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人生がうまくいかない原因の9割は、あなたの「自己肯定感の低さ」にある

プレジデントオンライン / 2022年1月19日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tzido

なぜ人生はうまくいかないのか。心理学者のシュテファニー・シュタールさんは「人の行動の8~9割は無意識に支配されている。無意識は、子どもの頃に親や身近な人との経験を通じて刷り込まれた事柄の集合体。そのことに気づくことが生きづらさの解消の第一歩になる」という――。

※本稿は、シュテファニー・シュタール著、繁田香織訳『「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)の一部を再編集したものです。

■子どもの頃の経験が今も影響を与えている

誰もが、「自分の身が守られ、安心でき、快く受け入れられている」と感じられる居場所を必要としています。

子どものころに自宅がそのような場所であったら、それに越したことはありません。親から受け入れられ愛されていると感じている子どもは、「温かい家庭」という居場所を持っています。その子どもにとって、温かい家庭はまさに“リラックスでき、ありのままの自分でいられる場所”であって、大人になってからもいつでも優しく迎え入れてもらえる「心の拠りどころ」になるのです。

また、親から受け入れられ愛されていると感じている子どもは、「自分が生きているのは基本的に良いことだ」と思うようになり、大人になってからもこの感覚を持ち続けることができます。そのような人は、「この世界の中で、そして自分の人生において自分は守られている」と感じるのです。すると、自分を信じ、他者を信頼できるようになります。

この感覚は、「基本的信頼感」と呼ばれています。基本的信頼感は、心の拠りどころのようなものなのです。

とはいっても、子どものころに嫌な経験ばかりして、それがトラウマになっているという人も少なくありません。また、不幸な子ども時代を送っていても、その経験をなかったことにしようとしていたために、ほとんど覚えていないという人もいます。一方、自分の子ども時代は至って“普通”だった、あるいは“幸せ”だったと思っていても、じつはそう思い込んでいるだけという人もいます。

このように、不安や拒絶を感じた、子ども時代の経験をなかったことにしていたとしても、また、大人になってからそうした経験を軽く見るようになったとしても、これらの人たちの基本的信頼感がきちんと育まれていなかったことに変わりはなく、そのことが日常生活に表れてきます。

■「基本的信頼」がない人は不安ばかり感じる

自己価値感(自分に価値があるという感覚〕が低くなり、たとえば、話している相手やパートナー、上司、あるいは知り合ったばかりの人が自分のことを本当に好ましく思っているか、自分を快く受け入れてくれているのか、つねに懐疑的になります。自分のことを心から好きになることができず、不安ばかり感じ、人間関係をうまく築いていくことができません。基本的信頼感が育まれなかったために、自分自身の中にしっかりとした心の支えがないのです。

その代わり、他者から自信と保護と安心感、いわば、心の拠りどころを与えてもらおうとします。パートナーや仕事仲間だけでなく、サッカー場やデパートなどにも心の拠りどころを求めるようになるのです。

でも、そのような人や物から心の拠りどころを感じられるのはほんの一時的であるため、求めても毎回、がっかりすることになります。そのような人は気づいていないのです。自分の心の中に拠りどころを持っていない人は、外の世界でも拠りどころを見つけることはできないということを。

■経験は「無意識」に刷り込まれている

このように、遺伝的素質だけでなく、子ども時代に刷り込まれた事柄も、私たちの性格と自己価値感にとても大きな影響を与えます。心理学では、その影響を受けた人格部分を「内なる子ども」と呼んでいます。すなわち「内なる子ども」は、親など身近な人との経験を通じて刷り込まれた事柄(悪い刷り込みと良い刷り込み)の集合体なのです。

日本の女の子が泣いています
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

子ども時代の経験のほとんどは、顕在意識ではなく無意識(潜在意識)の中に保存されています。ですから、「内なる子ども」は“無意識の中の中核部分”であるともいえます。そこに、子ども時代に感じた不安や心配、苦しみ、それに、あらゆるポジティブな刷り込みもあるのです。

■無意識は絶大な力を持っている

ただ、ポジティブな刷り込みよりもネガティブな刷り込みのほうが、大人になってから大きな影響を及ぼします。なぜなら、子ども時代に受けた侮辱や傷を二度と味わうことがないように、「内なる子ども」がいろいろな対策をとるようになるからです。

また、「内なる子ども」は、子ども時代に満たされなかった「守ってもらいたい」「認めてもらいたい」といった願望を、大人になってから満たそうとするようになります。子どものころの不安と渇望は、大人になってからも無意識下で作用しているのです。私たちは自分のことを“自らの力で人生を築いていく自立した大人だ”と思っていますが、本当は、「内なる子ども」が私たちの認識、感情、思考、行動の多くを決めています。しかも、その影響力は私たちが思っているよりもずっと大きいのです。無意識が私たちの経験と行動の80~90%を操っているということは、科学的にも証明されています。無意識はまさに絶大な力を持つ心の裁判所のようなものなのです。

■理不尽な怒りの原因は、心の傷

このことをもっとわかりやすくするために、例を挙げてみましょう。

ミヒャエルは、自分にとって重要なことを妻のザビーネが忘れると、毎回ひどく腹を立てます。最近も、ザビーネがミヒャエルの好物のソーセージを買い忘れてしまい、ミヒャエルはそのことに烈火のごとく怒りました。ザビーネは、たかがソーセージを買い忘れただけで、なぜそんなにミヒャエルが怒っているのか理解できず、ぼうぜんとしてしまいました。しかしミヒャエルにとって、ソーセージを買ってきてくれなかったことは冷静さを失わせるほど重大なことなのです。どうしてこのようなすれ違いが起こったのでしょうか?

