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「日本円が中国に乗っ取られる」じわじわと支配を広げる"デジタル人民元"の本当の怖さ

プレジデントオンライン / 2022年3月2日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipopba

中国政府が普及を推し進める「デジタル人民元」とは何か。資産コンサルタントの方波見寧さんは「仮想通貨の一種で電子決済より手数料が格安という魅力があるが、利用者の消費行動や金融データが筒抜けになる可能性がある。それは日本も例外ではない」という――。

※本稿は、方波見寧『2030年すべてが加速する未来に備える投資法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■ブロックチェーンの普及で中間業者は消滅する

エクスポネンシャル・テクノロジー企業として、GAFAMばかりを想定するのは安易な考え方です。「2030年すべてが加速する未来」までにGAFAMを脅かす勢力が登場する可能性が十分にあります。おそらくは金融分野からの巨大な津波によるものでしょう。その正体とはブロックチェーン&仮想通貨(資産)です。

ブロックチェーンとは、世界中の数千台のコンピューターが監視し合う、改ざんが不可能なインターネット上の台帳で最高位の信用を担保してくれます。また、あらゆる契約形態は、ブロックチェーン上で行われるスマートコントラクトに代替することが可能です。

住宅購入時に不動産業者を使うのは、売り手が物件を保有しているという信用を担保させるためであり、物件の6%が手数料として消え失せます。不動産業者のような中間業者はアメリカの労働者の中の1000万人を占めていますが、ブロックチェーンというエクスポネンシャル・テクノロジーが稼働すれば、買い手と売り手は6%の手数料を支払う必要がなくなる半面、すべての中間業者は消滅します。

そして、ブロックチェーンは仮想通貨を生み出しますが、仮想通貨では送金手数料がタダに等しく、1000分の1円のようなマイクロペイメントが可能です。しかも、銀行口座とは関係なく発行できます。

■中国政府が普及させたい「デジタル人民元」とは

2022年に中国政府はデジタル人民元を誕生させるでしょうが、デジタル人民元とは電子マネーではありません。ブロックチェーンを土台とした仮想通貨であり、正式な通貨でもあります。

デジタル人民元は、スマートフォン上の「ウォレット」というアプリを利用して入出金や送金、決済に使用されますが、ブロックチェーンを土台としているため、中国国内に銀行口座を有していない外国人でも理論的には利用が可能です。電子マネーでは、中国国内に銀行口座(あるいは中国国内発行のクレジットカード)を有している場合のみ利用可能である点が大きく異なります。

中国ではデジタル人民元の誕生以前から、金融ビジネスにおいては世界最高水準を実現しており、アリババやテンセント系列のアリペイやウィーチャットペイというスマホ決済を中国人10億人が利用しています。

2021年時点で、中国政府は、民間の仮想通貨を禁止とし、なおかつ、アリババやテンセント等に圧力をかけて10億人の中国人が使用するアリペイやウィーチャットペイを掌握しようとしている可能性が高く、そうであれば、いずれ14億人の中国人すべての消費行動や資産状況は中国政府に掌握されます。

しかも、アリペイやウィーチャットペイの中身を従来の電子マネーからデジタル人民元へとすり替える可能性が出てきたため、日本や欧米などの外国でも、デジタル人民元決済のアリペイやウィーチャットペイが広く利用され、情報収集される可能性が生じてきたのです。

スマートフォンに表示されたデジタル人民元ウォレット(財布)アプリと人民元紙幣(2022年1月6日、中国・北京)
写真=EPA/時事通信フォト
スマートフォンに表示されたデジタル人民元ウォレット(財布)アプリと人民元紙幣(2022年1月6日、中国・北京) - 写真=EPA/時事通信フォト

■中国政府が狙っているのは金融データ

たとえば、日本のセブン‐イレブンの年間売上高は5兆円ですが、日本のスマホ決済を使えば、売り手負担3~4%の1500~2000億円を支払わねばならないところを、アリペイやウィーチャットペイを利用すると、売り手負担は0.6%の300億円以下に抑えられます。

さらに、中国貿易業者は、海外送金手数料が無料となる可能性が出てきます。しかも、アフターコロナでは、年間1000万人の中国人観光客も来日するでしょう。

経済的効率性を求めて誰もがデジタル人民元決済のアリペイやウィーチャットペイに飛びつくでしょう。ところが、アリペイもウィーチャットペイも中国政府も、狙っているのは手数料ではなく金融データなのです。そして、金融データとは「何にいくらお金を使っているか?」という情報であり、インターネットの検索データの「何に興味を持っている?」という情報よりも、はるかに強力なデータなのです。

ブロックチェーンを土台としたデジタル人民元は、消費者の秘匿性を認めない設計でしょうから、アリペイやウィーチャットペイなどの登録時の個人の名前、住所、生年月日、家族構成、勤務先などの個人情報に加えて、「いつ、何に、どこで、いくらのお金を使ったか?」が中国政府にガラス張りになります。

