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「仕事ができる人ほどよく遊び、できない人ほど残業する」精神科医が解説する納得の理由

プレジデントオンライン / 2022年4月6日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/YakobchukOlena

仕事のパフォーマンスを上げるには、どうすればいいか。精神科医の樺沢紫苑さんは「ネガティブな感情で仕事をする人の脳内は、記憶障害物質が常時分泌され、生産性が低くなっている。積極的に遊んでドーパミンを出すことが大事だ」という――。(第1回)

※本稿は、樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)の一部を再編集したものです。

■仕事を「つらい」と思っている人の脳内で起きていること

あなたは、仕事を「楽しい!」と思いますか?

それとも、「嫌い」「つらい」「苦しい」と思いますか?

「楽しい!」と思って仕事に取り組む人は、『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』第2章で紹介したように、ドーパミンの魔法によって、スーパーマンのように効率的に働き、圧倒的な結果を出します。

しかし、多くの人は「楽しい」というよりも、「嫌い」「つらい」と思いながら、仕事をしているはずです。仕事を「つらい」と思っている人は、どのような変化が起きているのでしょうか?

■「エナジードリンク」が夜中も分泌する

「つらい」「苦しい」という状況が継続すると、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。

コルチゾールは健康な人でも毎日分泌されますが、それは日中だけです。通常、夜間はコルチゾール分泌が低下します。しかし、ストレスがかかると1日中コルチゾールが出てしまうのです。

コルチゾールは、言うなれば「エナジードリンク」のようなもので、身体を元気にする物質です。なので日中に出る分には良いのですが、夜間に分泌されると眠れなくなります。また、身体も休まらなくなるのです。

■コルチゾールの影響をもっとも受ける“ある部分”

コルチゾールは、モチベーションを下げ、記憶力を悪化させます。体内でも脳の海馬は、もっともコルチゾール受容体が多い部位です。つまり、もっともコルチゾールの影響を受けやすい部位、ということ。

海馬は、「記憶」を司っています。そのため、コルチゾールが上がると、記憶力がものすごく低下します。なぜかというと、嫌な出来事を忘れさせるためです。

子どもの頃に親からひどい虐待を受けていた。しかし、大人になって、それをまったく記憶していない、ということがよくあります。それは、コルチゾールによって記憶が障害されるから。そうした虐待児には、「海馬の萎縮」が観察されます。

また、コルチゾールが分泌されると、意欲、モチベーションが低下します。長期にわたって続くと、うつ病の原因にもなります。

なぜならば、今「つらい」「苦しい」ことをやっているわけですから、それをやめさせようとするのです。そのまま無理して「つらい」ことをやり続けると、ストレスで病気になるかもしれませんから。

ということで、「つらい」「苦しい」が続くと、集中力、記憶力、意欲が低下します。言うなれば、脳に霧がかかったような状態です。

■「楽しい」はアクセル、「苦しい」はブレーキ

ジョンズ・ホプキンス医学校の研究で、認知症ではない健常者2231人(平均年齢49歳)に、心理学的試験、記憶・思考スキルに関するテスト、MRIによる脳のスキャン、血中コルチゾール値の計測を行いました。

その結果、血中コルチゾール濃度が高い人々は、正常な人と比べて、記憶力、思考力のテストの結果が有意に低くなりました。また、血中コルチゾール濃度が高い人々は、脳の容積が縮小していることが確認されたのです。

継続的なストレスにさらされてコルチゾール濃度が高まると、記憶力が下がり、さらに脳の萎縮まで引き起こされるのです。

わかりやすく言えば、「楽しい」と能力は2倍になり、「苦しい」と能力は半分になる、(数値は、樺沢の実感値)ということ。

「楽しい」はアクセルであり、「苦しい」はブレーキです。

スーパーマンのような状態で仕事に取り組むのか。頭に霧がかかった状態で仕事に取り組むのか。どちらが、効率的に仕事ができますか?

そして、あなたはどちらの状態で仕事をしたいですか?

ブレーキとアクセル
写真=iStock.com/dimarik
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dimarik

■なぜ、がんばる人ほど昇進できないのか

お子さんの勉強も同じです。「勉強は楽しい」と思うと、記憶増強物質、ドーパミンが出ます。「勉強はつらい」と思うと、記憶障害物質コルチゾールが出るのです。

「勉強が嫌い!」と思って、我慢、辛抱しながら何時間も勉強しても、極めて効率が悪いのです。

あなたの仕事もそうではありませんか?

なんで自分は、「嫌いな仕事」をがんばって、苦しい思いをしているのに、会社からまったく評価されないのか?

いつも定時で帰る、調子の良いやつばかりが評価され、昇進するのはおかしい! どう見ても俺のほうががんばっているのに、おかしいじゃないか?

ドーパミンとコルチゾールの秘密を知った今、「がんばる人ほど昇進できない理由」がわかったのではありませんか?

歯を食いしばって、我慢に我慢をして、血へどをはきながら努力してもドーパミンは出ません。むしろ、コルチゾール効果でパフォーマンスは2分の1になるのです。

ドーパミンの化学式
写真=iStock.com/portishead1
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/portishead1

■やればやるほどパフォーマンスが下がる

定時で退社する調子の良いA君は、アフター5も充実。アフター5を楽しむことで、ドーパミンが出るので、仕事のパフォーマンスは2倍になる。

あなたとA君のパフォーマンスは、ザックリ4倍違うのです。あなたは、定時に仕事が終わるはずもなく、残業する羽目に陥る。「遊ぶ」時間もとれずに、余計にストレスは増えて、さらにパフォーマンスが下がる。

がんばればがんばるほど、パフォーマンスは下がり、泥沼に陥る。そんな「苦しい」会社員は、ものすごく多いと思います。

本当の実力(能力)は、今の2倍あるはずなのに、それを発揮できていない……のです。

同じことに、同じ時間取り組んでも、「楽しい」と思ってやる人と、「つらい」「嫌だ」と思ってやる人では、その結果はザックリ4倍、いや場合によっては10倍以上の差となって現れるのです。

■ドーパミンは仕事以外で出しても効果的

「仕事が楽しい!」と心から思えるようになるのが一番です。「仕事を遊び化する方法」を、私のYouTubeや動画コンテンツで紹介しているのですが、ほとんどの方が「そんなことは無理!」と言います。

「こんな大変な仕事を楽しめとは絶対に無理! サラリーマンをやったことがないから、そんな現実離れしたことを言えるんだ」と痛烈な批判も届いています。

なので、本書では「仕事を楽しもう!」とは、一切言いません。仕事を楽しめなければ、仕事以外を楽しめば良いのです。それが、本書の重要なコンセプトです。

仕事でドーパミンが出なければ、「遊び」でドーパミンを出せばいいのです。

仕事を楽しむことは無理としても、「趣味」や「自分の好きなこと」「自分の関心のあること」を楽しむことは簡単です。恋人や家族といる時間を楽しむのもいいでしょう。

仕事でドーパミンが出せないなら、遊びでドーパミンを出せばいい。

仕事でストレスがたまるのなら、遊びでストレスを解消すればいい。

仕事のストレスでコルチゾールが分泌されるのなら、「遊び」でコルチゾールを下げればいい。

(ちなみに、30分の有酸素運動でコルチゾールは正常レベルまで低下するので、「遊び」でコルチゾールを下げることは簡単です)

■遊ぶことは簡単なようで意外に難しい?

「仕事を楽しめなければ、アフター5を楽しめ!」

これに対しても、たくさんの批判、反論が来ます。

樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)
樺沢紫苑『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)

#毎日残業で、遊ぶ暇なんかあるか!
#仕事が終わったら、疲れてヘロヘロな状態! 遊びに行くとか無理!
#こんなに疲れた状態で、人とも会いたくないわ!
#お金がないので、飲みにもいけないわ!

アフター5を楽しもう。もっと遊ぼう。リフレッシュ、ストレス発散をしよう!

と言っても、「時間がない」「お金がない」「体力がない」「意欲がない」という理由で、遊べない人が多いのです。つまり、「遊ぶ」のは、誰にでもできそうだけど、そう簡単ではない。

だからこそ、本書のような「遊び方」を指南する本が必要なのですが、そのような本はほとんど存在しないのです。

本書では、時間、お金、体力、意欲がなくても、上手に遊ぶ方法をお伝えします。

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樺沢 紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医
作家。米・イリノイ大学への留学を経て樺沢心理学研究所を設立。YouTubeやメルマガで精神医学の情報を発信。著書に『学びを結果に変えるアウトプット大全』『精神科医が教える ストレスフリー超大全』ほか。

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(精神科医 樺沢 紫苑)

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