置き場所を変えるだけでお菓子の量は3倍に…勉強に集中できる場所をつくる大事なポイント
プレジデントオンライン / 2022年3月17日 9時15分
※本稿は、菊池洋匡『小学生の勉強は習慣が9割』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■どんな習慣も「初めの一歩」は単発の行動から
さぁ、目的も目標も決まりました。目標達成に向けて、初めの一歩を踏み出しましょう。どんな習慣も、一回一回の行動を積み重ねてできています。この章では、その一回の行動を実行しやすくして、習慣に至るまで続けられるようにする秘訣をお伝えします。
受験に合格するため、成績を上げるためには、勉強すればよいことは誰でもわかっています。しかし、それをなかなか実行できないのが現実ですよね。どうすれば目標に向けて行動できるようになるのでしょうか。
そのための秘訣その①が、スモールゴール(小さなゴール)を設定し、行動のハードルを下げることです。
人のやる気は「目標に対して感じる価値」と「目標達成の見込み」のかけ算で決まるとする考え方があります。米国の心理学者であるジョン・ウィリアム・アトキンソンによれば、これは期待・価値理論と呼ばれます。
目標に対してすばらしい価値を感じ、やりがいがあると思っていても、「自分には無理そうだ……」と思っていたら、やる気はわいてこないのですね。
「憧れの志望校があって、合格したいと強く願っているのに、勉強に対してやる気が出ない」という子がいますが、そうなってしまう要因の一つです。あなたのお子さんも、「目標があるのに頑張れない」といった状況だったりしませんか?
■勉強を分割して一つ一つの量を減らす
そこで効果的なのがスモールゴールです。
例えば、塾で出された宿題がとても多く感じられ、やる気が出なくてついつい先延ばし。これって、子どもにありがちな行動です。
そんなときには、宿題をいくつかに分けて細かい単位にしましょう。1ページごとに分けるとか、あるいはもっと小さく1問ずつといった感じでも構いません。
その一つ一つをゴール(目標)として設定して、短距離走を繰り返すイメージで宿題に取り組みましょう。そうすると、初めの一歩が踏み出しやすくなり、2歩目、3歩目と続けることができます。
子どもの脳はまだ未発達なので、先のことを見通すのがとても苦手です。私たち大人からすると「すぐに終わりそう」に見えるものも、子どもからすると「ものすごく大変そう」「めちゃくちゃ時間がかかりそう」に感じてしまうものなのです。これは仕方のないことなのですね。
私の授業でも、宿題を子どもたちに伝えると、「えー⁉ そんなに⁉」という声があがることはよくあります。
そんなときも、宿題を一つ一つ細かく分解して、「これやるのに何分かかりそう?」「こっちは何分で終わりそう?」というのを確認し、「じゃあ合計はどれくらいになりそうかな?」と考えさせると、「意外と大したことなさそうだ」と気が付いてくれて話がまとまります。
あなたのご家庭でも、スモールゴールを設定して短距離走の繰り返し方式にすると、きっとお子さんは今までよりスムーズに勉強に取り組めるようになります。
これは、勉強量を少ない量に分けることでハードルを下げるやり方でしたが、時間で短く区切っても構いません。
![スモールゴールを設定する](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/3/540/img_33f5e597429c81206e332afdeb84dd6e177935.jpg)
■「帰宅したら勉強道具をカバンから出す」などでもいい
また、図や式をていねいに書くのが面倒くさくてハードルの高さを感じるようなら、「とにかくやっていればよい」と割りきって、やり方のハードルを下げるのもよいでしょう。「やらないよりマシ」と開き直ってしまいましょう。
勉強道具を準備するのが面倒くさく感じるようなら、「塾から帰ったら、とりあえず勉強道具をカバンから出す」のように、いつでも勉強できるように準備を整えておき、最初の行動開始のハードルを下げておくのもよいですね。
スモールゴールによって、大きな壁をよじ登って乗り越えるようなやり方ではなく、小さな階段を一歩一歩上っていくようなやり方をしましょう。スモールステップでなだらかな階段にすることを心がけて、お子さんが行動しやすくなるようにしてあげてくださいね。
■目的達成の邪魔になる誘惑との戦い方
また、ダイエットをしたいと思っているのに、甘いものの誘惑やお酒の誘惑に負けて、ついつい口にしてしまった。あなたにはそんな経験がどれくらいあるでしょうか?
