「いい人は絶好のターゲット」職場のめんどくさい人に目を付けられる人たちの共通点
プレジデントオンライン / 2022年2月12日 15時15分
※本稿は、井上智介『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
■①悪口、陰口ばかり言う人
この人たちの特徴は、「平等であることを人一倍意識している」という点です。
仕事の能力や営業成績、果ては容姿まで、何においても人より際立って優れている人が許せない。あるいは、彼らより「できない」とみなされた人にも極端な態度をとります。
皆の足並みを乱す人が許せない、皆自分と同じようにするのが当然だと考えているのです。
そのため、
「あの人だけ評価されるのはずるい」
「私がこれだけしんどいのだから、みんな同じ思いをするべきだ」
といった考えから、「あの人は裏でこんなずるいことをしている」などと陰口をたたくことで、気に食わない人の評価を下げようとします。
さらに注意しなければならないのは、彼らはあからさまに陰口を聞かせようとするのではなく、いかにも「貴重な情報」であるかのように話してくるという点です。
このような人がいたら、決して話を鵜呑みにしてはいけません。
何においても自分と同じレベルでなければ気が済まないだけでなく、歪んだ正義感で自分自身の承認欲求を満たしている人たちだとも言えるでしょう。
■②ことあるごとにマウンティングしてくる人
彼らは、「自分はすごい人間なんだぞ」「特別な人間なんだぞ」という自己顕示欲が抑えられずに周りにアピールしてくる人たちです。
たとえば、早稲田大学出身のこのタイプの人がいる職場に、東京大学出身の新入社員が入社してきたとします。
すると、自分よりも高い学歴を持つ新人の存在に劣等感が刺激され、追い抜かれるのではないかという不安から、自分が優れていることを見せつけるために相手を見下して傲慢(ごうまん)な態度をとる……。
これが、マウンティングをする人の典型的な行動です。
なぜそんなことをするのかというと、そもそもの要因は自己愛にあります。
自分自身を過大評価していたり、自分の能力を過信しているのです。
その反面、このタイプの人たちは、相手から称賛されないと自分の価値を見出すことができないという特徴も持ちあわせています。
不安と劣等感が強く、本心では傷つけられることをとても恐れているため、必要以上に周囲に自分のすごさを認めさせようとしているのです。
■③ハラスメントをしてくる人
ハラスメントとは、ひと言でいうと「相手が嫌がる行為」のこと。
このタイプの人は、マウンティングする人と近い性質を持ち合わせています。
今では数えきれないほどの○○ハラスメントという言葉が存在しますが、昔はハラスメントがなかったのかというと、そうではありません。
インターネットやSNSの発達で、被害者たちの声が届きやすくなっただけで、昔からハラスメントは横行していました。
そのため、年配の方になればなるほど、「ずっと前からやっているけど」「今さらなぜ」という感覚が強く、大きな問題になっても「そんなつもりはなかった」という人が多いのです。
最近では身体的暴力にまで及ぶ人はかなり減っているものの、
「こんな簡単なこともできないの?」
「これだから最近の若い人は……」
「女性は愛嬌がないと結婚できないよ」
といったことを平気で言う人はいまだに少なくありません。
![職場での差別に苦しむ黒人女性リーダー](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/d/670/img_adc81d99fd3570244d10152be029b914357130.jpg)
こうした無自覚な人たち以上に厄介なのが、明らかに相手を傷つけるために「相手が嫌がる行為」をするケースです。
産業医として、そうした悪質なハラスメント加害者に話を聞くこともあるのですが、明らかに嘘をついていたり、無責任な返答をされたことは1度や2度ではありません。
自己顕示欲、自己愛が強いだけでなく、相手がどう感じるかという共感性と想像力に欠けている人だと言えるでしょう。
■④むちゃぶりしてくる人
むちゃぶりをしてくる人たちは共感性や想像力が乏しく、相手が何を嫌がっていて、何を求めているかが分かりません。
さらに、自分本位であるため、自分の都合のためなら周りの人が犠牲になることもやむを得ないと考えています。
これはもはや、ハラスメントの一歩手前だと言えるのではないでしょうか。
ただ、むちゃぶりがハラスメントと異なるのは、高圧的な印象はなく、恐怖心を煽られないということ。しかし、断れないという点ではハラスメントと同類です。
■⑤責任を押し付けてくる人
職場によくいるこのタイプの人たちは、2つのパターンに分類できます。
まず、自分が怒られたり、傷つくことを極端に恐れているパターン。
自分を守るために、自分でも気づかないうちに嘘をついたり、責任転嫁している人たちです。
上司がこのパターンである場合、自信がないまま年功序列などで管理職になってしまい、さらに上の立場の上司から怒られるのが嫌で、部下に責任を押し付けている、というケースがよくあります。
