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「日本はコロナでいつまで失敗を繰り返すのか」現役医師がそう溜め息をつくワケ

プレジデントオンライン / 2022年1月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Satoshi-K

新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、「まん延防止等重点措置」が各地に適用された。医師の大和田潔氏は「新規感染者を抑えるために人々の暮らしを犠牲にするのは本末転倒だ。コロナ専門家は再び失敗を繰り返すことになる」という――。

■コロナ専門家が作り出してきた恐怖から離れるべき

政府は関東や東海など16都県に「まん延防止等重点措置」を発出しました。25日には北海道や大阪、京都、兵庫の関西3府県など計18道府県を加える見込みです。

飲食店の時短営業や「人数制限」を求め、暮らしや経済が再び傷つけられ始めました。WHOが渡航規制を「オミクロン株では実施する価値がなく、経済的・社会的な負担を各国に強いる」を理由に撤廃したにもかかわらずです(注1)

専門家が中心になって日本で行われてきた「自粛」と「ワクチン接種」に偏ったコロナ対策のマネジメント失敗が、オミクロン株によって繰り返され、改めて鮮明になりました。

失敗の原因は明確です。一つは新規PCR陽性者数(感染者数)に拘泥し、新型コロナが弱毒・常在ウイルス化したにもかかわらず、対策の基本的な内容を見直すことを怠ったためです。

揚げ句の果てに2類のまま「若者は検査せずに診断」と専門家が対策を放棄し始めたため現場は迷走しカオス状態に陥っています。防護服は必要なんでしょうか。若者って何才まででしょうか。ふんわりしています(注2)

実際、「重点措置」の効果に対して自治体のトップからはその効果を疑問視する声が上がり判断が二分されています。奈良県の荒井正吾知事は「まん延防止等重点措置や緊急事態宣言は効果がない」と明確に表明し重点措置を要請しませんでした(注3)

すでに重点措置を実施している地方では人流抑制による経済的損失が増大していますので(注4)、市民生活を守るために現状を冷静に観察すれば当然導かれる判断です。感染拡大の恐怖に支配される中でもなされた、県民を守る勇気のある適切な発言だと言えるでしょう。

私たちと新型コロナの付き合いは2年以上になり、幸い当初からエボラ並みの致死性の高いウイルスではなく、昨年からさらに弱毒化して常在ウイルスに変化してきたことが観察されています。

にもかかわらず感染者が増えるたびに発出される緊急事態宣言や重点措置で、私たちは暮らしや経済が壊される危険性を実感してきました。本来はコロナ専門家がそのことを明晰に分析して社会不安を収束させるべきなのですが、日本では私たち自身が終了させないと生活や仕事など暮らしを自滅させることになりかねない状況です。

■流行ピークが過ぎた沖縄のデータ

国内で新型コロナウイルス(オミクロン株)が確認されてから既に2カ月経過します。どういう性質のものだったのか、記憶に新しい沖縄県内での感染状況を振り返ってみましょう。

2022年年始からの流行は、沖縄県にとって過去最大のものでした。沖縄県の発表資料によると、元日が52人だった感染確認が、15日には過去最多の1日1829人にまで急増しました。現在も1000人以上が陽性になっていますが、ピークは過ぎつつあります。

沖縄県 確定日別陽性者数 (n=75316)
出典=沖縄県ウェブサイト

死亡者数はどうでしょうか。11月12日の発表以降は1月22日の発表(399例目)までゼロが続きました。1月24日時点の重症者数は5人、中等症は251人となっています(注5)

沖縄県那覇市の夏の夕暮れ
写真=iStock.com/wataru aoki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wataru aoki

全国集計を見ると、確認された陽性者数は1日5万人を超える日もありましたが、死亡者は1日10人前後で推移しています。どの都道府県も沖縄と同じ経過をたどるでしょう。1つの県で1人の死亡者がいるかいないかです。

オミクロン株の無症状者は90%以上にのぼります。もともとデルタ株でも、継続的に7~8割が無症状でした。陽性者数がどんなに増えても「無症状」ならカゼでもありません。

