「このまま平凡な会社員で終わるのか」そんな悩みをもつ人に勧めたい"バットマン生活"の愉しさ
プレジデントオンライン / 2022年3月11日 9時15分
■趣味人として生きたいが、許されない
こんにちは。僕はフミコフミオ、1974年生まれのアラフィフだ。こうやってネット上に文章を書きながら、食品業界で営業職として働いている。
50歳が視野に入ってきて、職業生活のカウントダウンを意識するようになった。今の仕事と職場に耐えがたい不平不満はないので、このまま最後まで今の職場で仕事を続けていくのか、それとも職業生活ラスト10年に新しい挑戦をするのか、ときどき考えるようになったのだ。
新しい挑戦といっても具体的な考えがあるわけではないので、十中八九前者を選ぶことになるだろう。恐妻家である僕には奥様もそれを望んでいるように見える。
実はもうひとつ選択肢がある。「働くのをヤメる」という選択だ。引退してしまって趣味人として生きる、ベストの選択なのだが、経済的な理由で選択肢に挙げられないでいる。経済的な問題がクリアできるのなら、趣味人と生きてみたいが、許されない。
大人になったら自由に生きられると教えられていたのに、自由になれないのだから、僕が子供の頃に大人だった人たちにだまされた気がしている。
■どんなに幸せでも「飽き」という不満がわいてくる
会社員でも公務員でもフリーランスでも、働く立場は何でもいいのだけれど、仕事もそこそこ順調、上司や同僚との関係もまあまあ、収入も生活には困らない程度ある、という安定期にあるときはその状態をできるかぎり維持したいと考える。当たり前だ。安定しているものをわざわざ壊すようなことは誰でもしたくないものだからだ。
だが、人間の面倒くさい性質として「飽き」がある。同じことを繰り返していると、それがいかに安定して幸福な状態であっても、飽きがやってきて、油断してミスを起こしたり、クオリティーの低い仕事でクレームを受けたりする。オシドリ夫婦と呼ばれていて、それをビジネスにして絶好調だった芸能人夫婦の片方が不倫に突っ走るのも「飽き」の問題がひとつの要因と思われる。
飽きを乗り越えるためには挑戦が効果的である。挑戦には2種類ある。
■「挑戦」は根本的な解決にならない
ひとつは現状を打破するためのもの。現状からの脱出を意図した挑戦だ。退職からの転職や独立起業がこれに当てはまる。
もうひとつは安定した現状をさらに安定させるための挑戦だ。現状を土台に安定的な発展を意図した挑戦になる。社内新事業の立ち上げ、組織改革がこれになる。現状がうまくいっていないときは前者、うまくいっている状況にあるときは後者の挑戦を選ぶことになる。
だが、こうした挑戦が飽きの問題解決になるだろうか。ならない。まったく異なる職業に就くことをのぞけば、一時的な解決にしかならない。
同業他社への転職や同業界での独立であれば、当初は新鮮な気持ちで「挑戦したかいがあった」という気分に浸れるが、仕事が落ち着いてくればこれまでの仕事の違うバージョンをやるにすぎない。
また、安定的な状況の発展を意図した挑戦も、「新規事業といっても同じ会社の仕事なのだな」と慣れとともに違うバージョンの仕事をやっていることに気付いてしまうのである。
■充実した働き方のヒントは「バットマン」にある
結論からいってしまえば、違うレールを走ろうとする転職や独立といった挑戦も、既存のレールを延長するような安定的な発展を狙った挑戦も、飽きや慣れといった問題の抜本的な解決にはならないのである。
その結果、転職を繰り返したり、社内で事業計画を立て続けたりするような地獄に陥るのだ。
なぜか。理由は簡単だ。どちらも一本のレールを進んでいるからである。
一本のレールではトラブルがあったら脱線して終わりである。解決するためには、レールを複線化して、適宜通りやすいレールを選択するようになれば、最初のレールも後から増設したレールもいつまでも新鮮でいられる。バランスをとって進めるようになる。
レールだと抽象的すぎるのでアメコミのヒーロー『バットマン』を例にしよう。
主人公ブルース・ウェインが仕事をしている時の姿が本来の僕らの姿だとする。ブルースが普段実業家として順調なのは夜な夜な趣味で悪人をぶん殴っている「バットマン」という裏の顔があるからだ。そして「バットマン」が安心して真夜中に悪人をボコれるのは、昼の顔実業家ブルースの安定した生活があるからである。
つまり、ブルースとバットマンという2つの顔それぞれが互いを支えているのである。僕らも働きながらこのような生き方ができれば、無理な挑戦をすることなく、充実した働き方ができるようになるだろう。
とはいえ現実問題としてバットマンのような別の自分を持つのは至難だ。悪人をボコるにはバットスーツを買う財力と強靭な体力が必要になる。僕が経験で知っている別の自分を持つ方法は「書くこと」だ。書いた文章をネットに公開することだ。SNSでもブログでもいい。とにかく思うがまま書いてみる。
■ブログやSNSは「人生のレール」を増やす絶好のツール
仕事とはまったく無関係の趣味について書いてネットに公開すれば、同じ趣味の人間との交流ができて充実して昼の仕事にもリフレッシュして臨めるようになる。また仕事の悩みを書いて公開すれば、同様の悩みを抱えている人たちと話し合って一人では見つけられなかった解決策が見つかるかもしれない。
起業独立を考えているなら企画や事業計画の概案を公開してしまおう。協力者や出資者がみつかって楽に起業できるかもしれない。書くこと自体が編集者やメディア関係の人の目に留まって、オファーが来るかもしれない(僕がそうだ)。
何が言いたいのかというと、インターネットのブログやSNSといったツールを使えば、今従事している仕事とは別のレールを見つけて、人生のレールを複数にすることは容易だということ。
挑戦はいらない。というか挑戦はもう古いのだ。
■書くことはブルーオーシャン
僕の場合は会社員とブロガーとごくたまに作家という三本のレールを生きている。挑戦のような無理はまったくしていない。それでいてそれぞれの立場が相互に良い作用を及ぼしている。
もし会社員一本の人生であったら、おそらくここまで順調にやれてこなかっただろう。会社員生活は何回か厳しい局面はあった。そのときはブログ活動に比重を移して精神的に逃げ場をつくって乗り切ることができた。ブルース・ウェインとバットマンのような関係性を自分のなかで持つことでうまく生きてこられたのだ。
レールを増やす方法は他にもあるだろう。だが書くことより効率的な方法はあるだろうか。仕事を終えたあと、自宅で心身ともにダルいなかでも、文章を書いてネットにあげることはできる。場所や時間も取られない。好きなとき好きな場所でスマホひとつでできる。ローリスクどころかノーリスクハイリターンだ。そのうえローコスト。
![ノートパソコンを使用する女性の手元](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/4/670/img_a4d5ff0cf74ed7401b4764513b3113ed262787.jpg)
僕が不思議でならないのは、これほど簡単で挑戦の気概なく複数のルートを構築できる方法があるのに、意外と書く人が少ないということだ。つまり書くことは競争が激しくないブルーオーシャンなのだ。
あえてまとまった量の「文章」を書いてネットにアップしてみるといい。その文章に魅かれた同士が必ず見つかる。すぐに見つからなくても、書くことによって「仕事をしている普段の自分とは異なる場所にある自分」を作ることができる。
そのもう一人の自分と、普段の自分とで喜びや苦しみをシェアすることができれば、生きること、働くことは、今よりもすこし楽しく、楽になるはずだ。
■人生を並走してくれるもうひとりの自分を見つけよう
30歳の僕は、会社で働きながら悶々としていた。体力はあって、仕事も充実していて不平や不満もなかった。このまま仕事を何事もなくこなしていけば同じ会社で定年まで働けるといううっすらとした未来図も見えていた。
![フミコフミオ『神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/7/200/img_f725614147c51d2e8c91a2ec51c125f2357768.jpg)
だが、不安もあった。「このまま平凡な会社員のまま終わっていいのか」という不安と、「何かに挑戦してうまくいってもいかなくても結局死ぬまで働くことには変わらない」という軽い絶望感にとらわれていた。
それから20年近くたったいまでも変わらず僕は働いている。それは会社員として働く自分の他に、書くことを通じてもう一人のブロガー・作家としての自分を見つけられたからだ。それぞれが僕の中で支えあってきたからこそ今でも働けているのだ。
書くことをテーマにこの文章は書かれているけれど、きっかけは何でもいい。今の自分を支えてくれる、人生を並走してくれるもうひとりの自分を見つけよう。書くことがいちばん近道である。
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ブロガー
1990年代末からネット上に文章を発表し始め、食品会社に勤務する普通の会社員でありながら、著名人をおさえてブログの読者登録数はトップクラスを誇る。「書くことで平凡な日常を特別なものに変えられる」を信条にネットに文章を書き続けている。目標は、誰もが他人の目を気にせず自分の言葉で語れるような真の自由があるネット社会の実現と、普通の人がブログやSNSに書くだけで充実した人生を送れるようになる土壌をつくること。
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(ブロガー フミコ フミオ)
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