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「つまらないアイデアにどうコメントするか」三流は否定、二流はアドバイス、では一流は?

プレジデントオンライン / 2022年3月18日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anilakkus

つまらないアイデアを持ちかけられた、どう答えればいいのか。戦略デザイナーの佐宗邦威氏は「新しいものを育てる会話にしたほうが互いにトクをする。たとえばどんなアイデアにも『面白いね!』と相槌を打ってみてはどうだろうか」という――。

※本稿は、佐宗邦威『模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■作品を人に見せたときの反応がその後を左右する

あなたは過去、絵でも工作でも、自分の作品を誰かにシェアしたことがありますか? もし、シェアしたことがあれば、そのときにどんな反応をもらったか覚えていますか?

僕が思い出すのは幼稚園児のときに通っていたお絵かき教室での記憶です。当時大好きだった絵本『ぐるんぱのようちえん』(福音館書店)の絵を描いて、その絵を親に見せたとき、「この絵はすごくうまい。雲の形が風の吹いている方向まで描写されている!」と言ってもらってすごく嬉しかった思い出です。実際には、雲の形なんてそこまで考えていなくて、たまたま気分で描いただけだったのですが、なんとも言えない幸せで温かい気持ちになったことをいまでも覚えています。

こういう体験はとても貴重です。初めて自分が表現した作品を披露をするときは本当に勇気がいるし、ドキドキするものです。その1回で、もし「うーん、イマイチだなあ。ここはこんなふうにしたほうがいいんじゃない?」というような大人の反応をされようものなら、あなたのなかの子どもらしい創造脳は自分の殻に閉じこもってしまって出てきてくれなくなります。

■自信をつけるのに必要なのは「聞き上手」な人

僕はすでに本を3冊書いていて、自分の作品を外に出すことに少しは慣れました。それでも、新作の企画を誰かに見せるときはとても勇気が要ります。自分が考えていることって、それが絶対的にいいのか、悪いのかなんてそもそもわかりません。実際に見せてみると、半分くらいが無反応(よくわからない)、3割くらいはより良い改善の提案をくれる、「いいね!」とほめてくれるのは2割くらいの人でしょう。

また、必ずしも全員が良いと言ってくれるものが良いとはかぎりません。実際、世の中で見ると、「新しいもの」を見せると、新しいものほど半分くらいの人が反対します。しかも強烈に。でもその代わり、熱烈に好きと言ってくれる人も現れます。

だからこそ、新しい作品の企画を見せるときには、「最初に誰に見せるか」ということがとっても重要です。僕が以前働いていたソニーでは、

「新しい企画については上司には絶対に見せるな(きっと、学生なら担任の先生かもしれません)。むしろ、新しいものを必ず面白がってくれる知り合い2人くらいに見せたほうがいい。そこでもらった反応を参考に企画をブラッシュアップすると、そのころには自分も自信がついているから、批判や改善提案をもらっても余裕をもって受け入れられる」

と教えられたものです。

この1人目、2人目は、自分と相性が良い「企画の壁打ちの相手」をつくっておくと良いです。この受け手にはどのように語ればいいでしょうか。

■アイデアを打ち明けられたら「面白いね!」で返す

たとえば、こんなふうに話しかけてみたらどうでしょうか。

「僕はいまこういう企画を考えている。まだ初期のアイデアなのでラフなんだけれど、どのあたりが可能性があると思う?」と聞いてみます。

もし、あなたが逆に、誰かから企画のアイデアを恐る恐る打ち明けられたら、「うん、面白いねー。このあたりが面白いよ。で、ここはどうなってるの?」というように返してあげると、きっとその会話は、新しいものを育てる会話になるでしょう。

僕の友人で、他の人に話を聞いてとりあえず「面白いね!」「いいじゃん!」「それはいいポイントだね!」と連発する人がいます。実は、よくよく話を聞いてみると、本人がよくわからないなと思ったときには、とりあえず相槌の代わりに使っているということなのですが、口グセとして「面白いね!」という言葉を使うようにすると、相手はあなたに喜んで面白い企画を話してくれるようになるでしょう。

■アドバイスしたければ「悩んでるところある?」と聞く

聞いていて、より良くなるのではないかと思い、どうしてもアドバイスをしたくなったらどうすればいいでしょうか。おすすめは、「悩んでいるところある?」と聞いてみて、そのポイントについて、「自分は、○○というふうに受け取ったよ」と、自分がどう感じたかを最初の読者として伝えることです。「あなたは○○すべきだと思うんだよね」、ではありません。

例えば、「私は、他のサービスとあまり違いを感じなかったんだよね」というように話してあげると、それは相手の作品や人格に対して直接否定するわけではないので、相手も素直にネガティブな言葉を受け取りやすくなります。

向かい合ってミーティングをしている二人の人物
写真=iStock.com/Pattanaphong Khuankaew
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pattanaphong Khuankaew

■アドバイスしてくる人は「役に立ちたい」と考えている

また、もし周りの人がそう言ってくれないような場だったら、「私さ、いまモチベーション上げたいんだ。良いところ探して教えてくれない?」と直接話してしまうのも手です。人がアドバイスをしたり、否定したりするとき、実は、ちゃんと役に立たないといけないのではないか、という善意からの行動であることが多いのです。自分がどんな反応を求めているのか、を明確にすれば、ほとんどの人はその通りに応じてくれるでしょう。

デザインの世界では、アイデアがまだふわふわしている初期には温かく受け入れ、可能性を探すことが大事だと言われます。デザインコンサルタント会社IDEOの共同創業者の一人ビル・モーグリッジが病床に臥している際、誰かがお見舞いに行くと、殺風景な景色の病室にいましたが、「あの建物の煙突は本当に美しい」というように、とにかく良いところを見つける名人だったということです。どんなにつまらないように見えるアイデアでも、ひとつだけでも面白いところを見つける訓練をしてみてください。

■お互いのやりたいことを話せるパートナーを見つける

佐宗邦威『模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書』(PHP研究所)
佐宗邦威『模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書』(PHP研究所)

世の中のほとんどのことは、新しく始めるより、続けることが難しいものです。特に、自分が「こんなことをできたらいいな」、というアイデアが頭に浮かんだとしても、それを1人でずっと寝かしておくと気づいたら忘れてしまっていることもしばしば。そんなときにおすすめなのが、フィードバックをもらうだけではなく、お互いのやりたいことを一緒に企むビジョンパートナーを見つけることです。

僕は、20代の後半、3人の友人と年末に1年の振り返りをすることを恒例にしていました。それぞれ、その年の1年に起きたことを振り返りながら、その年の学びについて話し、質問をしてもらいます。その後に、次の1年こうしたい! という次の年のビジョンをスケッチすることを定期的にやっていました。その想像から生まれたスケッチはほとんどが実現しました。

■同じ境遇の仲間がいれば前進し続けられる

1人で頑張り続けることはとても難しいけれど、同じ境遇で仲間として一緒に頑張っている人がいれば、続けることがそれほど苦ではなくなります。自分のやりたいことに引き込むことができれば理想ですが、そこまでいかなくても、お互いのそれぞれのビジョンにアドバイスをしあう仲間をつくってみたら、きっとそれだけで、一気に前に進むはずです。

自分の心のなかを、自分の考えていることを、人に話すことは少し恥ずかしいという感覚になる人もいると思います。しかし、誰か1人、もしくは2人でも話すことに慣れていれば、そのうちそれを不特定多数の人に公開することもそんなに抵抗感がなくなるものなのです。

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佐宗 邦威(さそう・くにたけ)
戦略デザインファームBIOTOPE代表
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修士課程修了。P&G、ソニーを経て独立。著書に『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング)、『直感と論理をつなぐ思考法』(ダイヤモンド社)、『ひとりの妄想で未来は変わる』(日経BP)などがある。多摩美術大学特別准教授/大学院大学至善館特任准教授。

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(戦略デザインファームBIOTOPE代表 佐宗 邦威)

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