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「東京よりも地価上昇率が高い」今、世界の富裕層が熱視線を注ぐ"日本の都市"の名前

プレジデントオンライン / 2022年2月9日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

福岡市では2015年から再開発事業「天神ビッグバン」が行われている。これからどう変わるのか。金融アナリストの高橋克英さんは「外資系企業やラグジュアリーホテルが進出する予定だ。投資が投資を呼ぶ好循環が起きて、名実ともにグローバル都市の仲間入りをするだろう」という――。

■2015年に始まった再開発事業「天神ビックバン」

東京・羽田空港から2時間弱で到着する福岡空港から、九州随一の繁華街である天神まで市営地下鉄でわずか10分程で到着する。ステンドグラスが飾られ石畳が続く天神地下街から地上に出てみると、目の前には「天神ビジネスセンター(以下、天神BC)」がそびえ立っている。「天神ビッグバン」の規制緩和第1号案件として、昨年9月末に完成したガラス張りの建物だ。

福岡市による再開発事業「天神ビッグバン」とは、福岡市中心部の慢性的なオフィスビル不足などの解消のため、2015年に始まったものだ。国家戦略特区による「航空法高さ制限の特例承認」や福岡市独自の容積率緩和制度などを組み合わせ、期間限定ながら、従来よりも高層のビル(最大で高さ115mまで)を建てられるようにした。天神や博多など福岡市の中心地は、福岡空港からのアクセスは抜群な一方、あまりにも空港が近いため、航空法により建物の高さに制限がかけられているのだ。福岡市では、2024年までの10年間で30棟のビルの建て替えを誘導することで、年間8500億円の経済波及効果を生むとしている。

■グーグルの入居検討が報じられた

天神BCでは、西日本シティ銀行による富裕層向け店舗などがすでに開業しており、建設主の福岡地所によると、NECやジャパネットホールディングス、米国のボストンコンサルティンググループが入居する。

また、西日本新聞(2021年10月30日)によると、GAFAの一角であるグーグルが天神BCに入居検討と報じられている。福岡では、2013年に進出した博多のLINE Fukuokaをはじめ、外資系や大企業だけではなく、DX企業やスタートアップ企業などの集積も進みつつあり、グーグルの進出により、さらなる集積につながるとの期待から、地元では大いに盛り上がっている。

こうしたなか、地元有力企業も負けてはいない。例えば、総資産28.7兆円を誇る日本最大の地銀であるふくおかフィナンシャルグループは、2021年5月、日本全国のデジタルネイティブ世代をターゲットにした地銀初のスマホ銀行「みんなの銀行」のサービスを開始。福岡発の最先端のデジタル銀行として、3年目には120万口座、預金2200億円を獲得し黒字化を目指している。

■「ザ・リッツ・カールトン」が開業予定

旧大名小学校跡地では、積水ハウスや西日本鉄道、西部瓦斯などが主体となって、「天神ビックバン」最大級の複合ビルが建設中である。完成すれば25階建て高さ約111メートルのビルとなり、商業施設やオフィスに加え、上層階には、外資系ラグジュアリーブランドホテルである「ザ・リッツ・カールトン福岡」が2023年3月に開業予定となっている。

福岡市では長年、最高級ホテルや大型オフィスビル不足が指摘されてきた。実際、市内にはホテルはあまたあるものの、いわゆる外資系高級ラグジュアリーホテルは、キャナルシティ博多に1997年に開業したグランドハイアット福岡のみだった。建設中の複合ビルのオフィス階は1フロア2500平方メートルと九州最大規模となり、ホテルには屋内プールや会議室も設けられるという。積水ハウスでは、総事業費を500億円、完成時の市への経済効果を1500億円と見込んでいる。

夕暮れ時の博多の街並み
写真=iStock.com/orpheus26
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/orpheus26

大阪、東京、京都、沖縄、日光、ニセコに続き、福岡に世界最高級のブランドホテルである「ザ・リッツ・カールトン」が誕生することは、福岡が名実ともにグローバルな都市へと飛躍する大きな転換点になろう。2023年に日本において開催されるG7誘致だけでなく、世界的な国際会議や見本市にスポーツイベントなどの誘致活動にも大いに貢献することになりそうだ。

■「博多コネクティッド計画」「セントラルパーク構想」も進行中

福岡市では、「天神ビッグバン」同様、国家戦略特区の規制緩和と民間活力による再開発事業「博多コネクティッド計画」も進行中だ。山陽新幹線・九州新幹線の始発駅でもあるJR博多駅周辺では、博多阪急が入るJR博多シティやKITTE博多などの開業も続きにぎわいをみせている。「天神ビックバン」との連動と九州の玄関口としての発展を見込み、地下鉄七隈線延伸やはかた駅前通り再整備などとあわせ、容積率などの規制緩和により、ビルの建て替えを誘導している。すでに、西日本シティ銀行が本店ビル建て替え工事を実施中だ。

