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「リアル授業は1.5倍速にはならない」慶大に現役合格した生徒がやっていた最強の自宅学習法

プレジデントオンライン / 2022年3月31日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

YouTubeばかり見ている子供を勉強に向かわせるにはどうすればいいのか。教育コンテンツプロデューサーの犬塚壮志さんは「私の教え子は、学習動画を使って慶應義塾大経済学部に現役合格した。悪いのは動画プラットフォームではなく、その使い方にある」という――。

■「YouTubeばかりで全然勉強しないんです」

子どもを持つ親を対象に行ったあるインターネット調査によると、「子どもがYouTube動画を視聴している間は集中しているため助かる」(46.1%)との回答がある一方で、「長時間の視聴が気になる」(42.2%)や「子どもにとって良いのか後ろめたさを感じる」(37.0%)といった回答が得られたそうです。

「うちの子はYouTubeばっかり観ていて、どうしたらいいんでしょうか……」、「YouTubeを観ていて、全然、勉強しないんです」。こういった悩みや相談もよく聞きます。

確かに、自分の子どもがYouTubeに夢中になってしまうと、勉強する時間がなくなったり、宿題をやるタイミングがズレたりしてしまい、子どもの勉強や学習に支障が出ると考えてしまうのもうなずけます。

■YouTubeは使い方次第で学習教材になる

その一方で、現代の子どもからYouTubeを完全に引き離すのが難しいのも事実です。インターネットやスマートフォンの普及により、YouTubeは子どもたちの生活に非常に身近な存在になっています。さらに、2021年の年末に「進研ゼミ小学講座」が行った小学生の意識調査で、将来なりたい職業ではユーチューバー(YouTubeに出演する演者)が総合1位でした。

さらに、追い討ちをかけるように、COVID19による世界的パンデミックの影響により、学校や塾でも低齢層を対象にオンライン化が進んでいます。YouTubeをはじめとするオンラインの動画プラットフォームやコンテンツの子どもへの接触は、もはや止めることができない潮流でしょう。5G時代に突入し、オンラインでの動画教材の利活用が今以上に増えるはずです。

しかし、私も含め、今の親世代は動画プラットフォームを活用して勉強してきた経験がほとんどないはずです。だからこそ考えるべきことは、「子どもからYouTubeをどう切り離すか?」ではなく、「YouTubeをどう使えば、勉強や学習に役立てることができるか?」です。教育的な視点でYouTubeと上手く付き合うために、具体的な方法や事例をみていきましょう。

■YouTubeが「勉強にとって悪である」はウソ

現在私は、東京大学を拠点とし、認知科学という学問をベースにヒトの学習のメカニズムを中心に研究を行っています。また、国や企業とタッグを組んで開発プロジェクトや現場実証なども行っています。

これらの活動の主軸が、私の専門の一つである「効果的な学習用動画教材の開発」です。動画教材が学習者にどのようにデザインされ、どう視聴してもらうと最も学習効果が高いかを、効果検証をしながら研究を進めています。

このような背景を持つ私の視点では、YouTube上にアップされたコンテンツは立派な学習教材になります。もちろん、動画の質自体は玉石混交ではありますが、YouTubeが「勉強にとって悪である」という考えは捨てるべきです。

だからこそ、親に求められることは、子どもに「何の」動画を「どう」視聴させるか。これをマネジメントすることです。

このマネジメントは、以下の2ステップで行っていくことが重要です。

Step1:最初は子どもと一緒に伴走する
Step2:判断基準や行動指針だけ与える

Step1では、まず親が教育目的でYouTubeは活用できることを理解した上で、はじめのうちは子どもと一緒に動画を視聴しながら、親自身が学ぶことができている姿勢を子どもに見せることです。

■親がやるべき2つのポイント

このときのポイントは、

・YouTubeにどのようなコンテンツがあるのかを、子どもと一緒に視聴する前にあらかじめ大雑把に知っておくこと
・その上で、今、自分の子どもが学校で学んでいることに少しでも関わりそうな動画は、どのような検索ワードで見つかるのか当たりをつけておくこと

子どもの年齢にもよりますが、例えば子どもが電車好きであれば、日本や世界各国の地理と合わせて、どこの地域でどのような電車が走っているかを、動画と地図を照らし合わせながら一緒に調べたりするのもいいでしょう。

また、「この電車や、走っているレールってどうやって作られていると思う?」のような疑問を子どもに投げかけながら、製鉄所や町工場の映像などを探してみると、親も一緒に学べたりするはずです。

こういった情報をあらかじめ検索しておくことで、子どもと一緒に動画で学びやすい状態がつくれます。

検索ワードでいうと、例えば、子どもが「生き物」に興味を持っていたら、書籍でもベストセラーになった「残念な生き物」というトピックから紐付け「生き物 残念」というワードで検索してみてもいいでしょう。あるいは、時代背景から「ウイルス 顕微鏡」などの検索ワードを使って、動画だけでなく、静止画をピックアップするのも効果的です。

父と息子で遊ぶデジタルタブレット
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

続いて、Step2の説明をしていきましょう。

■子どもにも積極的に動画を選ばせてみる

Step2では、子どもが動画を使って学習することに慣れてきたら、今度は、動画視聴の判断基準や行動指針のみを与えます。

具体的には、検索ワードで表示された動画の一覧から子ども自身に選ばせたり、検索ワードを一緒に考えて興味のある動画がヒットするか試させたりします。

「この動画の中で、一番面白そうだと思うものを自分で選んでごらん」
「この動画の中で、全然観たことなさそうな動画ってどれかな?」
「似たようなキーワードで検索し直してみたら、新しいものが見つかるかもよ?」

