人望のある人は使っている…意見を主張しても反論されない"前置きフレーズ"2つ
プレジデントオンライン / 2022年3月2日 13時15分
※本稿は、レス・ギブリン『人望が集まる人の考え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/弓場隆訳)の一部を再編集したものです。
■相手の話をじっくり聞くという人はごくわずか
選挙で勝つ秘訣を政治家志望の青年に尋ねられたとき、最高裁判事のオリバー・ウェンデル・ホームズはこう答えた。
「相手の言い分に共感して理解のある態度を示すことが、人望を集める最も効果的な方法である。ところが、相手の話をじっくり聞くという単純な方法を実行している人はごくわずかしかいないのが現状だ」
ある意味で、私たちはいつも選挙に立候補しているようなものだ。周囲の人はたえず私たちを観察し、心の中で賛成票か反対票を投じているからである。場合によっては、取引するかしないかを決めている。その決定的要因となるのが聞き上手かどうかだ。実際、そういうケースはあなたが思っている以上に多い。
誰かと会って立ち去った後、うまくいかなかったと感じる場合、あなたは相手から反対票を投じられたような気分になり、「相手を味方につけるにはどう言えばよかったか?」と自分に問いかけるかもしれない。
意外なことに、たいていその答えは「とくに何も言う必要はなかった」である。あなたがしくじったのは、何かを言ったとか言わなかったとかではなく、相手の話にじっくり耳を傾けなかったからだ。
■話をよく聞く人は「利口な人」と評価される
ほとんどの人は利口だと思われたがっている。だが、たえず「利口そうな発言」をして自分を高く評価してもらおうとやっきになっている人は、相手から「利口な人」と評価してもらえない。単に「利口ぶる人」と評価されるだけだ。
自分を「とても利口な人」と評価してもらえる確実な方法を紹介しよう。相手の話にじっくり耳を傾ければいいのだ。相手の話をひと言も聞き漏らすまいという姿勢で一生懸命に耳を傾ければ、「とても利口な人」と評価してもらえる。一方、愚か者は相手の話がいかに重要かに気づかないので耳を傾けようとしない。
詩人のウォルト・ホイットマンは友人と一緒に道を歩いていたとき、見知らぬ人と出くわして言葉を交わした。数分間、ホイットマンは会話を独占し、相手はほとんど何も話さなかった。相手が立ち去った後、ホイットマンは「彼はとても利口な人だ」と言った。
友人が驚いて「彼はほとんどしゃべっていないのに、なぜそう思うのか?」と尋ねたところ、ホイットマンは「彼は私の話によく耳を傾けてくれた。これは彼がとても利口な人である証しだ」と答えた。
自分の友人と知人について少し考えてみよう。その中の誰が「とても利口な人」という評価を得ているだろうか。あなたなら次のうちの誰に好意を抱くだろうか?
2.あなたの話をさえぎって話し続ける人
3.あなたの話にじっくりと耳を傾ける人
ある賢者がこんなふうに表現した。
「神様は人間にふたつの耳とひとつの口を与えた。話す量の2倍を聞くことにあてるように意図したからだ」
■耳を傾ければ、相手の求めているものがわかる
全米屈指の自動車デザイナーが「自動車業界で成功するには、人々が求めているものに常に敏感でなければならない」と言い、さらに持論を展開した。
「車のデザインをしているのは、じつはデザイナーではなく一般の人たちです。デザイナーは一般の人たちの要望に耳を傾けるだけです。一般の人たちが何かを求めているとき、デザイナーはそれをすぐに提供するために努力します」
成功するには相手が求めているものを与えることが不可欠である。あなたはたえず相手の要望に耳を傾けなければならない。
よい人間関係は双方向のコミュニケーションによって成立する。それはギブアンドテイクの精神にもとづく。相手が求めているものがわからなければ、相手の心をつかむことはできない。
相手が何を求めているかは謎ではない。私たちはよく「相手が何を求めているかがわかれば、対処の方法があるのに」と悔しがるが、相手が求めているものを見極めるのはそんなに難しいことではない。
全米販売協会のアル・シアーズ理事長は、こう言っている。
「すべてのセールスマンは見込み客の要望を見極める能力を持っている。相手の言うことに耳を傾ければいいからだ。そうすれば、相手はそれを教えてくれる。問題は、相手の話をさえぎって自分の意見を言ってしまうことだ」
状況によっては、自分の手の内を明かさずに相手の思惑を探る必要がある。多くのビジネスの取引で使われる戦略は、自分の要求を言わずに、相手が求めているものを探り、どうすれば相手を満足させられるかを見極めることだ。ここで肝に銘じるべきことは、自分がうっかりしゃべりすぎると手の内を悟られてしまうことである。
一流のビジネスマンは相手の手の内を読む不思議な力を持っていると考えられているが、それは実際には「不思議な力」ではない。
一流のビジネスマンは自分の口を閉じて、相手に話させるように仕向けるのがうまいだけである。彼らは精神分析学の父フロイトの科学的見解を直感的かつ経験的に知っているのだ。人間はずっと話をさせられると自分の本心をごまかせなくなる。一生懸命に隠そうとするかもしれないが、どうしても本音をしゃべってしまうのだ。じっくり耳を傾ければ、相手が無意識に自分の本音をあらわにしていることがわかる。
■相手の話に耳を傾けることで自己中心的な性格を克服できる
相手の話にじっくり耳を傾ける習慣を身につけると、自己中心的な性格を克服することができる。自己中心的な性格は人間関係では大きなハンディキャップになるが、相手に意識を向けると自分のことをしばらく忘れることができる。
自己中心的な性格では円満な人間関係を築くことはできない。2人の人間が衝突するのは、どちらかが相手のことを軽視して自分のことばかり考えているからだ。
心理学者は、利己的な本能を捨てるのではなく、自分のことから意識をそらすことが重要だと説く。そうすれば、利己的な本能をなくすことはできなくても、自己中心的な性格を克服できるからだ。
自己中心的な性格を克服するための従来のアドバイスの大半は間違っている。私たちは「自分本位であることは悪徳だから恥じるべきだ」と教わってきたが、すべての人が自分本位な傾向を持っているから、このアドバイスは理にかなっていない。
自己中心的な性格を克服する方法は、「自分本位であることは悪徳だ」と自分に言い聞かせることではなく、「相手の話にもっと耳を傾ける必要がある」と自分に言い聞かせることだ。
■聞くことで相手の自尊心を満たすことができる
相手に最高の評価を与える方法のひとつは、相手の話に耳を傾けることである。辛抱強く聞くことは、「あなたの話は聞く価値がある」という意志表示になるからだ。そうすることによって相手の自尊心を満たすことができる。人はみな自分の発言は聞いてもらう価値があると思っている。
一方、相手の自尊心を最も傷つけることのひとつは、相手の発言を無視することだ。
妻が「夫は私の言うことをちっとも聞いてくれません。たとえば、私が『給湯器が故障して困っている』と言っても、夫は『あっ、そう』と言うだけで新聞を読み続けます」と不平を言うのを聞いたことがないだろうか?
あなたはこんなセリフを聞いたことがないかもしれないが、結婚カウンセラーは何度もそれを聞かされている。
従業員が「上司は悪い人ではないのですが、残念ながら私の話を聞いてくれません。私が抱えている問題について相談しようとしても、途中でさえぎって生半可な返事をします」と不平を言うのを聞いたことがないだろうか?
あなたはこんなセリフを聞いたことがないかもしれないが、社内相談窓口の担当者は何度もそれを聞かされている。
子どもが「親が僕のことをわかってくれません。僕が自分の気持ちを伝えようとしても聞いてくれないのです。僕をいつまでも子ども扱いして重要な問題とは思っていないのかもしれませんし、子どものあるべき姿について説教したいのかもしれません。いずれにしろ、僕のことなんてお構いなしです」と不平を言うのを聞いたことがないだろうか?
あなたはこんなセリフを聞いたことがないかもしれないが、少年鑑別所の係官は何度もそれを聞かされている。
人間関係のトラブルの主な原因は、相手の話を聞こうとしないことだ。
次のアドバイスを紙に書いて壁に貼り、その内容を肝に銘じよう。相手が子どもであれ大人であれ、小人物であれ大人物であれ、この原則があてはまる。人とうまく関わりたいなら、相手の発言にじっくり耳を傾け、相手が何を求めているかをよく知る必要がある。
■【人望が集まる基礎知識】
聞く技術はたいへん重要だから、常に実践する必要がある。だが、気をゆるめるとすぐに忘れてしまいやすい。そこで、次の7つの方法を肝に銘じよう。
2 相手の発言に興味を持っていることを示す。賛同するなら、うなずこう。面白い話をしてくれたら、ほほ笑もう。相手の仕草に反応し、うまく調子を合わせよう。
3 相手のほうに身を乗り出す。あなたは話が面白い人のほうに身を乗り出し、話が退屈な人にそっぽを向く傾向があることに気づいているだろうか。相手のほうに身を乗り出せば、相手の話を聞いていると伝えることができる。相手に質問する。自分がよく聞いていることを話し手に伝えるのに役立つ。
4 相手に質問する 自分がよく聞いていることを話し手に伝えるのに役立つ。
5 相手の話をさえぎらず、もっと話してほしいと言う。最後まで話を聞いてもらえると、ほとんどの人はたいへん喜ぶ。もしさらに話を引き出してもらえるなら、相手はもっと喜ぶ。たとえば、「最後の点について詳しく話してもらえますか」とか「あなたの考え方をもっとよく知りたいです」という具合である。
6 話し手の話題に従う。どんなに新しいテーマについて聞きたくなっても、話し手が話し終えるまで話題を変えてはいけない。
7 話し手の言葉を使って自分の意見を伝える。相手が話し終わったら、その発言の一部を繰り返すといい。これは自分がよく聞いていたことの証しになるだけでなく、反論されずに自分の考え方を述べるよい方法でもある。たとえば、「ご指摘のとおり」とか「今おっしゃったように」と前置きするのがそうだ。
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1912年、アイオワ州に生まれる。第2次世界大戦にて兵役を務めたのち、1946年に営業職に就く。全米セールスマン賞を受賞。全米屈指の経営コンサルタントとして知られ、主なクライアントにGE(ゼネラル・エレクトリック)、メリル・リンチ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ニューヨーク生命、全米保険外交員協会、PGAゴルフツアーがある。軍隊や企業などの組織で学んだ知恵を凝縮した本書は、古典的名著として全米の多くの読者に今なお読み継がれている。
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(アメリカの経営コンサルタント レス・ギブリン)
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