開成や桜蔭に合格する子も描いてしまう…二等辺ではない二等辺三角形、直角ではない直角三角形「実例」
プレジデントオンライン / 2022年1月31日 11時15分
※本稿は、『プレジデントFamily2022年冬号』の一部を再編集したものです。
■開成や桜蔭に合格する子も間違えて描いてしまう
図形は「センス」が勝負だと思っていませんか。
たしかに図形感覚が優れている子は実際にいます。ではそうでない普通の子はあきらめるしかないのかといえば、そんなことはありません。図を正確に描くという当たり前のトレーニングを繰り返すことで、図形問題を解く力は向上します。
私の算数教室では、入塾した3、4年生のうちは、多くの時間を図を描くことに費やしています。なぜなら今の子に一番欠けていることだからです。小学校や一般の塾では、図形を正しく描く練習をほとんどしていません。
実際、将来、開成や桜蔭といった難関中学に合格するような優秀な生徒でも、基本的な図形をフリーハンド(定規を使わない)で描かせると、おかしな図を平気で描いてしまうことが多いのです。
二等辺ではない二等辺三角形。直角ではない直角三角形。そんな図を描いて違和感を覚えない子は、高学年になって図形の応用問題、とくに作図問題で苦労します。
そういう子の図形の学習は、公式暗記や解き方の手順を覚えて解くという作業中心の学習となり、図形本来の学びとは違うものとなります。
文章題などの数式中心の算数は、シンプルにいえば手順の問題です。解き方の手順を学ぶことで解けるようになります。
■図形を描くことで鍛えられる洞察力や発想力
一方、図形の問題は、手順だけでは解けません。図形ができる子は、図形の性質を見抜くことができるだけでなく、図形をイメージすることが得意です。
数式中心の大学入試において、初等幾何的な図形感覚を東大・京大などが重視する理由も、多分ここにあります。
図形を描くことで鍛えられる洞察力や発想力は、今の社会でもとても重要です。
複雑な物事の本質を見抜く、異質な相手と自分との考えの類似点を見つける、議論の妥協点を思いがけないところに発見する。
図形を正しく描くことから始まる図形学習は、創造する脳を刺激するという大きな役割を担っていると思います。
■なぜ、おうぎ形がつぶれている図形を描いてしまうのか
まずは、直線から正しく描いてみよう。
さて、お子さんに、三角形やおうぎ形などの図形を描いてもらってみてください。
図表2のように、平行なはずの辺が平行でなかったり、直角が正しく直角になっていなかったり、おうぎ形がつぶれていたりしないでしょうか?
これらは、算数ができる子にもよく見られる例です。将来、自分で描いた図を使って解く問題で苦戦することのないよう、日ごろから、「正しい図を描く」ことを意識した図形学習を進める必要があります。
ではまず何から始めたらよいか。
うちの子はまだ低学年だから図形は教科書で習っていない、などと言わずに、すぐに始めてほしいと思います。
最初のうちは遊び感覚でいいのです。上に兄・姉がいるなら、教科書や問題集を借りて、出てくる図形問題の図をまねして描いてみるとよいでしょう。大切なのは、「正しい図」「正しくない図」という意識、正しい・正しくないという心の働きです。
私の教室で生徒にすすめているのは、1cm方眼(マス目)のノートです。小学生が自分で描いた図で問題を考えるために、ちょうどよいマスなのです。
まずはフリーハンドで描いてみてください。定規で図を描く練習も必要なのですが、まずは自分の手で描く経験が欠かせません。
■「正方形を正しく描く」小学3年生の初回授業の基本問題
では、例題①(Q:正方形の1つの辺が描いてあります。残りの3つの辺を描いて正方形を完成させなさい)をやってみてください。教室では、小学3年生の初回の授業に出している基本問題です。
目的地を定めないままに線を引き始めていいかげんな線になってしまう子もいますし、線の目的地となるマス目の交点を間違えてゆがんだ正方形になってしまう子もいます。
一方、図を描くのに慣れている子は、何も説明しなくてもスッと残りの3辺を正しく引きます。
そういう子は、こんなふうに描いているはずです。
① 辺ABの傾きを観察する。
② 他の辺の目的地となるマス目の交点(点C、点D)を探す。
③ 点C、点Dを目指して線を引く。
最初は正しく引けなかった子も、慣れてくると、見えなかった点C、点Dが見えてくるようになるのです。
さらに、できあがった正方形の一辺は、1cmのマス目をつなげてできる長方形の対角線、つまり直角三角形の斜辺になっていることにも気付くようになります。ここで、図のなかに直角三角形を発見することができたのです。
■「平行な線は平行に引く」は意外と難しいです
続けて例題②(点Pを通りABに平行な線を引きなさい)をやってみましょう。
例題①に十分に慣れた子は、点PからABに平行な線を引けるようになります。それは、点Pから引く直線の目的地である点Qが見えるようになるからです。漠然と引くのではなく、「この点に向かって引く」という本来の直線の引き方を学ぶのです。
こうした練習によって、「平行な線は平行に引く」「垂直な線は垂直に引く」という当たり前のことができるようになります。
あとは、正しく描けているかポイントを意識しながら、図形を描く経験を重ねるだけです。下の問題にもチャレンジしてみてください。
1:線は目標を定めてまっすぐ引く。横よりも縦のほうがまっすぐ引きやすいので、慣れないうちはノートを回転させて縦に線を引くようにしよう。
2:平行なところは平行に描く。マス目をきちんと数えよう。
3:角度を正確に。直角はきちんと直角に。正三角形の60度や、30度、45度などがどれくらいの大きさか意識しよう。
■マス目のノートを用意して親子で4つの問題に挑戦しよう!
【読者の皆さんへの出題】
問題① 一辺が4cmの正三角形を描きなさい。
問題②正六角形を描きなさい。
問題③立方体を描きなさい。
問題④立方体をいくつか並べた図形を描きなさい<(1)と(2)>。問題は上から見た図で、数字はそのマスに積む立方体の数です。たとえば、(例)では左に3個、右に2個積んだ図になります。
■こちらが正解の図です
1948年北海道生まれ。長年、中学受験のための算数と中高一貫生のための数学を指導。都内で少人数制の算数・数学教室を運営。著書に『算数プラスワン問題集』など。
(プレジデントFamily編集部 構成=本誌編集部)
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