このような声がけをしながら、少しずつ子どものコントロールできる部分を増やしていきます。子どもの年齢が低ければ、親である自分が検索して、動画の選択肢(サムネイルやタイトル)を並べて見せてあげます。そこから子ども自身に選ばせていきます。

また、動画の視聴のさせ方にも、実はコツがあります。

■1.5倍速、スキップ…操作できるほうが内容を理解しやすい

そのコツとは、

「基本は1.5倍速で観て、詳しく知りたいところは通常速度で観る」
「すでに観たことある、知っているものはスキップする」

このような声がけをし、子どものコントロールできる部分をさらに増やしてあげるのです。これは、米国のメリーランド大学の大学生を対象にした動画教材の活用に関する研究で、視聴者がコントロールできる状態で動画を視聴させたほうが、コントロールできない動画の視聴よりも、内容を理解しやすく成績が上がりやすいという結果が出ています(Zhang, D., Zhou, L., Briggs, R. O. & Nunamaker, J. F., 2006)。

また、子ども自身でコントロールできるというのは、子どもの「自己決定感」が高まり、やる気が出やすいという研究結果もあります(Deci & Ryan, 2000)。自己決定感とは、「自分のことは自分で決めている」という気持ちや感情のことです。

私自身、小学生の子ども2人を持つ母親にヒヤリングを行いました。その結果、2人ともテレビはあまり観たがらず、観るとしても録画されたものだけ。観る動画はもっぱら、YouTubeだそう。その理由を母親に尋ねたところ、「子どもが、(録画でない)テレビは観たいものがやっていないし、スキップや早送りができないから、かったるくてイヤって言うんですよ」と話してくれました。

■心配だからと制限をかけすぎるのはよくない

動画視聴において、「自分で決めて、自分のコントロール下に置く」ことが、子どもの自発的な行動につながるのだと、改めて実感しました。なお、子どもにコントロールを与えることは、動画を観るためのやる気を高める効果がある一方で、親の側から子どもの動画視聴をコントロールしすぎてしまうと、子ども自身にとって最適な学習ペースが崩され、認知的な負荷がかかりやすくなる可能性があることも指摘されています(Paas & Sweller, 2014)。

そのため、子どものコントロールと親側からの指示出しのバランスをとることが重要でしょう。生徒と教師間でのコントロールのバランスに関する研究でも同様のことが指摘されています(Hill, Wiley, Miller Nelson, & Han, 2003)。

このStep1~2を経ることで、最終的に「子どもがオンライン動画教材で自発的に学ぶ」習慣を身につけさせます。つまり、「自立」した状態です。

もちろん、安全性やセキュリティ、道徳的な側面からも、視聴の制限などの配慮が必要となるのは言うまでもありませんが、子どもに指針を与え、自らコントロールできるようにすることが重要なのです。

最後に、一例として、私が知っている成績優秀な生徒の1日のルーティンを聞いてみました。そこでの学習用動画の視聴の仕方を紹介します。

■慶應に合格した生徒がやっていた一工夫

その彼は、現役で慶應義塾大学経済学部に合格したのですが、動画の視聴に工夫がありました。彼はある動画プラットフォームをメインに活用し、大学受験を切り抜けました。そもそも彼が学習用動画を使う動機となったのが、学校の進度が本人にとっては遅いと感じたからだそうです。

数学を学ぶ高校生
写真=iStock.com/taka4332
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taka4332

そこで彼は、同じ情報量の授業でもインプットにかける時間を短くすることさえできたら、学習効率を一気に高めることができると考え、視聴速度を自分でコントロールできる収録(オンデマンド)型の動画を1.5倍速で視聴することにしました。さらに、自分にとって必要だと思われる部分に絞って飛ばし飛ばし視聴することで、インプットにかける時間を極限まで圧縮することに成功したのです。

また、そのプラットフォームにある動画は、ほとんどすべていつでも視聴できる分、視聴のタイミングはすべて自分で決めなければなりません。

だからこそ彼は、自分で動画視聴の計画を立て、学校から帰宅したらすぐに動画を観ることをルーティンにしたそうです。その上で、動画視聴は1日あたり2~3時間ほどにし、基本は1.5倍速の視聴。時間の効率化を図りつつも、理解が追いつかないところやメモ取りが間に合わないときには躊躇なく一時停止を行ったりと、メリハリを付けながら自分にとって最適なペースを常に保ちながら動画視聴を主軸においた受験勉強を行っていたそうです。

これからの時代は、動画教材の選び方や視聴の仕方で学力の伸びに差が出てくることは間違いありません。そして、世界ではYouTubeを含め、動画プラットフォームのコンテンツを使って勉強したり学んだりすることはもはやスタンダードになりつつあります。日本はやや遅れ気味ではありますが、これからの広がりに期待したいところです。

そのためにも、教育目的の子どもの動画視聴では、「自分で見つけさせて、自分で選ばせ、自分のペースで視聴させる」ことが何よりも重要ですし、これを子ども自身でできるようにさせるためにも、まずは親である自分が、動画の視聴の仕方について理解を深め、子どもと一緒に学んでいく姿勢が大切です。

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犬塚 壮志(いぬつか・まさし)
教育コンテンツプロデューサー/士教育代表
福岡県久留米市生まれ。元駿台予備学校化学科講師。大学在学中から受験指導に従事し、駿台予備学校の採用試験に25歳の若さで合格(当時、最年少)。駿台予備学校時代に開発した講座は、超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一となる。2017年、駿台予備学校を退職。独立後は、講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営する。著書に『あてはめるだけで“すぐ”伝わる 説明組み立て図鑑』(SBクリエイティブ)、『理系読書 読書効率を最大化する超合理化サイクル』(ダイヤモンド社)がある。

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(教育コンテンツプロデューサー/士教育代表 犬塚 壮志)

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