この陽性者数の増加と、重症化や死亡被害の乖離(かいり)は「リンク切れ」、海外では「decoupling」(デカップリング、非連動)と呼ばれます。日本では最初から観察されていて、デルタ株の感染が広がった時にさらに明確になっていました。

こういったことは、みなさんご存じのとおりメディアは報じません。

■弱毒なのは世界的に同様、日本は「さざ波以下」

この現象は、オミクロン株が最初に発見された南アフリカの流行でも同じです。南アフリカでは最大の陽性者数を記録しましたが、既にピークは過ぎています。ピークが鋭く立ち上がり、3~4週間ほどで落ち着きました(注6)。

南アフリカにおける1日当たりの新規感染者数
出典=worldometer South Africa
南アフリカの1日当たりの死者数
出典=Wordmeter South Africa

死亡者数はこちら(図表3)です。デルタ株に比べてはるかに少ない被害であることがわかります。沖縄で観察されていることと同じです。

今度は世界と日本の被害の実態である100万人あたりの死亡者数を比較してみましょう。日本の場合は「コロナが流行しはじめた最初から」世界の流行に比べると「さざ波」です。

現在の流行は、世界比較ではグラフ上は山を形成できないほど少数でした(Our World in Data)。ワクチン4回目接種をおこなっているイスラエルでは陽性者数が激増を始めています。

100万人あたりの死亡者数
出典=Our World in Data

■専門家と地方自治体による無意味な防御策

歴代の新型コロナウイルスもオミクロン株も正体が不明な未知のウイルスではありません。日本で観察されてきた現象は以下です。

1.新型コロナウイルスの新規陽性者数や死亡者数は世界的にみて最初から「さざ波」だった。
2.新規陽性者数と死亡者数は、デルタ株から連動しないことが明確になり「リンク切れ」を起こしている。オミクロン株ではさらにそれが顕著になり、沖縄では死亡者はほぼゼロだった。その傾向は世界的なものである。
3.ワクチン接種を頻回におこなっても、陽性者数は増加する。
4.ウイルスの弱毒化によってワクチンの必要性が急速に失われている。不要なPCR追跡と濃厚接触者排除によって社会混乱が繰り返されてきた。全国民に検査とワクチン接種を指示した専門家が対策の放棄を始めた。
5.不用意な社会自粛が続けられ日本経済は自滅している。世界に比べて復興が遅れひどい状況がつづけられている。

ここで強調しておきたいことがあります。それは、私たちが恐れるべきは新型コロナよりも、経済の低迷による暮らしが脅かされるという現実です。

唐鎌大輔氏(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト)はコロナ対策としての規制強化がどれだけ企業や家計に影響を及ぼすか、プレジデントオンラインの記事「『目先の世論には逆らえない』岸田政権がコロナ規制に突っ走る“悲劇的な結末”」で明確に指摘しました(注7)

新型コロナを抑え込むために連発される自粛や規制によって、経済は悪化するばかりです。日本の場合はコロナ以前から長期的に低迷していましたから、世界に比べてより深刻です。それが私たちの雇用や給料、日々の暮らしに反映されています。

■人々の恐怖が為政者を萎縮させる悪循環

冒頭で、重点措置の効果を疑問視し、要請の見送りを表明した奈良県知事の「勇気のある発言」を紹介しました。

なぜ「勇気が要る」かというと、新型コロナがほとんど無害であり、常在するものになっても「コロナはあくまで忌避すべき」という間違えた認識が国民の間から払拭(ふっしょく)されないからです。とにかくどんなものでもコロナはダメなんだという意識です。

岸田文雄首相は「やりすぎのほうがまし」と述べるなど、オミクロン株が確認されて以降、水際対策を強化するなどした結果、内閣支持率は政権発足から過去最高となりました。まん延防止重点措置の適用もこの延長線です。

1月23日に投開票された沖縄県名護市長選や7月の参院選など、今年は重大な選挙がめじろ押しです。政権は恐怖と不安にさいなまれ続ける世論の声を決して無視できません。

まず、私たちの意識を変えなければなりません。前述の唐鎌氏の発言を借りれば、「経済に与えるダメージがクローズアップされてくれば『やり過ぎの方がまし』という現在のコロナ対策の基本姿勢」を修正されていくことでしょう。

