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「聞いてくるくせに覚えようとしない」デジタル音痴の50代に向けられる若手社員の冷たい声

プレジデントオンライン / 2022年4月22日 9時15分

『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)より

これからリストラされるのはどんな人たちか。人事コンサルタントの西尾太氏は「ITへの苦手意識がある人は危険だ。特に現在の50代はあと20年は働く可能性があり、今のうちに新しいツールに対応する努力が必要だ」という――。

※本稿は、西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「できれば新しい挑戦はしたくない」50代が3割

50代にとって今後、絶対に必要になるもの、それはやはりITの知識や技術です。デジタルツールへの対応は必須です。

20~40代の人たちに「あなたの職場にいる身近な50代の社員に、今後、新たなスキルや知識を身に着けたり、未経験の仕事に取り組んでほしいと思いますか」と質問しました。

結果は、「できれば取り組んでほしい」が59.0%。「ぜひ取り組んでほしい」が28.7%。約9割の人が新たなスキルの習得を望んでいます。

50代の人たちにも「あなたは、今後、新たなスキルや知識を身に着けたり、未経験の仕事に取り組んでいきたいと思いますか。」と聞いてみました。

こちらは、「できれば取り組みたい」が47.0%。「ぜひ取り組みたい」が20.0%で、「できれば取り組みたくない」が33.0%でした。

■あと20年は技術の進化についていく必要がある

新たなスキルの代表といえば、やはりデジタルツールです。スマホなどの進歩には、著しいものがあります。ITを苦手に感じる人の気持ちもよくわかりますが、今の時代は必須です。僕も得意ではありませんが、これはもう覚えないとしょうがないです。

ある番組で巣鴨のおじいちゃん・おばあちゃんを取材していました。その取材では、ガラケー(フィーチャーフォン)を使っている人がまだ多くいましたが、50代の皆さんはさすがにスマホですよね?

最近はゴルフのスコアを記録するのもスマホを使いますし、車にしてもカーナビを標準装備せず「Apple CarPlayかAndroid Autoに繫いでね」といったモデルが増えています。若い世代のように積極的な興味はなくても、デジタルツールを覚えるしかないのです。

我々の世代は、60代はもちろん、70代になっても何らかの仕事で働くかもしれません。これまでの10年、20年を振り返ると、デジタルツールは飛躍的に進歩を遂げてきました。と考えると、あと10年、20年はITの進歩についていかないと、最低限の仕事すらできなくなってしまうかもしれません。

■若い人と働いているうちにスキルを身に着けねばならない

20~40代の人たちに「あなたの職場にいる身近な50代の社員は、今後新たなスキルや知識を身に着けたり、未経験の仕事に取り組むことができると思いますか」と聞いてみると、「若い社員と同様にできる」が44.7%。「若い社員には劣るができる」が38.0%。「若い社員以上にできる」が14.3%。「できない」は、たったの3.0%でした。

【図表2】あなたの職場にいる身近な50代の社員は、今後新たなスキルや知識を身に着けたり、未経験の仕事に取り組むことができると思いますか。[単]
『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)より

また、50代の人たちにも「あなたは、今後、新たなスキルや知識を身に着けたり、未経験の仕事に取り組むことができると思いますか」と聞いてみました。

結果は「若い社員と同様にできる」が38.0%。「若い社員には劣るができる」が49.0%。「若い社員以上にできる」が12.0%。「できない」は、なんと1.0%でした。

50代の99%が「できる」と言っています。そう。あなたにもできます。

職場にいれば若い人に教えてもらったり、代わりにやってもらうこともできますが、会社を辞めたり、定年後に別の仕事をする場合は、自分でできるようになっておかなくてはいけません。ITはどんどん進化していますから、必死についていくしかないのです。

■「勉強してほしい」若手を閉口させないために

また、若い人に教わるのはいいのですが、同じことを何度も聞かないのが大事なポイントです。

20~40代からは「デジタルツールを教えても覚えようとしない」「同じことを何度も聞く」「メモ取れよ」「自分でも勉強してほしい」といった厳しい声が多数ありました。

パソコンが世の中に普及し始めたのは、僕らが20代の頃でした。当時はキーボードを人差し指だけで押している先輩方もいましたが、今の50代ならキーボードは両手で打てますよね? 文字が打てないと話にならないので、これも必須です。

そして、Word、Excel、PowerPoint、この3つのデジタルツールは最低限、使えるようになっておきましょう。Wordはテキストを書くことができれば問題ないと思いますが、Excelは表計算や代表的な関数、ピボットテーブルぐらいは使えるようになっておきたいです。PowerPointも何かを説明するためには必須です。

今の仕事では使う機会がなくても、この先、転職や独立をするとしたら、この3つは必ず使います。使い方は検索すればいくらでも出てきます。僕も専門書などは買ったことがありませんが、必要に迫られて自分で調べて使いながら習得しました。