そして、デジタル人民元を土台としたアリペイやウィーチャットペイを決済の中心にしてしまうと、「資産、年収、支出、貯蓄がいくらあるか?」という金融情報すべてが中国政府にガラス張りになるのです。

■日本の商取引がデジタル人民元に置き換わると…

2022年、コロナが終息し、北京オリンピックを終えて、中国人観光客が日本に押し寄せるようになって、デジタル人民元を土台としたアリペイやウィーチャットペイを日本人が利用するようになれば、日本国内のコンビニ、タクシー、ホテル・旅館、飲食業などが一斉にデジタル人民元を利用する可能性は極めて高いと考えられます。

また、対中貿易でも、海外送金手数料がかからないことなどを理由に、中国企業からデジタル人民元での決済を日本企業は求められるかもしれません。膨大な商取引がデジタル人民元へなだれ込みます。

日本円という通貨が消滅の危機にさらされる可能性が出てきたということです。そして、デジタル人民元を利用する中華圏に属するということは、日本人が中華経済圏に“服従した”ということになるのです。

2000年代には、低賃金労働力を求めて中国進出した日本のテクノロジー企業が溢れかえりましたが、結果的には、日本の先端テクノロジーがすべて中国企業に吸収されて2020年代には劣勢に立たされています。今度は、インバウンドなどと日本政府がもろ手を挙げて中国人観光客を来日させる中で、日本企業が中国人観光客を獲得しようとすると、日本人全体が巧妙に中華経済圏へと組み入れられる可能性が生まれてきました。

■「デジタル人民元」のみでの資産保有は危険

デジタル人民元を使えば、送金と決済がゼロとなるため、日本人の利用者が指数関数的に増加し、「無駄な費用の節約」と引き換えに、「消費行動と商取引の金融データ」を中国共産党に引き渡します。いずれ「信用スコア」が発表され、融資に関してスコア化がなされ、スコアが高い場合には、ホテルやレストラン、百貨店などで優遇サービスが受けられ、そうでない場合には、結婚や就職に至るまで不当な扱いを受けるでしょう。

さらに進んで、中国共産党に対する反対行為を行う日本企業や日本人に対しては、デジタル人民元の利用を制限したり、口座を凍結したり、24時間365日行動を監視される能性があります。

この悲観的なケースでは、以下の対策を心がけましょう

まずは、外貨預金口座を開設しましょう。ドルかユーロを確保できるようにしておきます。「生活費」の多くは送金・決済手数料がないため、デジタル人民元を利用せざるを得ません。「キャッシュリザーブ」も緊急時に利用するためデジタル人民元となるでしょう。「円という通貨」の保有は、現金決済に利用する必要最低限にとどめる必要があるかもしれません。

次に、余剰資金に関しては、エクスポネンシャル・テクノロジーファンド、外貨建てMMF、ドルやユーロによる外貨預金など、ドル資産やユーロ資産を多めに取ります。決済口座も外貨預金口座を十分に利用します。一部はゴールドなどの実物資産で保有してもいいでしょう。日本国内の不動産に投資するとやっかいな事態を招くかもしれません。

■「日本円」消滅の可能性を考えて通貨分散を

要するに、戦火の中を財産を持ち運んで逃げ延びてきたユダヤ人の財産形成法が参考になりますし、2020年6月の香港国家安全維持法施行後に香港市民10万人がイギリスに移住したことを参考にしながら、通貨分散を考えるべき時代がやってきたのです。

方波見寧『2030年すべてが加速する未来に備える投資法』(プレジデント社)
方波見寧『2030年すべてが加速する未来に備える投資法』(プレジデント社)

対GDP比で見た中央銀行の資産規模が、日本では130%を上回っています。円という通貨が消滅する可能性は、かつてないほど高まりました。一時的にアメリカやEUへ避難するという最悪のケースすら想定した上で、それに対して備えをしておけば、それ以上のことは必要ないでしょう。

できる範囲の対策を講じていれば、あとは成り行きに任せるしかありません。仮に、中国共産党によって、日本の円が消滅し、デジタル人民元が支配的になろうとも、一部の資産をドルやユーロに替えておけば、中国共産党によって、日本人の資産状況のすべてを把握することは不可能であり、仮に、日本が中華帝国の属国と化したとしても、財産の一部は保全されることになるからです。

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方波見 寧(かたばみ・やすし)
イーデルマン・ジャパン代表
一橋大学卒業後、大手証券会社を経て、2001年にイーデルマン・ジャパンを設立。リック・イーデルマン氏に師事し、ファイナンシャル・プランニング、投資運用法、エクスポネンシャル・テクノロジー、ブロックチェーンとデジタル資産について学ぶ。ブロックチェーンとデジタル資産の米国研究機関であるDigital Asset Council for Financial Professionals協会会員。著書に『21世紀最大のお金づくり』(徳間書店)、『家庭の金銭学』(リック・イーデルマンとの共著、金融財政事情研究会)など。

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(イーデルマン・ジャパン代表 方波見 寧)

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