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「学歴では仕事能力はわからない」カリスマ経営者・永守重信が考える"デキる社員の3つの共通点"

プレジデントオンライン / 2022年2月8日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pixelfit

実社会で成果を挙げていく人には、どんな共通点があるのか。日本電産の永守重信会長は「仕事の優秀さは、卒業した学校のブランドや成績とはまったく相関関係がない」という。23年ぶりの自著『成しとげる力』(サンマーク出版)より、永守氏の考える「仕事ができる社員の3つの共通点」を紹介しよう――。

■型やぶりの入社試験がなぜ功を奏したのか

創業当時に苦労したことの一つに、人材採用の問題があった。会社を興(おこ)して数年の間は、新卒採用を計画しても、まったく人が集まらなかった。

会社訪問の当日、十人ぐらいの学生には来てもらえるだろうと、十人ぶんの寿司を用意して待ったが、日が暮れても一人も現れず、夜になって社員たちで黙々と寿司をつついた苦い記憶もある。

そこで、考えた。一流大学で高等教育を受けた人材が来てくれないのなら、集まってくる人たちのなかから、見どころのある人材を発掘して、私たちの手で一から育てよう。学校の成績を度外視した採用試験で、磨けば宝石のように光る原石を探そう、と。

では、どのような人材が磨けば光る能力をもっているのか。私は、それまでの会社員生活を振り返り、「この人は仕事ができるな」と感じた上司や同僚たちの顔を思い浮かべながら、一つの結論に達した。

それは、声が大きく、出勤時間が早く、そして食事が早いという、三つの共通点があるということだ。

■声が大きく、出勤時間が早く、食事が早い…

リーダーシップを発揮して、人をぐいぐい引っ張っていく人は声が大きいことが多い。相手の目を見て、自信に満ちた声ではっきりと話す。これに対して、声が小さい人は覇気が感じられず、頼りない傾向にある。

永守重信氏

出勤時間が遅い人は、何事につけても仕事がルーズでミスも多くなりがちだ。逆に早く出勤する人には心にゆとりが生まれる。このゆとりが仕事の成否に大きく影響するのだ。将棋や囲碁の世界でも先手必勝というし、相撲でも立ち合いで勝負が決まる。先んずれば人を制す。ビジネスの世界も同じだ。

三つ目の食事の早さはどうか。これも一流の人間になるための条件といえる。何よりも早飯の人は仕事も早い傾向がある。競争社会を生き抜くためには、物事を早く処理できるということが重要なポイントだ。

さらに、食事が早いということは健康な証拠でもある。胃腸が丈夫でなければ早飯には耐えられない。いくら頭がよくても、しょっちゅう病気で休まれては戦力にならない。

■「大声試験」と「早飯試験」を実施した結果

このような発想から、まず行ったのが「大声試験」である。

ある文章を学生に読ませて声が大きい順番に採用していくというもので、自信をもって堂々と読んでいるかどうかも選考の基準となった。

また、「早飯試験」も行った。仕出し弁当屋さんにスルメや煮干しをはじめ、よく噛(か)まないと飲み込めないようなおかずばかりを入れてほしいと注文し、この弁当を十分以内に食べた学生は全員合格と決めた。

同じように、マラソンを最後まで走りきった者から順に採用する、試験会場に早く来た者から順番に採用するなどといった型やぶりの採用試験で新卒者を採用して、世間のひんしゅくを大いに買ったものだ。

しかし、現在、日本電産グループの屋台骨を支えている人たちを見ると、このときに採用した人材がその後もすばらしい成果を挙げてくれていることがわかる。

なかでも成果が挙がったのが「早飯試験」で、入社してからの仕事の成績と早飯試験の順位を比較してみると、ほぼ一致していたという後日談もある。

■成功の条件は「頭のよさ」以外のところにある

以前のことだが、さまざまな業界で大きな成果を挙げている経営者十五人と、立て続けにそれぞれ一対一で食事をする機会があった。それによってあらためて、これまでの考えが間違っていなかったことを確認したのである。

十五人に共通していたのは、人一倍働くことを苦にしない。そして個性が強く、どちらかというと奇人・変人タイプ。そのうえ人が大好きで、時間があれば人と会っている、という三点だった。

そして、いずれの人も食べるのが早く、残さずに全部平らげていた。つまり、早飯なのだ。やはり早飯は成功の条件に違いないと、意を強くしたのである。

この十五人の経営者の特徴をみてもわかるように、実社会で成果を挙げていく人の条件は、いわゆる世間でいわれるような頭のよさだけではない。

私のこれまでの経験からしても、またこれまで入社した社員たちのデータをとってみても、仕事の優秀さは、卒業した学校のブランドや、そこでの成績ともまったくといっていいほど相関関係がなかった。

■「パチンコなら誰にも負けない」男子大学生を採用したワケ

たとえば、こんなこともあった。先に述べたとおり新卒採用をするべく各大学に求人票を出したものの一人も集まらなかったのだが、その後、新聞に求人広告を打ったところ、六人の学生が応募してきた。

そのうちの一人が、「パチンコなら誰にも負けない」という。聞けば大学の四年間、毎日パチンコに明け暮れ、月に十万円ほども稼いでいたそうだ。

私はそこで、「パチンコについて作文を書いてこい」という宿題を出した。原稿用紙二十五枚にわたって彼が書いてきた作文を読んで、私は舌を巻いた。

パチンコのどんな台を選ぶべきか、釘の角度はどのぐらいがよいか、どんなコンディションでどうパチンコに臨むべきか、実に細かく考察がなされている。

孤独なパチンコ ギャンブラー
写真=iStock.com/Mlenny
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mlenny

