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「北大医学部生が作った"超体にいいチョコ"が引っ張りダコ」外科医・起業家の二兎を追う5年生の"野望"

プレジデントオンライン / 2022年2月14日 11時15分

中村恒星さん。北海道大学医学部のキャンパスにて - 撮影=高津尋夫

2月14日、バレンタインデーといえばチョコレート。「世界初の完全食」と銘打たれたチョコがネットや百貨店などで話題を呼んでいる。企画・開発・製造したのは北海道大学医学部5年生・中村恒星さん。なぜ医学生がチョコビジネスを始めることになったのか。「プレジデントFamily」編集部の取材に答えた――。

※本稿は、『プレジデントFamilyムック 医学部進学大百科 2022完全保存版』の一部を再編集したものです。

■1枚で900円以上の高価なチョコが発売初日に2時間で完売

「世界初」と銘打った新作のチョコレート「andew(アンジュ)」が発売されたのは2020年5月のこと。タブレット1枚で900円以上と高価であるにもかかわらず、発売初日に2時間で200枚を完売し、話題を呼んだ。

注目されたポイントは二つ。一つは、「世界初の完全食チョコレート」であること。カカオに加え、チアシードなど7種の食材を使用し、タンパク質やビタミン、ミネラルなど人間に必要な27種類以上の栄養素を全て含む。しかも白砂糖・乳化剤・香料などを一切使用しない。なのに、おいしい。

二つ目は、企画・開発・製造したのが、チョコ作りと縁のない素人である、北海道大学医学部4年生(当時)の中村恒星さんだったことだ。

中村さんは、岐阜県出身。富山大学薬学部を卒業後、難関試験を突破して北大医学部2年生に編入した。

「小さい頃に、エイズに感染した人のドキュメンタリー番組を見て、新薬を作って彼らを助けたいと、薬学部に行きました。その後、病気に苦しむ人により深く関わる医学にも興味を持ったんです」

チョコ開発に着手したのは、編入1年目の冬だった。

「きっかけは、札幌市内で先天性の皮膚病・表皮水疱(すいほう)症の患者さんと出会ったことでした。口の中がひどく荒れることも多く、栄養補給は液状のものに限られてしまう。治療法もない。そんな患者さんが少しでも笑顔になれるような食べ物を作れないかと思ったのです」

■失敗続きの試作品…チョコレート専門店が無償で助けてくれたワケ

おいしくて栄養豊富で口の中で溶けるもの。「そうか、チョコだ」と思いつくまでに時間はかからなかったというが……。

「最初は自宅で、すり鉢やミキサーで食材を砕いて調合して試作。でも、ひどくマズい。そこで札幌市内にあるチョコレート専門店にダメ元で協力をお願いしたところ、僕の発想に共感してくれて、無償で手助けしてもらいながら試行錯誤して完成にこぎつけました」

こちらが完全食チョコレート「アンジュ」
撮影=高津尋夫
こちらが完全食チョコレート「アンジュ」 - 撮影=高津尋夫

自身も心臓に持病がある中村さんは、医師を目指すとともに、そうした病と闘う患者に寄り添った活動をするのが自分の使命だと感じている。このアンジュを持続的に提供し、多くの人を幸せにしたいと、3年生の時には株式会社を立ち上げた。後述するようにショコラティエなど社員を雇い、製造工場も持って運営中だ。

「以前、大学生を対象とした起業プログラムで学んだ経験がありましたが、実際に商品開発や起業するのは初めて。もちろん大変でした。時間がいくらあっても足りない。でも何とか時間を捻出して事業を進めました」

■ネット販売や都内を含む百貨店など年間7000枚以上売れている

会社設立資金集めのために、助成金の申請に役所に通ったり、投資家にプレゼンしたり。クラウドファンディングでは目標100万円で支援を募ったところ、たちまちその2倍が集まった。そうした事業資金集めと同時に、協力してくれるスタッフのリクルートもあり、やらなければならないことが山ほどあった。

『プレジデントFamilyムック 医学部進学大百科 2022完全保存版』
『プレジデントFamilyムック 医学部進学大百科 2022完全保存版』

「でも、僕のこれまでの人生の中で一番多忙だったのは高校3年生の時なんです。野球部で甲子園を目指しながら、薬学部受験に向けて練習後に夜10時まで予備校通い。あの頃の多忙さが僕の忙しさの閾値(いきち)を上げました(笑)。薬学部で卒論を書きながら医学部編入の勉強をした時も大変でしたが、時間に追われている時のほうがやりがいを感じるタイプのようです」

そうした奮闘のかいもあって、アンジュはネット販売や都内を含む百貨店などの店頭販売を中心に年間7000枚以上も売れているが、さらに販売数を増やし知名度を上げたいという。

「栄養価が高く、体に悪いものが入っていない完全食チョコは、食の細くなった高齢者や育ち盛りの子供、食事や運動に気遣う健康志向の人、それに、こうした体に優しいチョコを誰かに贈りたい人など、多くの人に受け入れてもらえるはずです。なんといってもチョコはバレンタインデーなどギフト文化の象徴でもある。ニーズは今後も広がると確信しています」

完全食チョコを販売する起業家でもある医学部生の中村恒星さん(撮影=高津尋夫)
完全食チョコを販売する起業家でもある医学部生の中村恒星さん(撮影=高津尋夫)

薬学部→医学部→起業と成長を続ける中村さんの目下の目標は、外科医になることだ。会社経営との両立も含め、この先が楽しみだ。

(プレジデントFamily編集部)

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