「このままでは70歳まで働いても生活保護以下」ロスジェネ独身女性が"年金を増やす"秘策
プレジデントオンライン / 2022年2月16日 8時15分
■ロスジェネシングル女性の厳しい現実
昨年10月、「ロスジェネのシングル女性の貧困問題」が朝日新聞の記事に掲載されていました。40年後には、なんとロスジェネのシングル女性の約半数が、生活保護レベルの収入になってしまうという内容です。
なぜそのような収入の水準になるのかというと、ロスジェネ世代の人は、非正規雇用が多く、収入も安定しないから。ですから、“なんとなく”働いていると、この予測の通りになってしまうことも十分あり得ます。
たしかに、ロスジェネ世代の貧困は大きな社会問題ですし、老後の生活を考えればとても悠長にしていられません。では、いまさら何をやっても手遅れなのかというとけっしてそうではありません。
まだまだあきらめるのは早いです。これからでも十分に豊かな老後を過ごすことができます。それについて、お話しをしましょう。
■卒業年度で「アタリ」「ハズレ」がある
ロスジェネ世代とは、1990年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」に社会に出た世代のことを指します。ちょうどバブル崩壊後の景気が低迷していた時期に新卒として社会に出た人たちです。
そのため希望通りの職業に就くことができないばかりか、非正規社員、あるいは無職になった若者もいました。「就職氷河期」「不遇の時代」とも呼ばれています。バブル崩壊によって訪れた「失われた10年」です。ロストジェネレーション、略してロスジェネです。
この世代の人は約2000万人いると言われ、現在は40代ぐらいの人が該当します。いまだに不安定な雇用にとどまっていて、低賃金にあえいでいます。それゆえに結婚も難しく、親と同居している人も多いのです。最近では、「子ども部屋おじさん(おばさん)」と揶揄(やゆ)されることもあります。
大学を卒業して、社会に出る時期によって「アタリ」「ハズレ」があり、「ハズレ」だとその後も不安定な雇用が続く傾向があります。これは日本型の雇用システムである新卒一括採用、終身雇用、年功序列というのが、根強く影響しているせいだと言えるでしょう。
■ロスジェネのシングル女性の問題はさらに深刻
とくにこの年代の女性は、男性に比べてもさらに非正規雇用が多いです。残念ながら女性で非正規雇用になると、男性より給与が少ないのが現状です。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本調査」によると、40〜44歳の非正規雇用の平均月収は約21万円で、男性が約24万円、女性が約20万円です。ちなみに正社員の平均月収は約34万円ですから、10万円以上の差があります。これでは男性も女性もなかなか結婚をして、子どもを育てられる状況ではありません。
それどころか一人暮らしをすると家賃を支払うのもままならないため、実家暮らしの人が多いと想像します。
親と同居をする「パラサイト・シングル」と呼ばれる中年期の人たちです。しかしいずれ両親も高齢化してきています。そこで問題になるのが70代の親に40代の子どもという「7040問題」です。なかには、家事手伝いということで、国民年金を支払っていないケースもあります。
■生活保護を受けるのは簡単ではない
では、非正規雇用の40歳シングル女性の将来、どんな老後生活になるのかをシミュレーションしてみましょう。
たとえば、65歳までの43年間の平均月給が20万円としたら、厚生年金が約56万円、基礎年金が約78万円で合計約134万円ぐらいになるでしょう。65歳からは月額約11万2000円の年金になってしまいます。たとえ、70歳まで働いたとしても、年金の月額は約11万7000円です。
これでは生活を維持することはできません。生活保護以下の生活になります。非正規社員のままでは、70歳まで働いても生活保護という道へ進まざるを得ないという悲しい結果になると思います。70歳で仕事を辞めたとしても、女性の場合は平均90歳ぐらいまでは生きています。20年以上の生活が残っているのです。
![ストレスのたまった女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/4/670/img_e449d7ce939ad2b40066608b43e89374294157.jpg)
生活保護になれば、生活自体は安定するかもしれません。しかし簡単に生活保護を受けられるか、というとそうではありません。働くことができれば、生活保護は難しいですし、車や自宅を所有していると当然売却が前提です。何よりも親・兄弟に連絡され、生活を支えることができるかどうかの確認をされることになります。
さまざま理由で生活保護レベルであっても、生活保護を受けられないとか、受けたくないということになるのです。
■今後の30年間を大切にする
では、どうすればいいのでしょうか。その答えとしては、老後の大切な資金である公的年金を増額することです。その自分の年金というのは、国が決めている、なんて思っていませんか。それは間違いです。自分の働き方で年金額は変わりますし、年金を増やすことだってできるのです。
公的年金を増やす方法には、「年収を増やす」「長く働く」「年金の受け取りを遅くする」の3つのやり方があります。
まずは、「年収を増やす」です。正社員に転職するだけが給与アップのやり方ではありません。年収を増やして長く働けるキャリアを身につけることが近道です。もう40歳になっているのだから、「いまさら何をやっても手遅れでは」と思っているかもしれませんが、いまからでもまだ遅くありません。
「人生100年時代」と言われているように70歳まで働くのが当たり前の時代になっています。40歳ということは、これまで20年近く働いてきていると思いますが、これからまだ30年は働くということになります。
ですから、これからの働き方が重要になります。働き方を変えるだけで、老後生活を安心できるものに変えることができます。そして増えた年金を繰り下げれば、もっとゆたかな老後を実現できるのです。
■目の前の手取り額より遠くの厚生年金
