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地方で急増…男性の生涯未婚率「35年で6倍超」が示すほの暗い未来予想図

プレジデントオンライン / 2022年1月14日 11時15分

国勢調査によれば、男性の生涯未婚率は1985年3.9%から2020年25.7%へ6.5倍、女性は4.3%から14.9%へ3.5倍になったことがわかった。統計データ分析家の本川裕さんは「ここ5年で、“結婚・同棲相手、恋人は必ずしも必要ない”という若者の割合が約2倍に増えた。都道府県別の生涯未婚率では、男性は岩手、女性は高知が最も数字が高かった」という――。

■独身で生涯を終える男性が4分の1を超え、将来は3割に

「おひとりさまの老後設計」というような表現で生涯独身者としての生き方に関心が集まるようになっている。そうした中、このほど2020年の国勢調査の確定値が発表され、生涯未婚率、すなわち一生独身でいる人の割合をあらわす統計数字が男性で4分の1を超えたことが話題となった。今回はこの点をめぐるデータを紹介しよう。

ここで生涯未婚率は50歳時の未婚率(実際は45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均から算出される)のことを言い、その後に結婚する人は少ないことから、「生涯未婚率」と称されている。死んだとき未婚だった人を集計した結果ではない点には注意しよう。

図表1に1920年から2020年までの過去の5年毎の国勢調査の実績推移と2040年までの将来推計結果をあらわした。

男性については、戦前から1980年までは3%未満の低い水準で推移していたが、バブル時代にさしかかる1985年に3.9%と3%を越えてからは、急テンポで上昇傾向をたどり、2020年には25.7%と4分の1を超えている。

政府の社会保障・人口問題研究所による将来推計(2015年国勢調査データに基づく推計)では2040年にはさらに29.5%とほぼ3割の水準に達すると予測されている。

女性の場合は男性の6割程度とあまり高くないレベルである点、1970年には男性より早く3%を越えていたこともあった点などが異なっているが、上昇傾向については、ほぼ男性と同様の動きとなっている。2020年の生涯未婚率は16.4%と男性より10%ポイントほど低く、2040年の予測でも18.7%と2割は越えないものとされている。

男性の3割、女性の2割が今後、一生独身ですごすということになると、これまでの日本社会で当然とされてきたいわゆる「皆婚習慣」がはっきり崩れると予測されているといってもよい。

なお、ここでは示していないが、20代後半や30代前半の未婚率は、一時期、急速な上昇を続けていたのであるが、最近は横ばい傾向に転じている。いわゆる晩婚化の影響が行きつくところまで行ってしまい、小さくなったと言えよう。これと対照的に生涯未婚率は依然として上昇を続けており、結婚しない男女が一定割合以上は生まれる新しい時代が到来しつつあるといってもよいだろう。

■生涯未婚率の上昇は経済的な問題より結婚観の変化による影響が大きい

生涯未婚率の上昇は、結婚に至らない男女の増加を意味しているが、「結婚しない」という側面と「結婚できない」という側面の両面がある。マスコミや有識者が強調しがちなのは、貧困問題や就職困難の問題とからめて、「結婚できない」という側面である。また、地方から流出する若い世代の男女ギャップ、すなわち適齢期の女性が周りにいない状況から未婚率の上昇を説明する説も見受けられる。

こうした経済問題や男女数ギャップも、当然、未婚率の上昇に影響を与えていると考えられるが、それ以上に大きいのは日本人の結婚観の変化、すなわち必ずしも結婚しなくてもよいのではないかという意識が広まってきているからである。

未婚率上昇の要因として基本となる日本人の意識変化については、案外、ふれられることが少ないので、次に、この点を示すデータをやや詳しく紹介しよう。

まず、日本人の意識の変化を長期的に追っているNHKの意識調査の結果を見てみよう(図表2)。

意識の上でも結婚が当たり前でなくなった

設問は「人は結婚するのが当たり前だ」という意見と「必ずしも結婚する必要はない」という意見のどちらに近いですかというものである。前者を選んだ割合は、1993年から2018年にかけて、44.6%から26.9%へと低下し、後者を選んだ割合は、50.5%から67.5%へと上昇し、前者の割合の2.5倍といまや多数派になっていることが明らかだ。

最新2018年の男女・年齢別の結果を見ると、若い世代の8~9割は「必ずしも結婚する必要はない」という意見であり、特に女性でその割合が高い。

旧世代の人間には信じられないことであるが、日本人の意識として、結婚は必ずしも当然のことではなくなったのである。

これが日本だけの現象なのかを確認しよう。内閣府では「少子化社会に関する国際意識調査」を5年おきに実施しており、少子化の要因として配偶関係の意識について各国の20代から40代までの男女に訊いている。

この調査では、結婚はするべき、結婚したほうがよい、結婚はしなくとも同棲や恋人は必要、といった選択肢と並んで「結婚・同棲・恋人はいずれも、必ずしも必要ではない」という選択肢のある質問を設けている(図表3)。

独身志向がやけに目立つようになった日本人

この選択肢を選んだ割合を最新の2020年結果で各国比較すると日本は、39.0%と比較対象のスウェーデン、フランス、ドイツより高くなっている。

また、日本の結果について、2005年からの時系列的変化をみると、この設問への回答率は、2015年から2020年にかけて21.8%から39.0%へと急増している。上のNHK調査の最新時点である2018年以降、さらに、日本人の独身志向は高まったと見ざるを得ない。直近の5年間で「結婚・同棲相手も恋人も必ずしも必要ではない」と考える20~49歳が2倍近くに増えたのだ。

■コロナの影響で一時的に回復した結婚・同棲志向

内閣府の最新時点の調査は2020年の年末から次年にまたがって行われたので、こうした独身志向の高まりがコロナの影響ではなかろうかという疑いが生じる。

実は2020年調査では、新型コロナの影響で「結婚・同棲したい気持ち」は強まったか弱まったかを訊いている。これ自体、興味深い設問であるし、この疑いの答えともなるので、その結果を見てみよう(図表4)。

コロナで強まった結婚・同棲志向

実は、新型コロナの影響で各国では「結婚・同棲したい気持ち」が強まった人の割合が弱まった人の割合を大きく凌駕しており、日本もまた例外ではなく、強まった人が10.2%と弱まった人の5.1%の2倍に達していたのである。コロナの影響で外出が控えられ、自宅ですごす時間が増えた影響やコロナに感染したときの不安で、独身者は「つれあい」を求める気持ちが強まったようである。

すなわち、コロナで独身志向はむしろ弱まったといってよい。この点は、「子どもを持ちたい気持ち」のほうは、出産や子育ての困難がコロナで拡大した影響であろうが、むしろ、弱まった人のほうが多かったのと対照的である。

だとすると、上で見た日本で「結婚・同棲・恋人はいずれも、必ずしも必要ではない」への回答が2020年に高まったのは、コロナの影響だからでなく、コロナの影響にもかかわらず、独身志向が基本的に高まったからだと見なさざるをえないのである。

まことに、どうしちゃったんだろうと思うような、あっと驚く日本人の独身志向の高まりである。

■男性では東高西低、女性では西日本・大都市で高い生涯未婚率パターン

最後に、どの地域で生涯未婚率が高くなっているのか、すなわち一生独身の者が多いかを調べてみよう。このため、図表5には都道府県別の生涯未婚率の分布図を作成した。

生涯未婚率マップ(2020年)

男性と女性では分布パターンがかなり異なっており、生涯未婚率の上昇といっても男女では条件がかなり異なっていることをうかがわせている。

男性のほうの生涯未婚率の分布の特徴は以下である。

・大きく見れば、生涯未婚率が、東日本で高く、西日本で低い傾向が認められる。トップは岩手の28.9%、2位は青森の28.4%である。東北の男性は西日本と比べて内向的と言われるが、それが影響しているのであろうか
・西日本の中でも高知や山陰などでは高くなっている。
・近畿の中心部(大阪、京都)を取り巻くベッドタウン地域でもっとも低くなっている。

女性の生涯未婚率の分布の特徴は以下である。

・男性とは逆に東日本より西日本の生涯未婚率のほうが高い傾向が認められる。最も高いのは高知の20.3%である(高知は男性の生涯未婚率が高い)。
・ただし、東日本の端に位置する北海道では、開拓時代に男女の区別なく働いた伝統から女性の独立性が強いためか、女性の生涯未婚率が3位と高くなっている(ちなみに女性の喫煙率も北海道が全国トップ)。
・男性とは異なり、大都市圏中心部の東京、大阪、京都、福岡などで特に生涯未婚率が高い。大都会の居住環境(ひとり暮らし向きの物件が多い、など)や就業環境(地方に比べ給与相場が高い、など)は、女性が一生独身で暮らすのに適しているとも言えよう。
・日本列島の中央に位置する中部地方では生涯未婚率が低くなっている。例えば、愛知は3大都市圏の1つであるにもかかわらず、生涯未婚率13.4%と東京の20.1%、大阪の18.5%と比較してかなり低くなっている。やはり、結婚するのが当然という意識が強いせいだろう。

全国的に生涯未婚率がいまよりずっと低かった2005年の都道府県データを見ると、男性は1位が沖縄、2位が東京、女性は1位が東京、2位が沖縄だった。この段階では東京や沖縄という特殊な地域の特徴だった高い生涯未婚率が、それから15年経過する中で、それぞれの地域特色を帯びながら日本列島全体に広がったと言えよう。

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本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)。

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(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)

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