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企画のプロはみんなやっている…お客のニーズを見える化する「6つの質問フレーズ」

プレジデントオンライン / 2022年2月22日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ヒットメーカーといわれる人たちは、どうやって企画を練り上げているのか。電通戦略プランナーの阿佐見綾香さんは「先輩社員の取材に同行し、音源データを徹底分析したところ、成果をあげる先輩たちの質問の仕方には、6つの共通があった」という――。

※本稿は、阿佐見綾香『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■いい情報が得られないのは「質問の仕方」のせい

「せっかく2時間かけてインタビューしたのに、大した情報が得られなかった……」
「10人に聞いて回ったのに、みんな同じことを言っていて、どう使えばいいかわからない……」

このように、誰かにインタビューやヒアリングをして集めた情報が役に立ちそうもなく、いわゆる「聞き損したな」と感じた経験はないでしょうか?

ビジネスをする上で、「ターゲット」になりえそうな人に自分の商品やサービスのどこが刺さるのかといった「セールスポイント」を探るために、相手からいろいろ聞き出そうとしても、上手くいかないことがあります。

私自身も会社に入社したての頃は、なかなか上手くいきませんでした。ヒットを生むべく、さまざまな人にインタビューをして戦略や企画の立案に使えそうな情報を引き出そうとしましたが、使える情報が集められないのです。

その一方で、インタビュー相手から必要な情報を次々と引き出し、成果をあげる先輩社員が数多くいました。

そこで、私はその先輩社員のインタビューのコツを知るために、取材に同行させてもらいました。そのインタビューでの音源データをすべて文字に書き起こし、何回も分析をしました。

その結果、成果をあげる先輩たちの質問の仕方には、ある共通があることがわかったのです。

■ヒットメーカーは6つの方法で質問をしている

ヒット商品をバンバン生み出すベテランの先輩たちから見出した質問のコツは、以下の6つでした。

コツ① 「なぜ」「具体的に」「詳しく」を使って掘り下げる
コツ② 一般論を言わせない、その人の「事実」のみにフォーカスする
コツ③ 1つの質問で聞きたいことは、1つに絞る
コツ④ 明確に定義されていてわかりやすい言葉で質問をする
コツ⑤ 誘導的なフレーズを省く
コツ⑥ 「もし○○が実現できるなら?」をぶつける

例えば、あなたが「つけまつげ」を製造するメーカーで、もっと売上を増やしたいと考えていたと仮定したら、この6つのコツを実際にどのように使っていくのでしょうか。具体的なインタビュー例から見ていきます。まずは、良くないインタビュー例から見てみましょう。

コツ① 「なぜ」「具体的に」「詳しく」を使って掘り下げる
<良くないインタビュー例 その1>
質問者「あなたはつけまつげを買うことがありますか?」
回答者「つけまつげは、私には合わないので使いません」
質問者「なるほど。それでは次の質問です。普段アイメイクで使っているアイテムは何ですか?」

これだけで終わって次の質問に移ってしまっては、表面的なファクトしか引き出せず、「セールスポイント」を絞り込むことができません。

「私には合わないから使わない」という回答の内容をもっと「深掘り」して情報を増やし、回答内容の解像度を上げていく必要があります。回答者が言語化できていないインサイト(本質的な悩みや欲求)を、もっと深掘りしていくのです。

■曖昧な言葉は深掘りしていく

そこで、1つ目のコツである「深掘りのキーワード」を使っていきます。まずは「なぜ」です。

コツ①:「なぜ」で掘り下げたインタビュー例
質問者「あなたはつけまつげを買うことがありますか?」
回答者「つけまつげは、私には合わないので使いません」
質問者「なぜ、合わないと感じるのですか?」
回答者「今私がしたいメイクの感じと違うんです」
質問者「なぜ、メイクの感じが違うと感じるのですか?」
回答者「派手だからですかね……今はナチュラルメイクがトレンドじゃないですか」

なぜを2~5回、少ししつこいかもしれないくらい繰り返すと、どんどん回答者の意識の深いところが言語化されていきます。

インタビューを続けていくと曖昧なキーワードがたくさん出てきます。例えば、ここでも「派手」「トレンド」という言葉が出てきました。ほかにも、「良い」「良くない」「使いやすい」「使いにくい」「好き」「嫌い」「普通」「微妙」「かわいい」「安心」「みんなが」などなど、詳しく具体的に言語化する余地のありそうな言葉は、会話の中ではよく出てきます。

このような曖昧なキーワードが出てきたときは、深掘りキーワードの「具体的に」「詳しく」の出番です。

■「その人が感じたこと」にフォーカスする

コツ② 一般論を言わせない、その人の「事実」のみにフォーカスする
<良くないインタビュー例 その2>
回答者「難しい、時間がかかる、目に異物感……とかですかね」
質問者「逆につけまつげの良いイメージは何かありますか?」
回答者「写真映えは、しますよね。」
質問者「今でも、写真映えしたいシーンで、つけまつげを使いたいと思うことはありますか?」
回答者「インスタグラマー目指している女子なら、使うんじゃないですか」

どこが良くないのかというと、「話が一般論に逸れてしまった」ことです。「私は使わないけど、使う人いるんじゃないですか」「私は使わないけど、こんな人は使うのでは」という意見は、推測の域を出ないので情報として役に立ちません。

他の人のことではなく、世間の一般論ではなく、回答者自身の感じたこと、事実に焦点を戻すことが必要です。

メイクアップ製品
写真=iStock.com/suchinan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/suchinan

