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固定費を月1万円削れるか…物価上昇時にあっという間に転げ落ちる「ザル家計」の致命的な共通点

プレジデントオンライン / 2022年3月3日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bet_Noire

あらゆる商品・サービスが値上げされている。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さんは「2022年は『物価上昇元年』で今後、数年値上げが続く可能性もある。家計の赤字転落を阻止するために、日々の支出をチェックして浪費をなくすような対策を即実践すべき」という――。

■昨今、モノの値段はじわじわ上がり始めている

最近、値上げについてのコラムを書く機会が増えてきた。書くタイミングによって「値上げ品目リスト」がどんどん増えていることを感じる。

昨年末は牛丼とガソリンの値上げが話題となった。今年に入ってからは電気代、食パン(小麦)、サラダ油、カップ麺と生活必需品に幅広く値上げが拡大している。

駄菓子の値上げなども大きな話題となっているようだ。10円が12円だと笑っている人も多いが、40年以上据え置きを続けていた価格が20%上昇すると考えれば、象徴的だ。

今回の一連の値上げトレンドの興味深いところは、値上げ幅が数%にとどまらないことだ。牛丼が387円から426円に値上げされたと考えればこれは10%の値上げになるし、カップ麺等の上昇幅は品目によるが5~12%と報じられている。

過去にも、1リットルの牛乳を900ミリリットルのパッケージにし価格据え置きとするようなステルス値上げが行われ、実質的に10%相当の値上げといえたが、「5%超」「10%超」といった値上げが相次ぐと、家計としてはもはや無視できないものとなってきた。

ガソリン代の値上がりが一過性のものとなるかはまだ読めないものの、これも値上げ幅は大きい。こちらはもはや10%どころの騒ぎではなくなってきている。

■2022年の値上げトレンドは価格据え置きガマン比べ終了のお知らせ

まだ年明けから2カ月の段階で、今年のトレンドを語るには早すぎるかもしれないが、ひょっとするとこの値上げ傾向はこれから何年も継続する「物価上昇元年」のスタートラインなのかもしれない。

一般論としていわれる価格上昇要因のいずれもが値上げの必要性を示している。

まず、人件費の高騰。少子高齢社会の到来は非正規の若者を低コストで使う時代ではなくなった。アルバイトの最低賃金も都市部では上昇し、それでも人材を確保できない状況にある。同一労働同一賃金の取り組み、社会保険適用拡大の取り組みなどもあいまって、企業が正社員なみの雇用をすれば、人件費をセーブすることは困難だ。

次に、原材料費の高騰だ。消費者の手元で価格上昇がある前段階として食材や工業製品の原材料コストが跳ね上がるわけだが、多くの分野でその傾向は報じられている。かつては低コストで原料を輸入できたはずが、もはやその常識が通じなくなっているわけだ。

そして、輸送コストの上昇。ここで無視できないのは円安トレンドとガソリン原油価格の上昇だ。

いずれにせよ、企業が「価格据え置きを耐える」という限界が近づいているとみたほうがよさそうだ。値上げによる客離れを恐れたガマン比べ大会も、2022年、終わりを告げようとしているのかもしれない。

■5年後振り返れば問題なくとも、2022年は気を引き締める

値上げ問題、短期的には生活に大きな影響を及ぼすだろう。しかし、5年くらいのスパンでみたときは、賃上げによってその多くがフォローされることになるはずだ。例えば、物価上昇が5%あっても、賃金上昇が5%以上あれば生活は支障がない理屈になるからだ。

賃上げなんて起こりっこないというのはデフレ時代のイメージだ。インフレが定常的になってくれば、賃金上昇率が物価上昇率に追随する(やや上回る)のが経済の基本である。アメリカではコーヒーショップの店員時給が1900円と報じられるが、これも物価高と連動した形だ。

新聞の見出しに「高騰」の文字が踊る
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

ただし、問題はある。賃金上昇のタイミングは1年後になるということだ。収入が増えたとしても、それは1年後の話なのだ。

今年の春闘では物価上昇を先取りする賃上げを目指して、政治的な働きかけもなされているが、「今年の物価上昇」を「翌年の賃金上昇」でカバーするのが基本的な流れだ。5年あるいは10年後の経済統計をみれば、「年平均5%の物価上昇」と「年5.5%の賃金上昇」のように総括できるだろう。