パートやアルバイトなどで働いている人で、手取りが減ってしまうと考え、あえて労働時間を減らして厚生年金に加入していないケースがあります。しかし、それでは将来の年金額が少なくなってしまいます。わざわざ手取りだけを考えて給与を少なくする必要はありません。できるだけ給与を上げることを考えるようにしたいです。
2022年10月に年金の法律が改正されます。それまでパートなどの短時間労働者の厚生年金の加入は、被保険者(短時間労働者を除く)の総数が「常時500人を超える事業所」でしたが、「常時100人を超える事業所」へと適用が拡大されます。さらに2024年10月には50人超の事業者に拡大されます。そうすれば、いままで厚生年金に加入できなかった人も加入できる機会が増えます。将来のことを考えたら、できれば厚生年金に加入することが重要です。
また、契約社員やパート(有期契約労働者)が5年を超えて更新された場合、期間の定めのない労働契約に転換することができます。これは、2018年4月からスタートした「無期転換ルール」です。これは労働者側から申込みをする必要があります。しかし会社側はそれを断ることはできません。5年間頑張れば、雇用が安定するということです。
■副業も視野に入れて
一方、パラレルキャリア、セカンドキャリアを考えてみるのはいかがでしょう。いきなり始めるには、リスクが大きいため、副業から始めてはいかがでしょうか。副業ならば、比較的簡単にスタートができます。
副業には、さまざまなものがありますが、できれば将来のスキルアップにつながる仕事を選びたいです。自分のスキルを使ってすき間時間でできる「タイムチケット」や「ココナラ」などの「時間売り」の仕事で顧客を広げたりするのもいいでしょう。最初は小さな仕事でも、あなたの仕事ぶりを見てくれる人はきっといます。
また、資格を取得して副業につなげるという方法もあります。たとえば、ペットが大好きという人は、休みの日だけできる「ペットシッター」という副業があります。「ペットシッター」には、とくに資格は必須ではありませんが「動物取扱責任者」という民間資格をもっといると信頼度はアップします。また外国語が得意な人は、「通訳案内士」という資格があります。これは日本に訪問する外国人を案内して報酬を得る仕事です。
ある女性は、保育園で保育の仕事をしていました。20年のキャリアがあるといっても国家試験を持っていなかったので、いつも若い保育士と同じかそれ以上に働いても、保育士以下の給与です。そこで保育士講座を受講して、みごと試験に合格できました。今では若い保育士を指導する管理職になることができました。もちろん給与もアップです。
また、ある女性は事務職でしたが、パソコンが得意でした。ある日、知り合いから、ホームページの制作を個人的に頼まれたのをきっかけに楽しくなり、自分にはこれが向いているのでは、と思ったのです。それから夜はWebデザインの学校に通ってスキルを学びました。その後、副業でWebの仕事をしているうちに依頼が増えて、ついには会社を辞めて、本格的にWebデザインの仕事を始めたのです。
また、「中小企業診断士」の資格を持つと転職の際にとても役に立ちますし、「ビジネス統計スペシャリスト」の資格は、ビックデータ時代には必要な資格なので大きな強みになるでしょう。「ITパスポート試験」も就職に役に立ちます。
■会社員にこだわらずに自分の道を
筆者自身も、就職には失敗しました。マスコミ志望で受けた会社はすべて落ちて、しばらく無職でしたが新聞の募集で出版社の営業社員として就職。しかし編集の仕事をしたかったので、夜間のエディタースクールに通い、転職しました。
その後40歳のときに、フリー編集者として独立。50歳から資格の専門学校に通いFPの資格を取得して、お金・老後資金などの記事をさまざまなメディアで発表するようになりました。このように少しずつスキルアップをしながら、セカンドキャリアを歩んできました。
会社員だけにこだわらず、自分のやりたいことを見つけ起業することだって考えられます(その場合は、国民年金基金などを利用して備えることも大切)。
収入に余裕がでれば、貯蓄もできるようになります。その時は「つみたてNISA」などを利用して効率的に増やすようにしましょう。
自分の可能性にふたをしないで、さまざまな選択肢を考えることが大切です。キャリアというのは、会社から与えられるものではなく、自らつかみ取るものです。そのためには、自分の好きなこと、やってみたいことを書き出してみるのもよいでしょう。
それがどう仕事と結びつくのかを考え、小さなことからチャレンジしていくことです。ワンステップで大きな成果が表れなくても、少しずつ自信を付けていくことで果実はきっと実ります。
■老後を「アタリ」に変えるたった一つの心構え
たまたま「就職氷河期」に当たったからといって、生涯の雇用が決まってしまうというのは、あまりに不条理ですね。
本来は、国が動いて公助によって支えるべきものですが、いまの政府を見ているとすぐに動いて改善することはできないように感じます。必要な制度が整うには、まだまだ時間がかかってしまうかもしれません。
そうであれば、待っているだけでは「手遅れ」に近づいてしまいます。できるだけ生活を安定させるためにも、長く働くためのチャレンジが必要です。
たしかに、40歳から正社員を目指したり、新しい仕事を始めたりするのは、簡単ではないと思います。しかし、一歩足を踏み出すことで新しい人生の扉が開くとしたら、絶対チャレンジしてみるべきです。たとえ最初の就職が「ハズレ」でも、人生の後半は「アタリ」に変えたいもの。まずは、「あきらめずに動く」ということをオススメします。
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ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員
お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『最新版 保険はこの5つから選びなさい』『かんたん!書き込み式 保険払いすぎ見直しBOOK』『老後資金は貯めるな!』(河出書房新社)、などがある。
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(ファイナンシャルプランナー、AFP、日本年金学会会員 長尾 義弘)
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