「仕事なんてつまらなくて当たり前」人気ブロガーの会社員がそう諦めるようになった理由
プレジデントオンライン / 2022年2月9日 15時15分
■すべての仕事には得るものがある
こんにちは、僕はフミコフミオ。食品会社で働くサラリーマンだ。今は中間管理職で上下からの圧を楽しみに変えながら日々の仕事に当たっている。今回は「やりがいのある仕事」をテーマにお話ししたい。
そもそも、「やりがい」とは何だろうか。
人の数だけやりがいはあるが、「やる/やったかいのあること」が一般的な意味といって差し支えないと思われる。ひとことでいえば「見返り」になる。
仕事に当てはめて考えてみると、やりがいのある仕事とは、取り組むことあるいは完遂することによって利益や技術や経験といった得るものがある仕事ということになる。
この視点から考察すると、すべての仕事はやりがいのある仕事になるのだ。
なぜなら仕事とは(赤字事業でないかぎり)利潤を生むためにサービスを提供する行為だからだ。少なくとも利益が得られていれば、すべての仕事はやりがいがある仕事である。
仕事においてやりがいの有無が問題になるときは、「気分が乗らない」「やりたくない仕事に取り組んでいて、楽しくない時間を過ごさなければならない」ときだ。だが、先ほど述べたとおり仕事とは取り組んでいることでやりがいは得ている。利益、技術、経験、どれかひとつは得ている。最低でも一つは得ている。失敗も経験になる。
利益につながらない仕事も実際はある。だが、取り組んでいる仕事が利益を生まなくても、投資や研究のように後々の利益につながったり、会社や事業全体では利益を出していたりするので、やりがいのない仕事はないといえる。
■やりがいは「個人的な楽しみ」とは限らない
もちろんその過程において技術や経験は蓄積されている。また、人事や総務といった管理部門の仕事は会社の利益を直接生み出していないが、バックアップで間接的に利益、技術、経験を生み出している仕事なので、利益の有無という点からみても、やりがいは存在するのである。
つまり、誰かが仕事におけるやりがいを話題にするとき、そのやりがいとは個人的な楽しさや個人にとって将来役に立つようなものがあるかどうかが問題になっているのだ。
もっと大きな視点を持って仕事に当たろう。
大きな視点というのは、個を殺すことではない。個としての充実感を仕事に過剰に求めないということである。個人的に得られそうなもの、そういう類いのやりがいを仕事に求めないようにしていくことが仕事を続けていくうえで肝心なのだ。
とはいえ、楽しい仕事や、成長を実感できる仕事のほうが「やりがい」を感じられるのは間違いない。
おそらく、心身共に充実した状態になって、仕事もサクサク進む。疲労感も少ない。誰でもひとつやふたつそういった経験があるから、「やりがいのある仕事とはかくあるべし」という認識を持つようになる。
![リモートワークする女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/6/670/img_8643891ee7d190a47d468e66a7f79d67319104.jpg)
■仕事への期待を手放せば不満は少なくなる
確かひと昔前のユーチューブのCMのスローガンが「好きなことで、生きていく」だったと記憶している。その「好きなこと」と「生きていく」という、会社員生活では相反するような価値を持つ言葉をつなげるのが「やりがい」なのだ。
だが、実際問題、仕事は楽しいものばかりではない。働きはじめてから楽しい時間が1秒もない人もいるはずだ。先ほど話に出した「好きなことで、生きていく」的なユーチューバーであっても、毎日動画編集をしていれば、思うように動画が作れなかったり、あるいはネットに公開した動画が炎上してその対応に追われたりして、毎日が楽しい時間ばかりではないと思われる。
まずは、仕事において個人的なやりがいを求めないようにする。諦念を持つ。先に述べたとおり仕事によって利潤や技術や経験といったものが得られる。それがやりがいなのだ。
そこに楽しさや個人的に将来役に立つようなものを求めないようにする。そういう仕事に対する過剰な期待を手放してしまえば、仕事に対する不満というものは少なくなる。
そのために、現在取り組んでいる仕事について、個人的に得られそうなもの、楽しくなるような要素を手帳やノートに一つひとつ書き出し、厳格なジャッジを下して、個人的なやりがいをあらかじめつぶしておくといい。
■諦めることで仕事が早く終わる
事前にやりがいをつぶしておくことで、期待値は低くなる。仕事なんてこんなものという諦めがあれば、仕事に裏切られることはなくなる。
つまらない仕事に対しての不満を最小限に抑えることで、こんな仕事やっていられないという負の感情も抑えられ、仕事の効率ダウンも最小限に抑えられるはずである。つまらない仕事を早く終わらせてしまって、次の仕事へ意識が向いていく。
例えば上司に呼び出されてリストラを任されたとする。
上司はリストラを「会社にとって意味のあるやりがいのある仕事」と言う。だが、リストラ候補の社員や家族の将来を考えたり、リストラを告げる時を想像したりするうちに、どう考えてもやりがいのある仕事とは思えなくなる。
どうする?
高まってくる感情を抑えながら、リストラ仕事とやりがいをはかりに掛けてみよう。感情で熱くなっている頭を冷却するように手帳に書いていく。上司の言うやりがい、「リストラをやり切った先に約束される出世」のような見返りと、それを得るために犠牲にしなければならないものを書き出す。
会社員として働いていると昇給や昇進は大きいものである。見逃せない。だがそれに伴って失われるものと比較検討してみるのは難しい。頭のなかは「昇進ラッキー!」でいっぱいになってしまうからだ。だが書いて比較検討することで頭の中はクリアになり、損得勘定が正確にできるようになる。
このようにポジティブとネガティブな要素を書き出しておくと、過剰な期待も悲観的になりすぎることもなくなる。五木寛之先生が『大河の一滴』で、「今こそ絶望からはじめよう」とおっしゃっていたのはこのことではないだろうか。
■「やりがい」なんてたくさんあるわけがない
仕事に対して期待をしすぎるなということ。
やりがいを期待しすぎないことには、実はもうひとつの効果がある。
それは、仕事をしているうちに、広大な砂漠を歩いているときに大量の水を蓄えている小さなオアシスを見つけたときのように、まれに出会う楽しさや充実感をともなったやりがいを存分に味わえるようになる。
僕らはやりがいにとらわれている。そのやりがいは自分にとって楽しい、役に立つやりがいである。そんな自分にとって都合のいいやりがいが大量にあるわけがないではないか。あるはずもないものを探しているから、目の前にある仕事への不満が蓄積してSNSなどに投稿して憂さ晴らしをするはめになる。
そのような状態では真のやりがいを見逃してしまうことだってあるだろう。真のやりがいは希少だ。ゴミのような仕事のなかで時々流れてくるものだ。やりがいを感じられないとふてくされて正常な判断力を喪失していたら見つけられない。
■「仕事とはこういうものなのだ」という諦念を持つ
だが、仕事に対して、初っぱなからやりがいを求めない諦念を持って臨んでいたらどうだろう?
頭は常に冷静、目の前にある仕事に過剰に期待しないので、裏切られる感もなく、粛々と仕事を進められる。「仕事とはこういうものなのだ」という諦念があるからこそ、仕事を仕事以上でも仕事以下でもないものと受け止めて進められる。
つまらない仕事ほど早く終わらせてしまいたくなる境地に達すれば最高である。
そのような安定した心を持って仕事に臨んでいるうちに、楽しい仕事、個人的に実になる仕事といった、自分にとってやりがいのある仕事と出会えるようになる。仕事に対する期待感を下げていたので、喜びもひとしおである。
僕にも何回か境地に達した経験がある。10年くらい前に、某地方の新規開発営業を任された時だ。事業圏から離れたエリアで見込み客も販路もゼロ。3年計画で基礎をつくるように命じられていた。予算は限られていて、現地スタッフは1名雇用するのが精いっぱい。会社としては、「未開発のエリアで万が一でもビジネスが成立すればもうけもの」くらいの認識だったのだろう。とはいえ担当者としては課せられた目標をクリアしなければならない。
■諦めたら成功へのヒントが見えてきた
「3年以内に支社を設立できるレベルのビジネスモデルを立ち上げる。予算もコネもなし。採用可能な現地スタッフ1名」それが条件だった。
ピンチである。このようなピンチのときドラマなら主人公とチームが「目標に向かってゴー!」みたいな熱いストーリーになるが、あえて、マイナスポイントを書き出してみた。仕事が失敗するのは、ありもしないポジティブな要素や過剰な期待値を計画に盛り込んでしまうからだ。僕はその仕事のネガティブ要素をときどき書き出した。
当時の内容を再現すると以下になる。
「コネはない」
「3年では無理」
「予算と人材には限りがある」
「失敗すれば責任を問われる」
「既存事業圏外。販路開発が不可欠」
気が滅入ったが、夢も希望もなくなった分、絶望することもなかった。「ダメでもともと」という開き直りと「早くこの仕事を終わらせよう」という意識を持った。面白くない仕事だと最初から諦めたのだ。諦めて、覚悟を決めると見えてくるものがあった。コネがないことは、しがらみが何もないということであった。予算と人材の少なさはやれることの集中につながった。事業圏外ということは、失敗しても既存事業にかけるダメージはない(少ない)ことだった。
淡々と仕事を進めるうちにそれらに気付いていった。そして、次第に好転した。特にコネがないことが大きかった。完全にフリーだったので、業界のしがらみもなく、どの法人にもアプローチすることができた。アプローチがうまくいかなくても元々何もないのでダメージもゼロ。事業圏内であったら失敗したときのことを考えたり、契約金額によってアプローチを控えたりすることも多々あったが、そういったこともなく新規開発をすることができた。
■「やりがい」は求めるほど見えづらくなる
次第に、まったくのゼロから事業を立ち上げたいという考えに共感してくれる若い経営者と関係性を築けて、それが面白さになった。諦めていたからたった一つのアポが取れた時の喜びもひとしおで、それが仕事を加速させた。そこから大型契約をひとつ取ることができて、支社開設までこぎ着けることができた。支社開設まで3年の計画が、1年と少しで達成することができたのだ。
![フミコフミオ『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/200/img_f725614147c51d2e8c91a2ec51c125f2357768.jpg)
このように、仕事に対するやりがいを求めないスタンスを持って日々の仕事に当たることで、面白くない仕事を面白くない仕事とそのまま受け止められれば、絶望することはなくなり平穏な気持ちでいられる。
淡々と仕事をこなせれば、早く進められる。やりがいのある仕事だから楽しいのではないのだ。楽しい仕事がやりがいのある仕事のように思えるのだ。すべて、自分によってつくられた錯覚なのである。
やりがいのある仕事を求めすぎている、やりがいにとらわれていると思ったら、目の前にある仕事から得られるものを書き出して整理してみよう。
やりがいのないと思われる仕事にも利益、技術、経験といった、やりがいがあることが確認できるはずで、そこに楽しさや個人的に役に立つことがないだけなのである。そのような個人的なやりがいのある仕事を確実にゲットするために、仕事に対して冷静であり続けることが必要なのだと僕は思うのだ。
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ブロガー
1990年代末からネット上に文章を発表し始め、食品会社に勤務する普通の会社員でありながら、著名人をおさえてブログの読者登録数はトップクラスを誇る。「書くことで平凡な日常を特別なものに変えられる」を信条にネットに文章を書き続けている。目標は、誰もが他人の目を気にせず自分の言葉で語れるような真の自由があるネット社会の実現と、普通の人がブログやSNSに書くだけで充実した人生を送れるようになる土壌をつくること。
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(ブロガー フミコ フミオ)
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