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40%の人間はケアしなくていい…部下のモチベーションを最短で回復させる"ある法則"

プレジデントオンライン / 2022年2月24日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov

難しい仕事を成し遂げるリーダーは、チームのメンバーをどのように管理しているのか。『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)を書いた木部智之さんは「仕事の成否を握っているのはメンバーのやる気だ。私は彼らを能力別に3段階に分け、カテゴリ別にモチベーションを管理している」という――。

■リーダーが最初に向き合う課題はチームとの関係構築

私は、キャリアの大部分を「炎上トラブルの火消し」に費やしてきました。落下傘部隊のように突如、炎上の爆心地に放りこまれるのです。

その時、苦労するのがチームメンバーとの関係、そしてモチベーション管理です。

チームが順調な時ならいざ知らず、そのチームが不調の時、あるいは炎上してしまっている時などは、腹を据えて取り組む必要のある課題です。

■リーダーを受け入れる側も不安を感じている

私の場合、見ず知らずのメンバーで構成されるチームをまとめてプロジェクトを遂行する経験を何度もしてきたので、今では慣れてきてはいるものの、それでもレスキューとしてプロジェクトに入る時には不安になります。

それは、「プロジェクトチームに受け入れてもらえるだろうか、どんなメンバーがいるのだろうか」といった気持ちからくる不安です。

ただ、これはプロジェクトメンバーからしても同じで、いったいどんなリーダーが来るのだろうか、という不安を持っています。そのような時のプロジェクトメンバーの反応には3つのパターンがあります。

■扱いづらいが、後に協力的になるタイプ

1つ目のパターンは歓迎タイプです。これまで、苦労に苦労を重ねても一向に状況が良くならなかった。そこに火消し役として新しいリーダーがやってきた。なんとかしてほしい、なんとかしてくれるだろう、という期待を持っているタイプです。

逆に、斜に構えるタイプもいます。「これまで自分たちがやってきてうまくいかなかったのに、いきなりやってきて何ができるんだ」という態度を取ったりします。このタイプは自負が強く、私はかつて「お手並み拝見ですね」と直接いわれたこともあります。

このタイプは、最初は扱いづらいこともありますが、気持ちが強く、責任感が強いことが多いです。したがって、プロジェクトが進んでいくにつれ協力的になってくれることが多いので、しばらくの辛抱と思って接するといいでしょう。

■プロジェクトの大きな阻害要因になる人の特徴

そして、一番厄介なのが、面従腹背タイプです。

表向きは、協力的な態度を取っていても、腹の底では批判的なスタンスを取っています。単に腹の底で思っているだけなら影響は少ないのですが、問題となるのは、プロジェクトとしての指示を無視したり、陰で自分の仲間を増やしたりすることです。

私がこのことに気づいたきっかけがあり、その光景はいまだに鮮明に覚えています。私がPM(プロジェクトマネジャー)をしていたプロジェクトでのことです。

あるチームの会議でディスカッションを終えて会議室を出ました。出た瞬間に伝え忘れたことを思い出し、部屋に戻りました。すると、そのチームのリーダーが「木部の指示は聞かなくていい、聞く必要がない」とメンバーに話していたのです。

会議中に耳打ちするビジネスマン
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

その場にかなりの気まずい空気が流れましたが、今となっては、私にとって、とても貴重な経験となりました。面従腹背タイプはプロジェクトの大きな人的阻害要因になります。このことがあって以来、面従腹背タイプに常にアンテナを張るようになりました。

面従腹背タイプがいることがわかれば、外堀を埋めるとか、刺客を使って影響力を下げる、などの手を打つことができます。

面従腹背タイプの存在に気がついても、恐れることなく、慌てず、感情的にならず、むしろ「存在することがわかってよかった」と捉え、落ち着いて対応すれば大丈夫です。

■2:6:2の法則で考える

プロジェクトチームには、優秀な人もいれば、そうでない人もいます。姿勢も、ポジティブだったりネガティブだったり、斜に構える人もいます。

そのように構成されているプロジェクトチームの全員のモチベーションをコントロールすることは不可能です。ですから、メンバーのスキルや特性によって、モチベーションコントロールの濃淡をつけるようにします。

大きくは3つのカテゴリでモチベーションコントロールの濃淡をつけます。

組織・チームは、おおよそ2:6:2の法則で構成されます。優秀な上位層が2割、平均的なミドルレンジの人材が6割、下位のグループが2割に分かれるという考え方です。

私はこれを、マズローの欲求5段階説のピラミッドを重ねて、図表1のようにマッピングします。これは私の実感から出てきた考え方で、このように見ると、2:6:2のそれぞれの層のモチベーション改善の観点がわかりやすくなります。

