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「突然、貯金が目減りし始めた」手取り月46万円の30代夫婦が転げ落ちた"キャッシュレス決済の穴"

プレジデントオンライン / 2022年3月5日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Kayoko Hayashi

支払いを現金からキャッシュレスに変える人が増えている。ファイナンシャルプランナーの横山光昭さんは「キャッシュレス決済のキャンペーンで『ポイント還元』『○%割引デー』などがあると、つい気持ちと“財布の紐”が緩み、得を取っているつもりが支出増という結果になり、家計が乱れる世帯は多い。キャッシュレス決済方法が複数になり、支出状況が分かりにくくなるケースも続発している」という――。

■「突然、貯金が目減りし始めた」…原因はキャッシュレス決済

「口座の残高が予定より減ってしまって……。今まで頑張って貯めてきたのに」

都内在住の高田篤さん(35歳・仮名)は共に正社員として働いている妻(33歳)と賃貸マンション(家賃11万2000円)で2人暮らし。世帯月収は手取りで約46万円です。

家計は1つに合わせ、小遣い(夫5万円、妻4万円)は干渉せずに自由に使える仕組みです。以前は、夫婦共有の貯金に毎月3万~4万円以上を上乗せできていたのですが、キャッシュレス決済の数が増えてきた頃から徐々にその金額が減り、いまではボーナスなどで貯めた貯金も目減りしているような状況になっているとのこと。

貯金できず、口座残高も減っている(現状240万円)。高田さん夫婦は、これは明らかにお金の使い過ぎだろうとにらんでいるものの、特にムダ遣いをしているもつもりもない。

支出の記録はそれぞれに履歴は残っていますが、こまめな確認はしていません。ですが、感覚から言うと、支出が増えているきっかけに思い当たるところはないそうです。

しかし、支出の仕方の話を聞いていると浮き彫りになるものがありました。それは、高田さん夫婦の家計はキャッシュレス決済で悪化したということです。

・最近は、「ほしい」と思ったものは吟味せず値札もよく見ずに購入してしまうことがある。
・毎月、支出の総額がわからないまま暮らしている。
・お金を払っている実感がないと感じることがある。

これらが話の主なポイントです。

これらは、キャッシュレス決済とうまく付き合えない方によく見受けられること。最近寄せられる家計相談ではとても多い現象です。高田さん夫婦も、現金管理の時はうまくいっていたけれど、キャッシュレスにしてからは家計状況がわからなくなったと話していることから、キャッシュレスの影響を家計が乱れたと推測されます。

■キャッシュレスのキャンペーン「ポイント還元」「○%割引デー」に弱い

では、どのように支出が増えているのか。それを探るため、家計状況を詳しく伺いました。

現金管理の時に比べ、支出が増えているのは、食費、日用品代、被服費、交際費。「キャンペーンでポイント還元がある」「○%割引デーが設定されている」などで気持ちと“財布の紐”が緩み、「得」を取っているつもりが「支出増」という結果になり、家計を圧迫しているようです。

またそのポイントや割引といったものを期待するあまり、決済方法が複数になってしまっています。家計用、自分の小遣い用と、目的を分けて使用していますが、家計用の決済は5~6種類、自分用も3~4種類となっており、これも支出状況を分かりにくくする原因となっています。

これらもキャッシュレス決済とうまく付き合えない方に多い傾向で、家計状況を改善するには、いっそキャッシュレス決済を利用しないという選択をしたほうがいいのではないかと思えました。ですが、ネットスーパーやデリバリーを利用することも多く、簡単に現金生活に戻すのは無理がありそうです。

そこで、支出の管理がしやすく、お金を使いすぎないようなキャッシュレス決済との付き合い方をいっしょに考えました。

まず、キャンペーンや割引のことは考えず、一番よく使うキャッシュレス決済方法は何かを検討しました。その結果、スーパー、ドラッグストアで利用できる「QRコード決済」に絞られました。ただ、暮らしの中ではQRコードだけでは支払いができない場所や店舗もあります。クレジットカードや交通系や流通系の電子マネーを利用するのがよいかと考えましたが、キャッシュレス決済方法は、自分がよく使うもの1つか2つ程度に絞ったほうが、管理が楽です。いろいろと検討した結果、夫婦で口座を共有し、支払い記録も共有して残すことができる、クレジットカードブランドがついたプリベイトカードを利用してみることにしました。

プリペイドカードは、クレジットカードに紐づけたり、後払いに変更できたりするものもありますが、それらは一切利用しないこととし、チャージをして自分たちで上限を作るやり方とすることにしました。互いにそのカードを作成し、共有の設定をします。すると、共有部分に入れたお金は、2人で使うことができ、支出も確認できるようになります。

利用を始めると、今まで互いのお金の使い方が見えにくくなっていた部分がわかりやすくなりました。相手にも自分のお金の使い方が見えるようになったこともあり、いい意味で、互いに監視する形でお金の使い方に気を付けるようになりました。

メタボ家計BEFORE→AFTER

すると、食費は次第に減りました(9万3000円→6万4000円)。日用品(1万5000円→8000円)、被服費(2万5000円→5000円)、交際費(2万3000円→7000円)、娯楽費(9000円→6000円)も減ったそうです。振り返ると、単に相手が見ているから支出に気を付けたというだけではなく、食費は目につくものをポンポン買い物カゴに入れることが激減し、日用品も安売りにつられて買うということが減りました。

食費(-2万9000円)とともに削った額が大きい被服費(-2万円)と交際費(-1万6000円)に関しては、夫婦それぞれの小遣いから払うべきものが家計から支払うようになっていたということが分かり、再び小遣いから支払うように気を付けました。

■赤字家計が月7万円黒字化成功で、マイホーム資金作りに意欲

支出状況が分かったことで、お金の流れ、使い方が変わったところにも気付くことができ、家計は以前以上に支出を削減することができ、毎月7万円超の貯金が可能になりました。家計の見直しで結果が出たので、現状240万円の貯金額がもう少し増えたら、マイホーム資金、老後資金を作るために、投資も始めてみたいと考え始めているようです。

キャッシュレス決済の利用が増えてしばらくたちますが、利用の仕方、支出管理の仕方に迷っていらっしゃる方はいまだ多いと感じます。ポイント、割引と魅力的なイベントも多く、それらを上手に利用しながら支出を管理できている人は、ごくわずか。現金管理に慣れている世代では、お金の形がデジタルなどに変化することでかえって支出の流れが見えにくくなり、混乱しがちなのです。

クレジットカードをかざして非接触決済
写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ridofranz

支出の把握をしていくには、支出の出口を少なくする、数種類を使っているのなら、手書き、もしくは家計簿アプリなどを活用して、総合的に見えやすくするということが大切です。

コミュニケーションアプリを活用して、ご夫婦で共有するという方法もあります。この先もずっと付き合っていかなくてはならないものとなるでしょうから、その管理の仕方については、おのおので工夫しながら、自分たちが管理しやすい形を見つけていくことが、これからの家計管理には必要なことでしょう。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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