ブッダの教え「自分のためにお金を稼いでいる人は、決して幸せにはなれない」
プレジデントオンライン / 2022年2月2日 15時15分
■「お金が手に入るかどうか」という損得勘定で人生を選択している
私たちは、何かの選択をするとき、必ず自分のメリットを考えて選択します。
「痛みを避けて、快楽を得る」。それが、すべての生き物の本能であり、行動原理だからです。その本能に従って、誰もが、「幸せになりたい」と思って生きています。
では、幸せになるためには、どうすればいいか。多くの人は、お金を稼げば幸せになると信じています。
お金があれば、安心する。
お金がなければ、不安になる。
かくして私たちは、あらゆる選択・努力の方向性を、「お金が手に入るかどうか」という、損得勘定に左右されるようになります。
そして常に、「お金持ちになりたい」「もっとお金持ちになりたい」という、強迫観念にも似た思いに、とらわれるようになります。
■「年収800万円で幸福度は頭打ちになる」という研究結果
一見当然のことのようです。しかし、もしこれが当たり前だとすると、私たちの幸不幸、つまり私たちの心が、お金の有無や多寡によって左右されていることになります。
そもそも、大金を手にさえすれば、私たちの苦悩は消え、幸福になれるのでしょうか。あくなき「お金」の追求は、私たちに真の幸福をもたらすのでしょうか。
必ずしも、そうとは、言えないようです。
ノーベル経済学賞受賞者の心理学者ダニエル・カーネマン教授らは、「幸福度と収入は比例するが、年収7万5000ドル(約800万円)で、幸福度は頭打ちになる」という研究結果を発表しています。
■「幸せそうに見えるかもしれないが、苦しい」
私が配信しているYouTubeチャンネル、『大愚和尚の一問一答』にも、企業経営者、プロスポーツ選手、アイドル、歌手、芸人の方々から「周囲には幸せそうに見えているかもしれないけれど、実際は苦しくて仕方ない。でも、死にたくても死ねない」などと相談が届くことがあります。
どうやら「お金持ちになること」が幸福への道だと信じ、物やお金に高い優先順位をつけた結果が、私たちに真の「幸福」をもたらすとは、限らないのです。
■ブッダが29歳の時に出家した理由
今から2600年ほど前のインドに、そのことに気づき、生き方の転換を図った人がいます。お釈迦さまです。
お釈迦さまは、釈迦国と呼ばれた、北インドの王国の王子でした。幼き頃に母を亡くしたお釈迦さまは、父、シュッドーダナの寵愛を一身に受けて育ち、何不自由ない、裕福な少青年期を過ごします。
ところが、地位や名誉や財宝が幸福をもたらすわけではないことを体感して、29歳の時に突然、出家してしまいます。
城を離れたお釈迦さまは、修行を重ね、35歳でついに悟りを得てブッダ(目覚めた人)となります。その後、80歳でお亡くなりになるまでの間、各地を旅しながら人々に教えを説かれたのでした。
お釈迦さまの晩年のエピソードに、私たちがものごとを選択する際に参考にしたい重要な教えがあります。
![湖、仏教と深い森の反射で僧侶のハイキング](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/2/670/img_6227818c4a64bde05e3591343e78ae27878218.jpg)
■弟子が「何を頼りに生きればよいのか」と尋ねると…
旅の途中、お釈迦さまが大病を患らったときのことです。師の最期が近いことを悟った弟子が、お釈迦さまに次のように尋ねました。
「お釈迦さま亡き後、私たちは何を頼りに生きていったらいいのでしょうか」
不安がる弟子に対して、お釈迦さまは次のように答えます。
「自分自身を洲(しゅう)とし、自分自身を拠りどころとして生きよ。それ以外のものを拠り所としてはならない。法(お釈迦さまの教えであり、この世の真のあり方)を洲(しゅう)とし、法を拠り所として生きよ。それ以外のものを拠り所としてはならない」
洲とは、川に流されている人が這い上がれる、頼りとなる洲(しま)のことです。
法(お釈迦さまの教え)とは、お釈迦さまの考えや意見ではありません。
「この世がどう動いているのか」「私たちの心はどのように苦しみを生み出すのか」といった、この世の真実の姿のことです。
つまりお釈迦さまは、
「この世の正しいあり方をよく見極めて、受け入れなさい。そして、その世界観の上に、自分自身の努力をもって、生きる道を切り開きなさい」と説かれたのです。
■幸福のカギを握るのはお金ではない
頼りにすべきは、自分自身。
幸不幸のカギを握っているのも自分自身。
現代風に言えば、「自己責任で生きよ」とも言えましょう。
けれども、それは決して、「自分勝手に、独りよがりに生きよ」という意味ではありません。
