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仕事のできるコンサルは知っている…初対面の仕事相手に"絶対に言ってはいけない言葉"

プレジデントオンライン / 2022年4月1日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shih-wei

仕事相手との初対面のとき、信頼を獲得するにはどんな言葉が有効なのか。ジャーナリストの田原総一朗さんは「コンサルタントの仕事は会社の問題点を鋭く指摘することだが、仕事のできるコンサルは必ず相手の会社を褒めることからはじめるという。これには見習うべき点がある」という――。

※本稿は、田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■田中角栄は褒め上手、官僚のプライドをくすぐり味方につけた

意外かもしれませんが、政治家には人を褒めるのが上手な人が多いです。田中角栄なんてその最たるものでしょう。官僚を上手に持ち上げて、彼らのプライドをくすぐって味方につけてしまいました。

2000年に野党が森喜朗内閣の不信任決議案を提出する際、自民党の加藤紘一さんが欠席し「加藤の乱」を起こしました。

その際、私が司会を務めていた『サンデープロジェクト』という番組に加藤さんを呼び、当時自民党幹事長だった野中広務さんに出張先から生中継で出てもらいました。

二人は番組内で腹蔵なく話し合いました。最後に加藤さんは、感極まって涙を流したところも映し出されました。

結局、野中さんは乱を許さず、加藤派の切り崩しに成功して加藤さんは政治生命を絶たれてしまうことになったのです。

田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)
田原総一朗『コミュニケーションは正直が9割』(クロスメディア・パブリッシング)

その様子を見た当時の石原慎太郎さんから電話がかかって来て、「田原さん、サンプロという番組は日本一危険な番組だよ」と言いました。私は石原さん流の誉め言葉だと思って聞きました。

同じように、その後、麻生太郎さんが番組に出たときも、「いままでたくさんの政治家が痛い目に遭っているから、僕は余計なことは言わないよ」と笑って言いました。これもまた麻生さんらしい誉め言葉だと思います。

たんに褒めるのではなく、ちょっとひねった形で褒めるというのが彼らのスタイルです。ただ、これはいきなり誰でもできるというものではありません。素直に褒めるのが無難でしょう。

■できるコンサルタントはまず社長を褒める

ボストン・コンサルティング代表、ドリームインキュベータ会長を務めた堀紘一さんから聞いた話も参考になりました。

コンサルタントは通常、企業の問題点を明らかにし、改善のためのアドバイスを行う仕事です。仕事ができると認められるには、問題点を鋭く指摘しなければなりません。

ところが堀さんはまず社長に会ったときに、その会社の良いところを褒めるのだそうです。「社長、あなたの会社の社員はとてもいい笑顔で挨拶してくれますね」とか、「会社全体がとてもきれいに整頓されていますね」など、とにかく褒めるべきところを探し、指摘するというのです。

「社長の前でいきなり会社を批判するなんて、絶対にしてはいけないことです」と堀さんは私に断言しました。でも、なるほどその通りですね。

まず相手の良い部分をしっかりと認めた上で、こういうところを直したらさらに良くなると指摘するわけです。

日常の会話もまさに同じでしょう。相手をいきなり否定するところから入ると、相手は身構え、反発します。

とはいえ、私自身は褒め上手というわけではありません。少なくともお世辞めいたことは一切言いません。

そういう人間が無理して相手を持ち上げると、かえって嘘くさくなるのです。

ですから、私は相手を褒めるときは、陰で褒めます。本人ではなく周囲の人に漏らすのです。すると人づてに伝わるでしょう。誉め言葉は人づての方が相手にとって印象が深いと思います。

批判するときは本人の目の前で、褒めるときは陰で、というのが私のやり方です。たいていの人は逆で批判は陰で、褒めるのは表で、となっているんじゃないでしょうか。

いずれにしても、褒めること自体はとても大事なことです。褒めるとは相手を受け入れ、認めることですから。コミュニケーションの上で最も大事なことでしょう。

■一国の総理大臣が私の言葉をメモして舞い上がった

コミュニケーションの達人になるには、話し上手になるより、聞き上手になることです。面白いことに、雄弁で知られる政治家や経済人ほど、ふだんは聞き上手の人が多いのです。

かつて総理大臣だった中曽根康弘さんを初めて取材したときのこと。当時私はまだ40代であり、中曽根さんから見れば青二才のジャーナリストにすぎませんでした。

ところが中曽根さんは私の話を聞き、大学ノートを取り出すと、深く頷きながらメモを取り始めました。一国の総理大臣が私の言葉をメモしている。そう考えただけですっかり舞い上がってしまいました。

メモを取る女性の手元
写真=iStock.com/Mikolette
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mikolette

中曽根さんはどちらかと言うとワンマンで、自分の意見を押し通すタイプに見られがちです。そのギャップと意外性に、すっかり中曽根さんに対する印象が変わってしまいました。