そもそも「コロナはあくまで忌避すべき」という認識を、世界や日本で確認されたデータを基に、私たちの意識をアップデートしていかなければ経済も暮らしもよくなりません。

それを最初から放棄して、いまだに自粛とワクチン一辺倒を続けているのが、コロナ専門家です。コロナの感染拡大当初から継続されているマネジメント失敗の本質と人災の原因だと言えるでしょう。いつまで感染拡大とか濃厚接触なんて言っているのでしょう。本来ならコロナのさらなる弱毒変化をアドバイスするのは、専門家の仕事のはずでした。

マスク着用で自転車通勤する男性
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

■子供にワクチンは必要なのか

専門家のマネジメントの失敗は、ムダな行政にもつながっています。無症状者や軽症者が圧倒的多数であるにもかかわらず、PCR検査と濃厚接触者の追跡を保健所は強いられ、機能不全に陥ってます。日本経済新聞は「濃厚接触180万人試算、社会機能に支障 人手不足深刻に」という記事で、その現状を報じています(注8)

子供たちにも悪影響が出ています。

私は最近、クリニックを訪れたお子さんから「先生、聞いて。学校のどこかに陽性になった子が出て、休校になっちゃったんです。いろいろな楽しみにしていた催し物も全部キャンセル。そのお子さんも無症状みたいなんです。何のための休校なんですか」と質問されました。

私は「常在ウイルスをムダに調べるからだと思います」と答えるのが精いっぱいでした。

ある小児科に勤める方が「とにかく行政が面倒です。無症状の子供でも陽性だと申請したり、濃厚接触を隔離したり。とにかく無意味なことの連続です」と教えてくれました。

「コロナはとにかくかかっちゃダメ、かかったら終わりと思っている親御さんが多いと思います。遺伝子RNAワクチンが効くかどうか、子供がコロナで重症化するかどうかなんて眼中にないと思います。とにかく打たなくては、という親御さん多いと思います」

もう、ウイルス感染がどうこうではない世界になっています。必要性や有効性がなくても接種するという医療科学を無視した異次元の精神論です。いまだ治験中の遺伝子RNAワクチンが本当に必要なのか、デメリットを超えるメリットはあるのか冷静に考える必要性があります。

ほとんど無害なウイルスで、外出を控えたり、休校したりするのもナンセンスです。

まん延防止重点措置の国への要請に慎重な姿勢を示している県もあります。立派な判断だと思います。

2年前から繰り広げられてきたものが永遠に続けば日本は自滅します。彼らが、まん延防止重点措置を回避し中折れしないことが希望につながります。

■これから私たちがすべきこと

これまで見てきたように、コロナ専門家のマネジメントの失敗は、私たちに恐怖心を増長させ、自粛や規制によって経済をいたずらに冷え込ませました。

デルタ株以降、感染者数と死者数の「リンク切れ」(あるいはdecoupling、非連動)が鮮明になったにもかかわらず、対策のアップデートを怠ってきました。

では私たちはこの不条理にどう立ち向かえばいいのでしょうか。

それは、自分たちで離脱していくほかありません。冷静に、確認されたデータを基に私たちが意識をアップデートしていくことが重要だと思います。

私は期待を込めて、オミクロン株の感染拡大が「最後の不条理」になると考えています。感染確認者が急拡大するほど被害との「リンク切れ」や「decoupling」を多くの人がリアルな観察される事実として強く認識すると考えているからです。

私がこのコラムを開始した2年前は、専門家とメディアが土砂降りの雨を降らせる真っ暗闇のなか「事実を知らせて希望の灯りをかかげなくては」と思っていました。今では患者さんとの会話やウェブ上のさまざまなコメントを拝見するにつれ、日本の方々の洞察力や慧眼を専門家以上に信頼して良いと確信するようになりました。

「コロナは終わった。どちらでもいい」ということの認識が重要です。私は、その後起きるだろうことを予想して2020年6月に「日本のコロナウイルスは終わった。さあ旅にでよう」という記事を書きました(注9)