地位や財産、神や他人など、「自分の外の存在に、幸不幸を委ねるな」というのがお釈迦さまの教えなのです。
幸福のカギを握るのは、お金ではなく、自分。
地位や名誉によって、幸不幸が決まるなら、それは、権力の奴隷です。
物やお金によって、幸不幸が決まるなら、それは、金品の奴隷です。
■正しく損得勘定をしろと仏教は説く
仏教では、「全く損得勘定をしないで生きよ」とは言いません。仏教でも損得勘定はします。
むしろ、「幸福に生きたいと願うならば、正しく損得勘定をしなさい」と薦めるのが仏教です。けれども、仏教の損得勘定と、世間一般の損得勘定では、勘定するものの優先順位が違います。
なぜなら、仏教は、この世の真実の姿を正しく観察するからです。
人間は「人間」という漢字が示す通り、一人で生きているわけではありません。人との関わりを完全に絶って生きることはできないのです。
![大企業、大きなお金](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/670/img_6e9e6014605ee4274af1dd9f707350ce390351.jpg)
■「今だけ、金だけ、自分だけ」では幸せは訪れない
ですから、「今だけ、金だけ、自分だけ」という考えに基づいて、選択・努力をしていたら、真の幸福を手に入れることはできません。
人間が、物質的にも精神的にも、豊かに暮らすためには、お金や物、人間関係、知識や情報、健康、人格の向上など、さまざまな要素が必要です。
それらの要素の中で、「お金や物」を最重要視して、選択・努力していると、どうなるでしょう。
ときに嘘をついたり、誰かを騙したり、不正を働いてまでも、お金や地位、権力などを得ようとしてしまいます。稼いだ者が稼げない人を見下したり、稼げない者が稼げる者を崇めたり、自分だけ稼げれば良いと他への思いやりを無くしたりしてしまいます。
■仏教においてすべてに優先する事柄
逆に、お金や物を得られなければ、自尊心を無くして生きる気力まで無くしてしまうのです。
一方、仏教では、道徳や真理を身につけて、人格を進化させることを、最も重要視します。もちろん、お金や物、人間関係も、知識や、健康も大切ですが、すべてに優先して、人格が向上することを最重要視するのです。
「それは、人格を進化させるか、退化させるか」
「それは、心を成長させるか、退行させるか」
仏教が薦める、正しい損得勘定であり、選択・努力の基準です。
■人格は「与える」ことによって成長する
人格の成長に必要なのは、「与える」こと。
「いかにして得るか」という思考から、「いかにして与えるか」という思考への転換が、人格向上のカギです。
もちろん、私たちは「得る」ばかりではなくて、「与える」こともしています。
けれども、その「与える」は、「得る」が前提になっていることに気づいていません。
得たから与える。得るために与える。得られるから与える。要らないから与える。
その思考から、ただ「与える」を実践してみてください、と教えるのが仏教です。「与える」ことで、人格が成長するからです。
「与えたら損してしまう」そこを、勇気をもって、「与えてみなさい」と説くのが仏教です。
世の中の関係は、ギブアンドテイクでできています。
だからこそ、テイク(得る)ばかり考える人より、ギブ(与える)する人が、真の幸福を得ることができるのです。
「人格・心の進化」を最優先し、「与える」人が、あらゆる業界に一人でも多く増えたら、きっと世の中はもっと良くなると思いませんか。
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佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表
空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数29万人、5400万回再生された超人気番組。著書に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、最新刊としてYouTube「大愚和尚の一問一答」のベスト版として書籍化した『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え 一問一答公式』(飛鳥新社)がある。
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(佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表 大愚 元勝)
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