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部下の行動すべてに口を出す…禁断ワザ「マイクロマネジメント」で絶対に守るべき2つのルール

プレジデントオンライン / 2022年3月10日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Deagreez

チームを効率的にマネジメントするコツはなにか。『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)を書いた木部智之さんは「炎上中のプロジェクトでは、リーダー自らが集中的に細かく対応する『マイクロマネジメント』が必要になることもある。そのときには必ず守るべき2つのルールがある」という――。

■「超ヤバいプロジェクト」でリーダーがやるべきこと

1つのプロジェクトのなかでも、チームや役割別で見てみると、状態は様々です。とくに炎上プロジェクトになると、「比較的大丈夫なところ」と「超ヤバいところ」があります。

その「超ヤバいところ」に対しては、リーダー自らが集中的に細かく対応するようにします。これがマイクロマネジメントです。

リーダーが関与する頻度を高くし、深度を深くします。朝会の運営に加えて夕会を実施するなどして頻度を上げます。そして、進捗の数字の報告だけ聞いていたものを、タスクレベルの状況をひとつひとつ聞くなどして深度を上げます。

このようなマネジメントをIBMでは、ディープダイブ(深く潜る)といっていたりもしていました。

■マイクロマネジメントを始める目安

マイクロマネジメントに切り替えるタイミングを機械的に判断することはできませんが、例として開発プロジェクトでの目安を示します。

開発プロジェクトでは、週次進捗というのが1つの指標です。その進捗が15%以上遅れ始めて、3週間くらい連続で遅延が戻らない場合はマイクロマネジメントを始めることを検討します。実施の判断は、遅延している理由やリーダーの力量を見て行います。

なお、10%程度の遅延なら炎上プロジェクトではよくあることですし、瞬間的に15%以上遅延したとしても、2~3週間かけて戻ってくればマイクロマネジメントの必要はありません。

■絶対に守るべき2つのルール

どのようにマイクロマネジメントをすればいいかは、プロジェクト内容やチーム作業の特性によるので、私が行なった事例を紹介します。

金融系システムで金額計算を行なう機能を開発するチームで約30名のメンバーがいました。マイクロマネジメントを実施した期間は約3カ月です。

毎日、朝会と夕会を行い、そこでは作業計画である10ページのWBS(Work Breakdown Structure)を全部印刷して、ひとつひとつの作業タスクの進捗を確認し、遅延や課題が発生している場合にはその場で対応指示をしていました。

そして、進捗が戻ってきて安定したタイミングで、マイクロマネジメントをやめました。

マイクロマネジメントをする際には、とても大切なルールがあります。

「早めに始めてはいけない」、そして「ずっとやり続けてはいけない」の2点です。

■モチベーションも成長速度も下がる

理由は、マイクロマネジメントには大きなデメリットがあるからです。それは、リーダーやメンバーのモチベーションを下げ、成長の妨げとなることです。

怒鳴られて頭を抱える女性
写真=iStock.com/ljubaphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ljubaphoto

すべての作業指示を出したり、課題解決を指示したりすると、そのチームメンバーからすれば、「自分は判断することが許されないただの駒である」という感情が出てきてモチベーションが下がります。

また、自分で考えても意味がない、と思い始めてしまいます。このような状態が長く続くと、チームも個人も成長しません。

ですから、マイクロマネジメントは、「期間限定である」と最初に宣言してから開始し、状況が改善したら通常のマクロマネジメントに戻しましょう。

このルールを守れなければ、マイクロマネジメントは逆効果になります。

■隠蔽体質の組織ではプロジェクトは成功しない

マイクロマネジメント以外にも、プロジェクトに役立つマネジメント手法があります。例えば、「悪い報告」をどう見逃さないようにするか、です。

プロジェクトにおける「新たな火種」を最初に見つけるのは、プロジェクトメンバーです。その報告が上がってくれば火種を消すことはできますが、上がってこなければいずれ大きな問題として顕在化します。

つまり、プロジェクト遂行のためには、悪い情報も報告としてきっちり上がってくるようなプロジェクト運営をしなければいけません。

普通は、誰しも悪い報告はしづらい、というのが根底の心理としてあります。怒られてしまうかも、自分の評価が下がるかも、と思うからです。そして、実際に報告をした時に、「なぜそんなことになったのだ」「なぜもっと早く手を打っておかなかったのか」などと責めるようなセリフが出てくると、さらに次回以降の報告をしたくなくなります。

さらに、それが毎度続くと、隠蔽(いんぺい)体質のプロジェクトとなってしまいます。

しっかりしなくてはと思うばかりに、こうした状況に陥らせているリーダーはたくさんいます。

■悪い報告が上がるようにする「4つのポイント」

そのようにならないためには、リーダーが悪い報告を受け入れなければいけません。そのためのポイントが4つあります。

①まずは受け止めること

悪い報告を受けた時に、「お、そうか。しょうがないね」「ま、想定の範囲内だね」などと、抵抗なく受け止めるようにしましょう。ここでネガティブな反応を示してはいけません。たとえ想定外だったとしてもぐっと堪えます。

