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大手事務所所属でも平均月収6万円…子どもたちが知らない「普通のYouTuber」の厳しい懐事情

プレジデントオンライン / 2022年3月20日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/twinsterphoto

YouTuberはどのくらいの収入を得ているのか。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは、「トップ層はメインの広告収入以外にも収入源があり、億レベルで稼げる。しかし、普通のYouTuberは大手事務所に所属していても平均広告収入は月6万円台で、稼いでいるわけではない」という――。

■YouTuberの生活を支えているのは広告収入

憧れの職業に「YouTuber」と答える子どもが増えている。

多くの保護者は「子どもがYouTuberになりたいって言い出したらどうしよう。収入が不安定そうだし、儲かるとは限らないのでは。うちの子には絶対にやらせたくない」と眉をしかめながら話す。

しかし、具体的な収入や収益の仕組みについては詳しくない人がほとんどだ。YouTuberの懐事情についてご紹介する前に、まず基本的な収益の仕組みについて整理しておこう。

YouTubeチャンネルは、「18歳以上」「チャンネル登録者数1000人以上」「年間総再生時間4000時間以上」「広告に適したコンテンツ」という条件が満たされた場合、収益化できるようになる。

YouTuberの収益は、広告配信サービス「Googleアドセンス」から支払われる広告収入がメイン。動画の再生前や再生中に流れるCMや、画面の下や横に出てくる広告が表示されたり、クリックされたりすると収益が発生する仕組みだ。

ただしある程度の人気が出れば、企業などとのタイアップ案件、イベント収入、グッズ販売による収入なども見込めるようになる。

■普通のYouTuberだと1再生当たり0.05~0.1円

肝心の広告収入だが、広告は入札制のため一定ではなく、繁忙期か閑散期かなどによっても異なってくるものだ。たとえばコロナ禍では多くの企業が広告出稿をひかえたため、広告収入自体が大幅に減少している。つまり、保護者が心配する「収入が不安定」は事実なのだ。

1再生あたりの広告収入単価は人によって異なり、実績や分野などによって変わる。なお、大手YouTuber事務所UUUMの2022年5月期第2四半期の決算を基に計算すると、1再生あたりの広告収入は約0.292円となる。100万回再生されれば約30万円、1000万回再生されれば約300万円の収入ということだ。

しかしこれはあくまでUUUM所属YouTuberの平均であり、再生単価は0.05円〜0.1円程度のYouTuberも多い。

Googleの親会社であるAlphabetの2022年2月の発表によると、2021年第4四半期におけるYouTubeの広告収入は86億3000万ドル(約9900億円)に達しており、前年同期比で25%増と順調に伸びている。

では、実際YouTuberの懐に入る収入はどのくらいになるのだろうか。

■UUUM所属でも月額平均広告収入は6万7000円

UUUMの2022年5月期第2四半期の決算を基に計算すると、チャンネルあたりの平均広告収入は月8万3972円。なお、広告収入の2割は事務所の取り分となり、実際にUUUM所属YouTuberの元に入るのは広告収入の8割、つまり平均6万7000円あまりとなる。

上位のYouTuberの収入は桁が違うことを考えると、UUUMに所属していてもそれ以外のYouTuberの広告収入は月に数万円以下となる。つまり、広告収入だけで食べていくことはまず不可能なのだ。

YouTuberとして人気が出ると、企業からのタイアップ案件が増え、収入の中で大きな割合を占めるようになる。このタイアップ案件も、単価は当然ながら人によって大きく異なる。たとえばあるYouTuberキャスティング会社では、単価は「平均再生回数×5〜20円」などとなっている。

電卓と現金
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

YouTuberのシバターが2018年に自らのYouTubeで公開したところによると、チャンネル登録者数80万人、平均再生回数20万〜30万回で、企業1案件あたり100万円だったという。同じくYouTuberのラファエルは、チャンネル登録者数170万人、平均再生回数25万回で、1案件あたり320万円と語っていた。

チャンネル登録者数と平均再生回数で評価され、ゲームや美容など特定の分野に強いとさらに高くなるというわけだ。しかし言うまでもなく、このようなタイアップ案件は誰でももらえるというわけではない。

■ヒカルのYouTube年収は10億円、最高月収2億円

2021年9月、YouTuberのヒカルは自分のツイキャスで、「YouTubeだけやったら、企業案件とか広告収益を合わせて大体10億前後やな。どんだけ低くても7億とかはあると思う」と明かしている。

なお、ヒカルはアパレルや脱毛サロンなどのビジネスも展開しており、アパレルでの年間の売り上げは25億円、すべての事業を合わせた年商は50億円程度という。ヒカルは過去にも年収について明かしており、2017年ごろから10億円前後で、過去の最高月収は2億円だったことも明らかにしている。

YouTuberのラファエルも、絵本作家の西野亮廣との対談動画中で、年収について「5億はいく」と明かしている。

登録者数1000万人を超えているヒカキンやはじめしゃちょーのように人気の高いトップYouTuberは、広告収入も多くタイアップ案件も増えるため、年収が数億円に上ることも多いようだ。「YouTuberはお金が儲かる」という印象は、このあたりからくるものだろう。