■多くのことを一度に聞くと、答えはブレる

コツ②:その人の「事実」のみにフォーカスさせたインタビュー例
回答者「インスタグラマー目指している女子なら、使うんじゃないですか」
質問者「たしかにそういう人もいそうですね。ちなみに、あなた自身がどうかについて教えてください。今でも、写真映えしたいシーンで使いたいと思うことはありますか?」
回答者「写真映えのために使うことはありました」

無事に、回答者本人の感じたこと、事実に焦点を戻すことができました。

さらに、次のような失敗もよくあります。

コツ③ 1つの質問で聞きたいことは、1つに絞る
<良くないインタビュー例 その3>
質問者「あなたはつけまつげを使ったアイメイクの仕上がりと使い勝手について、マスカラと比較してみてどう思いますか?」
回答者「えっと……」

このインタビューの問題点は、1つの質問で「アイメイクの仕上がり」と「使い勝手」という2つのことを聞いてしまったことです。2つのことを一度に聞かれた回答者は、「どっちに対して答えればいいの?」と迷ってしまい、回答の内容がブレやすくなります。

1つの質問では、聞きたいことを1つに絞ることが鉄則です。

■曖昧な言葉を使って質問してはいけない

コツ④ 明確に定義されていてわかりやすい言葉で質問をする
<良くないインタビュー例 その4>
質問者「あなたはきちんとアイメイクをするほうですか?」
回答者「……わりとちゃんとするほうだと思います」

このインタビューの問題点は、曖昧な表現で質問をしてしまったことです。「きちんと」の定義が不明瞭なので、回答の内容が個人の感覚によってブレやすくなってしまいます。

「きちんと」のような曖昧な単語は、どうすれば具体的な事実で確認できるのかを考えて、定義を明確にすることが必要です。

例えば、「きちんとアイメイクをする」ということを以下の2つのように定義したとします。

〈例:「きちんとアイメイクする」の定義〉
・アイメイクアイテムで最低限、マスカラとアイシャドウとアイライナーの3つを使っていること。マスカラは、まつげエクステもしくはつけまつげでもOK
・週に3回以上アイメイクをすること

そして以下のように質問していきます。

コツ④:曖昧な表現を使わず、具体的な事実で確認するインタビュー例
質問者「あなたが使っているアイメイクアイテムをすべて教えてください」
回答者「アイシャドウベースと、アイシャドウと、アイライナーと、マスカラベースと、マスカラを使っています」
質問者「あなたは週に何回くらいアイメイクをしますか?」
回答者「毎日していますが、土日はメイクしないこともあるから週5~7日くらいかな」

明確な基準を設けることで分析にブレが少なくなり、曖昧な言葉を使わないことで回答者が答えやすくなりました。

■答えを誘導するような質問はダメ

コツ⑤ 誘導的なフレーズを省く
<良くないインタビュー例 その5>
質問者「一般的にアイメイクは目に負担があると言われていますが、アイメイクについてどう捉えていますか?」
回答者「そうですね。化粧を落とすときに目をこすってしまうので、目に良くないなと思っています」

この問題点は、「アイメイクは目に良くない」という誘導するような言葉を使ってしまったことです。その言葉に引っ張られて、回答の内容が偏りやすくなってしまうのです。
このように、回答者の意見を議論の一方に偏らせるような誘導的なフレーズは省くようにしましょう。

■「もし…」で本音が引き出せる

コツ⑥ 「もし○○が実現できるなら?」をぶつける

さらにインタビューを続けていく中で、「もし○○が実現できるなら?」をぶつけることも、「セールスポイント」の絞り込みに役立ちます。

コツ⑥:「もし○○が実現​できるなら?」を使ったインタビュー例
質問者「なぜ、つけまつげを使わないんですか?」
回答者「派手なイメージがあるので使いません」
質問者「もし、ナチュラルなデザインのつけまつげがあったら?
回答者「つけまつげは時間がかかるので……」
質問者「もし、10秒で簡単につけられるつけまつげがあったら?
回答者「不器用なので、取れてきてつけまつげだとバレたら嫌なので……」

このように回答者の行動レベルにまで掘り下げていくことで、回答者が感じているハードルは「派手」だというだけではなく、「時間がかかる」「取れそう」「バレそう」というハードルもある、という本音を引き出していくことができます。

阿佐見綾香『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)
阿佐見綾香『電通現役戦略プランナーのヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)

単純に「この商品を買いますか?」と聞いただけでは、その回答の「買う」「買わない」が本音なのか本音ではなさそうなのかを判断することはできないのです。

このようなインタビューを繰り返すことができるようになれば、精度の高い「セールスポイント」にたどり着くことができるはずです。

今の時代のお客さんのインサイトを抽出し、深くて本質的な悩みや欲求応える「セールスポイント」を打ち出せる商品をつくれると、高確率でヒットを生み出すことができます。ぜひ、この「質問のコツ」を実際に使ってみて、ヒットにつながる相手の本音を引き出してみてください。

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阿佐見 綾香(あさみ・あやか)
電通 戦略プランナー
早稲田大学卒業後、2009年電通入社。以来、戦略プランナーとして企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電・アプリなど。大手企業からベンチャー・中小まで、幅広い業種・規模の企業を手掛け、リサーチで見つけたターゲットインサイトをもとにヒットをつくる。本業の傍ら、リサーチに苦手意識がある人に寄り添ったセミナー、講演等に登壇。電通のマーケティング部門にて、新入社員教育プログラム「マーケティングリサーチ研修」を担当。女性マーケティングチームGIRL'S GOOD LAB(旧・電通ギャルラボ)、電通ダイバーシティ・ラボに参画。Forbes JAPAN 公式コラムニスト、日本経営合理化協会、宣伝会議、早稲田大学、国際女性ビジネス会議他、講演・連載・寄稿多数。

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(電通 戦略プランナー 阿佐見 綾香)

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