やる気はあった。目的意識はあった。でも、目先の誘惑に負けてしまった……。こんな経験は、過去を振り返れば誰しも心当たりがあるものです。
子どもたちも同じです。憧れの中学校があり、合格するために成績を上げたいと思っている。そのために勉強しようと思っている。
それでも、目先のゲームやテレビに負けてしまうことがあります。「ちょっと休憩」のつもりで始めたものが、ついつい「あとちょっと」の繰り返し。本当に「あるある」です。
こうしたときに、子どもたちを叱って責めても、改善することはめったにありません。何しろ、子どもたち自身もやる気はあるのですから。
むしろ、子どももそんな自分を「どうにかしたい」と思って悩んでいたりします。彼らに必要なのは、叱られて悲しい思いや悔しい思いをすることではありません。
誘惑に負けない手段です。
そこで、この節では、誘惑に負けない人は、どうやって誘惑に勝っているのかをお伝えしようと思います。
■お菓子の置き場所で食べる量は3倍変わる
誘惑に負けない最も効果的な戦略は、「戦わずして勝つ」ことです。
誘惑と対峙して、意志力を発揮して勝つのは困難です。それよりも、そもそも誘惑が少ない環境に身を置いたほうが、目標を達成できる可能性はグンと高まります。
例えば、職場でお菓子を机の上に置いておくか、引き出しの中にしまっておくかで、食べてしまう量は3倍くらい変わるそうです。面倒でも「引き出しにしまう」ことが、誘惑に「戦わずして勝つ」ために効果的なのです。
誘惑が少なくなるように環境を整えることが大切だとよくわかりますね。
冒頭で「目標達成のために増やしたい行動があったら、その行動をしやすいようにハードルを下げよう」という話をしました。逆に、減らしたい行動に対してハードルを上げましょう。
ダイエットのために、お菓子を食べる量を減らしたい?
であれば、お菓子を目につかないところにしまって、食べるときは、わざわざ出さなければいけないようにしましょう。歯を磨いてしまって、お菓子を食べたらまた歯を磨き直さなければいけない状況にするのもよいでしょう。面倒くさくて食べる気が失せます。
勉強時間を増やすために、テレビを見る時間を減らしたい?
テレビ用のカバーを用意して、見終わったら毎回カバーをかけるようにしましょう。主電源も切り、コンセントも抜いておくとよいですね。
![テレビ用のカバーを用意して、見終わったら毎回カバーをかける](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/540/img_387a6a219ddc65a16f5131e80f111b39120250.jpg)
リモコンのスイッチ一つで簡単につけられる環境と、わざわざカバーを外し、コンセントを入れて主電源を入れなければいけない環境では、テレビを見る時間は大きく変わるでしょう。
ゲームやユーチューブも同じです。使わないときには目につかないところに片付けて、やりたい気持ちを刺激しないようにしましょう。そして、やりたいと思っても、わざわざ準備しないといけない面倒な状況にするのです。
また、友達からの誘いに関しても、誘われたら断りにくいでしょうから、先に「○曜日以外は勉強があるから遊べない」などと伝えておくとよいでしょう。
■誘惑から「逃げきれなかった」ときの対策も立てておく
そして、誘惑に負けないための次善の策は、誘惑に直面してしまったときの対処法を決めておくことです。
誘惑に直面したそのときに「どうしようか?」と考えると、誘惑に負けてしまうことが多くなります。自分にとって理想的な行動を先に決めておき、その通りに実行することに集中すると、誘惑に勝てるチャンスが高まります。
例えば、「リビングに行ったときに家族がテレビを見ていても、自分は一緒に見ないで、部屋に戻って勉強を続ける」といったことを、事前に決めておくのです。
![テレビのついているリビングルームから出ていく子供](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/3/9/540/img_39e3428de367c41123bb42c0f933c0a0137965.jpg)
これら2つの戦略を使えば、誘惑に負けてしまう確率をかなり減らせるでしょう。
![菊池洋匡『小学生の勉強は習慣が9割』(SBクリエイティブ)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/c/200/img_9c39f137711430030c3bfcb60ce8bd29175372.jpg)
目的・目標を達成するには、達成につながる行動をしなければいけません。そして、その達成につながる行動の邪魔になってしまう行動は、コントロールできなければいけません。
テレビもゲームも、決してそれ自体が悪いものではありませんが、やはり現実的には勉強の妨げになることが多いものです。
ですから、適切な量にコントロールできなければいけません。
お子さんが好きなことは、「ある程度はやらせてあげたい」とあなたもきっと思いますよね。ですから、誘惑と上手に付き合うこれらの方法を教えてあげてくださいね。
・誘惑には「戦わずして勝つ」ようにする
・そもそも誘惑が少ない環境を構築する
・誘惑から逃げきれなかったときの対処方法を事前に決めておく
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中学受験「伸学会」代表、算数オリンピック銀メダリスト
開成中学校・高等学校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。10年間の塾講師歴を経て、2014年に中学受験専門塾「伸学会」を自由が丘に開校し、現在は目黒・中野を合わせて3教室に加え、オンライン指導も展開。指導理念と指導法はメルマガ(登録者約8000人)とYouTube(登録者約46000人)でも配信。著書に『小学生の勉強は習慣が9割』(SBクリエイティブ)などがある。
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(中学受験「伸学会」代表、算数オリンピック銀メダリスト 菊池 洋匡 イラストレーション=伊藤ハムスター)
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