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医療崩壊の元凶は医師会にあり…本当はあり余っているのに「病床が足りない」と騒ぐワケ

プレジデントオンライン / 2022年1月26日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sudok1

コロナ禍で医療の逼迫が懸念されている。これまで日本医師会は、医療崩壊を防ぐため国民に自粛を呼びかけてきた。しかし、元厚労省医系技官の木村盛世さんは「医療逼迫でも病床は余っている。医療体制を整えることが先ではないか」と指摘する――。

※本稿は、木村盛世『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

■夕張に病院がなくなっても死亡者数は変わらなかった

コロナ禍によって改めてわかったことは、日本の医療機関の多くが“薄利多売”で儲けていたということでした。

元夕張市立診療所所長の森田洋之医師(現在は鹿児島県南九州市の「ひらやまのクリニック」院長)から聞いた話では、夕張で大きな病院が倒産した際に、病床数が19の小さな医療施設しか残っていなかったのですが、それでも夕張市における死亡者数は変わらなかったということでした。

これはつまり、大病院に入院していても、医者に行かずに自宅療養していても、死亡する確率に大差がなかったということです。別の見方をすると今の病院は「来ても来なくても寿命に影響しない人たちを呼び込むことによって利益をあげてきた」ということでもあります。

健康診断やインフルエンザなど各種のワクチン接種、重症ではない程度の高血圧や糖尿病患者への薬の処方……。本来こういったケースでは、医療が必要ないのだとも言えます。医師は「とりあえず検査をしましょう」という姿勢で、腰が痛ければMRI、頭が痛ければ脳のCTを勧め、まずは検査を優先させます。何のために検査をするのか、何のために採血をするのか。患者のためという以前に、医療機関のためにそれらが行われていると言っても、あながち間違いではないのかもしれません。

■コロナ禍を機にやる気のない医師は淘汰されるべきだ

年をとっていればどこかしら悪いのは当たり前です。しかし、その当たり前のことを改めて検査をして示し、それに対して薬を処方することによって、多くの病院は利益を得ているのです。新型コロナが流行する以前、病院の待合室が高齢者のたまり場のようになっていたのは、こうした医療機関の姿勢があったためでした。

体に不調があることが当然の高齢者に診療をして、本当に必要かどうかわからない検査を繰り返し、「不調ですよ」と言うだけのことで潤ってきた。そんな開業医は「もういらない」とすら思います。

新型コロナかそうでないかにかかわらず、不必要な診療をやめ、必要な診療を行うやる気のある医師たちが生き残るべきなのです。

医師法17条で「医業」とは「医師しか行えない」との特権を国から与えられているのです。それが19条で「正当な理由なく患者を診ないことがあってはならない」とされているにもかかわらず私利私欲に走るのは、医師として許されることではありません。コロナ患者を率先して診た勇気をもった医療機関が存続し、それ以外は淘汰されるきっかけを新型コロナは与えてくれたのかもしれません。

夜の空の病院の廊下
写真=iStock.com/SimonSkafar
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SimonSkafar

■「医療崩壊」は国民の努力が足りないせいなのか

緊急事態宣言とそれに伴う外出自粛も医療崩壊を防ぐために行われてきたことです。だから医療の側としては国民が我慢をしている間に、新型コロナのための病床確保や医療体制を整える時間は十分にあったはずです。

それがいつの間にか国民に我慢を強いて「新型コロナをゼロに近づける」ことが目的になってしまいました。2020年11月、分科会会長の尾身茂氏が「個人努力だけに頼るステージは過ぎた」と語ったのもそういった思想があってのことでしょう。これはつまり、分科会も政府も医師会も2020年11月まで感染拡大防止を「国民一人ひとりの個人の努力」に頼り、病床確保などの手を打ってこなかったということです。そして、国民の努力が足りないから感染者が広がり、医療崩壊が起きると尾身氏は言っているのです。

ここまで言われてなぜ、国民のみなさんは変だと思わないのでしょうか。

私は第一波の頃から、「医療体制を整え、新型コロナに感染したときに安心して医療を受けられる体制をつくらなくてはならない」と発言してきました。するとあちこちの医療関係者たちからは「新型コロナの感染者が安心して病院にかかるなんてとんでもない。何をふざけたことを言っているんだ」と怒られました。

そのような医療体勢の下で、もしも日本の感染者数が欧米並みであったなら、とんでもなく悲惨なことになっていたでしょう。

イギリスでは感染のピーク時に、ICUの98%をコロナ用に使用していました。日本の医療環境において、海外ができたことができなかったのは本当に残念です。幸いなことに日本ではICUを火急に増やす必要がないくらいに感染者、重症者、死者数が少なかったために危機を免れることができたというだけのことです。

■医師たちの怠慢のせいで「居酒屋崩壊」が起きた

患者の受け入れ体制を整えてきた東京慈恵会医科大学付属病院のようなところがある一方で、何もせずに軽々と「医療崩壊」という言葉を連呼する人たちには怒りを禁じ得ません。実際、医療崩壊など起こっていないのですから。

