1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

専門家の意見を垂れ流すだけ…副反応を軽視する「コロナワクチン報道」は明らかにおかしい

プレジデントオンライン / 2022年3月31日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

医薬品は深刻な副作用を起こすことがある。ジャーナリストの鳥集徹さんは「2002年に世界で初めて日本で承認されたイレッサでは、公式発表だけで834人が死亡する最悪の事態となった。被害の拡大には、専門家の言葉を無批判に受け入れたマスコミの責任も大きい。現在のコロナワクチンでもその構図は変わっていない」という――。

※本稿は、鳥集徹『医療ムラの不都合な真実』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■いまの報道から思い起こす「イレッサ事件」

新型コロナワクチンの問題でとにかく呆れるのが、マスコミが反省しないことです。医療取材を通じて薬害の歴史を学んできた私から見ると、今回もマスコミが過去の過ちを繰り返していると思えてなりません。

この状況を見て私が思い起こすのは、副作用で多くの人が亡くなった「薬害イレッサ」の事件です。

新しいタイプの肺がん治療薬として登場したイレッサ(一般名ゲフィチニブ)は、臨床試験で高い安全性と有効性が認められたとして、申請から5カ月という異例のスピードで、2002年7月、世界ではじめて日本で承認されました。

この薬は、承認前から医師向けの専門誌などで、「がん細胞だけを狙い撃ちする画期的な分子標的薬」、「従来の抗がん剤に比べて副作用が少ない」という宣伝が繰り返されました。そして、製薬会社のプロモーションに関与した専門家の言葉をマスコミは無批判に受け入れ、結果として宣伝に加担するような記事を掲載しました。

こうした報道に、肺がんで苦しむ患者や家族、医療関係者の期待は膨らみ、いつしか「夢の新薬」であるかのように語られ始めました。そして、飲みやすい錠剤であったことも手伝って、短期的に数多くの患者が服用しました。がんの薬であるにもかかわらず、一般開業医や歯科医までが処方したといわれています。

■「夢の新薬」の副作用で800人超が死亡

その結果、どうなったか。臨床試験では十分に把握できなかった「間質性肺炎」という重篤な副作用が多発し、2011年9月までに公式発表だけで834人が死亡する最悪の事態となったのです。

そして、問題はここからです。副作用の多発が問題になると、それまで持ち上げていたマスコミは一転、イレッサを叩き始めたのです。もちろん、副作用を過小評価した製薬会社や専門家の姿勢は問題ですが、彼らのプロモーションを批判・検証することなく、患者や家族、医療関係者の期待を煽ったマスコミの責任も重大ではないでしょうか。

またのちに、副作用の被害を受けた患者と遺族らが国と企業の責任を問うた裁判の過程で、イレッサの臨床試験やプロモーションに関与した専門家たちが、この薬の製造販売元の企業から多額の寄附金、講演料、報酬などを受け取っていたことも明らかになりました。これに今回の新型コロナワクチンと同じような構図を見るのは、私だけでしょうか。

■「サリドマイド禍」では奇形児が多数生まれた

副作用が少なく効果が高いと宣伝された薬が、たくさんの人に使われた結果「薬害」を引き起こしたという事例は他にもあります。1950年代末から60年代初めにかけて問題となった「サリドマイド禍」です。

1957年に西ドイツ(当時)で、鎮静・睡眠薬として発売されたサリドマイドは、「妊婦や小児が安心して飲める安全無害な薬」として、日本でも発売されました。そして、その宣伝文句を信じて、多くの妊婦がこの薬を服用しました。

しかし、その結果、手足や耳に奇形を持った子どもが多数生まれました。内臓に奇形を持った胎児は流産・死産となり、生き延びることができずに亡くなってしまう乳幼児もいました。サリドマイド被害者は世界で8000~1万2000人にのぼり、そのうち5000人だけが生存したと推計されています。日本では訴訟和解成立後に、309人が被害者として認定されました。

■小児科医の警告を聞かず、対応が遅れた日本

実は西ドイツでは、小児科医で人類遺伝学者だったレンツ博士が、1961年11月に、手足に奇形を持って生まれた子どもとサリドマイドとに因果関係があるのではないかと学会で発表していました。

この「レンツ警告」を受けて、ヨーロッパ各国では発表から10日後に製造販売が中止され、回収が始まりました。しかし、日本の厚生省(当時)がレンツ警告には「科学的根拠がない」との見解を出したために、製薬会社は販売を続けたのです。

そして、当時の日本の新聞もレンツ博士の警告を報道せず、むしろ「サリドマイドによって胎児に重大な奇形が起こるのは考えにくい」といった専門家のコメントを載せていました。

ところが、胎児奇形を起こすことが世界的に認められる流れになると、マスコミは一斉に「薬害だ」と騒ぎ始めました。厚労省や製薬会社も事態を無視できなくなり、西ドイツの措置から10カ月後の1962年9月になってようやく、日本でもサリドマイドの販売停止と回収が発表されたのです。

サリドマイドの被害者で、厚生労働省医薬品等行政評価・監視委員会委員も務める東京理科大学薬学部准教授の佐藤嗣道さん(公益財団法人いしずえ サリドマイド福祉センター理事長)は、次のように話しています。