しかし、個人の家計はそうはいかない。「物価上昇元年」になるかもしれない今年は、値上がりが先んじてやってくるため、これを乗り越えていかなければならないのだ。

私たち日本人は20年以上、物価上昇を体感していない。狂乱物価を記憶しているのはもはや年金世代といっていいくらいだ。

だとすると「物価上昇元年」の家計管理がきわめて重要になってくる。

■今すぐやることはひとつ 家計簿アプリの設定とムダな支出の切り詰め

今すぐやるべきことは「家計の見える化」と「ムダな支出の切り詰め」だ。そのためにひとつの対策を提案する。

それは家計簿アプリのインストールだ。アカウントアグリゲーション機能を有するアプリ(Zaim、マネーフォワードME、マネーツリーがその代表格)をスマホに設定し、銀行、クレジットカード、電子マネー、ECサイトのアカウントなどをひも付けておく。

そうすると、家計の実態が明らかになり始める。半分以上は自動的に記帳されるので入力の手間は紙の家計簿の半分以下になる。現金払いのレシートも、1000万画素を超えたスマホカメラで撮影すればこれまた自動読み取りして入力される。

1月分のデータがたまり、また翌月のデータがたまっていくうち、家計の値上がり傾向が浮かび上がってくるはずだ。月30万円くらいの消費支出がある世帯であれば、値上げにより月1万円以上の不足感が生じてくるだろうから、問題点をあぶり出す。

日常生活費はもちろんだが、ムダな固定費もこの機に一層したい。利用実態ゼロのサービス(例:通っていないスポーツジム会費)、重複して契約しているサービス(例:アマゾンプライムとネットフリックスなど、2つ契約している動画見放題のサブスクリプションサービス)、割高なサービス(例:ahamo、LINEMO、povo以外のスマホの格安ではない通信プラン)などを一つひとつチェックしていこう。家計簿アプリが自動記帳した費目をチェックしていくだけなのであぶり出しも簡単にできる。

固定費で月1万円以上を削ることができれば、2022年の物価上昇はなんとか乗り越えることができるだろう。

そのためにも、やはり「家計の見える化」が重要で、その一歩として家計簿アプリのインストールをおすすめしたい。中高年層の中には「ウチはずっと紙の家計簿でやりくりしてきた」と胸を張る世帯もあるだろう。だが、紙の家計簿の場合、毎日、支出の記録を自分でつけなければならず(抜け漏れが発生する)、手間暇かかる。また、書いているだけで満足してしまい、ちっともデータの振り返りをしないこともある。そうなると、家計の改善点が見えず、貯金もたまらない。

電卓とペンと手書きの家計簿
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

2022年が「物価上昇元年」となり、今後、値上げラッシュが続くとすると、そうしたザル家計では老後生活にも暗雲が垂れ込めてしまう可能性がある。

家計管理でもうひとつ大事なのは、積立貯蓄などの中断を回避することだ。

教育資金、住宅購入資金、老後資金……将来に備えた資産形成は継続したい。物価上昇がもし続くとなれば、将来の必要額はむしろアップするはずで、積み立ての中断は確実に未来にツケを残すことになる。日用品の値上がりがつらくて、積み立てをストップしたい気持ちは分かるがここをこらえておきたい。

■未経験のゾーン「物価上昇元年」を乗り越えよう

物価上昇はいつかくるといわれながら何度も起きずにきた。割安で高品質の商品が登場するイノベーションにも助けられてきたといえるが、これも限界が近づいているようだ。

20歳代、30歳代の独身世帯はもちろん、結婚をして子育て世帯、住宅ローン返済に苦労している世帯において、「物価上昇元年」は未知の世界となるだろう。

よく分からないまま家計が赤字に転落した、不足をキャッシングやリボ払いの利用でしのいだ(もちろん将来にツケを先送りする)、というようなことのないようにしたい。

こういう時期こそ、毎日の家計の支出をチェックするところがスタートラインなのだ。

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山崎 俊輔(やまさき・しゅんすけ)
ファイナンシャルプランナー
フィナンシャル・ウィズダム代表。連載12本を数える人気コラムニスト。『マネーハック大全』など著書多数。

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(ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)

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