1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

東京随一の"セレブ通り"を走る富裕層が「テスラやレクサス」を選ばないワケ【2021下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2022年3月20日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MarsYu

2021年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。政治経済部門の第1位は――。(初公開日:2021年8月12日)
富裕層はどんな車を好むのか。東京の高級住宅街を通過する「外苑西通り」を10年間毎日走り続けている金融アナリストの高橋克英さんは「外苑西通りを走る車には、欧州の高級SUVが多い。その理由は富裕層の特徴から読み解ける」という――。

■都内随一の“セレブ通り”

東京都港区の白金台交差点から、東京オリンピック2020の開会式が開催された新国立競技場の真横を通り、新宿区の富久町西交差点まで続く約6.8kmは通称「外苑西通り」と呼ばれている。

外苑西通りは、環状4号線として、1964年の東京オリンピック前に整備された。白金台、広尾、西麻布、南青山、神宮前、千駄ヶ谷といった、都内屈指のセレブタウンやおしゃれスポットを貫いている。

特に、外苑西通りの起点である白金台交差点から銀杏並木が続く坂は、「プラチナ通り」と呼ばれ、「シロガネーゼ」が行き交うカフェやレストランにブティックなどが立ち並んでいる。

■高級外車ディーラーが並ぶさまは壮観

その先の明治通りと交差する天現寺橋交差点から六本木通りと交差する西麻布交差点までは、慶應義塾幼稚舎、聖心インターナショナルスクール、広尾ガーデンヒルズ、有栖川公園、ドイツやフランスなどの大使館、カフェやレストランなどが、周囲に点在しており、軽井沢に本店がある「ブレッド&タパス沢村 広尾」の前には、早朝から美味しい珈琲とパンを求めて高級外車が連なっている。SKYグループが運営する、ブガッティを筆頭に、マクラーレン、ランボルギーニ、アストンマーチンにマセラティといった正規輸入車ディーラーのショールームが居並ぶ通りはまさに壮観だ。

さらに北上して、青山通りと交差する南青山三丁目交差点から新国立競技場前にかけての区間は、コシノジュンコ氏が名付け親とされる「青山キラー通り」となる。旧ベルコモンズ跡に建ちPlan・Do・Seeが手掛けるスタイリッシュな青山グランドホテル、高級サービスアパートメントのオークウッドレジデンス青山、ビクタースタジオ、インテリアなどのショップが並び、国内屈指の売上台数とされるジャガー・ランドローバー青山のショールームもこの通り沿いにある。

■ゲレンデ、カイエン、レンジローバーが3強

筆者は、過去10年以上にわたり、出張などを除けば正月を含めた365日、外苑西通りを運転して通っている。同じ道を毎日運転すれば、毎日のように出会う車があり、今どんな車が人気なのかも手に取るようにわかるものだ。発売されたばかりの高級外車やフェラーリ、ランボルギーニが普通に走っているのも外苑西通りの特徴だ。

セダンからSUVが主役の座を奪ったなか、外苑西通りを走る高級外車SUVでよく見かけるのは、やはりメルセデスベンツGクラスの「ゲレンデ」だ。芸能人御用達といわれるこの車、2018年に40年ぶりにフルモデルチェンジして以降、さらに人気に拍車がかかり、正規代理店では品薄状態が続く。外苑西通りでも見かけるボディカラーは、黒と白系が多いが、目立つ赤に加え、迷彩色やカーキ、サハリ色など他車と被らないこだわりをもったものも増えてきている。ホイールやエアロパーツなどでも差別化している。よりドライビングパフォーマンスの高いAMG仕様車も多い。

車のハンドルを握っている女性の手元
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

ゲレンデと双璧を成すのが、ポルシェ・カイエンだろう。弟分のマカンと合わせれば、高級外車SUVでは数的には一番多いのかもしれない。女性ドライバーが多い印象なのも特徴だ。そして、ランドローバーも外せない。フラッグシップのレンジローバーは見た目も大きく、貫禄ある王者の風格だ。こちらも弟分イヴォークやヴェラール、さらにディスカバリーを加えれば、数的にも相当多い印象だ。現在、納車まで1年近く待つとされる新型ディフェンダー(編注:情報は当時のもの)を見かける機会も徐々に増えており、ランドローバーの勢いはこの先も増しそうだ。