ビニール袋の果物や野菜
写真=iStock.com/OlgaMiltsova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/OlgaMiltsova

それは、ミヒャエルの心の中にいる「内なる子ども」が「ザビーネがソーセージを買い忘れたのは、僕のことをないがしろにしているからだ」と感じたからです。ミヒャエルの「内なる子ども」がこのように感じたのは、買い忘れたのがザビーネだったからでもなく、好物のソーセージだったからでもありません。過去に心に受けた深い傷のせいなのです。

■互いの「心の傷」に気づければ寄り添い合える

じつは、ミヒャエルは子どものころに自分の願望を母親に真剣に受け止めてもらえず、そのことで心に傷を負っていました。そのためミヒャエルにとって、ザビーネが自分の願望を満たさなかったことは、傷口に塩を擦り込まれるような行為だったのです。けれどもミヒャエルは、「ザビーネに対する自分の反応」と「母親との経験」が関連していることに気づいていません。それゆえ、ザビーネに対する怒りの感情を抑えられなかったのです。

もちろん、ザビーネも彼女自身の「内なる子ども」に操られています。ザビーネは子どものころに両親を満足させることがなかなかできなかったため、彼女の「内なる子ども」は“非難されること”にとても敏感になっています。ですから、ミヒャエルの非難は、ザビーネが子どものころに持った感情を再び呼び起こすことにもなったのです。ザビーネは、「おまえは価値のない、ちっぽけな存在だ」と言われているように感じ、屈辱感を抱き、傷つきました。このように些細なことでケンカになってお互いに深く傷つくことがあまりにも頻繁にあるため、二人共、離婚したほうがいいのではないかとときどき考えています。

不幸な若いカップル
写真=iStock.com/milanvirijevic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/milanvirijevic

でも、もし二人が「内なる子ども」の願望と傷に目を向けていたら、ソーセージや非難の態度といった表面的なことについてケンカするのではなく、本当の問題について話し合うことができていたでしょう。そうしたら、お互いにもっと分かり合え、攻撃し合うのではなく、寄り添い合えるようになっていたはずです。

■あらゆる争いの火種となる「内なる子ども」

「内なる子ども」に気づかないことで、夫婦間のケンカだけでなく、さまざまな争いが起こってきます。この関連性を理解すると、多くの争いが、自意識を持つ大人同士の争いではなく、「内なる子ども」同士の争いであることが見えてきます。

たとえば、ある会社員が上司から非難されて仕事を投げ出したときや、ある国の政治家が国境侵犯を理由に他国に対して軍隊による対抗措置をとったときも、同様です。多くの人が自分自身や自分の生活に満足していなかったり、争ったり、その争いが解決に向かわずどんどん激しくなっていったりするのは、自らの「内なる子ども」の存在に気づいていないからなのです。

■心の傷に気づくことが幸せになる前提条件

では、幸せな子ども時代を過ごし、基本的信頼感を得た人であれば、不安や問題をまったく抱えずに人生を歩むことができるのでしょうか? いいえ、そうではありません。完璧な親や完璧な子ども時代などあり得ないため、そのような人の「内なる子ども」も、かすり傷ぐらいは負っているからです。

シュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)
シュテファニー・シュタール著『「本当の自分」がわかる心理学 すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある』(大和書房)

「内なる子ども」は、親との経験からポジティブなことだけでなく、必ずネガティブなことも刷り込まれているのです。そして、わずかなネガティブな刷り込みでも、それによって後の人生で問題が起こってきます。たとえば家族以外の人を信じることができなくなったり、大きな決断を避けるようになったり、抜きん出るよりも実力を発揮しないままのほうがいいと思うようになったりします。子ども時代のネガティブな刷り込みは、自分自身に制限をかけて、自分の成長と他者との関係を妨害するものなのです。

つまり、ほぼすべての人に次のようなことがいえます。自分の「内なる子ども」と向き合い、友情を結ぶことで初めて、自分がどれほど強い願望を持っているのか、自分がどれほど深い傷を負っているのかがわかります。その心の中にある傷を受け入れ、ある程度まで癒すことができれば、自己価値感が高まり、最終的に「内なる子ども」が心の拠りどころを持てるようになるのです。

これは、幸せな人間関係をより平和的に、より友好的に築くための前提条件となります。また、自分に有益ではない関係や、それどころか病気にさせるような関係から解放されるための前提条件でもあります。

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シュテファニー・シュタール(Stefanie Stahl)
心理学者、心理療法士
約30年間の心理療法士、心理学者としての経験、および家庭裁判所鑑定人としての経験にもとづいて、「人とつながることに対する不安」「自己価値感」「内なる子ども」に関する数多くの書籍を執筆。わかりやすく読者の心に寄り添うように書かれた著書の多くがベストセラーになっている。膨大なカウンセリング経験と長年の研究から生み出された、心を改善する著者独自の手法は具体的かつ実践的であるため、専門家の間でも絶賛されている。ドイツのみならず他国でもセミナーを開催。専門家としてのテレビ、ラジオ出演、雑誌の寄稿も多数。

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(心理学者、心理療法士 シュテファニー・シュタール)

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