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「すいません」は間違い、「なるほど」は大名言葉…ビジネス現場で使ってはいけないNGワード

プレジデントオンライン / 2022年3月2日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

ビジネスの現場では使ってはいけないNGワードがある。スピーチライターのひきたよしあきさんは「『すいません』という言葉は間違い。正しくは『すみません』だが、謝罪や感謝でも使っている人がいる。マイナス印象を与える恐れがあるので、気をつけたほうがいい」という――。

※本稿は、ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)の一部を再編集したものです。

■謝罪・依頼・感謝を「すいません」で済ましていいのか

例えば、こんな新人くんがいます。とてもいい子なんだけれど、口数が少なく、少し注意すると「すいません」と小さくなる。話しかけてくるときも「すいません」から始まる。謝るときも「すいません」と頭を下げる。ある日、彼が両手でパソコンやら資料やらを抱えていたので、エレベーターのボタンを押してあげたら、感謝なのだろうか、「すいません」とまた頭を下げた。「ねえ、『すいません』を便利に使い過ぎてない?」。あなたもこんな気持ちになったことはありませんか?

始めに、新人くんが使っている「すいません」は間違いです。漢字で書けば「済みません」。相手に対して「私の気が済みません」という意味。だから「すみません」が正解です。言いやすいので、つい「すいません」と発音してしまいますが、直しましょう。書く「すみません」を減らして、言葉を選択できる人になるときは特に、「すいません」と書かないように。

さて、その「すみません」、新人くんならずとも、実によく使う言葉です。彼の例で見ると、

・注意されたときの「すみません」 謝罪
・呼びかけてくるときの「すみません」 依頼
・「ありがとう」の意味での「すみません」 感謝

の意味で使っています。「謝るとき」「呼びかけるとき」「感謝するとき」というコミュニケーションのなかでも大切なポイントを、「すみません」で済ましているのですから、人との距離が縮まりません。どうすればいいのでしょう。

■目上の人や得意先への謝罪はより丁寧な言葉で

ビジネスでの謝罪は、「申し訳ございません」「失礼いたしました」が、正しいとされています。目上の人、得意先などの場合は、努めて使うようにしましょう。

「ごめんなさい」も謝罪にはよく使います。しかし、この言葉は、「許してください」と相手に許しを請うのが本来の意味です。「ごめんなさい」よりも「すみません」と言ったほうが、甘えることなく謝罪していることになります。

もっとも、これらはかしこまったビジネスの場での話で、普段の仕事では臨機応変に使い分けてください。

■感謝の「すみません」は使わないほうがいい

呼びかけの「すみません」は、ほぼ相手の気を引くための「掛け声」と考えたほうがいいでしょう。使っても差し支えありません。が、相手にスマートな印象を残すなら、「すみません。少しお時間いただけますか」。あるいはもっと丁寧に、「すみません。5分ほどお時間いいですか」と、相手の時間をもらうことに気を使うようにしたいものです。

以前、「忙しい政治家と話すときは、6分を単位にしろ」と言われたことがあります。

「挨拶」に1分。中身は5分。この時間で話ができるところまで内容をそぎ落としてこい、というわけです。これは政治家だけでなく、多忙な企業トップと話すときにも役に立ちました。時間を明示することも大切なのです。

最後は、感謝の「すみません」です。これは使わないほうがいいでしょう。この「すみません」には、「こんなことまでしてもらって、私の気が済みません。恐縮です」と、謙遜の気持ちが入っています。しかし、感謝するときは「ありがとうございます」と言うほうが、気持ちが伝わります。

「すみません」は、謝罪と依頼のときに使う。感謝は「ありがとう」と言う。「すみません」を使い分ければ、新人くんだって感情表現の豊かな人になれますよ。

■「なるほど」は上から目線の大名言葉

私はインターネット教育番組「Sch00(スクー)」で講師をしており、書き方、話し方などについてさまざまな角度からお話ししています。そのなかで、「なるほど」という言葉について説明しました。

「なるほど」は、「成る」と「程」」を合わせたもので、「できる限り成っていること」から、成果を評価する言葉に変化してきました。「確かにあなたの言うことは、できる限りのところまで達成しているね。評価してあげるよ」と、こんな意味です。評価するのですから、本来、目上の人が使う言葉。上から目線の「大名言葉」です。

こう説明した後、私は番組内で、何度も「なるほど!」と使っていました。気になって過去の放送を聞き直したら、「はい」「うん」「なるほど」が、私の受け答えのパターンです。「なるほど、なるほど!」とおどけてみたり、「なるほどですね!」と若ぶってみたりと、「なるほど」を連発している自分に気づきました。ショックでした。

「なるほど」が、「上から目線」の言葉だという認識はありませんでした。思えば、若い頃に『なるほど!ザ・ワールド』という番組をよく見ていたし、『世界なるほど新発見』などというドキュメンタリーも見ていた。「なるほど」は、学びと発見に満ちあふれたポジティブな言葉だと思い込んでいたのです。

■「なるほど」が偉そうに聞こえない使い方

その後、口癖になっている「なるほど」を言わないようにする闘いが始まりました。さまざまな場所で講師をしていますが、こういうところでは先生の立場であるため、生徒の意見に対して「なるほど」と言っても問題はありません。相手よりものをよく知っていることが、先生の前提ですから。

しかし、得意先や公開の場での講義やスピーチで「なるほど」と言うのは、こちらの思いとは裏腹に、偉そうに聞こえてしまうこともあるのです。

では、どういうときに「なるほど」を使えばいいのでしょうか。

それは「感嘆詞」としての「なるほど」です。

「なるほど! そういうことだったのね!」
「なるほど! やっと理解できた!」
「なるほど! よく分かった!」

と、「!」が付く感じ。モヤモヤしていたことが腑に落ちた。ストンと心に落ちた。発見できて、ちょっとびっくり! こういうときに「なるほど!」と使えば、「あなたのおかげで、これまで理解できなかったことが分かったよ」というメッセージを送ることになります。

■自分の口癖を知る近道は録音・録画

腕を組んで、「あなたの意見を認めます」という意味で「なるほど」と言うのではなく、両手をパンッと叩いて「分かった!」という感じで、「なるほど!」と言う。「あなたのおかげで、分かった」「発見できた」というニュアンスを込めて言うと、不快な印象を与えないで済みそうです。

ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)
ひきたよしあき『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)

私が「なるほど」とよく言っていることを発見できたのは、自分が出ている動画を見たおかげです。そこに映る私は、自分では想像できないほど、滑舌が悪く、早口で、「なるほど、なるほど」を連発する嫌な感じの人間でした。

しゃべり方を直すには、自分の姿を見る、声を聞くのが近道です。

その後の私も、相変わらず「なるほど」をよく言いますが、以前に比べて少し減り、感嘆詞として使うことが増えました。なるほど! やっと理解できました。

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ひきた よしあき 博報堂フェロー、スピーチライター
1984年早稲田大学法学部卒。学生時代より「早稲田文学」学生編集委員を務め、NHK「クイズ面白ゼミナール」のクイズ制作にも携わる。博報堂に入社後、CMプランナー、クリエイティブディレクターとして数々のCM制作を手がける。政治、行政、大手企業のスピーチライターとしても活動し、全国各地のカルチャースクール、企業、自治体、学校で講演活動を行う。著書に『人が動きたくなる言葉を使っていますか』(大和書房)、『5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本』(大和出版)『人を追いつめる話し方 心をラクにする話し方』(日経BP)など多数。

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(博報堂フェロー、スピーチライター ひきた よしあき)

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