■タクシー、社用車、業務用ハイエースも目立つ

高級外車SUV3強のゲレンデ、カイエン、ランドローバー以外では、マセラティのレヴァンテも多い。さすがに数は限られるが、ベントレーのベンテイガやアストンマーチンのDBX、ランボルギーニのウルスと遭遇することもあり、思わず見入ってしまうのも外苑西通りを通る楽しみだ。

SUVといえば、販売台数が右肩上がりで大人気のジープのラングラーも10年前からこの界隈では売れていた。日本で最もラングラーを売り上げているとされるジープ世田谷の顧客の多くは、この外苑西通り界隈であるという。

もちろん、メルセデスベンツやBMWにアウディといったドイツ御三家やポルシェも多く見かけるし、一時期、その人気から納車までに時間が掛かったボルボのXC90やXC60も増えているものの、割合的にはむしろやや少ない印象すらある。

もちろんビジネス街を含む都心を貫く外苑西通りを走るのは高級外車だけではない。トヨタ製のハッチバックタイプのタクシー「ジャパンタクシー」、社用車・ハイヤー利用の緑ナンバーの黒いアルファード、活発な都心での再開発や、店舗や住宅のリフォーム需要からか、業務用ハイエースなども多い。数的には通行する車の半数以上がこうした車だろうか。

■外資エグゼクティブ、実業家、有名人が多い地域柄

都内には他にも目黒通りや世田谷の環八沿い、青山通りなど高級外車ディーラーが軒を連ね、その界隈に富裕層が多く住み、高級外車が多い通りはある。外苑西通りは何が違うのだろうか。一つの背景として、これら高級外車を所有するであろう外苑西通り界隈の富裕層に特徴があるのだ。丸の内や大手町の大企業のサラリーマン社長や中小企業などのオーナー社長より、外資系企業のエグゼクティブ、実業家・事業家、スポーツ選手・芸能関係者などが多い。情報感度が高く、インターナショナルだ。

新しいもの好き、他人と同じは嫌ながら、名門や学歴に関係なく実力で財を築いた富裕層も多く、その分、ブランドや歴史的なものにより惹かれる側面もあるとみている。車でいえば、日本車やアメ車よりも、ベントレー、ロールス・ロイス、アストンマーチン、ランドローバー、ポルシェなど欧州の歴史と名声ある最高級ブランド車が好まれるというわけだ。

アンティークなヨーロッパの地図
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

■「世界的なカネ余り」でお金が高級外車に向かう

実際に、高級外車の販売は好調だ。日本自動車輸入組合(JAIA)によると特に、昨年(2020年)、日本全体で2台しか売れていない超高級外車ブガッティは、今年(2021年)1月~6月の半年で既に4台も売れている。ちなみにブガッティ・シロンの価格はベース価格で3億円超えだ。

ロールス・ロイスの今年(2021年)6月の販売台数は、前年同月比6台増加の29台。ベントレーはSUV効果もあり、同16台増加の83台、アストンマーチンも同じくSUV効果もあり同19台増加の35台、マクラーレンが同1台増加の20台、フェラーリが同54台増の121台、マセラティが同55台増の145台と、1000万円台を超え、2000万円、3000万円台の高級外車が、いずれも過去最高水準の月間販売台数となるほど売れに売れているのだ。

こうした爆売れの背景には、「世界的なカネ余り」がある。コロナショックにより、日米欧では、史上最大規模の金融緩和策と財政出動策がとられている。このため、世界中で、株式市場や不動産市場にカネが流れ込み、溢れたおカネが、資産価値の上昇を見込み、デジタルアート、高級腕時計、高級ワイン、装飾品、トレーディングカード、そして高級外車にも流れ込んでいるのだ。こうした金融緩和の恩恵を最も受けるのは、すでに資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手にさらなる投資や購入ができる富裕層となるわけだ。

■人と同じはいや、面倒くさがり、構ってほしい

外苑西通りには、世界的なカネ余りの恩恵を受けた富裕層による高級外車が多く走っているが、イーロン・マスク率いる米国EVのテスラや、レクサスなど日本の高級車を見かける機会は少ない。

筆者は、国内外の富裕層向け資産運用アドバイザーや金融コンサルタントの立場で、高級外車を保有する数多くの富裕層と直接接してきた。こうした経験則からいえる富裕層の特徴として、①人と同じはいや、②面倒くさがり、③でも、構ってほしい、が挙げられる。

