り込めるようなブランドにしていかなければならないと考えています。お客さまに紅茶のイメージを聞いてみると、嗜好品のなかでも格式の高い印象を持たれていて、休日のご褒美やちょっと特別感のある飲み物といった認識を持っていることがわかりました。ティーハウスを通して、これまで限られたシーンでしか紅茶を飲用しなかった方にも、日常のちょっとした気分転換や仕事、家事の合間などに上質な紅茶を気軽に飲んでもらえるようなコミュニケーションを取っていきたいと思っています」

■紅茶を「特別な飲み物」から「日常の飲み物」へ

飲用シーンを広げることで、紅茶を「特別な飲み物」から「日常の飲み物」へとシフトさせる。

紅茶市場の裾野が広がるなか、紅茶花伝が目指すのは「気軽に手に取ってもらえる存在」だ。

具体的なアプローチとしては、店頭のポスターやTwitterの投稿で紅茶花伝のアレンジレシピを提案し、いろいろな紅茶花伝の楽しみ方を訴求するプロモーションを行ったそうだ。

また、2021年8月には人気音楽グループ「BTS」のキャラクター「TinyTAN(タイニータン)」とコラボキャンペーンも実施し、新規ユーザーの獲得にもつながった。

中長期的にはシーズナル限定の商品を投入することも検討したいという。ただ、田中さんは「全カテゴリーのラインナップがそろった今、次にやるのはライフスタイルに合わせた飲用シーンの想起だ」と話す
筆者撮影
中長期的にはシーズナル限定の商品を投入することも検討したいという。ただ、田中さんは「全カテゴリーのラインナップがそろった今、次にやるのはライフスタイルに合わせた飲用シーンの想起だ」と話す - 筆者撮影

「TinyTANとコラボした施策は、紅茶花伝を4本購入するとストラップやタンブラーなどが当たるキャンペーンにしたのですが、Twitterのトレンド入りするほどの話題となり、大きな手応えをつかむことができました。特にWeb CMから店頭へ誘引する流れを作れたので、今後もデジタルとリアルをうまく組み合わせながら訴求できるように創意工夫していきたいと考えています」

■無糖ストレートティーを市場に根付かせる

2022年は紅茶花伝にとってもブランド30周年を迎える節目の年だ。

さらなる飛躍に向けて、どのような展望を抱いているのか。

最後に田中さんへ聞いた。

「紅茶花伝の30周年に合わせ、ブランドを盛り上げられるようにさまざまな仕掛けを作っていく予定です。ブランドの歴史は長いですが、手軽においしく飲める上質な紅茶ブランドとして、もっとファンを増やしたいと考えています。昨年、無糖ストレートティーを発売したことで、全ての紅茶カテゴリーのラインナップが出そろいました。

無糖ストレートティーをもっと市場に根付かせていきながら、多彩な味わいがそろうことで生まれる相乗効果やブランド力を生かし、総合力で勝負していきたいと思います」

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古田島 大介(こたじま・だいすけ)
フリーライター
1986年生まれ。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。

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(フリーライター 古田島 大介)

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