②事実をヒアリングする

受け止めたら次は、事実を聞き出すヒアリングです。「何が原因だったのか」「問題の影響範囲はどの程度か」など、事実を聞き出すヒアリングにとどめ、個人のミスや責任を追及するようなヒアリングはしてはいけません。ここでも堪えます。

③自分が受け取るか、メンバーに戻すかを決める

原因などが見えてきたら、それを誰が対処するかを決めましょう。メンバーは自分の手に負えなくて報告にきていることもありますが、それらのすべてをリーダーが受け取ってしまうと、リーダーがボトルネックになってしまいます。

自分が対処するか、メンバーに対処させるかを決めます。焦るあまり、なんでも自分で受け取りたくなることもありますが、よく考えましょう。

④悪い報告を上げてきたことを評価する

最後に、悪い報告を上げてきてくれたことを評価しましょう。問題が起きたことがマイナス評価になるのではなく、報告を上げてきたことをプラス評価にします。

これで、報告を上げてきたメンバーはほっとして、また問題が出てきてもみんなが報告しやすくなります。

とはいっても、時には本当に驚くような報告もあります。長い間トラブルプロジェクトを見ていてもなお、「なんでそんなことになったの⁉」と耳を疑うようなこともあります。ですが、そのような感情をコントロールすべく努力するのも、リーダーの仕事です。

■「1日2回のパトロール」が小さな火種を消す

もう1つ、私のイチオシのマネジメント手法があります。それは「パトロール」です。

パトロールとは、プロジェクトルームやオフィス内を歩き回ることです。特にこれといった用事がなくても歩きます。少なくとも1日2回、午前、午後のタイミングで、オフィスを歩き回るのです。

パトロールの目的は3つあります。1つは、悪い報告を受けやすくして小さな火種を消すためです。悪い報告は誰もが気が進まないものなので、報告しなければいけないような大きな問題は報告するようになっても、小さな問題まできっちり報告が上がってくることはあまりありません。

和やかに会議するグループ
写真=iStock.com/alvarez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alvarez

■話しかけるハードルを低くする

ですが、リーダーが歩いていると、メンバーはその時にちょっと手こずっていることや課題、相談ごとを持って話しかけてきます。

木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)
木部智之『プロジェクトのトラブル解決大全』(KADOKAWA)

例えば、「Aさんが体調不良で3日休んでいて、タスクが遅延して、他にも影響が出そうです」といったことです。「じゃあ、タスクの優先度を組み替えようか」とその場ですぐに対処できます。

自分がメンバーだった時を思い出してみてください。メンバーからすると、リーダーのところにわざわざ相談に行くのは時間的・心理的にハードルが高いものです。

ですが、リーダーがそこらへんを歩いている時であれば、そのハードルが下がり、いつもよりも気楽に話しかけることができます。

■コミュニケーションが増え、サボりが減る

パトロールの2つ目の目的は、コミュニケーションです。歩いているついでに仕事の話でなく雑談をしたりすることもあるので、コミュニケーションが活発化します。ストレスを感じているメンバーがいれば、話を聞いてガス抜きをしたりもします。

当然、コミュニケーションが良くなれば、悪い報告も上がってきやすくなります。

そして、3つ目の目的は現場に緊張感を持たせることです。リーダーが歩いてくると、自分たちが見られているという緊張感を持ち、サボれなくなります。

実際に、人によっては視線が合わないように目をそむけたりしますし、サボっているのを見られて気まずい気持ちになったりすることもあります。「誰にも見られていない」という環境でいつでもピリッと働ける人はなかなかいません。

■5分あれば、部内をこまめに歩いてみよう

パトロールはただ歩くだけ、といってもポイントがあります。まず、メンバーから目立つところを歩きます。気づいてもらえないとパトロールの意味がありません。主要な動線を歩いたり、あえてオフィスの隅のほうまで歩いていったりします。

そして、メンバーに目線を配りながら歩きます。緊張感を持たせる意味もありますし、目が合うことで向こうから話しかけやすくなる効果もあります。また、メンバーの心理的・肉体的な様子(疲れすぎていないかなど)を観察できます。

少なくとも1日2回はパトロールしましょう。私は、担当しているプロジェクトチームが大きい時は5分でも空き時間ができたらこまめに歩くようにしていました。簡単なことですが効果は大きいので、ぜひやってみてください。

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木部 智之(きべ・ともゆき)
パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員
横浜国立大学大学院環境情報学府工学研究科修了。2002年、日本IBMにSEとして入社。数々の炎上プロジェクトをサービスインに導くいわゆる「火消し屋」として活躍し、エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーとなる。2018年、パナソニック システムソリューションズ ジャパンに入社し、難易度の高い重要プロジェクトをリードする。2020年4月より現職。アウトオブザボックス代表。

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(パナソニック システムソリューションズ ジャパン執行役員 木部 智之)

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