この特徴に沿って外苑西通りになぜ、欧州の高級外車が多く、テスラや国産高級車が少ないのかを考えてみると、①人と同じはいや、なので、必然的に母国市場で販売台数が圧倒的に多い日本車は選択肢から外れることになる。レクサスのSUVラインや、トヨタのランドクルーザーやスープラ、光沢ある発色とデザインが洗練されたマツダ車や、スバル車の一部といった例外はあるものの、日本車は、まず、選択肢からは外れるのだ。人気のアルファードもこの界隈では社用車やハイヤーとしての利用が多く選択肢には入り難い。

■車を買うだけではなく、サービスも楽しみたい

そして、こうした富裕層は、概してお金よりも時間が大切であり、②面倒くさがり、なので、至れり尽くせりのディーラーサービスは不可欠だ。レクサスの手厚いサービスが有名だが、高級外車の正規ディーラーは、同等かその上を行く。そもそもディーラーに赴くことも最初と納車の時だけなのかもしれない。納車、点検、故障などがあれば、担当セールスが訪ねてきてくれる。例えば、代車も、マセラティなら同格のマセラティ、ない場合でも、BMWやジャガーがあてがわれたりするのだ。時間を大切にし、面倒くさがりの富裕層にとって、手放せない、至れり尽くせりのサービスなのだ。

ディーラーとおしゃべりする顧客
写真=iStock.com/skynesher
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/skynesher

面倒くさがりの一方で、③構ってほしい、のが富裕層のややこしいところで、少々面倒くさい。富裕層は意外にも孤独なのだ。経営者であれ、プロフェショナルであれ、士業の先生であれ、家族はともかく、なかなか腹を割って話せる相手がいるようでいないのだ。よって、百貨店の外商、高級ブランド店の店員、馴染みの飲食店マスター、金融機関の担当者などは貴重な話し相手でもある。高級外車のセールスもここに入る。彼ら彼女らはこうした相手との会話ややり取りを含めたサービスを楽しみ、そこに対価を払っているのだ。

このため、テスラのようにネット経由でクリックして購入する方法は、合理的でスピーディであるとは分かっていても、そっけなくて、購入までのプロセスや購入後のやり取りを楽しめない。だから選択肢になかなか入らないのだ。

■「買っておこう」の動きは加速化するだろう

EUでは2035年にも、ガソリン車の新車販売を禁止する方針だ。メルセデスベンツは2030年の新車販売を全車EVにするという。米国でも同様の動きがあり、日本も早晩追随することになる。ポルシェのタイカンに代表される高級外車のEV化は、この先他のラグジュアリーブランドでも進むことになるが、ターボエンジンや、ガソリン車独特のエンジン音は、代替できないものだ。

筆者も、こうした車を運転する際には、車内で音楽やラジオを聞いたことがない。エンジン音そのものがそれだけ心地よく魅力的なのだ。

テスラを含め、EV車がくまなく広がるには、走行距離や品質に加えて充電スポットの問題などもあり、まだ少し、猶予期間はありそうだ。外苑西通りにまだ少ない理由でもある。それならば、海外旅行もいけないなか、甲高いエグゾーストサウンドを奏でる高級外車のガソリン車をコレクションに加えておこう、買っておこう、という動きが、コロナ禍のカネ余りのなかで、この先さらに加速する可能性もある。もともと販売台数が限定的な高級外車やガソリン車の希少性が増せば、ますます「希少品を手に入れたい」というニーズをかき立てることになるのだ。

EV化の流れは、この先間違いなく来そうだ。また、環境や都市の在り方や交通事故防止の観点から、パリのように東京都心も、制限速度30km以下といった規則が導入されたり、自動運転やシェアリングが本格的に進んだりすることも予想される。車は、安価でシェアする街乗りEVと、高価で資産として保有し、私設サーキットで飛ばす高級外車とに二極化するのではないだろうか。外苑西通りの富裕層は、後者の動きを先取りしているのかもしれない。

----------

高橋 克英(たかはし・かつひで)
マリブジャパン代表取締役
三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『いまさら始める? 個人不動産投資』、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』、『地銀消滅』など。

----------

(マリブジャパン代表取締役 高橋 克英)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください