成否は転職前に決まっている…「転職だけうまくいく人」と「転職後もうまくいく人」の決定的な違い
プレジデントオンライン / 2022年3月14日 10時15分
■「転職だけうまくいく人」と「転職後もうまくいく人」の決定的な違い
転職エージェントの経験から正直にお話ししますと、「会社辞めたい」というニーズに応えるなら「内定をとること」を目的にした方が手っ取り早いです。実際、多くの転職エージェントは「内定をとって転職してもらう」ことを目的にしています。
しかし、「会社を辞めること」を一番の目的に転職活動した人が転職後しばらくして、こんな悩みを「また」抱えて相談にくるシーンを幾度となく見てきました。
「自分のやり方を押し付ける上司の考え方や価値観についていけません」
「この仕事をしていても成長できるとは思えないし、ずっとやりたいとも思えません」
「大変な仕事の割には給料が低くて、自分を安売りしているような気持ちになります」
そして、仕事で感じるモヤモヤは、生活にも少しずつ忍び寄ってしまいます。
「休日に自己分析や自己投資をしてるのに“このままでいいの?”が止まりません」
「友人の転職や結婚報告のSNSを見ると、取り残されているような気になっちゃいます」
「寝る前にスマホをぼーっと眺めて“早く寝ればよかった”と後悔するのをやめたいです」
この人たちは口を揃えてこう言います。
“転職前と変わっていない気がします”
転職「だけ」うまくいった人は、転職前の不満がまた追いかけてくるかのようです。いわば、モヤモヤし続ける負のループにはまってしまっています。これが、「会社辞めたい」ループです。皮肉にも、「会社を辞める」を目的にするからこそ、「会社辞めたい」ループに陥ってしまうのです。
■本音と向き合わなければ、転職後もモヤモヤは続く
一方で、転職後「も」うまくいく人は、転職前の不満から逃れ、スッキリする正のサイクルに入っていきます。
「新しい仕事の勉強が楽しいです。前職では終業後に仕事のことは考えないようにしていたのに、新しい職場では上司や同僚との会議で発言回数が増えました。転職前は『早く終われ』だったのに業務改善チームのリーダーに立候補しました。『会社が好き』なんて綺麗事だと思っていたのに」
そして、転職後「も」うまくいく人は、何より自分を転職前より好きになれている実感も持っています。
「自信と余裕ができてきたので、彼氏と今後のことを話し合えるようになっています。私にとっては家族は仕事以上に大切なものだとわかって働き方を変えたら、仕事も生活も楽しくなりました」
転職後「も」うまくいった人はこのように話してくれます。
“勇気を出して転職して、本当によかったです”
このように転職を成功させたとしても、転職「だけ」うまくいってモヤモヤしはじめて、「会社辞めたい」ループに陥る人と、転職後「も」うまくいってスッキリしている人にわかれます。
それは、転職しても何も変わらない人と、転職して自分をより好きになることで人生が好転していく人、と言い換えられます。では、両者の違いはどこにあるのでしょうか?
その違いは、転職活動に“本音で挑んでいるかどうか”です。
自分の正直な気持ちにフタをしても、内定をとることはできます。頭のいい人ほど、ロジカルに話ができるので、本音を隠したまま内定はとることができます。
しかし、仮に内定がとれて転職できたとしても、また「会社辞めようかな……」とモヤモヤしはじめてしまうのです。
■転職活動の成否を分ける「本音磨き」の3ステップ
では、具体的にどのように本音を磨いていくのでしょうか?