■マスコミが自らの責任を認めることはあるか

「もし回収が速やかに行われていれば、日本での被害の拡大を防ぐことができたであろうことは言うに及びません。問題が明らかになるのは多数の被害者が出た後なのです。いまのワクチンをとりまく状況は、当時の教訓が生かされていないように感じてしまいます」(参照:佐藤嗣道氏厚生労働省提出資料「サリドマイド薬害について」2010年7月16日、および『女性セブン』2021年8月12日号、鳥集徹と女性セブン取材班「新型コロナ ワクチンを『打たない』と決めた人々の理由とは」より)。

これからマスコミが手のひら返しをして、このワクチンを叩き始めるかどうかはわかりませんが、徹底的に無視を決め込み続けるか、それが無理だとわかると自分たちに火の粉がふりかからないように、政府や厚労省を叩きまくるかのどちらかでしょう。彼らが進んで自らの責任を認めることはないように思います。

だからといって、マスコミの責任がなくなるわけではありません。たとえば心筋炎・心膜炎は、すでに2021年6月にはイスラエル保健当局が「ワクチンとの因果関係がある可能性が高い」との調査結果を公表しており、海外メディアでも報道されていました(ロイター「ファイザー製ワクチン、接種後に心筋炎 イスラエルが関連性指摘」2021年6月2日)。

Covid-19ワクチン
写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ridofranz

■ワクチンの副反応は大々的に報道されなかった

2021年の6月といえば、まだ大学等での集団接種が本格的に始まる前です。

鳥集徹『医療ムラの不都合な真実』(宝島社)
鳥集徹『医療ムラの不都合な真実』(宝島社)

もしこの事実が、日本のマスコミでもっと大々的に報道されていたら、接種後の心筋炎・心膜炎でつらい思いをする若者たちは、もっと少なかったかもしれません。

サリドマイドのときと同じです。

薬害の歴史にまったく学ばないどころか、同じ過ちを何度も繰り返すマスコミに私は呆れ、そして怒りすら感じています。

もっと歴史をさかのぼれば、第二次世界大戦中、日本の新聞やNHKのラジオ放送は、政府と一体になって戦争を煽りました。政府の検閲を受け入れて、「大本営発表」を右から左に垂れ流し、日本軍が敗走しているにもかかわらず、連戦連勝しているかのような「ウソ」を国民に吹き込んでいったのです。

■報道機関は大本営発表に加担した過去を「猛省」

「物量が圧倒的な米国に戦争を挑むのは無謀」「日本軍は本当は負けており、何万もの犠牲者が出ている」。そのような真実を語る者は「非国民」として排斥され、治安維持法で憲兵によって投獄されることもありました。このような軍国主義・全体主義に、新聞やNHKが加担した結果、日本は大敗北を喫し、日本人だけで300万人以上が命を失ったのです。

戦後、新聞をはじめとするマスコミは戦争責任を追及されました。それを受けて、各社は大本営発表に加担したことを猛省しました。よく知られているのが、1945年11月7日に朝日新聞が出した「国民と共に立たん」という社説です。どんなことが書いてあったのか、読んでみてください。

宣言
國民と共に立たん 本社、新陣容で「建設」へ

支那事変勃発以来、大東亞戰争終結にいたるまで、朝日新聞の果たしたる重要なる役割にかんがみ、我等こゝに責任を國民の前に明らかにするとともに、新たなる機構と陣容とをもつて、新日本建設に全力を傾倒せんことを期するものである

今回村山社長、上野取締役会長以下全重役、および編集総長、同局長、論説両主幹が総辞職するに至つたのは、開戰より戰時中を通じ、幾多の制約があつたとはいへ、眞実の報道、厳正なる批判の重責を十分に果たしえず、またこの制約打破に微力、ついに敗戦にいたり、國民をして事態の進展に無知なるまゝ今日の窮境に陥らしめた罪を天下に謝せんがためである

今後の朝日新聞は、全従業員の総意を基調として運營さるべく、常に國民とともに立ち、その聲を聲とするであらう、いまや狂瀾怒濤(きょうらんどとう)の秋、日本民主主義の確立途上來るべき諸々の困難に対し、朝日新聞はあくまで國民の機関たることをこゝに宣言するものである

朝日新聞社

■「あくまで国民の機関であることを宣言する」

いかがでしょうか。「真実の報道、厳正なる批判の重責を十分に果たさなかったために、国民を窮境に至らしめた罪を天下に謝罪する。そして、国民とともに立ち、あくまで国民の機関であることを宣言する」と書いてあるのです。

しかし、このワクチン報道に関して、朝日新聞をはじめとするマスコミは、本当にその職責を果たしていると言えるでしょうか。私にはそうは思えません。むしろ積極的に、ワクチンの大本営発表に加担していると思います。

----------

鳥集 徹(とりだまり・とおる)
ジャーナリスト
1966年、兵庫県生まれ。同志社大学文学部社会学科新聞学専攻卒。同大学院文学研究科修士課程修了。会社員・出版社勤務等を経て、2004年から医療問題を中心にジャーナリストとして活動。タミフル寄附金問題やインプラント使い回し疑惑等でスクープを発表してきた。週刊誌、月刊誌に記事を寄稿している。15年に著書『新薬の罠 子宮頸がん、認知症…10兆円の闇』(文藝春秋)で、第4回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞。他の著書に『がん検診を信じるな~「早期発見・早期治療」のウソ』(宝島社新書)、『医学部』(文春新書)、『東大医学部』(和田秀樹氏と共著、ブックマン社)などがある。

----------

(ジャーナリスト 鳥集 徹)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください