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「コロナ太り」を甘く見ると命取りになる…健康診断の結果に出てきた"ある異変"

プレジデントオンライン / 2022年2月12日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

コロナ禍の生活変化は健康面に大きな影響を与えている。産業医の池井佑丞さんは「生活様式の変化により、食べ過ぎ、飲み過ぎ、運動不足になっている人がいる。これらは生活習慣病のリスクを上げている」という――。

■「コロナ太り」の影響が健診結果に出ている

新型コロナウイルスが世界的に広がりはじめてから2年以上が経過しました。感染対策としてのソーシャルディスタンスの確保やマスク着用・手指消毒の徹底、外出自粛、リモートワークの一般化など、生活習慣は大きく変化し、新しい生活様式として定着してきています。しかし、これらのような変化は心身に多くの影響ももたらしています。

国内で初めて7都府県に緊急事態宣言が発出された2020年4月には、新型コロナウイルスに関連した心の健康相談件数が急増したとの報告があります。感染やこれからの生活に対する不安、感染症対策へのストレスなどから心の不調を訴える人が増加しました(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症にかかる心の健康相談に関する精神保健福祉センターの対応状況」2020年)。

フィジカル面では、「コロナ太り」という言葉も多く聞かれるようになりました。外出自粛やリモートワークの実施により1日の運動量は減少した一方で、在宅時間に間食をしてしまったり、飲酒量が増えたりしている方が多いようです。

そこで懸念されるのが「生活習慣病リスク」の増加です。生活習慣病は運動や食事などの生活習慣によって引き起こされる疾患のことですので、コロナ禍ではそのリスクが高まっていると考えられます。実際に、ある健診結果にてコロナ禍の影響と考えられる異変が起きていることがわかりました。

■「中性脂肪」「ALT」の数値が上昇していた

2020年5月に健康診断を受診した2万8869名のうち、2018、19年も受診していた4634名を対象として、コロナ禍が健診データにどのような影響を与えたかについての調査が行われました(新潟県労働衛生医学協会「長い自粛生活(ステイホーム)が健康診断データに及ぼす影響について」2020年)。健診項目ごとに平均値を算出し、前年度の平均値からの増加率を調べたところ、男女ともに血圧・血清脂質など多くの項目で高い値を示す結果となりました。特に増加率が大きいものは「中性脂肪」で男性6.8%、女性4.9%、「ALT(肝臓疾患の指標になる項目)」では男性7.5%、女性6.0%の増加が見られました。また、異常率についても腹囲や血圧など多くの項目で上昇していました。

影響が大きかった中性脂肪・ALTについてさらに詳しく見てみます。各年度の平均値を前年の平均値と比較した結果です。中性脂肪では、男性で2019年は微増(0.7mg/dLの増加)だったのに対し、2020年では大きく上昇(8.1mg/dLの増加)しています。女性のデータでも同様の傾向が見られており、前者は0.4mg/dLの増加だったのに対し後者は3.9mg/dLとやはり増加の幅は明らかに大きくなっています。ALTの結果も、男性で2019年は0.4U/Lの増加だったのに対し、2020年は2.0U/L、女性では2019年は0.1U/Lの増加に対して2020年には1.0U/Lの増加と、いずれも2020年の増加分が大きくなっています。

■中性脂肪上昇の原因には肥満や過食がある

このように、あきらかに数値悪化の傾向が生じているのです。中性脂肪・ALTはどちらも生活習慣病に当たる疾患と関連の深い項目ですから注意が必要です。これらの値が上昇する要因、上昇すると起きる問題を簡単にご説明いたします。

まず中性脂肪について。中性脂肪は脂質異常症の診断のひとつで、健診では血液検査で測定します。健診結果では「TG」や「トリグリセリド」と表記されていることもあります。この値が高いということは血液中の中性脂肪の代謝が正常でないことを意味しています。血液中に脂肪が増えると血管の内側にたまり、動脈硬化を引き起こしやすくするなどの問題があります。中性脂肪の値は30~149mg/dLが正常とされており、150mg/dLを超えると高中性脂肪血症とされ、注意が必要です。

中性脂肪の数値が上昇する要因としては、肥満や過食・脂肪過多な食生活、運動不足、ストレス、遺伝的要素が挙げられます。

カップラーメンを食べる男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

■ALT上昇の主な原因は生活習慣の乱れ

つぎにALTについて。ALTは肝臓の細胞に多く含まれている酵素です。「GPT」と記載されていることもあります。肝機能障害の診断のひとつで、血液検査で血中の量を測定します。肝臓に障害が起こり肝細胞が破壊されると、血液中に流れ込んでくるALTの量が増加し数値が上昇します。健診結果で31U/L以上は要注意、51U/L以上であれば異常とされています。数値が高い場合には脂肪肝になっている可能性が高いです。

肝臓には、エネルギー源として脂肪を蓄える働きがあり、それ自体は正常な機能です。ですが、脂肪が使いきれなかった場合にその余剰分が蓄積され、肝細胞の30%以上を占めるようになると脂肪肝の診断となります。アルコールが原因の場合はアルコール性脂肪肝といわれます。食べ過ぎによる栄養過多やアルコールの飲み過ぎ、運動不足といった生活習慣の乱れが主な原因です。また、中性脂肪で前述した脂質異常症の場合も脂肪肝になりやすいです。

ただし、上記以外にも、肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎、薬剤による薬剤性肝障害、肝がんなどの可能性もあります。健診で肝機能障害の指摘を受けた場合には、肥満やお酒のためだろうと自己判断はせず精密検査を受けるようにしてください。

■カロリーを減らしつつ、バランスよく栄養を摂取

先にも述べたとおり、コロナ禍の生活様式が生活習慣病のリスクを高めています。そこで、生活習慣病予防の観点から、日常生活において実践していただきたいポイントをご紹介します。

・食事

過食は控え、エネルギーを摂り過ぎないように心がけてください。肝臓修復の材料となるたんぱく質は十分に摂る必要がありますが、肉類の摂り過ぎは脂質の摂取を増やしてしまいます。肉類は控え魚介類からの摂取を増やす、肉類を摂る場合は脂肪の少ない部位を選ぶのがよいでしょう。とはいえ、脂質も体には欠かせない栄養素です。脂質は不飽和脂肪酸を選べば中性脂肪を下げる効果も期待できます。使用する油をオリーブ油にするのもよいと思います。

敬遠されがちな糖質も体や脳のエネルギー源ですので、全く摂らないことも健康を損ねることになります。白米を控え玄米や雑穀米に置き換える、食物繊維の豊富な食材を多めに取り入れて空腹を満たすといった工夫をすれば、摂取カロリーを減らしつつ栄養素も同時に摂ることが可能です。以下におすすめの食品の例を挙げます。

<不飽和脂肪酸>
オリーブ油、青魚、ぶり、まぐろ、うなぎ、豚レバー、干しひじき、わかめ

<食物繊維・ビタミン・ミネラル>
野菜、海藻、きのこ、玄米、雑穀米、いも類、豆類、納豆、オートミール

<中性脂肪を減らす効果>
大豆、大豆製品、じゃがいも、トマト、りんご

<肝機能強化>
しじみ、牡蠣などの貝類、ごま

<脂肪燃焼効果>
唐辛子(辛味成分のカプサイシン)

どれもたくさん摂れば効果があるというわけではありません。バランスよく摂取すること、例えばテイクアウトなどを利用する場合には、単品メニューではなく定食にする、小鉢を1品追加する、カット野菜を用意するなど品目を増やす意識を持っていただきたいです。厚生労働省・農林水産省の示す食事バランスガイドも参考にしていただくとさらによいと思います。

玄米
写真=iStock.com/Promo_Link
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Promo_Link

■有酸素運動を習慣にし、座りっぱなしを避ける

・運動

(1)習慣的な有酸素運動

ウォーキングやジョギング、水泳などを習慣的に行うとよいでしょう。

食事から摂取した脂質や糖質を消費するためには、有酸素運動を適度に実施することが基本です。スクワットなど下半身の筋トレと組み合わせればより効果が上がります。全身の筋肉のうち下半身が占める割合は7割にもなるといいますから、下半身を鍛えることで基礎代謝アップや脂肪燃焼の効率が上がるでしょう。

スクワットをする女性
写真=iStock.com/twinsterphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/twinsterphoto

(2)座位時間を減らす

運動を習慣化するのに越したことはありませんが、運動に慣れていない方や体力に不安がある方には少々ハードルが高いと思います。また、余暇時間の運動量を増やしても、日常生活の座位時間が長いほど、健康上のリスクが上昇することがわかっています(京都府立医科大学 日本多施設共同コーホート研究事務局「座っている時間が長いほど死亡リスクが増加する」2021年)。平日の日中はオフィスで座ったままという方は多いと思います。1時間ごとに席を立って伸びをする、コーヒーを淹れるために立ち上がるだけでもよいです。意識的に座位時間を中断するようにしましょう。

■症状がなくても適切な飲酒を心がける

・飲酒

お酒を断つことが一番良いですが、飲酒の習慣がある方にはすぐに断酒することは難しいかもしれません。生活習慣病は自覚症状が現れた時にはすでに重症になっている可能性が高いです。症状のないうちから適切な飲酒を心がけていただくことが大切です。以下に適切な飲酒のポイントを挙げます。できることから取り入れていただければと思います。

(1)飲酒量を減らすために
・食事と一緒に飲む、ゆっくり飲む
・水を摂りながら飲む
・微アルコール飲料を選ぶ
・薄めて飲む
・1日の摂取量を決める(何本、何杯まで)
・休肝日を設ける(飲まない日を決める、飲んだ翌日は飲まない)
・お酒の買い置きをしない

(2)おつまみの選び方
・塩分の多いもの、高カロリーなものは控える
・きのこや海藻、豆腐などを選ぶ
・生野菜のサラダを選ぶ
・肉よりも魚を選ぶ

以上、日常生活で気をつけたい点について、実践しやすいものをご紹介しました。コロナ禍以来、活動量が減った自覚がある方はもちろん、そうでない方も生活に取り入れ、健康リスクを減らす心がけをしていただきたいと思います。

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池井 佑丞(いけい・ゆうすけ)
産業医
プロキックボクサー。リバランス代表。2008年、医師免許取得。内科、訪問診療に従事する傍らプロ格闘家として活動し、医師・プロキックボクサー・トレーナーの3つの立場から「健康」を見つめる。自己の目指すべきものは「病気を治す医療」ではなく、「病気にさせない医療」であると悟り、産業医の道へ進む。労働者の健康管理・企業の健康経営の経験を積み、大手企業の統括産業医のほか数社の産業医を歴任し、現在約1万名の健康を守る。2017年、「日本の不健康者をゼロにしたい」という思いの下、これまで蓄積したノウハウをサービス化し、「全ての企業に健康を提供する」ためリバランスを設立。

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(産業医 池井 佑丞)

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