仕事のできる人はやっている…どんな相手にも必ず締め切りを守らせるための"殺し文句"
プレジデントオンライン / 2022年2月25日 12時15分
■プロジェクトの成否を握る「時間的な余裕」
仕事の中でも、特にトラブル対応においては、どれだけバッファーを作り出せるかが勝負の分かれ目の1つです。
図表1に、チームAとチームBの作業計画があります。
チームAは作業タスクごとにバッファーを計画しているもの。
チームBは、一つひとつのタスクからバッファーを排除し、すべてのバッファーを最後に持っていくスケジュールです。
どちらのチームのほうがすべてのタスクを早く終わらせられるでしょうか? 理由とともに考えてみてください。
答えはBです。理由は、バッファーというものは子供のお小遣いと同じだからです。つまり、各メンバーにバッファーを与えると、それをすべて使ってしまうのです。
チームBの計画はバッファーをチーム全体で計画しています。どれかのタスクで遅延が発生してバッファーの一部を使うことはありますが、バッファーのすべてを使うことはありません。
■言い値の作業時間を信じてはいけない
みなさんは、上司や先輩から「これ、いつまでにできる?」と仕事を頼まれた時、どのように答えますか? 私は、「あ、これは3日でできるな」と思っても、「5日くらいかかりそうです」と答えます。ほとんどの人はそうだと思います。なぜなら、3日でできると答えてできなければ怒られるからです。
つまり、リーダーの立場からすると、メンバーの言い値の作業時間には必ずバッファーが乗っている、と思わなければいけません。
その言い値の作業時間をすべて受け入れてしまえば、全メンバーのすべての作業にバッファーが積み重なってしまい、作業計画を立てた時には、もうすでにプロジェクトスケジュールをはみ出した計画になってしまっています。
■最小時間でチームに仕事を完了させるためには…
このメンバーのバッファーはどうしたら摘み取れるでしょうか?
自分が実際にやったことがあって知っている作業であれば、自分の見積りとメンバーの見積りを比べてみましょう。そうすればバッファーが乗っていることはすぐにわかるので、必要最小限の期間だけにします。
自分に経験がなく、知らない作業であれば、「なんでそんなに時間がかかるの? 細かく説明して」と聞いてみましょう。それを何回か繰り返すと、ムダにバッファーが積まれていることが明らかになります。
すべての作業に対して、このように問い詰める必要はありません。計画の初期段階や時折サンプリングでこのようなことをしておけば、「このリーダーにはバッファーは通用しない」と思われるようになり、事細かにチェックしなくても、必要最小限の計画を作ることができるようになります。
■失敗しない作業計画の作り方
プロジェクト遂行・リカバリにおいて、作業計画はとても重要です。
なぜなら、作業計画を失敗してしまうと、遂行・リカバリできる可能性はゼロになるからです。完璧な計画というものはありませんが、前述の「正しいバッファーの置き方」に加えて、失敗しない計画を作るポイントが3つあります。
ポイント① 想定外を防ぐ「1タスク5営業日以内」
第1のポイントとして、1つの作業タスクの計画が長いのはNGです。
「20営業日のタスク」を含んで計画されるケースをよく見ます。日数にして1カ月です。計画が長くなるほど見積りの精度は下がり、ムダな日数が含まれていきます。つまり、バッファーの多い計画となってしまいます。
基本的には、「1タスク5営業日以内」にします。1週間分の作業です。1週間以内に設定すれば、週次の定例でも完了か未完了かを確認できます。
タスクが長いと、途中の進捗で「順調です」と報告があっても、最後の報告で「全然終わりません」ということが起こりえます。
■プロジェクトの細分化をしてモレを防ぐ
ポイント② モレを防ぐ「ブレークダウン計画法」
計画時点で作業にモレがあると、そのモレを誰かが拾ってやることは絶対にありません。モレというものは、後々のタイミングで発覚して、大問題になります。漏らしてはいけないことは誰しもわかっていますが、作業を思いつきで洗い出してしまうと、必ずといっていいほどモレます。
そこで第2のポイントです。作業計画は、大きなカテゴリからブレークダウンしましょう。まずは大きなカテゴリでモレないようにして、1段階ブレークダウンしてそこでもモレないようにする……このように作業計画を立てていけば、モレることはほとんどありませんし、モレたとしても細分化された小さな作業がモレるだけなので、大きな問題にはなりません。
■計画表には担当者の名前を必ず入れる
ポイント③ 誰もやらない仕事を防ぐ「担当者名マスト」
担当者名がない計画表がある――ありえないと思われるかもしれませんが、実際にはよく目にします。
タスク名と日付は書かれているのですが、担当者名の欄がブランクになっているのです。すべてのタスクがブランクではなく、いくつかのタスクがブランクになっています。ポイント①の図表2の右側、担当者欄が歯抜けになっている状態です。
そこには、作業に追われて埋めきれない、人員のやりくりを未来の計画まで考えきれずにブランクになっている、といった事情があります。
最初から担当者までびっちり入れるのは骨が折れますが、第3のポイントとして、担当の名前は絶対にブランクがないよう徹底しましょう。
基本的には1カ月前には決めておくのが鉄則です。それでも決まらない場合は、1週間前までには絶対に決めます。ただ、ほとんどのタスクの担当者が1週間前に決まるようでは炎上まっしぐらです。
また、担当者の連名もNGです。もう1人がやるだろう、といってタスクが宙ぶらりんになってしまうからです。
■締め切りは最短で設定すべき理由
2~3日で終わる仕事を、「これ、月末までにやっておいて」と長い期限に設定するとどうなるでしょうか。
ほとんどの場合、期限が近づいてきてから仕事に着手して、期限である月末に仕事が完了します。ですから、仕事の期限は「最短」で設定するべきです。3日で終わる仕事なら、期限は3日後に設定するのです。
しかし、期限を最短で設定したとしても、その期限が守られなければ意味はありません。メンバーに期限を守らせるテクニックが3つあります。
■期限を守らせる3つのテクニック
1つ目は、期限の数日前に状況報告をするようにあらかじめ決めておくことです。これをしておくと、メンバーはゼロ報告はできないので、ある程度進めた状態で報告をするようになります。
逆に、本当に進んでいない場合はその時点で対策を検討できるので期限に向けたキャッチアップが可能です。
2つ目は、タスクが遅れる場合はそれが「わかった時点で報告する」ルールを作ることです。遅れる場合のほとんどは、期限の日に「間に合いませんでした」という報告がきます。それを事前に報告させるようにします。
すると、事前に報告はしにくいので、なんとしても期限に間に合わせようとする心理が働きます。
3つ目は、仕事が期限に遅れた時には、なぜ遅れたのか、と毎回問いただすことです。
期限に遅れた時、リーダーがそれを放置していると、メンバーも「遅れても怒られないんだ」と気が緩みます。期限を守らなければいけない、という雰囲気を醸成しましょう。
■仕事の期限を守る動機を考える
ビジネスパーソンが仕事の期限を守る動機は2つだけです。
1つは、プロとして期限には必ず仕上げる、というモチベーション。
もう1つは、期限を過ぎると怒られるから、遅れないようにやろうという気持ちです。
そして、9割の人の動機は後者です。私もそうですが、みなさんも心当たりがあることでしょう。それを考えると、期限を超えた時には指摘をしないといけない、ということがわかると思います。
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パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年、日本IBMにSEとして入社。数々の炎上プロジェクトをサービスインに導くいわゆる「火消し屋」として活躍し、エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーとなる。2018年、パナソニック システムソリューションズ ジャパンに入社し、難易度の高い重要プロジェクトをリードする。2020年4月より現職。アウトオブザボックス代表。
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(パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員 木部 智之)
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