“本音磨き”は3つのステップで構成されています。
【ステップ2】人間関係から本音を“整理する”「人間関係の仕分けノート」
【ステップ3】本音を職場や面接で伝わる言葉に“磨く”「明日への手紙」
まず、本音を磨く前に、当然ながら本音を“把握する”必要があります。自分の本音なので簡単にわかりそうなものですが、じつは多くの人は本音を隠して生きています。だから転職後にモヤモヤしはじめるのです。
それを明らかにするのがステップ1の「退職成仏ノート」です。
具体的には、以下の手順で行います。
(2) その中で自分がどう思ったかを書く
(3) どうしてその言動、シーンでモヤッとしたのか、イラッとしたのかの理由を書く(正しさや客観性はいりません。あなたが思ったことが正解です)
(4) 過去に似たような言動やシーンがなかったかを思い出し、書く
(5) (1)と(4)に共通する「私の大切な●●を傷つけている・無視している・蔑ろにしている」に行き着くまで考える
(5)に当たる部分が本音です。本音とは「私が心の底から大切にしたいこと」「私がとても意味がある、価値を感じていると思っていること」を教えてくれるセンサーです。
■ネガティブな感情に中から本音をあぶり出す
「本音モード」になれば「今の会社で働き続けようか」や「内定をもらった先に転職しようか」を決断するときに迷いがなくなります。
もし、これをスラスラと書けなかったとしても自分を責める必要はありません。多くの職場ではネガティブな感情はポジティブな感情に、他責は自責に変換するよう促され、思うように発散できないからです。そんな時は「退職」という言葉で「終わりを意識する」とネガティブな感情を吐き出しやすくなります。
「もうこの仕事をすることはない」「もうこの人たちと関わることはない」という開き直る気持ちで書き出してみましょう。
これで自分の中でモヤモヤしていることが、はっきりします。
■しがらみを整理して、一緒に働きたい人を明確にさせる
本音磨きのステップ2は「人間関係の仕分けノート」を作ります。ファイルをフォルダ分けするように職場の人をポジティブな「つながりフォルダ」とネガティブな「しがらみフォルダ」、あまり気にならず感情が動かない「無関心フォルダ」に分類します。
「つながり」の人間関係を炙り出すと、あなたがどんな人といると心地よくて力を発揮できるのかがわかります。「しがらみ」の人間関係はその反対です。あなたが「避けるべき人たち」がわかります。
大切なのは「あなたの感情が強く動く人間関係を炙り出す」ことです。「ちょっと好き」ではなく「会社を辞めてもまた会いたい」と思えるほど好きかどうか。「なんとなく気が合わない」ではなく「できれば二度と会いたくない」と思えるほど嫌いかどうか。
仕分けが難しければ、
(1)あなたが未来に進むことを応援してくれる人が「つながり」。過去に引き戻して今にとどめようとする人が「しがらみ」。
(2)あなたの本音や「好き」の感情を引き出してくれる人が「つながり」。あなたの罪悪感や義理を刺激する人が「しがらみ」。
(3)挑戦した結果、失敗している、調子が良くないときにも応援してくれる人が「つながり」。成功している、うまくいっているときにだけ良くしてくれる人が「しがらみ」。
(4)あなたが「この人は好き」と思っていたら「つながり」。あなたが「嫌い」もしくは「好きではないけどお世話になっているし」とモヤモヤしたら「しがらみ」。
を基準にしましょう。
「人間関係の仕分けノート」は表にしましょう。
必要なのは「自分が転職して会社を去った」と想像し「今目の前にいる人とどんな人間関係を築きたいか」だけ。「望む関係性」は人によって変わりますし、具体的にも抽象的にもなります。
これが明確になっていれば、どんな人と働きたいかがはっきりするでしょう。
■最後は、自分への手紙で磨き具合をチェック
本音磨きの仕上げは最終出社日を想定して書く「明日への手紙」です。
「つながりフォルダ」に入れて「退職後もつながり続けたい」と感じた人に「私はこれからも●●さんとつながり続けたいです」と意思表明します。
手紙には、ここまで磨いてきた本音が「真の本音」に磨き上がっているのか判断する力がある、いわば裁判官です。手紙を書いている最中に「そうか、こんなことを思っていたのか」と本音に気づいて修正もできます。どんな手紙を書くか以上に、手紙を書いているときにどんな気持ちになるかが大切です。
この3ステップで、身を置きたい環境や人間関係という、収入や仕事内容以外の自分にとって大切な要素がわかります。「本音磨き」は、特別な人にしかできないスーパースキルではありません。紙とペンさえあれば、誰でも、ひとりでできる3ステップです。
■転職活動は「本音磨き=ステージ0」が最重要
本音はひとりの時間にわかります。年齢や性別、職種や業界も関係ありません。実際に私のもとに来てくださった相談者さんは、男性も女性もいれば、就職活動生も50代の人生の先輩とも言える人もいます。結婚や育児などのライフイベントを控えている人もいました。
すでに何度か転職を経験している人も、転職はしたことないけど、モヤモヤとした思いがなかなか晴れない人も、気負いすることなく『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』の本音磨きに取り組んでみてください。
本音磨きこそが「転職ステージ0」です。転職エージェントや求人情報のサイトに進むのは「転職ステージ1」。サイトはいったん閉じて自分と向き合い、本音を磨いていただければ幸いです。それが転職後「も」うまくいく自分になる近道です。
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元転職エージェント、「退職学」の研究家
「退職学®(resignology)」・「リザイン・マネジメント(Resign Management)」の研究家。1988年、静岡県浜松市生まれ、神奈川県横浜市育ち。慶應義塾大学法学部政治学科卒。2012年、大手転職支援会社に新卒で入社し、転職エージェントとして従事する。シンクタンクに転職するも1カ月で早期退職し、無職となる。新卒で入社した企業に契約社員として出戻り、新規事業の責任者として求人サイトを立ち上げる。介護離職を機に2017年「退職学®」の研究家として独立し、これまでに1000名以上の働き方の相談を実施し、退職後も声をかけられる「最高の会社の辞め方」を体系化した。同時に退職者の本音に触れる立場から、退職者「も」ファンにする「リザイン・マネジメント(Resign Management)」を50社以上に提供。妻と子どもの3人暮らし。
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(元転職エージェント、「退職学」の研究家 佐野 創太)
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