そういう方たちに責任を押し付けていることを指摘すると、
「えっ、そんなつもりは全然ありませんでした。すみませんでした」
と素直に謝る方もいらっしゃいます。
一方、このタイプの中には、もう1つパターンがあります。
それは、プライドがとても高く、ちょっとした成功体験から「自分が間違えるわけがない」と思い込んでいる人たちです。
このような人たちは、「自分は間違えるはずがないのだから間違っているのは他人」という他責の考えがベースになっています。
「成功は俺のおかげだけど、失敗はあいつのせいだ」と思っているため、周囲に責任を押し付けてくるのです。
■めんどくさい人はターゲットを選んでいる
ここまででもうお分かりだと思いますが、職場のめんどくさい人たちは、とにかく自分本位。
意識的であれ無意識であれ、自分のせいで相手が傷ついたり、犠牲になることに無頓着な人たちです。
残念ながら、このような特徴は周囲が働きかけて変わるものではありません。
このような人たちとかかわる上で最も重要なのは、彼らのターゲットにならないよう自分の言動を変える、ということです。
あなたにとっては信じがたいかもしれませんが、彼らはたまたま目の前にいる人をターゲットにするわけではありません。
自分にとって都合がよく、多少のことをしても声を上げないような人、問題にならないような人を選んでいます。
本稿を読んでくださったあなたは、周囲から「いい人」と言われることが多いのではないでしょうか。
実は、めんどくさい人たちにとって、あなたのような「いい人」は絶好のターゲットなのです。
■初対面の時の「嫌な予感」は意外と当たる
めんどくさい人に選ばれないためには、最初、つまり初対面の時が最も重要です。
「この人は標的にしても大丈夫そうだ」と思われ、関係が固定化してしまうと、その印象を覆すのにはかなりの時間と労力がかかります。
ゼロから関係を構築し直すのは、とても難しいのです。
大切なのは、相手がどういうタイプなのかを早めに見極めること。
慣れていないと難しく感じられるかもしれませんが、ここで意外と重要なのが「自分の直感」です。
本稿を読んでくださったあなたは、相手の言動や感情に人一倍敏感な人なのではないかと思います。
そんなあなたのセンサーが少しでも反応したのなら、まずはその直感を大切にしてみてください。
5パターンのうち、どのタイプの人かまでは分からなくても「なんかこの人ズケズケ来るな……」と感じたら要注意。
最初から他人のパーソナルスペースに踏み込んでくるような人は、次第にエスカレートしていきます。
なんとなく嫌な雰囲気を感じたら、最初から仲よくしすぎないようにしましょう。
こうお伝えすると、先入観で人を判断するのはよくないと思われるかもしれませんが、何も「冷たく接しましょう」と言っているわけではありません。
相手への敬意や礼儀は忘れてはいけませんが、最初から相手を100%信用し、不必要なことまで自己開示する必要はない、ということです。
■自己開示は相手のことを知ってから
初対面や出会って間もない時に、場の空気を持たせようと聞かれてもいない失敗談を話したり、プライベートのことを話したりしていませんか?
こうした自己開示は、気を利かせたつもりでも、めんどくさい人に自分から弱点をさらしているようなもの。
付け入る隙を与えてしまうことになります。
![井上智介『「あの人がいるだけで会社がしんどい……」がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/200/img_a3582d1ecfe4882d460bb6096ffac197214344.jpg)
めんどくさい人たちは、相手の恐怖心、義務感、罪悪感を上手に刺激してきます。無意識にせよ、人を利用して自分の要求を通すことに長けている、危ない人たちです。
そうした人に、わざわざ自分から歩み寄る必要はありません。本当に信用できる人だと分かってから自己開示をしても何ら問題はないのです。
また、上司や顧客だからといって、必要以上に自分を卑下するのも得策とは言えません。
嫌われることや商談が失敗することを恐れて相手の無理な要求に応えようとすると、「仕事ができる人だ」と思われるどころか、どんどん利用されてしまいます。
部下に対しても同様です。
いい上司だと思われたいという気持ちから、本来指導すべきことまで見逃してしまっては、部下になめられてしまいます。
もちろん、礼儀はわきまえていなければなりませんが、人として相手を尊重しようという姿勢はビジネスの基本です。
隙あらば相手を利用しようとする人たちのご機嫌をとる必要はないのです。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務。
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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