これらのツールが使えないと、致命的なリスクになるかもしれません。若い人に任せるだけでなく、自分でも日常的に使って腕が鈍らないようにしておきましょう。

■メール以外のコミュニケーションツールを使えるか

もうひとつ重要なのは、コミュニケーションツールやSNSの進歩についていくことです。メールだけでなく、Messenger、LINE、Chatwork、Slackなども使えるようになっておかないと職場の会話の輪に入れなくなったりします。

ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのビデオ会議ツールも広く普及しました。テレワークの有無に限らず、今後とも必須になるでしょう。

個人的には、MessengerとLINEがあれば十分だと思っていて、ChatworkやSlackをいちいちチェックするのは面倒くさいです。ひとつにまとめてほしいと強く願っていますが、やはり若い人とのコミュニケーションには必要だったりします。

InstagramやTikTokなどの動画共有系のSNSは覚えなくても大丈夫だと思いますが、ビジネスの世界で使われているコミュニケーションツールは、ひと通り使えるようになったおいたほうがいいでしょう。

どれもそんなに難しいものではありません。会社のメールアドレスしか持っていないと、会社を辞めたら使えなくなってしまいます。定年後に働く場合などにも備えて、人と繫がることができるコミュニケーションの選択肢は増やしておくべきです。

■6割の人が仕事のための情報収集を習慣化できていない

新たなスキルや知識を身に着けなくてはいけなかったり、未経験の仕事に取り組む際に、「今さら無理」とか「今さらそんなことを覚えても」と思ったりしていませんか?

「今さら」は、50代の禁句です。

50代の人たちに「あなたは、仕事に役立つ情報収集のために、新聞・書籍購読やセミナー参加などの自己学習に、日頃から取り組んでいますか」と聞いてみました。

【図表3】あなたは、仕事に役立つ情報収集のために、新聞・書籍購読やセミナー参加などの自己学習に、日頃から取り組んでいますか。[単]
『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)より

結果は図表3の通り、「あまり取り組んでいない」が47.0%、「まったく取り組んでいない」が17.0%。なんと6割以上の人が自己研鑽に取り組んでいないようでした。

これはダメです。

この厳しい時代にパフォーマンスを発揮していくためには、自己学習は不可欠です。新聞や本を読んで、新しい知識を得ましょう。セミナーに参加して、新しいスキルを獲得しましょう。「今さら」という意識を捨てることが、今後の人生を大きく左右します。

■「今さら」と言えるほどの偉業を成し遂げたか

これまでお伝えしてきたように、僕らの世代は50代になっても、あと20年、30年と働くことになるかもしれません。今さら覚えなくてもいいことなんて、何ひとつないのです。まだまだ勉強を続け、成長していかなくてはいけないのです。

そもそも「今さら」と言えるほど、何かの偉業を成し遂げたのでしょうか。ありとあらゆることをやり尽くし、ビジネスパーソンとしても人間としても、すでに完成した人だったら「今さら」と言う資格があるのでしょうが、そんな立派な人はそうはいないはずです。

企業の人事担当者と「人事制度を見直してみませんか」「評価制度を導入してみませんか」といった話をしていると、「いやぁ、今さらいいですよ」といった反応をされる方がいらっしゃいます。そういう方々は、ほぼ50代です。

■現代だったら波平さんもフネさんとLINEしている

僕は『サザエさん』が日本人の就業観において大きな弊害になっているのではないか、とひそかに考えています。

西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)
西尾太『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)

僕たちは、物心ついたときから当たり前のように毎週『サザエさん』を観て育ちました。それによって「50代といえば波平さん」=「おじいちゃん」=「人生の終盤」のようなイメージを刷り込まれてしまったのではないでしょうか?

僕らが社会人になった昭和の終わりから平成の初めにかけては、たしかに50代の人は「波平さん」のような印象もありましたが、それはもう30年くらい昔の話です。

波平さんは54歳ですから、現代であれば、スマホを使いこなし、ExcelもPowerPointもZoomも普通に使って、フネさんともLINEを使って連絡し合ったりしているはずです。

でも、そんな姿は想像もできませんよね。

■昭和でいう30代後半のイメージで50代を生きる

50代といえば人生の終盤。趣味の盆栽や俳句を楽しみながら、あとは定年を待つのみ。『サザエさん』はそんな誤解を招くイメージを50年以上にわたり広め続け、それが多くの人々に少なくない影響を与えているように思えるのです。

今を生きる「令和」の50代の僕たちは、そんな「昭和」のイメージを引きずらないことが非常に大切です。あと20年、30年は働くのですから、昭和でいえば30代後半くらいの意識で50代を生きていくべきでしょう。

30代後半であれば、人生まだまだこれからです。当然「今さら」なんて言っている場合ではないですよね。

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西尾 太(にしお・ふとし)
人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表
「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。著書に『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)などがある。

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(人事コンサルタント、フォー・ノーツ代表 西尾 太)

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