■UUUM専属切りの背景に「伸び悩み」

では、トップYouTuber以外の広告収入はどうなっているのだろうか。

UUUMは2022年5月、専属契約している約300組のYouTuberのうち、約半数の契約形態を「専属契約」から「ネットワーク契約」に切り替えることを発表している。ネットワーク契約は、音源・画像素材の提供、企業PR案件の紹介などが受けられるUUUMネットワーク「CREAS」(月額500円)を利用できる契約形態となる。

実は近年、UUUMのチャンネル数は増え続ける一方で、総再生数はあまり伸びていない。たとえば、21年第3四半期から第4四半期にかけてチャンネル数は13767から14440と4.9%増加した一方で、総再生数は113億4500万回から116億3700万回へと2.6%増にとどまっている。

1チャンネルあたりの再生回数は下がっており、小規模なチャンネルの割合が増えていると考えられるのだ。つまり、広告収入が伸び悩んだための専属切りと考えられる。「UUUMの再生回数の半分以上は上位20人のYouTuberによる」という推測もある。

■YouTubeの規約変更で収益源を絶たれることも

収益の不安定さは、コロナ禍でもあぶり出された。コロナ禍が始まった2020年4月ごろ、ステイホーム効果によって視聴時間は長くなる一方で、さまざまなYouTuberが「広告収入が激減した」と嘆く動画を投稿していた。前述の通り、多くの企業が広告出稿をひかえたためだ。

2019年1月には、チャンネル登録者数で240万人いたラファエルがアカウント停止処分となり、損害は5000万円以上に上ったという。停止処分は、コミュニティガイドライン違反が原因と言われている。

2019年11月には、子ども向けコンテンツへの規約が変更され、子ども向けコンテンツは申請の必要が生じる上、パーソナライズド広告の掲載は禁止されるなどした。これによって、ゲームやおもちゃなどを扱った動画を投稿していた複数のYouTuberが「広告収入激減」「広告収入完全にオワタ」などと訴える動画をアップした。

このようにYouTubeのガイドラインは日々規制を強めており、それまでは問題なくても、規制開始以後は動画が削除されたり、アカウント停止処分対象となったり、収益性が著しく下がってしまうことがあるのだ。

一発逆転を夢見てYouTuberを目指す人は後を絶たない。確かにトップ層は数億円以上の収入が見込める一方で、事務所所属でも月額広告収入は平均で数万円以下。YouTube側の考え次第で突然、収益源が絶たれる可能性があるのが現実なのだ。

■憧れの職業の選択肢にも入っていなかったが…

ところで、子どもの憧れの職業ランキングでYouTuberが上位に入るようになったのはいつごろからなのだろうか。

小学1~6年生の1200人を対象とした学研教育総合研究所の「小学生の生活・学習・グローバル意識に関する調査」(2016年9月調査)によると、将来つきたい職業ランキングでトップは「パティシエ」と「ケーキ屋」が同率1位、3位が「プロサッカー選手」などとなっていた。

この時、「ひときわ目を引く」とコメントされたのが、「その他」の自由記述欄の「YouTuber」(0.5%、6人)という回答だ。調査では、スマホやパソコンなどで普段利用しているサービスについても尋ねており、新たに選択肢に追加された「YouTube」(36.1%)が、「携帯メール」(30.9%)と「ライン」(17.1%)を上回り、1位となった。

同調査は毎年行われ、その度に「YouTuber」の順位は上昇。2019年には、YouTuberはとうとう男子小学生の将来つきたい職業ランキングで1位となっている。

この結果を見ると、2016年ごろから徐々に子どもたちの間でYouTuberの認知度が高くなってきたと考えられるだろう。

ソファでタブレットを使う男の子
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

■「YouTuberになりたい」子どもになんと声を掛けるか

小学生に人気のYouTuberを調べた調査では、ヒカキンの「HIkakinTV」や「Fischer's-フィッシャーズ-」のほか、「まいぜんシスターズ」などゲーム実況動画を配信するチャンネルが上位にランクインした。

GIGAスクール構想でタブレットが一人一台のものとなり、子どもにとってインターネットは当たり前のものになった。自治体によっては、学校のタブレットで自由にYouTubeが見られるところもある。動画を見て学習することも増えており、YouTuberはより一層身近な存在となっているのだ。小学校の公開授業で、「YouTuberになりたい」と答えている男児を、実際に見かけたこともある。

これまで述べてきたように、専業で生活できる人は多くなく、YouTuberに憧れる子どもを心配する保護者の気持ちもわかる。しかし、人を楽しませたり役立つ動画には意義があるし、ファン獲得や発信力強化のために、本業が別にある人が副業的にYouTuberをしていることも多い。

YouTuberになりたいという子には、「伝える力や表現する力を身につけるためにまずは勉強しよう。自分が興味があること、発信したいことを探そう」などと伝えるといいのではないだろうか。アイドルなどと同じで、必ずなれる職業ではなく、それで生活できるとは限らないが、学んだことはきっと別のところでも生きるはずだ。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。

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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)

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