大学の成績は惨憺(さんたん)たるものだったが、私は思い切って彼を採用することにした。はたして入社してから彼は大きな成果を収め、幹部として会社を支えてくれる人材に成長した。そして、レポートを書かせると群を抜いてうまい。

彼を採用したのは、その鋭い観察分析力と、学費をパチンコで稼ぐという気概、それから作文の巧みなことからだったが、学業の成績よりも「これだけは人に負けない」という何かをもっている人のほうが、いい仕事をするというよい例ではないかと思う。

■これからはEQの高さが求められる

これまでの日本社会では、どちらかといえば偏差値の高い高学歴の人材が重用されてきた。しかし、グローバル社会の到来とともに、その流れは根底から崩れ去っている。IQ(知能指数)値によって表される優秀さよりも、EQ(感情指数)値の高さが求められるようになってきたのだ。

EQの高さとはどういうものか。人間としての総合的な知性と感性の豊かさ――すなわち、どんなに苦しくとも己を励まし、情熱・熱意・執念で困難に立ち向かう能力。他人の苦しみを深く読み取り、人心を束ねる能力。また、いかなる風雪にも耐え得る強い心ともいえる。

もちろん、それらは一朝一夕に身につくものではない。しかし、筋肉と同様、鍛えれば鍛えるほど、どんどん伸ばせるのがEQだ。

IQは、もって生まれたものが大部分だが、EQは努力次第でとてつもない差がついてくる。自分の進む方向をしっかりと見据えて努力を重ねれば、誰もが一番になれる時代が到来したのだ。

また、AI(人工知能)時代の到来で、EQ値が高い人材への期待は、ますます高まっていくだろう。AIやロボットの登場で、人が行っている仕事の約半数は取って代わられるという。その場合、人間にしかできない仕事の特徴として挙げられているのが、創造性や共感性、それに非定型性だ。

高度に複雑化した社会では、他者への共感や理解、説得や交渉といった、複雑で臨機応変な対応が求められる場面が増えてくる。これこそ、まさにEQが本領を発揮する分野といえる。

AIだけで物事が決まっていくと、社会は砂漠の中で暮らしているような殺伐とした雰囲気に覆われる。そこに潤いを与えてくれるのが、EQの力だ。どのような社会にあっても、泣いたり、笑ったりする人間の喜怒哀楽をおろそかにしてはならない。

仕事からの途中でぼやけたビジネスの人々
写真=iStock.com/AzmanL
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AzmanL

■人間としての器を大きくする、こんな方法

それでは、EQを高めるために大切なこととは何だろうか。まず成功体験をもつことである。自ら計画した仕事をやりとげたとき、人は身が震えるほどの感動を味わう。そうした体験の積み重ねがEQを高めることにつながってくるのだ。

そしてもう一つは、苦しみを乗り越えることである。いくら目標を達成しても、それが誰でもクリアできる低いハードルだったら、感動など湧いてこない。高いハードルを前に、逆境に苦しみながらもそれを乗り越えたときにこそ、深い喜びが味わえるものだ。そうした体験の積み重ねが、感性を磨くことにつながるのだ。

EQとはまた「人間力」といい換えてもよい。人間力を高めるとは、人間としての「器」を大きくしていくことでもある。

必死に努力を重ねることで、人としての器は大きくなっていく。それまでがたとえば一升枡(ます)であったなら、それを二升枡、三升枡に変えていく。それにはもちろんのこと、ある程度の時間がかかる。

そのためには、挫折をしたり、壁にぶち当たったりしながら、そこから学ぶことが必要だろう。たくさん本を読んで学ぶことも必要だろう。また多くの人に会うことも器を大きくすることにつながる。

自分よりも一回りも二回りも大きい、三升枡の人に会って、自分と何が違うのかじっくり観察し、考察することが大きな学びになる。

■「手紙は自筆で書いたほうがいい」

一升枡のままでは一升しか入らない。より大きな仕事をするのであれば、その仕事の大きさに応じた自分の「器」をつくらなければならない。

永守重信『成しとげる力』(サンマーク出版)
永守重信『成しとげる力』(サンマーク出版)

器の中には、余裕もなくてはならない。「忙しい、忙しい」と口ぐせのようにいう人が多いが、余裕というものは、自らの工夫で創(つく)り出すものだ。その器の中に何を入れるかなのである。

仕事もする、ゴルフもする、毎晩飲み歩いてカラオケもするとなれば、あっというまに器がいっぱいになってしまう。仕事の器を大きくしようと思ったら、ムダなことはやめて、仕事に集中しなければ器を大きくすることはできない。

ただ、本当に大切なことはしっかりと行っていかなければならない。たとえば、手紙だ。

世の中では、超多忙な人ほど自筆で手紙を書く。贈り物をしたときに、ふつうは秘書に代筆させて印刷されたハガキが返ってくることが多いが、世の中で超多忙といわれている人ほど、すぐに自筆で御礼の手紙が返ってくる。

だから当社の役員には、何かお祝いをもらったときには、必ず自筆で御礼の手紙を書くようにいっている。そうしたことの積み重ねが、人間的な器を大きくすることにつながるのだ。

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永守 重信(ながもり・しげのぶ)
日本電産 代表取締役会長
1944年、京都府生まれ。6人兄弟の末っ子。京都市立洛陽工業高等学校を卒業後、職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科を首席で卒業。1973年、28歳で日本電産を創業し、代表取締役に就任。同社を世界シェアトップを誇るモーターメーカーに育てた。また、企業のM&Aで業績を回復させた会社は60社を超える。代表取締役会長兼社長(CEO)、代表取締役会長(CEO)を経て、2021年より代表取締役会長。著書に『成しとげる力』(サンマーク出版)、『人を動かす人になれ!』(三笠書房)など。

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(日本電産 代表取締役会長 永守 重信)

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