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編集部員が3泊4日、人生が変わる! 「断食道場」体験記

プレジデントオンライン / 2022年3月11日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/everydayplus

専門家の指導のもと、一定期間の断食を行い、体の中を洗い流すための宿泊施設が「断食道場」。ビジネスマンにも人気が高い健康スポットで、編集部員が体験した。「プレジデント」(2022年4月1日号)の特集「食と体調の新常識」より、記事の一部をお届けします――。

■不健康の自覚なき29歳、体年齢は44歳だった!

「私が断食道場を始めた25年前の利用者は、過食症やガンを患っている人、メンタルに不調をきたしている人など、病気を抱えている方がほとんどでした。しかし、現在その割合は全体の1~2割ほどです。病気の予防であったり、忙しい毎日をリセットするためであったりと、裾野がかなり広がりました」

やすらぎの里・代表の大沢剛氏が言う。かくいう私(29歳・男性)も、大きな体の不調を抱えているわけではない。強いて言えば、慢性的な背中の痛み、階段を上った際の息切れ、眠る際の息苦しさがあるくらいだ。そういえば、体重も10年前に比べると15キロほど増えている。

とはいえ、不健康であるという自覚はさほどない。ところが、体重や体脂肪率を計測した結果、何と、私の体年齢は44歳だった。息切れや息苦しさを感じるのも無理はない。大沢氏によれば、背中の痛みは連日のデスクワークで「交感神経優位」の時間が長く続いているせいだという。戦闘モードに入っているとき、人間は無意識に背中を丸めた前傾姿勢になるからだ。そして、交感神経が過度に優位になると代謝が悪くなり、太りやすくなる。

■3泊4日の断食生活が始まった

大沢氏にも「私のところに来る理由付けとしては充分すぎるほどお疲れのようですね」と気の毒がられてしまった。自分では気が付いていないだけで、体は悲鳴をあげていたようだ。

「人間は体調を崩すと栄養のあるものをたくさん食べようとします。しかし動物はどうですか。何も食べずにうずくまり、ひたすら眠り、消化活動をストップさせる。それが自然のサイクルなんです」

大沢氏との面談が終わり、3泊4日の断食生活が始まった。まず大きな効果を感じたのは初日の夕方に行ったヨガだ。前日の夕食後から何も食べていないので、すでに体がいつもより軽い。その状態で30分ほどポーズを取りながら呼吸を整えると、背中の痛みがスッとどこかに消えていったのである。夕食は具なしの味噌汁をすすっただけだが、不思議と空腹は感じない。ヨガのリラックス感がまだ残っており、21時には眠ってしまった。

2日目の朝はトレイルウォークから始まった。私が宿泊しているやすらぎの里・養生館は海岸沿いの崖に位置する。横目に海を眺めながらほかの宿泊客とともに山道を50分かけて歩く。細身の体で岩の上を軽快に進んでいく40代の男性は、年に2回のペースで断食道場に訪れるという。

「経営者の知り合いからの勧めで5年前から、やすらぎの里に来るようになりました。彼は会社をいくつも経営したり、ときには売却したりと、僕からしてみれば鋼のメンタルの持ち主といった印象でした。でも、そうやって常に頭を使っている人ほどメンタルの調整には気を使っているんですよね」

そう話す男性も、医療関係のサービスを提供する会社を経営している。やはり日々頭を使ってばかりという自覚があり、「脳のデトックス」を目的に断食道場へ足を運ぶのだという。今回は1週間のコースだ。

「僕はロジックではなく感覚で仕事を進めるタイプなんです。数字で分析もするけれど、それよりはこのサービスを利用した人が何を感じるかを想像する。そして、その感覚を大事にする。だから、こうやって時々脳をデトックスしておかないことには、自分の本来の力が発揮できないんです」

■消化活動をストップさせる

大沢氏も「脳も内臓の一部です。断食をすることで頭をスッキリさせようと訪れる方は“働き方改革”が推進され始めた頃から増えています」と話す。

そして、コロナ禍による業務のテレワーク化によっても、その需要に拍車がかかっている。やすらぎの里では2022年2月にテレワーク用の個室を導入。前出の男性のほかに、医療法人の理事長、企業の社外取締役や監査役なども宿泊していたが、彼らは空いた時間は常に自分の部屋で仕事をしていた。

ここで当館の料金についても触れておきたい。私が体験した週末プラン(3泊4日)は4万4880円~。人気の1週間プラン(6泊7日)は9万9000円~と決して安価ではない。現にテレワークで訪れている人にはやはり経営者層が多い。しかし、ダイエット目的で来ている主婦やOLの姿もある。家計を圧迫しかねない料金ではあるが、そこまでして来る理由は何だろうか。こちらも年に2回のペースで訪れるという専業主婦に聞いた。

「子どもが大学生になったことを機に、やすらぎの里に通い始めました。それまでは自分のことなんて二の次で子どもがすべてといった生活でしたが、時間に余裕ができたのでこれからは自分を見つめてみようと思ったんです。断食もヨガも瞑想も、外へ向けたエネルギーの発散ではなく自分の内へ向けたエネルギーの放出ですから」

私もそうであったが、そもそもエネルギーとは「外へ向けて発散するもの」いうのが、普通の発想ではないだろうか。そう考えると、自分の内に向かってエネルギーを放出する場面というのは日常を振り返ってみても思い当たらず、それを意識的に実行できるだけでも非常に貴重な時間であるように思う。

もちろん効果は脳だけではなく内臓にも表れる。大沢氏は初日の面談時、「消化活動をストップさせる」と話していたが、それにより何が起こるのか。

「腸の働きというのは消化だけではありません。消化したものを体内に吸収し、不要なものは放出しなければいけない。断食中はそれらの働きがすべて止まるわけですから、内臓が休まり、本来の働きが蘇る。その状態でヨガや運動をすることで、さらに内臓の働きが活発になるのです」

2日目の朝食は「人参ジュース」。夕食は「レンコンのすり流しお味噌汁」であった。さすがに空腹感に襲われ、全身に力が入らず、歩くのもやっとである。風呂で長湯をしたら立ちくらみで倒れそうになった。そしてとにかく頭が痛い。この日はほとんど眠ることができず、翌朝のトレイルウォークは修行の様相を呈していたが、そんな状態になっているのは自分だけで、周りはみんなケロッとしている。

■体というのは正直である

「普段の生活とのギャップが大きすぎて調整ができていないのでしょう。断食をすると、甘いものばかり食べている人は低血糖になりますし、味の濃いものばかり食べてむくんでいる人は水分が抜けます。ガブガブとコーヒーを飲んでいる人が急にカフェインを断てば頭が痛くなります」(大沢氏)

すべて面白いように当てはまっている。断食が始まる前日の夜には「最後の褒美」などと言いながらハンバーガー屋に行ってしまった。体というのは正直である。私のような断食の「だ」の字も頭にないような健康に無頓着な人間こそ、断食道場に行くべきなのかもしれない。

3日目からは軽い食事を摂り、内臓を慣らしていく。夕食は量こそ少ないものの、コース料理だ。当然、鶏の唐揚げやラーメンなどではなく、素材の味を生かしたヘルシーな和食である。普段の夕食ではこのフルコース×5回ほどの量は食べているはずだ。しかし、この量でも体中に栄養が行き渡っている。いい状態の内臓がいい栄養を吸収している。頭痛や倦怠感も気が付けば消え去っており、翌朝、最終日のトレイルウォークでは、足の裏にバネでも付いているのかと思ったくらいだ。

帰宅後もしばらくはすこぶる体調がいい。「しばらくは」というのは、やはり味の濃いものやジャンクフードを食べたりするたびに体が重くなっていくのを感じるのだ。おそらくその回数が増えていくうちに体も慣れ、こうした体調の変化にも気が付かなくなっていくことだろう。しかし、そうなったときにはまた断食道場に行き、本来の体を取り戻せばいい。来訪者の多くがリピーターとなり、定期的に訪れる理由がよくわかる。

断食後、体に起きること

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教えてくれた人●大沢 剛(おおさわ・つよし)
やすらぎの里・代表
1965年生まれ。22歳の頃から海外を放浪し、自然食に出合ったことをきっかけに人間の心と身体の健康に目覚める。その後東洋医学を学び、日本中の自然療法の施設で研修を重ね、その経験から湯治・食養・東洋療法保養施設「やすらぎの里」を伊豆高原に開設。

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(プレジデント編集部 國友 俊介)

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