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元メガバンク支店長が断言…住宅ローンで"ボーナス払い"を選んではいけない納得の理由

プレジデントオンライン / 2022年2月8日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Edwin Tan

住宅ローンは「ボーナス払い」と「一律平均払い」のどちらが得なのか。元メガバンク支店長で不動産投資家の菅井敏之さんは「不安定なボーナス払いは絶対にNG。支払い延滞が続けば自宅も預金も差し押さえられる」という――。

※本稿は、菅井敏之『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち⁉』(アスコム)の一部を再編集したものです。

■「ボーナス払い」と「一律平均払い」のどちらが得か

住宅ローンを組むとき、ボーナス払いにしては「絶対に」いけません。誰もが思っているように、いまの時代、かならずボーナスをもらえる保証など、どこにもないからです。

もし、ローンの支払いを3回延滞してしまったら、アウトです。せっかく購入した家を差し押さえられ、それどころか、あなたの預金まで差し押さえられてしまいます。

ローンが払えないとなれば、銀行は債権回収会社に、物件をなんと100万円ほどで売ってしまいます。銀行は保険に入っていますから、100万円で売り渡したところで、痛くもかゆくもないのです。

債権回収会社は、「競売」にかける前に、「任意売却」にかけます。

競売は、所有者の同意のない強制売却を裁判所が認め、裁判所が所有者に代わって物件の購入者をオークション形式で決めること。

その手前で、不動産をふつうの販売方法で売り出すのが任意売却です。たとえば、5000万円で買ったものが、3000万~4000万円くらいで売りに出されます。4000万円で売れたら、3900万円が債権回収会社の収入になります。

こうしてあなたの資産は、あっという間に「ほかのだれか」のものになります。

ようするに、支払い延滞に陥ってしまうリスクを、できるかぎり小さくしておくことが大切です。ボーナス払いにすれば、月々の支払い額が少なくなり、返済完了までの期間も短くなりますが、危険とつねに隣り合わせになってしまうのです。

■自分で返せる金額は「年収の20%」くらいまで

借金したとき、自分で返すことができる金額は、「年収の20%」くらいまで、と私は考えています。銀行は「返済率35%(収入の35%)」まで貸してくれます。でも、こんなに借りてしまったら、生活は苦しくなるに決まっています。

住宅ローンの支払い額を低く抑えるために、年収の20%と最初に決めれば、購入できる物件の価格が自動的に決まります。

年収500万円の人であれば、住宅ローンの支払いは年間100万円。毎月では8万3000円になります。仮に住宅ローン(35年)の金利が1%だとすると、だいたい3000万円の物件になります(ネット上の住宅ローン・シミュレーションに数字を入れて確認してください)。

貯金や親からの援助などで頭金を用意できる人は、その額をプラスします。たとえば、頭金500万円が調達できたとすれば、価格3500万円の物件を探すことになります。

ところが、ほとんどの人は、物件の価格を決める前に、物件を先に見に行ってしまいます。「やっぱり、タワーマンションがいいわ」と奥さんにせがまれて、オープンルームに行ってしまうのです。

実際に見ると、豪華なエントランスや海が見える眺望に舞い上がってしまう。住宅展示場には、かならず不動産業者が立っていて、こういいます。

「ためしに35年の住宅ローンを組んだら、毎月の返済がいくらになるか、調べてみましょうか」

そうすれば、お客様が飛びつくことを知っているからです。「年収はおいくらですか? 奥様も働いていますよね?」と聞かれ、業者が電卓を叩いて「あ、充分買えますよ! 私にお任せください」となるわけです。

通帳と1万円札
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■「借りられる金額」と「返せる金額」は違う

しかし、「お金を借りることができる」と、「お金を返すことができる」は、まったく違います。借りられる金額を聞くと「自分はその額を返せるんだ」と勘違いしがちですが、これはとても危険です。

20代の若いころから家計の管理ができていれば、返せるかどうか感覚的にわかります。住宅費は収入の何パーセントくらいまで、と頭に入っているからです。

ところが、家計管理をしてこなかった人は、物件の魅力と不動産業者の甘い文言に負けて、自分の身の丈以上の物件を無理に購入してしまうのです。

夫婦2人の共稼ぎだと、不動産業者は2人の収入を合算してローンを組むことをすすめてきます。

でも、子どもが生まれて、もし奥さんが仕事をやめれば、奥さんの収入はゼロ。結局、返せなくなってカードローンを借りる。その支払いを、また別のカードローンから借りてくる。そんな悪循環に落ち込んで、最終的に破綻してしまった人を、私はたくさん見てきました。

そんな失敗をしないために、業者のいうことを聞きすぎず、自分で返すことのできる金額を、確実に把握しておく必要があります。

<答え>
ボーナス払いは危険! ローンは年収の20%までに抑え、一律平均で返済しよう。

■「繰り上げ返済する」と「手持ち現金を貯める」得するのはどちらか

借り入れ金3000万円、返済期間30年、金利1.2%、一律平均払い(ボーナス返済なし)という住宅ローンを組んで、マンションか戸建てを購入したとします。

ボーナスは住宅費には使わないと最初に決めました。返済額は収入の20%以下に抑えて無理もしていません。すると、年月がたつにつれて給料が上がりますから、100万円単位で余裕資金が生まれることは、充分にありそうです。そのとき、

1.まとまった資金を住宅ローンの「繰り上げ返済」にあて、期間を短縮するか、または返済額を減らす。
2.住宅ローンはそのままにして、まとまった資金は「貯金」にまわす。

どちらにするか、迷う人がいるかもしれません。

「繰り上げ返済」をするかどうかは、自分のライフプランによります。自分や夫婦・子どもの年齢を記した年表に、子どもの入学・卒業や結婚、自分の定年といった主要なイベントを書き込めば、簡単にライフプランをつくることができます。