医療逼迫や医療崩壊と言いながら、懸命にがんばっていた病院はごく一部しかありませんでした。

国内の約160万床のうちのほんのわずかの病床でコロナに立ち向かい、それでも辛うじて医療が回っていたということは、逆にいうと日本には“いらない医師”が多すぎるということにもなるでしょう。

現実に起きたのは「医療崩壊」ではなく、営業自粛を要請された居酒屋の崩壊でした。医療崩壊を防ぐために時短営業や外出自粛が繰り返され、経営が成り立たなくなった居酒屋従事者たちの生活が逼迫するという悪いジョークのようなことが起きてしまったのです。

■国民に“我慢”を強いるばかりで医師会は何もしない

2021年11月の時点で全国的に居酒屋の営業自粛要請は撤回されましたが、長期間の自粛が続いたことで人々の「夜に飲みに行く」生活スタイルは失われ、経営が回復するまでには相応の時間がかかるのではないかと思われます。居酒屋だけではありません。ほかにもさまざまな業種がコロナ自粛の後遺症に苦しんでいます。

2020年11月18日、日本医師会の中川俊男会長は「今週末を秋の我慢の3連休としてほしい。コロナを甘くみないでください」と、感染拡大地域との往来を自粛するよう国民に要請しました。“我慢の3連休”との言葉には、正直笑ってしまいました。「国民のみなさんが我慢をしてくださる間に、新型コロナに感染しても安心な医療体制を今から猛スピードで整えます」と言うならまだわかります。しかし実際は我慢、我慢という言葉ばかりで医師会が何をやっているのかわかりません。

何のための我慢なのか、何のための緊急事態宣言だったかという目的を皆が忘れ、我慢が主目的になっていることを象徴した言葉でしょう。彼らの本音は「自分たちの手を煩わせないよう、自分たち以外が我慢して感染拡大を防ぎなさい」ということなのかもしれません。

■医師が余っているのに「医療崩壊」

そして年が明けた2021年、メディアでは「医療崩壊が起きている」と指摘され、再び緊急事態宣言が発令されることになりました。私は年頭1月5日に配信された『ABEMA Prime』で次のように発言しています。

〈昨年の春以降、国や医師会は国民の頑張りに応えて、医療を総力戦の体制にしておくべきだった。私は厚生労働省にいたし、医師でもあるので、非常に憤りを感じている〉
〈医療崩壊だけでなく居酒屋崩壊が起き、社会経済活動が立ち行かなくなってしまう。そうなれば失業者、自殺者も増えるだろうし、社会不安が増大する〉

しかしその翌日の1月6日、中川会長は記者会見で「現実はすでに『医療崩壊』だ」と話したのです。

この会見を見て私はめまいを覚えました。日本医師会は新型コロナの感染者を診療しない開業医に対して死に物狂いの働きかけをしたのでしょうか。“医療崩壊”を防ぐために緊急事態宣言が発出され、国民は我慢の自粛生活を送っているのです。

■医師会会長はどこまで“上から目線”なのか

続いて1月20日、中川会長は「現在、緊急事態宣言地域を中心に医療崩壊という状態が多発し、日常化してきました。これが面で起こると医療が壊滅状態になります」「現状のままではトリアージもせざるを得ない状況です」と訴えました。

木村盛世『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』(宝島社新書)
木村盛世『誰も書けない「コロナ対策」のA級戦犯』(宝島社新書)

さらに1月27日には「2月7日までが期限の緊急事態宣言について延長が必要」、3月3日には「徹底的に感染者を抑え込んだうえで解除しなければ4月以降に第四波を招くおそれ」ともコメントしています。

どこまで“上から目線”なのでしょうか。自粛を頑張る国民に引き続きお願いをするのであれば、まず「謝罪」をして、そして「心からの感謝」を伝えたうえで「引き続きのお願い」をするべきなのです。

医療を支えるために休業要請を出された業種の我慢はこうした発言のあった間も続いていたのです。しかし、中川会長の物言いからは「自分たち医師会が一番偉いのだ」という思いがにじみ出ているようでした。

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木村 盛世(きむら・もりよ)
医師
元厚労省医系技官。筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH、公衆衛生学修士号)。優れた研究者に贈られる、ジョンズ・ホプキンス大学デルタオメガスカラーシップを受賞する。内科医として勤務後、公衆衛生の道へ。米国CDC(疾病予防管理センター)多施設研究プロジェクトコーディネイターを経て帰国。結核予防会に勤務。厚労省統計情報部ICD室長などを経て退職。現在は一般社団法人パブリックヘルス協議会代表理事。専門は感染症疫学。「TVタックル」などに出演し、厚労省内部から杜撰な厚生行政の実態を告発している。著書に『ゼロコロナという病』(産経新書)、『新型コロナ本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥出版)などがある。

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(医師 木村 盛世)

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