メンバーのカテゴリとケアの割合
出典=『プロジェクトのトラブル解決大全』

■炎上時、最も手厚くフォローすべきは…

特に炎上時においては、モチベーションケアをする割合は均等ではありません。

優秀なメンバーは自分でコントロールできている人が多く、あまり心配いりません。逆に、最下位層のメンバーは手当てをしても回復しないことがほとんどです。あまり手間をかけることはありません。

そして、一番手厚くフォローしないといけないのが、ミドルレンジです。

ミドルレンジの人たちは人数も多く、この層のモチベーションがだだ下がりでは、プロジェクトのリカバリがうまくいきっこないからです。

この視点に加え、プロジェクトのキーメンバーに対しても力を入れたフォローが必要です。リーダーだけではなく、技術的なキーパーソンだったり、業務的なキーパーソンだったり、ムードメーカーだったり、チームにはさまざまなキーメンバーがいます。そのようなキーメンバーのモチベーションは、特にケアするようにしましょう。

■部下のモチベーションの改善方法

2:6:2のカテゴリごとに見たモチベーションケアの方法を、いくつか具体的に紹介します。もちろん、実際には一人ひとりの性格・性質を見ながらのケアとなりますが、参考にできる点があれば取り入れてみていただけたらと思います。

上位2割のモチベーション改善

上位2割のメンバーのモチベーション改善をする際は、相手のプライドを損なわないことを意識します。たとえば直接的な動機づけ「君ならできるよ」などはプライドを損ねてしまうことが多いです。

上位2割にこのような言葉をかけても、相手は内心「当たり前でしょ」といった感じで、ちっとも刺さりません。

よって、相手のプロ意識に訴えたり、「この難しいプロジェクトをやり遂げられる人なんてそうそういないよ」という感じで、ミッションのハードルをあえて高めることで、モチベーションを引き上げたりします。

あとは、「ここはお前に任せる」と言葉で伝えるなど、責任をある程度渡してしまうこともあります。上位2割のメンバーは、これで奮い立つ人もいます。

それ以前に自分でモチベーションコントロールができているメンバーも多いので、そうしたメンバーには特別なケアは不要です。

モチベーションの波の上下を見て、気にしておくくらいで大丈夫です。

■プロジェクトの成否を担うミドルレンジ

ミドル6割のモチベーション改善

ミドルレンジは人数も多く、人それぞれモチベーションの源泉が違うので、個別対応が多くなります。個々に人をよく見てあげた上で声かけしましょう。

ただ、「このメンバーが求めているのは、承認欲求、社会的欲求、安全の欲求のどれだろうな?」という見方はするようにします。それを見ながら対応することが多いです。

おおむね、プロジェクトの位置づけ、重み、重要性を訴求すると、多くのミドル層のモチベーションにプラスに働くことは間違いないです。

繰り返しですが、この6割の下がりきったモチベーションをどれだけ戻せるかがプロジェクトリカバリの成否を握りますので、ここは丁寧に、気合いを入れて臨みましょう。

■ボトム層には言葉より業務量を考慮する

ボトム2割のモチベーション改善
木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)
木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)

正直に書きます。この層については、半分諦めます。しかし、もう半分はモチベーション回復に期待します。

モチベーション改善といっても、他の2つのカテゴリとは違って、言葉で何か訴えかけるというより、業務量をコントロールしてあげたり、仕事の山谷の濃淡をつけてあげたりといった対応をします。

ボトム層には目の前の自分の仕事や環境に不満を持っている人が多いので、それを「一時的に」「少しだけ」解消することを試みます。ただし、「ずっと」解消してしまえば、炎上プロジェクトならなおさら仕事が進まなくなってしまうので、あくまでも「一時的な」緩和です。

■モチベーションは「上げる」のではなく「戻す」

メンバー一人ひとりにそんなに手間をかけられないと思うかもしれませんが、モチベーション管理はプロジェクト遂行にあたって欠かせません。炎上時なら、まずはモチベーションを「上げる」のではなく「戻す」ことを意識して取り組みます。

また、そのための声かけ、会話を通して、リーダーとメンバーの関係構築にもプラスの影響があります。当然それは、プロジェクトの遂行にも寄与します。

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木部 智之(きべ・ともゆき)
パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年、日本IBMにSEとして入社。数々の炎上プロジェクトをサービスインに導くいわゆる「火消し屋」として活躍し、エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーとなる。2018年、パナソニック システムソリューションズ ジャパンに入社し、難易度の高い重要プロジェクトをリードする。2020年4月より現職。アウトオブザボックス代表。

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(パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員 木部 智之)

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