ライフプランの表に各年の予定収入・支出を記入すれば、いつ、どのくらいのお金が必要かわかります。必要なお金は、必要な時点までに貯金(積み立て)などして、手元に置いておかなければいけません。

スーツを着た担当者に説明を受ける夫婦
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

■無計画が損を生む

ですから、ローン支払いを早く終わらせたい一心で、むやみに繰り上げ返済をしてしまってはダメです。

住宅ローンを返しすぎ、子どもの大学入学金が足りなくなったケースをしばしば耳にします。住宅ローンは金利の安い有利なローンなのです。お金が足りなくなって、住宅ローンより金利の高い学資ローンや教育ローンでお金を借りれば、かなり損をしてしまいます。

地震に加えて最近の異常気象や突風・豪雨・洪水などの被害を見れば、予期しない自然災害というのは起こりえますし、新型コロナウイルス感染症のような新たな病が発生する恐れもあります。ある程度まとまった貯金を持っていれば安心でしょう。

ライフプランとにらめっこしたうえで、大丈夫と確信できれば、返済にまわしてもいいでしょう。支払い総額が減り、純資産が大きくなるメリットはあります。

ただし、非常に安い金利でお金を調達できているのですから、無理に繰り上げ返済をする必要はない、と私は考えています。

住宅ローンでは、「団体信用生命保険」(団信)にも加入しているのです。これは契約者が亡くなるか高度障害状態になるかしたとき、残りの住宅ローンがチャラになる保険で、住宅ローンの金利の中から保険料が払われています。

このメリットを享受せずに繰り上げ返済をするのは、じつにもったいないことなのです。

■住宅ローン以上の金利を稼ぐ

住宅ローンの金利は、せいぜい1%程度。余裕資金が生まれたら、返済にまわすのではなく、投資にまわすほうがかしこいかもしれません。

たとえば、投資信託を勉強して、金利1%以上稼げるようにする。

仮に7%の運用でまわすことができれば、差し引き6%の収益になります。新しい資産を運んでくれる原資になるわけですから、わざわざ金利1%にすぎない住宅ローンを返すのはもったいないといえます。

将来、アパート経営をしたいと考えている人は、繰り上げ返済などせずに、できるだけ手元に現金を残しておいたほうがいいのです。

アパートローンを借りるときは、自己資金がいくらあるかが審査のうえで圧倒的に重要になるからです。これはほかの事業を始める場合も同じです。

余裕資金を住宅ローン返済に使ってしまうと、借金が減った代わりに、現金がない人になってしまいます。アパート経営は何が起こるかわかりません。万一のとき、手元にお金がないと対応できないのです。

貸したお金を返してほしい銀行は、何かあったとき、借り手がすぐに対応できるかどうかを見ています。

たとえば、貸し室10室のうち4室が空いてしまったら、アパートローンの返済が難しくなります。そのとき預金があれば、そこから返せると見てもらえます。

■大前提となるのはライフプラン

リフォームが必要になったときも同じです。手元に現金がなければ、きちんとリフォームができません。リフォームできなければ、借りてくれる人もいなくなります。悪循環に陥ってしまい、結局アパートを手放したうえに借金だけが残る、ということになりかねません。

菅井敏之『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち⁉』(アスコム)
菅井敏之『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち⁉』(アスコム)

リフォームは、設備の耐用年数などに基づいてある程度計画的に進めることができますが、突風で窓ガラスが軒並み割れてしまうような事態は、予測がつきません。

アパート経営をする人は、そういう自然災害の可能性も考えに入れたほうがよさそうです。どんな投資であれ、元本を割り込むリスクはかならずあります。それが嫌な人は、繰り上げ返済をすればいいと思います。

これは、その人の性格や適応力にもよるでしょう。

投資の知識や経験が備わっている人はチャレンジすればよいですし、投資に興味が持てず堅実にいきたい人は繰り上げ返済でいいのです。

いずれにしても大前提となるのは、あくまでライフプラン。自分のライフプランをつくって、お金を長期的に俯瞰(ふかん)しなければいけません。

<答え>
大前提はライフプラン。それを立て、いつ、いくら必要か見きわめたうえで、余裕があれば繰り上げ返済をしてもいい。ただし、低金利・団信加入など住宅ローンのメリットは大きく、むやみに繰り上げ返済する必要はない。住宅ローン金利以上で投資運用できる人、アパート経営など事業をする人も、繰り上げ返済の必要はない。

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菅井 敏之(すがい・としゆき)
元メガバンク支店長、不動産投資家
1960年、山形県朝日町生まれ。学習院大学卒業後、1983年、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事する。2003年には金沢八景支店長(横浜)に、2005年には中野支店長(東京)に就任。48歳のときに銀行を退職。その後、起業し、アパート経営に力を入れる。現在では、10棟70室のオーナーとして、年間6000万円の不動産収入がある。講演やセミナーでは、銀行員としてのお金を「貸す側」、不動産投資家としてのお金を「借りる側」、双方の経験を生かし資産形成のための銀行の活用法、不動産投資を解説。今まで3万人の相談を受け、現在もお金に関する個別相談を受けている。テレビ朝日系「庶務行員 多加賀主水シリーズ」をはじめ、銀行を舞台にしたテレビドラマの銀行監修を務める。報道番組や情報番組などのメディアに多数出演。著書『お金が貯まるのは、どっち?』は、51万部突破のベストセラーになった。最新刊に『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち?』(いずれもアスコム刊)がある。

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(元メガバンク支店長、不動産投資家 菅井 敏之)

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