成功している経営者の人たちも、聞き上手な人が多かった。

「経営の神様」と言われていた松下幸之助さんもその一人です。いまから40年ほど前になりますが、その松下さんから、「今度松下政経塾を作るのだけれど、あなたの意見を聞かせてほしい」と頼まれました。

そこで京都のPHP研究所に行って話をしましたが、当時松下さんは80歳を超えていて、私は40歳代でした。

ところが松下さんは子供以上に年の離れている私の話を、真剣に聞いてくれました。東京に帰って来て、「もう一度あなたの話を聞かせてくれませんか」と依頼があり、再度京都で講演した記憶があります。

■一流の経営者ほど聞く力が優れている

ソニーの創業者の一人である盛田昭夫さんも、じつに話を聞くのがうまかった。飛行機や新幹線などで乗り合わせると、わざわざ私の隣の席の人に「席を譲ってもらえませんか」と交渉するんですね。

それで私の横に座ると、「いまの政治はどうなのか?」「どんな人物がキーパーソンか?」「その人物の魅力は?」などと矢継ぎ早に質問してきます。もはや私が取材を受けている感じでした。

政治家にしても経営者にしても、成功している一流の人たちほど人の話をよく聞きます。

相手の話をよく聞くことで情報を得るわけです。それだけでなく、「この人は真剣に自分の話を聞いてくれる」という、相手からの信頼を得ることができるのです。

コミュニケーション力を高めるならば、まず相手の話をよく聞くことから始めることでしょう。その際には、相手の話に対して相槌をしっかり打つことが大事です。そして場合に応じてしっかりとメモを取ります。

さらに相手に話を促す場合には、「つまり○○○ということですか?」「それは○○ということでしょうか?」などと、話を自分なりに解釈して再び相手に投げかけると効果的です。

すると、相手は「自分の話をよく聞いて、しっかり考えてくれているな」と感じ、さらに話したくなるのです。

■隠しきれない本心が体の動きとして表れる

新型コロナの影響で、人が直接顔を合わせることが難しくなりました。そこで一気に広がったのが、リモートでのコミュニケーションです。Zoomなどでリモート会議やリモートワークが一般的になりました。

離れた者同士が複数で同時にコミュニケーションできるというのは、確かに便利でしょう。しかも、相手の顔を見ながら会話ができるわけです。

ただし、やはりコミュニケーションの基本はフェイスtoフェイスです。たとえZoomであっても、生身の人間と直面しての会話とは、情報量が格段に違います。

相手と自分が空間を共有しているというリアリティは、コミュニケーションの非常に大きな部分を占めています。

たとえばZoomだと、表情はよくわかるけれど、体全体は見えません。リモート会議でも、上半身はスーツを着ていますが、下は寝巻のまま参加している人もいるとか。

会話は言葉や表情だけでなく、相手の雰囲気やボディランゲージも重要な情報です。顔では余裕のある表情をしているけれど、やたら貧乏ゆすりをしているとか、しきりにハンカチで手のひらの汗をぬぐっているとか。

心の動きが体の動きとなって表れます。隠し切れない本心が、底から垣間見えたりします。コミュニケーションとはそこまで含めてのものです。だからどんなにリモートツールが誕生しても、フェイスtoフェイスが基本であることは変わりません。

■遠くの相手こそわざわざ会いに行く

ちなみに言葉だけでなく、相手の表情や態度が雄弁に物語るという、忘れられない実例がありました。

1998年7月、参議院議員選挙中に当時の橋本龍太郎総理大臣が、『サンデープロジェクト』に生中継で出演しました。話題となっていた恒久減税について、「減税はいいけど、財源はどうするのか?」と問い詰めました。すると橋本さんは「減税するとは言っていない。税制改革をすると言っている」と言う。

何度もしつこく問いただしているうちに、橋本さんの発言がブレ始めました。橋本さんの目が明らかに泳ぎ始め、汗びっしょりで体を震わせている。その光景がテレビに大写しになってしまったのです。

翌日の新聞には「総理迷走」などと書きたてられ、結局選挙で自民党は敗北し、橋本さんは辞任に追い込まれてしまいました。

言葉だけではなく、いかに表情や態度が雄弁に真実を物語るかを明らかにした出来事として、いまでも記憶に残っています。

あとは、離れている相手に会いに出向くという行為そのものが、相手に対する一つのメッセージとなります。

タクシーの後部座席でほほ笑む男性
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

わざわざ遠くから足を運んでくれたということで、相手もより心を開き受け入れてくれる下地となります。すると、より深いコミュニケーションが生まれる可能性が高まります。

リモートは確かに便利ではありますが、いろんな意味でコミュニケーションが薄くなってしまうことは否めません。

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田原 総一朗(たはら・そういちろう)
ジャーナリスト
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所へ入社。テレビ東京を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。著書に『起業家のように考える。』ほか。

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(ジャーナリスト 田原 総一朗)

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