また、西日本新聞によると(2022年1月11日)博多駅前にある「ANAクラウンプラザホテル福岡」が「博多コネクティッド」を活用し建て替えられ、上位ブランドの「インターコンチネンタル」への転換も構想に含まれているという。

「天神ビックバン」と「博多コネクティッド」だけではない。2019年6月に福岡県と福岡市とが共同で打ち出した「セントラルパーク構想」では、福岡市中心部の良好な住環境の象徴でもあり高い人気を誇るエリアである大濠公園と舞鶴公園の一体的な活用を図り、福岡城跡や鴻臚館跡といった史跡も生かしながら、総面積約80haに及ぶ広大なミュージアム空間となるような公園づくりを進めるとしている。

■商業地の地価上昇率が全国トップ

国土交通省の「令和3年都道府県地価調査の概要」によると、

日本全国平均では、住宅地、商業地ともに2年連続の下落が続いている。

厳しい状況下ではあるものの、福岡市では、住宅地、商業地ともに地価上昇が継続している。47都道府県県庁所在地のなかで、福岡市の前年比上昇率は、住宅地が4.4%で札幌市に継いで第2位、商業地では7.7%と断トツのトップだ。もともと住みやすい都市として定評があるうえ、「天神ビックバン」などの効果が後押ししていると考えられる。

また、全国の商業地上昇率においてトップ4を天神・博多を擁する福岡市中央区・博多区が独占、トップ10のうち、7地点を福岡市両区が占めるという独占状態であり、いま日本で最も成長力あるエリアとなっている。

博多駅、福岡
写真=iStock.com/Olivier DJIANN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olivier DJIANN

■「けやき通り」には高級マンションが立ち並ぶ

実際のところ、天神に連なる高級住宅街を抜ける「けやき通り」や大濠公園周辺、浄水通り界隈や百道には、大邸宅や積水ハウスや三菱地所などによる高級ブランドマンションが立ち並び、メルセデスベンツGクラス「ゲレンデ」など高級外車が数多く走っている。こうした高級車オーナーのためのプレミアムなガレージ「ニューガイア プレミアムガレージ 天神北」も地元デベロッパーにより2022年4月にオープン予定だ。

さらには天神から百道を経て海岸線を走ること1時間もあれば到着する糸島市には、カフェや雑貨屋などが点在し、スローライフの発信拠点として、福岡だけでなく全国から移住希望者などを惹きつけている。バブル崩壊後低迷していた別荘やセカンドハウス需要も少しずつ増えてきており、地元デベロッパーによるオフィス、宿泊、レストランなどを併設するリゾート施設の構想も進んでいるという。

■福岡という都市の価値が一段上がるとき

このように、福岡がいま日本で一番元気な都市となっている。空港が近く便利で、食べ物もうまい、そして住宅など生活コストも比較的安いという、まさにコンパクトシティの理想形がそこにある。地元の人々だけでなく、転勤者や旅行者の満足度も高い街だ。福岡市は、学生が多く若年層の比率が高いので、今後の成長余力もありそうだ。

博多の特産品
写真=iStock.com/Gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Gyro

一方で、大きな基幹産業があるわけでもなく、典型的な支店経済でもあり、市内に著名な観光資源に多く恵まれている訳でもない、との意見もある。

このため暮らしやすい街であり、若くて元気な街ではあるが、消費の街であり、富裕層を惹きつけるような投資の街、ブランドの街ではないとも言われてきた。

しかし、「天神ビックバン」や「博多コネクティッド」といった再開発ラッシュにより、大手外資系企業が進出し、ザ・リッツ・カールトンのような外資系ラグジュアリーホテルの進出も決まった。こうしたグローバルブランドの進出は、福岡という都市の価値をもう一段高めることになる。

■「投資が投資を呼ぶ」好循環が生まれつつある

福岡のブランド力が高まれば、世界的なカネ余りが続くなか、国内外の優良企業や富裕層からの注目が集まる。良質な不動産や事業への投資機会や起業機会などが供給され、その結果、福岡のステイタスがさらに高まり、資産価値の上昇により、さらなる開発や投資が行われる、という、投資が投資を呼ぶ好循環が生まれてきているのだ。特に、天神地区の商業ビルや大濠地区の高級マンションなどは、供給量が限定されるため、希少価値が増し、プレミアム価格での売買になる。インカムゲインだけでなく、キャピタルゲインをも狙うことが可能な市場となってきている。

もっとも、不動産投資の観点からいうと、福岡の不動産は、緩和されているとはいえ、容積率等に制限があり、投資効率は悪くなる。また物件価格に対して、法人向け個人向けを含め賃貸相場が安い傾向になる点も気になる。

福岡における投資が投資を呼ぶ世界が、一部の限られたエリアだけにとどまるのか、福岡全体に広がっていくのか、しばらくは目が離せない。

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高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にてクレジット・アナリスト、富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める?個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』など。

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(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

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