記事の最後には「私たち国民は、それを学ぶために大変な苦労と借金をしてしまった。自分の疲れと経済の疲れを癒やすために国内旅行にでかけよう。経験を積んで、新しい旅にでよう」としています。

「要は風邪をひいたから同じような風邪をひかなくて済んだというだけのことだ。マジックのタネというのはシンプルなものだ」ともお伝えしていました。マジックのタネはその後、理化学研究所や国立遺伝学研究所によって明らかにされつつあります(注10、11)

■パンデミック騒動の終着点はもうすぐやってくる

その後、私たちは実際の経験を通して学んできました。すでに生命の危機を脅かすコロナ流行自体が終焉しているということです。常在ウイルスを多数検出しても何の意味もありません。たまたま陽性になった人を断罪し暮らしを壊す意味しかもちません。

とうとう東京都は「濃厚接触者には自分で連絡」になりました。保健所職員さんのこれまでの苦労はなんだったのでしょう?(注12)

ワクチンも接種したい人は接種すれば良いし、副作用がひどかった人は避けてもいい。接種しなかった人はしないですませば良いし、ウイルス被害が無風で必要ない人々は接種しなくてよいと思っています。

ウイルスも私たちも急に変化することはありません。冒頭の国際比較グラフをご覧になってみてください。以前から観察されていた「リンク切れ」などが、さらに明確に観察されていくことでしょう。

検査もせず解熱剤を内服していれば治る——。私たちがコロナの存在を忘れて「どっちでもいい」と寛容になることが、この一連のパンデミック騒動の終着点になるでしょう。私たち自身が、私たちの暮らしと未来を守るのです。

私たちは、いまようやく長い2年間の高価な授業料と犠牲を払って勉強してきた旅を「自由に判断する自律する自分たち」みんなで終えようとしているのです。

洞窟の出口に立つ男性
写真=iStock.com/da-kuk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/da-kuk

参考資料
1.WHO、コロナ渡航制限「価値ない」 撤廃・緩和勧告 日経新聞2022年1月20日
2.感染者さらに急増なら「若者は検査せずに診断」 専門家有志が提言案 朝日新聞 1月20日
3.荒井知事"まん延防止等重点措置や緊急事態宣言は効果がない" NHK NEWS WEB
4.「客が激減」「若い人がマスクを…」まん延防止下、週末の観光地 毎日新聞 1月22日
5.沖縄県ホームページ 県内における感染状況について 
6.worldometer South Africa
7.「目先の世論には逆らえない」岸田政権がコロナ規制に突っ走る"悲劇的な結末" 投資家の支持離れで経済は大打撃…
8.濃厚接触180万人試算、社会機能に支障 人手不足深刻に 日経新聞 1月20日
9.現役医師の提言「日本のコロナウイルスは終わった。さあ旅にでよう」 「自粛警察」を育てたメディアの罪
10.新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞 -体内に存在するもう一つの防御部隊- 理化学研究所2021年12月8日
11.デルタ株、修復能力低下 三島の国立遺伝学研など 国立遺伝学研究所 2021年10月31日
12.<新型コロナ>小池知事「感染者が一番よくご存じ」 本人から濃厚接触者への連絡呼び掛け 東京新聞2021年1月21日

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大和田 潔(おおわだ・きよし)
医師
1965年東京葛飾区生まれ、福島県立医科大学を卒業後、東京医科歯科大学神経内科にすすむ。厚労省の日本の医療システム研究に参加し救急病院、在宅診療に勤務の後、東京医科歯科大学大学院にて基礎医学研究を修める。東京医科歯科大学臨床教授を経て、あきはばら駅クリニック院長(現職)。頭痛専門医、神経内科専門医、総合内科専門医、米国内科学会会員、医学博士。著書に『知らずに飲んでいた薬の中身』(祥伝社新書)など。監修書に『のほほん解剖生理学』『ホントは看護が苦手だったかげさんの イラスト看護帖~かげ看~ 』『じにのみるだけ疾患 まとめイラスト』(いずれも永岡書店)などがある。

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(医師 大和田 潔)

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